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TALE40:シティ脱出!!

 次の日。

 ホテルの一室。

 体が元に戻ったルヴィア達3人は身支度を済ませた。

 プレジャーランドの時と同じようにルヴィアとレーシアは髪を全部入れて深く帽子を被り、3人共サングラスをかけている。

「3人で行動したら目立つわ。べつ行動するわよ」

「エッ!?」

 ルヴィアの発言にランディが驚いた。

「あんた達いっしょに行動して。ミナトにシューゴーよ」

「そんなッ! 1人で大丈夫かよッ!」

「ヘーキへーキっ! じゃーあんた達先シュッパツしてっ!」

 ルヴィアがそう言うとランディとレーシアは顔を見合わせる。

「わかった」

「気ィつけて行くのよ」

「お姉さまもね」



 ホテルを出たランディとレーシアはすぐ異様な雰囲気に息を呑む。

 あちこちに警察官や婦警が居る。当然、自分達を警戒しているのだ。

「嫌な感じだなァ……」

「あまり急ぐと逆に怪しまれますね……」



 別ルートの歩道をルヴィアは急ぐ。

 とにかく、なんとしても港まで辿り着かなければ。先の事はそれからだ。

 その時、突風が吹きつけ帽子が飛ばされてしまった。

 美しいロングヘアが舞い、腰まで下りる。

「あッ!!」

 思わず立ち止まる。

 そんなルヴィアを1人の警察官が目撃した。

「プリンセスだ!!」

「何!!?」

 他の警察官も駆けつけた。

「ヤバイわッ!!」

 ルヴィアが走りだす。

 警察官は拳銃を手にして発砲する。

 間一髪で撃たれずに済むルヴィア。



 その頃ランディとレーシアは警察官の目をうまく切り抜けて順調に港へ向かっていたが。

「ちょっと君」

 後方から2人の警察官が声をかけランディとレーシアはギクッとする。

「悪いが、ちょっと帽子を脱いでみてくれるかね」

「えッ……」

 戸惑うレーシアの手を引きランディは走りだした。

「おい!!」

「怪しいぞ追いかけろ!!」



 歩道をルヴィアは逃げるように駆け抜ける。

「プリンセスだ!!」

 ルヴィアに気づいた警察官が拳銃を手にする。

 それを見たルヴィアは右手を突き出す。

「『ファイア・ブレイズ』ッ!!」

 帯状の火炎を放った。

「ウワア!!」

 火炎に飲み込まれる警察官。

「ああッ」

 他の警察官はたじろいだが走っているルヴィアに拳銃を身構えて発砲する。

 その時、警察官の後方から真っ赤なエアカーが現れた。

 エアカーに乗ったサングラスをかけた男は運転しながら拳銃を手にする。

 窓から銃口を警察官に向けて発砲した。

 頭を撃ち抜かれた警察官が地面に倒れ込む。

 エアカーは走っているルヴィアを追い抜き停まった。

「ルヴィアちゃん乗れッ!!」

 男がルヴィアに声をかけた。

「ニキッド!!?」

 驚いたルヴィアは一瞬戸惑ったがエアカーの助手席に飛び乗った。

 エアカーは走りだす。



「何をそんなに急いでいる。何かやましいことでもあるのかな?」

「…………」

 数人の警察官に囲まれたランディとレーシアは無言で顔を伏せていた。

「さぁ帽子を取れ!!」

 警察官がレーシアの帽子を掴み取った。

 レーシアのセミロングヘアが肩に下りる。

「ピンク色の髪!! やはりプリンセスか!!」

「射殺しろ!!」

 警察官が一斉に拳銃を手にする。

 レーシアは右手を頭上にかざした。

「『タイダルウェーブ』!!」

 レーシアの体が淡く輝き手の平から水流がザアッと溢れ警察官を押し流す。



「お礼言わないわよ。助けなんてたのんでないんだから」

 エアカーを運転するニキッドにルヴィアが言った。

「そのとおり。俺が助けたいから勝手に助けた」

「ニキッド」

「俺はルヴィアちゃんの味方さ」

 サングラスをかけたニキッドがルヴィアに向かって微笑んだ。

「ねーちょっとドコ行くつもりなのっ!?」

「あまり人のいない所がいいだろ」

「ナニ言ってんのよッ!! さっきんトコもどってッ!! レーシアとランディとミナトで待ちあわせてんのよッ!!」

「港で? どうして?」

「シティから出るために決まってんじゃないッ!! はやくもどってッ!!」

「……嫌だって言ったらどうする?」

「はッ!!?」

「君をこのままさらっちゃおうかなー。2人きりの世界に」

「……ニキッド」

 聞こえた低い声でルヴィアに睨まれた気がして前を向いたままニキッドは笑う。

「冗談だって」

 チェッと思うニキッドだった。



 エアカーは港周辺に到着した。

「着いたはいいけどルヴィアちゃん、この港にシップはないぜ?」

「エッ!?」

 ルヴィアはエアカーを降りて港を見回す。確かにニキッドの言うとおり船らしき物は影も形もない。

 肩をガックリ落とす。

「ナニよォ、せっかく来たのに……。だったらレーシアとランディさがすわッ! じゃーねニキッド」

 立ち去ろうとしたルヴィアをニキッドは引き止める。

「ちょっと待って。昨日さぁ、ルヴィアちゃんに似た男に会ったんだ」

「エッ!!」

 唐突なニキッドの発言にルヴィアがギクッとする。

「な、ナニ言ってんのよ。そんな男いるワケないじゃない」

「そう思う? でも間違いないね。男なんだけどさぁ、なんか華があって美人なんだ」

「そりゃそーよ」

 気を良くしたルヴィアだが気配を感じてハッと振り向く。

 遠くに3人の警察官が居て拳銃を身構えていた。

 3人が発砲しルヴィアは素早くエアカーの陰に隠れる。

 ゆっくりエアカーに歩み寄る3人。

 拳銃を手にしたニキッドはエアカーを降りて早撃ちで3人の額を撃ち抜いた。



 警察官に追われたランディとレーシアは歩道を走る。

「!!」

 突然ランディが目を見開きうつ伏せに倒れ込む。

「ランディさん!!」

 背中を撃ち抜かれていた。

「イヤアッ!!」

 それを見たレーシアが顔面蒼白になった。

 振り向くと、そこに拳銃を身構えた警察官が2人居た。

 普段ならひるんでしまいそうなレーシアだが、何かがプツッとキレた。

「許さない……」

 右手を広げる。

 それは静かな怒り。

 警察官を見据える目は冷たく、氷のような表情はいつもの彼女ではない。本当に許せない時にだけ見せるものだ。

『清らかなる水の精霊よ…凍てつく刃となれ』

 レーシアの体が淡く輝き瞳は淡く輝きながらサファイアブルーに染まる。

 手の平に氷塊がパキパキッと現れた。

「『アイス・フリーズ』!!」

「うがッ!!」

 鋭い氷塊が2人の警察官の体を貫通した。



(お姉さま!!)

 エアカーに乗っているルヴィアにテレパシーが届いた。

(レーシアッ! ブジッ!?)

(ランディさんが!! 撃たれて、このままじゃ死んじゃう!!)

 ルヴィアは目を見開いた。

(なんですってッ!? ドコにいるのッ!?)

(港に向かっている途中の道よ!!)

(すぐ行くわッ! なにか目ジルシないッ!?)

(えッ)

 辺りを見渡すレーシア。大きな図書館が目に入った。

(オルガ図書館があるわ!)

(オルガ図書館ね。すぐ行くわ待っててッ!)

 ルヴィアは運転中のニキッドに伝える。

「ニキッド! オルガ図書館に行ってッ!」

「オルガ図書館ッ!? こんな時に読書でもしたいのっ!?」

「ちがうわよッ!! レーシアが近くにいんのッ!!」



「ランディさん、もうすぐお姉さまが来ますから。それまでがんばってください」

 倒れているランディにレーシアが言う。

「うん……」

 苦しそうに答えるランディ。急所は外しており一命は取り留めた。

「いたぞ!!」

 数人の警察官が駆け寄ってきた。

 振り向いたレーシアの目つきが変わる。

 今、大切な人を護れるのは自分だけ。その為になら。

 なんだってする。

『清らかなる水の精霊よ…我が意の全てを凍てつくせ』

 レーシアの体が淡く輝き瞳は淡く輝きながらサファイアブルーに染まる。

 体の周囲に霧のような物が発生しレーシアは冷気をまとう。

 警察官がレーシアに向かって拳銃を身構える。

「『フリーズ・ブリザード』!!」

 猛烈な吹雪が吹き荒れ警察官を襲った。

 体の端々から凍らせていく。



「もうそこがオルガ図書館だ」

 エアカーを運転するニキッドが言うとルヴィアは反応する。

「ホントっ!?」

 ニキッドは道路の端に凍った警察官を発見した。

「なんだっ!?」

 その先にしゃがみ込んだレーシアが見えた。

「いたっ!」

 エアカーを停める。

 ルヴィアとニキッドはエアカーを降りてレーシアに駆け寄る。

「レーシアッ!!」

「お姉さま!! アイルーン・ロッドを!!」

 振り向いたレーシアが言った。

「わかったわッ!」

 ルヴィアがクリスタル・ブレスレットに触れるとアイルーン・ロッドが現れた。

 レーシアはアイルーン・ロッドを手にして立ち上がりランディにかざす。

『天の聖なる光よ…我に力を授けたまえ』

 アイルーン・ロッドが淡く輝きクリスタルの球が光り輝いた。

「『リカバリィ・ライト』!」

 球から優しい光が溢れランディの全身を包み傷穴と服が塞がる。

 レーシアの法術を目の当たりにしたニキッドは目を見張った。

「すごいな、傷が治ったぜ」

「ありがとう。助かったよレーシアちゃん」

 ランディが起き上がった。

「いえ、ご無事でよかった」

 そしてそこに違和感なく居るニキッドに目を向ける。

「で、なんでコイツがいるか理解できないんだけど」

 それを聞いたニキッドは冷や汗を垂らす。

「ま、細かいことは」

 突然、辺りにサイレン音が響いた。

 数台のパトカーが周囲を取り囲みルヴィア達の表情がこわばる。

「レーシアッ! 『プロテクション』をッ!」

「『プロテクション』!」

 アイルーン・ロッドのクリスタルの球が光り輝き光のヴェールがルヴィア達を覆った。

 パトカーから刑事と武装した警察官が数十人降りてくる。

『プリンセス方に告ぐ。いい加減抵抗はやめて罪を償っていただきたい。我々もこれ以上仲間の犠牲者を出したくはない』

 刑事がスピーカーで言うとルヴィアは睨みつける。

「なにカッテなコト言ってんのよ」

 するとニキッドは刑事に向かって歩きだす。

「だったら解放してやったらどうなんだ」

『君! ここにいては危険だ! こちらに来なさい!』

「ああ? 勘違いするな。俺はルヴィアちゃん達の味方だ」

 ニキッドがそう言うと刑事は驚く。

『なんだと!?』

「ルヴィアちゃんがキャッスルを破壊したのはアイルーン・キングダムを護るための正当防衛だ。自分のキングダムを護って何が悪い」

『な、何を言っているのかね!?』

「クソ親父だって死んで当然だ。ニックは……死んじまって悲しいけど、あいつは後悔してないって言ってた」

『はあ?』

 チンプンカンプンの刑事。

「ルヴィアちゃん達が罪になるってなら、このキングダムは間違ってる。やっぱあのクソ親父が納めてただけあるぜ」

『何を言っておるのか意味がわからん。これ以上続けるなら署まで来てもらうぞ』

「だから言ってるだろ」

 ニキッドはサングラスを外す。

「ルヴィアちゃん達を解放しろって言ってんだよッ!」

 刑事を睨んだ。

 ニキッドの顔を見た刑事他警察官は愕然とする。

「プリンス!?」

「元、な」

「元……? もしや、行方不明であらせられたニキッド王子……?」

「ああ」

 皆一斉にひれ伏す。

「失礼いたしました!!」

「そんなんはいいから、俺はキャッスルを捨てた身だ。それよりルヴィアちゃん達を解放し、無事にシティから出してやってくれ」

「し、しかし」

 納得しない刑事にニキッドはイライラして片手で後頭部を掻く。

「めんどくせぇなぁ。キャッスルならまた建てりゃいい。キングだってまた誰かつけりゃいいだろ」

「プリンス……。プリンスがそうおっしゃるのなら、了解いたしました」

 ニキッドはルヴィア達に戻る。

「ルヴィアちゃん、今夜シティをちな」

「えっ!?」

 驚くルヴィアにニキッドはジャケットのポケットから取り出したチケットを差し出す。

「今夜出るオズフェウス・シップのチケットだ」

「ニキッド、いーの?」

「ああ、そのために取ったチケットだ」

「……ありがと」

 ルヴィアがチケットを受け取った。

「俺も一緒に行きたいところだが、ムリみたいだ」

「えっ」

「気が変わったのさ。この俺があのクソ親父のあとを引き継ぎキングダムを再建させる」

 真剣な眼差しで決意するニキッド。

「ああ、いいんじゃないか。少なくとも、あのキングよりかはマシになると思う」

 ランディがそう言うとニキッドは微笑む。

「そう? ありがとよ」

「がんばってくださいね」

「ありがとうレーシアちゃん」



 夜の港には巨大なオズフェウス・シップ。

 陽の下で見たそれはただただ大きさに圧倒されたが、淡くライトで照らされたメタリックなボディは美しく映え、一変して神秘的な印象に変わった。


 ニキッドとの別れの時。

「おセワになったわニキッド」

「ああ。超短かったけど、なんかいろいろあったな。楽しかったぜ」

「そーね」

「あのさ、これを渡しとく」

 ニキッドが携帯電話をルヴィアに手渡した。

「コレ」

「携帯電話だ。ここを押して耳に当てれば会話ができる。俺の番号入ってるから、たまには連絡してくれ。俺もたまにかけるから」

「……うん。わかったわ」

「ニキッドさん、お世話になりました。さようなら」

 レーシアがお辞儀した。

「元気でな、レーシアちゃん」

「おまえのことは気に入らないけど……。いろいろ世話になった、ありがとう」

 お礼を言ったランディにニキッドはフッと微笑む。

「どうも。受けとっとくよ」

「ニキッド、ありがと。それじゃバイバイ」

「ルヴィアちゃん」

 突然ニキッドがルヴィアを抱き寄せ唇を重ねる。

「!!」

 それを見たランディが目を見開いた。

「何してるんだよッ!!」

「だってルヴィアちゃんの甘いキスが忘れられなくてさー、最後にしたかったんだよね」

「もーッ!!」

 笑顔の二キッドにルヴィア・パンチが炸裂した。

「イッテーッ!! 最後にそれはないだろルヴィアちゃん」



 夜の海をオズフェウス・シップが進む。


 甲板デッキでルヴィア達は潮風を浴びていた。鼻をつく潮の香り。夜の潮風は冷たく寒い。

 でもなんとなく部屋に閉じこもっている気分ではないので、ここへ来てしまった。


 甲板は所々の小さな照明で辺りは見えるが、海は何も見えない。それでも空と水平線の境界はハッキリしていて半分から上は星が輝き綺麗だ。聞こえるのは静かな海しぶきの音だけ。


「なんとか無事に出られてよかったな」

「ホントね。タイヘンだったわ」

 ほんの数日間だったが、色々あってルヴィア達にはとても長く感じた。

 真っ暗な海を眺めていると、突然曲が聞こえた。

「あ、この音」

 ルヴィアが携帯電話を取り出して耳に当てる。

『もしもしルヴィアちゃん?』

「ニキッド」

『よかった繋がって。どう? オズフェウス・シップは快適?』

「ええ」

『それはよかった』



 こうしてルヴィア達はオズフェウス・キングダムを後にしたのだった。チャンチャン♪



【TALE40:END】

【機械王国編】終了です。


いやー長くなりました。

最後までお読みくださった皆様に感謝します.+゜*。:゜+(人*´∀`)+゜:。*゜+

ありがとうございました♪

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