TALE38:甘い罠
次の日。
リビングルーム。
ルヴィア達はニキッドと顔を合わせた。
「おはようルヴィアちゃん、レーシアちゃん。よく眠れた?」
「おはよーニキッド。よく眠れたわよ」
「それはよかった」
ルヴィアはニキッドの首を見て疑問を持つ。
手の痕はだいぶ引いたがまだうっすらと残っている。
「あらニキッド、首んとこどーしたの?」
指摘されニキッドはドキッとする。
「あ、ああ。やっぱわかる? 実はな……」
夜中の出来事を話すとルヴィア達は驚愕した。
ニスティが幽霊になって現れて、自分を道連れにしようと首を絞めて殺そうとしてきたと。
でもニックが現れて助けてくれたと言ったら更に驚いていた。
まあ驚くだろう。正直自分も驚いた。
信じられない様子だったが、本当の事だ。
決して夢なんかじゃない。
「帰ったぜ」
出かけていたニキッドが帰ってきてソファーでテレビを見ていたルヴィアは顔を向ける。
「あ、おかえりニキッド」
「ルヴィアちゃん、驚くなよ。オズフェウス・シップのチケットが手に入ったんだ」
「エッ! チケット!?」
やはり驚いたルヴィアが立ち上がる。
「ああ、気が変わったんだ。ルヴィアちゃん達はシティを出たほうがいいって」
「どーしてッ!?」
「いろいろ考えたのさ。俺もニスティを殺したなんてバレたらシティにいづらくなるし」
「えっ!?」
「つまり、俺もルヴィアちゃん達と一緒に行かせてもらうってことさ」
「なッ! 何ィッ!!?」
ニキッドの発言にランディが驚きの声を上げた。
「ニキッドも?」
「俺も旅に興味ないわけじゃなくてね。ルヴィアちゃんと一緒ならしてもいいかなって」
「ふざけるなッ!! 1人で勝手にすればいいだろッ!!」
ランディが冷たく言い放った。
「……冷たいな」
「いーわよ、ニキッドもいっしょに行きましょーよ」
ルヴィアがそう言うとランディは目を丸くして振り向く。
「エッ!!?」
「本当っ!? ルヴィアちゃんっ!」
嬉しそうにニキッドが言う。
「ええ、ニキッドにはおセワになったし」
「ルヴィア……」
納得がいかないのはランディだ。
「よかったぜ。それと、ルヴィアちゃんにプレゼント」
ニキッドが持っていた紙袋からラッピングされた箱を取り出した。
「あら、なにかしら」
「約束したデジタルカメラさ」
「えっ!! うれしーっ!! ありがとーっ!!」
プレゼントを受け取り喜ぶルヴィア。
「それだけじゃあれだと思ったから、もう1つプレゼントがあるんだ」
「えっ、なにっ?」
ニキッドはジャケットのポケットからラッピングされた小さな箱を取り出してルヴィアに手渡す。
「これ」
「ま、まさか……」
感づいたランディが冷や汗をかいた。
「開けていーかしら?」
「モチロン」
ニキッドがそう言うとルヴィアはプレゼントを開けた。
現れたのは小さなケースだ。
「やっぱり」
それを見たランディが呟いた。
ルヴィアはケースを開ける。それは美しい宝石が付いたリングだ。
「きゃあステキーっ」
感激の声を上げた。
「ルヴィアちゃんに絶対似あうと思ってさ」
「サンキュー」
「ルヴィアッ!! そんな物受け取るなッ!!」
「どーして?」
「君ひがんでるな」
ランディを見やるニキッド。
「なんだとッ!!?」
「君、ルヴィアちゃんに何かプレゼントしたことある?」
「当たり前だろッ!!」
「何を?」
「エンゲージリングだ」
ランディがキッパリと言った。
「エンゲージリング? いくらくらい?」
「そんなこと言う必要ないだろ」
「なんで? 安物だから?」
ニキッドの発言にランディはムカッとして額に青筋が立つ。
「失礼なッ!! 100万ラルだぞッ!!」
「100万? そっちの通貨はわからないけど、たぶん俺のほうが高価だな」
「何ィッ!!?」
「500万ニィだからな」
「……でもランディはね、働いてそのお金でプレゼントしてくれたのよ」
そうなのだ。ランディは過去にアルバイト経験があり、給料を貯めてルヴィアにエンゲージリングをプレゼントした。
「エッ! そうなのッ!?」
「ああ、そうだ。おまえは愛する人のためにそういうことしたことないだろ」
ランディがそう言うとニキッドはムッとして顔を背けた。
勝った、と勝ち誇ったようにランディは笑うがルヴィアがリングをはめている事に気づき慌てる。
「ああ゛ッ!! ルヴィア何はめてるんだよッ!!」
「だってぇー、このリングけっこー気にいっちゃったんだもの」
ルヴィアの右手の薬指でリングが光った。
それを聞いたランディはガビーンとショックを受けた。
「気に入ったァッ!!?」
「ルヴィアちゃん、はめるなら左手じゃないとー」
困り顔でニキッドが言う。
「えっ、それじゃエンゲージリングじゃない」
「そう、ダメ?」
「ナニ言ってんのよッ!!」「何言ってるんだッ!!」
ルヴィアとランディが同時に怒鳴った。
「レーシアちゃんて読書好きなんだね」
帰ってきた時からずっと読書をしているレーシアにニキッドが声をかけた。
「え、はい」
「おもしろいの? 俺は本なんて読まないなぁー」
「そうですか、おもしろいですよ」
「ふーん。あー俺、なんか喉乾いたなぁ。ルヴィアちゃん、何か飲まない?」
「じゃーワインおねがいっ♪」
ルヴィアが瞳を輝かせて言った。
「オーケー」
「いいかナイル」
キッチンでニキッドがナイルに言った。
「はい」
薄く微笑むナイル。何やら怪しげだ。
「しかしこの俺がこんな物に頼ることになるとはな」
ニキッドが深いため息をついた。
リビングルーム。
ナイルはランディとレーシアにそれぞれコーヒーを運んだ。
「温かい内にお飲みください」
「ありがとうございます」
リビングを出際に2人がコーヒーを口にしたのをチラっと確認した。
ニキッドはワインを1本とワイングラスを2つ手にして戻ってきた。
「お待たせルヴィアちゃん」
「待ってましたーっ♪」
ルヴィアの前でワインをワイングラスに注ぐ。
「さっ、グイっと飲もうぜ」
「ええっ」
笑顔でワイングラスを手にしたルヴィアは一気に飲み干した。
ニキッドは口元で怪しく微笑む。
「おいしーっ♪♪ もー1杯おねがいっ」
「もちろん。ドンドン飲んでくれ」
ワイングラスにワインを注ぐ。
一方ランディはあくびをした。
「……なんか眠くなってきたな」
「私もです……」
レーシアもウトウトと眠そうだ。
「えっ、ふたりともどーしたの急に」
ランディはルヴィアの太ももに頭を乗せて眠り込んでしまった。
「チョット!?」
突然の事にルヴィアが驚く。
レーシアもうつむき眠ってしまった。
「あれ? どうしたんだろうな」
白々しく言うニキッド。
どうやらコーヒーに睡眠薬を盛ったらしい。
「レーシア、ランディどーしちゃったのッ!? ちょっとニキッド」
ルヴィアがニキッドを見た。
次の瞬間、鼓動がドクンッと高鳴る。
ニキッドに胸がときめいた。
ドキドキして、顔が熱い。
「ルヴィアちゃん?」
顔が赤い。媚薬が効いてきたみたいだな。
ルヴィアを見てニキッドが思った。
なんとルヴィアには媚薬を盛ったらしい。
正直媚薬になど手を出したくはなかった。というより自分には不要な物だと思っていた。
声をかければ遊べる女は幾らでもいる。今まで女に不自由した事はないし女なんて簡単に口説ける。そう思っていた。
でもルヴィアは違った。
媚薬に手を出してしまった自分が情けなく思ったが思っている場合じゃなかった。
こうまでしても手に入れたいと思ってしまった。
自分を見つめるルヴィアは見た事のない表情だ。
頬は紅潮して瞳は潤み恋い焦がれる乙女の顔だ。
「ルヴィアちゃん」
「ニキッド」
ルヴィアは立ち上がりニキッドの首に両腕を回す。
「ニキッド、あたし……」
衝動のまま唇を重ねる。
ニキッドもルヴィアを抱きしめ夢中でキスを交わす。
「ルヴィアちゃん、キスがうまいな。この男が憎くてたまらないぜ」
ソファーで眠っているランディに目を向けた。
ベッドルーム。
「ニキッド」
甘い吐息でルヴィアが囁きニキッドの鼓動が高鳴る。
紅潮したルヴィアの顔。待ちきれないといった表情で自分を見つめていてニキッドは気持ちが高ぶる。
無理矢理やる気はない。でもルヴィアがその気なら。
「ルヴィアちゃん、愛してるぜ」
唇を重ねて存分にキスを堪能し、首筋に唇を這わせる。
そして肌に視線を落とす。
「綺麗な肌だな」
大理石のように美しく、なめらかなルヴィアの肌に感動する。
でも触れると柔らかくて吸い付くような肌だ。それをニキッドは視覚と感触で味わう。
ルヴィアとこうする事ができて本当に嬉しく思う。
肌を撫でるニキッドの手にルヴィアは怖気が走った。
「うッ……。ヤダ」
「えっ?」
ルヴィアの言葉にニキッドは顔を上げた。
……なんでこんな事をしてるのだろう。
ルヴィアは正気に戻りつつあった。
「イヤ、やめて」
「エエッ!?」
抵抗したルヴィアにニキッドが驚く。
もう媚薬が切れたのか?
確かにルヴィアの表情はもう違う。さっきまであんなに自分にメロメロだったのに今は拒否の眼差しを向けている。
焦って冷や汗をかき再び行為に戻る。
「やッ!」
ルヴィアがピクッと反応した。それは拒絶によるものだ。
こうなったら自分の技で感じさせるしかない。感じさせてしまえばこっちのものだ。
ニキッドが攻める。
「ヤダァッ!! ドコさわってんのよォォ――ッッッ!!!!!」
ルヴィア・パンチをニキッドの顔面に繰り出した。
ニキッドは吹っ飛び天井にブチ当たって床に崩れ落ちた。
起き上がったルヴィアはブラを着けるとベッドから降りてニキッドを睨みつける。
「サイッテーッッ!!!」
ニキッドは両手で顔を押さえながら起き上がった。
「イッテ〜〜!!」
「アンタなんか大ッキライッッ!!!」
それを聞いたニキッドはグワ――ンと大ショックを受けた。
「な、なんでッ!? だってルヴィアちゃんからキスしてきたんだぜッ!? だからやろうとしただけなのに」
ニキッドがそう言うとルヴィアは両手で頭を抱える。
「やめてッッ!!! なんかのマチガイよッ!!」
「俺のこと愛してるって言ってくれたじゃんか」
「だからなんかのマチガイよッ!! アンタなんか大ッキライだわッ!!」
「……あーショック。ルヴィアちゃんが俺にキスしてくれて超嬉しかったのに。ルヴィアちゃんだってその気になったからここに来たんだろ?」
「エッ!!」
自分がその気にさせたんだけど。
冷や汗をかいたニキッドがドキドキしながら思った。
「……わかんないわ。あたしなんでこんなコトしちゃったのッ!? そーよ、急にヘンなキブンなって……」
恥ずかしくなりルヴィアの顔がカァッと赤くなる。
「ルヴィアちゃんも本心は俺とヤリたいんだって。な?」
「そんなワケないでしょッ!! バカッ!!」
そう言い捨てルヴィアは自分の服を拾いベッドルームを飛び出した。
キッチン。
「ニキッド様、ご失敗なされたのですね」
「ああ……。適量より少し多めに盛ったのにおかしいな。もう少し多めに盛ったほうがいいのかな」
ニキッドが先程より多めに媚薬をワインの瓶に注いだ。
それを見たナイルは冷や汗をかく。
「そ、それではルヴィア様のお体が危険なのでは?」
「だけどすぐきれちまったんだぜ?」
リビングルーム。
服を着たルヴィアはいまだに眠り続けているランディの体を揺する。
「ランディッ!! 起きてよッ!!」
だが目覚める気配はない。
「どーなってんのッ!? レーシアッ!!」
レーシアに駆け寄り同じく体を揺する。
「ムダだぜ」
「えッ!?」
声のほうに振り向くとワインの入ったワイングラスを手にしたニキッドが居た。
「どーゆーコトよッ!! アンタのシワザなのねッ!!?」
ニキッドを睨みつける。
「そんなコワイ顔するなよ。これ飲んで落ち着いて」
ワイングラスを差し出しながらニキッドが歩み寄る。
「えっ」
一瞬瞳を輝かせたがハッと我に返り大好物のワインだがルヴィアは顔を背ける。
「い、いらないわ」
「なんでッ!?」
予想もしなかったルヴィアの態度にニキッドが目を丸くした。
「もーアンタなんか信じないわ」
「信じないってそんな言い方……。毒なんか入ってないぜ?」
「…………」
ルヴィアはニキッドの手からワイングラスを受け取った。
ホッとするニキッドの顔にワインをブッかける。
「なッ……」
愕然とするニキッド。
「アンタなんか大ッキライよッッ!!!」
ワイングラスを投げ捨てルヴィアはリビングを出ていった。
ベッドルーム。
ニキッドはドアをノックした。だが応答がない。
「ルヴィアちゃん、俺が悪かった。反省してるから出てきてくれよ」
だがやはり応答がない。
「……ルヴィアちゃんがどうしても出てきてくれないなら俺、レーシアちゃんに慰めてもらおうかな……」
「どーゆーイミよッ!!」
中からルヴィアの声が聞こえた。
「ルヴィアちゃんっ!! 出てきてくれよっ!! そしたらレーシアちゃんに何もしないからっ!!」
「……レーシアになんかしたら、アンタ殺すわよ」
聞こえたルヴィアの低い声にニキッドはゾッとして顔が青ざめる。
「冗談キツイってルヴィアちゃんっ!!」
ドアがバンッと開きニキッドの顔面にヒットした。
「ぶッ!!」
そんなニキッドなど無視してルヴィアは部屋を出た。
リビングルーム。
「起きなさいよランディッ!!」
いまだに眠り続けているランディの頬にルヴィアが平手打ちした。
「……テェ」
目を覚ましたランディにルヴィアの表情は明るくなる。
「ランディッ! 起きたのねっ!」
「……ルヴィア、あれ? 僕」
目をパチクリさせて起き上がるランディ。
「ニキッドのせいでずっと寝てたのよ」
「何ッ!!? アイツのッ!!?」
「レーシアも起こさなきゃ」
ルヴィアがレーシアに駆け寄る。
「レーシアッ!!」
同じく平手打ちした。
「あッ!」
あまりの痛さにレーシアが目を覚ました。
「レーシアッ!」
「お姉さま、何するのよ!」
片手で頬を押さえた。
「いつまでも寝てるからよ」
「え、あ……」
そこへニキッドがやってきた。
「起きたのか」
ルヴィアとランディはニキッドを睨みつける。
「2人ともコワイなァー」
「レーシア、ランディ。はやくココから出るわよ」
「えっ!?」
ランディとレーシアがルヴィアを見た。
「出てくの? それからどうする気?」
「決まってんでしょッ!! シティから出んのよッ!!」
「どうやって? シップのチケットは俺が持ってるんだぜ?」
ニキッドがそう言うとルヴィアはハッとする。
「あたしによこしなさいよ」
「嫌だね。俺を連れてかない気だろ」
「ダレがアンタなんかッ!!」
キッと睨みつけた。
「おいルヴィア。僕とレーシアちゃんが寝てる間にコイツと何かあったのか?」
「ランディ、コイツやっぱサイテーなヤツよッ!!」
「えッ!? どういうことだ?」
「あたしにエッチなコトしたのよッ!!」
それを聞いたランディは驚く。
「何ィッ!!? やっぱりそうかッ!!」
キッと睨みつけたがニキッドは落ち着いて口を開く。
「だけどルヴィアちゃんからキスしてきたんだぜ」
「そんなことするわけないだろッ!!」
「信じられない? 証拠はちゃんとあるんだぜ」
「証拠ッ!?」
「ナニよそれッ!!」
「見る?」
「ああ、見せてもらおうじゃないか」
ランディが言った。
デジタルカメラを手にしたニキッドは動画を再生した。
ルヴィアがニキッドに抱き付くシーンが映る。先程の一部始終をナイルが録画していたのだ。
「あッ!!」
それを見たルヴィアとランディが同時に声を上げた。
ルヴィアとニキッドのキスシーンがハッキリと映っていた。
「ああ……」
本当だ、ルヴィアからキスをした。
ショックで震えるランディ。
「やめてッッ!!! 消してよッッ!!!」
たまらずルヴィアが叫んだ。
「見たろ?」
「……こんなの、こんなの嘘だッ!!」
「これのどこが嘘だって?」
ニキッドがそう言うとランディはルヴィアを見る。
「……ルヴィア」
「わかんない、わかんないのッ! なんでこんなコトしちゃったんだか」
「ルヴィアちゃんは俺のこと愛してるんだぜ」
「ちがうわよッ!!」
否定するルヴィアにニキッドは再び動画を再生する。音量を上げる。
『ルヴィアちゃん、俺のこと愛してる?』
『愛してるわ』
ハッキリ言っていた。
「何ィィ〜〜!!?」
「ちがうわッ!! なんかのマチガイなのッ!! もーヤダッ!! やめてよォッ!!」
あまりの仕打ちに胸が悪くなりルヴィアが両手で頭を抱えた。
訳が解らない。何も考えたくない。
「……ルヴィア、僕は信じるよ。ルヴィアの言うとおり何かの間違いなんだ」
「ランディ……」
ルヴィアとランディが見つめ合った。
そんな2人にニキッドはため息をつく。
「ルヴィアちゃん。どうしても俺のモノになる気ないんだね」
「トーゼンでしょッ!!」
ルヴィアがニキッドを睨みつけた。
「わかった。君のことは諦める。ここで別れようぜ」
「えっ」
「君達と旅をしてみたかったけどな」
「おわかれすんのはいーけど、フネのチケットちょーだいよ」
ルヴィアがそう言うとニキッドは顔をしかめる。
「何言ってるの?」
「チケットがないと船に乗れないんだろ? くれよ」
「この俺をフッた女にそこまでする義理はないだろ」
「なんですってッ!!?」
「どうしても欲しいなら……ルヴィアちゃん、俺のことを愛して俺のモノになってくれる?」
「ジョーダンじゃないわッ!!」
「卑怯だぞッ!!」
ルヴィアとランディが言うとニキッドはうなずく。
「だよな。じゃ、あげられないね」
「だったら力づくでうばうしかないわね」
拳を握ったルヴィアにレーシアは慌てる。
「お姉さま! ダメよそんなの!」
「チケットなんかいるかッ!! おまえは最低だッ!!」
ランディが言い放ちルヴィアとレーシアを促す。
「ルヴィア、レーシアちゃん。早くここから出よう」
「そーね」
ルヴィア達はリビングを出て玄関に向かった。
「じゃあな、ルヴィアちゃん達」
ニキッドが見送ったがルヴィアとランディは見向きもせずに出ていく。
レーシアだけはニキッドに会釈して出ていったのだった。
【TALE38:END】