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TALE35:続・恋のトライアングル

 見上げると首が痛くなりそうな程の高層マンションにルヴィア達は連れてこられた。

「ここの最上階が俺の家だ。しばらくゆっくりしてってくれよ」

 サングラスを外してニキッドが言う。

「……なんかあやしーわね」

 ルヴィアが疑りの目を向けるとランディも同じく疑った。

「僕もまだ信用できないな。なんたってあのプリンスの兄だろ?」

「し、失礼だな君達は。この俺が悪い奴に見えるとでも?」

「見えるっ!!」

 声を揃えて言うルヴィアとランディにニキッドはズッコケた。

 立ち上がり悲しそうな表情をする。

「そんな酷すぎるぜ……」

 そのニキッドの表情がニックと重なって見えたルヴィアはドキッとする。

「ご、ゴメン。言いすぎたわ」

「わかってくれればいいんだルヴィアちゃん」

「はッ!?」

 目を丸くするルヴィア。

「今あたしのコトなんて言ったッ!?」

「えっ? ルヴィアちゃんて」

「なんで“ちゃん”なのよッ!!」

「そうだッ!! 僕のルヴィアに馴れ馴れしいぞおまえッ!!」

 ランディがニキッドを睨みつけた。

「えッ!? ルヴィアちゃんて君のだったのッ!?」

「またッ!!」

 不機嫌そうにルヴィアが言った。

「そうだよ。ルヴィアは僕のフィアンセだ」

「フィアンセッ!?」

 ランディの発言にニキッドが目を丸くした。

「マジでッ!? そうなのッ!?」

 ルヴィアに尋ねる。

「えっ!? てかー、あたしそんなつもりないんだけどー」

「なんだ。だってさ」

 ニキッドがそう言うとランディは冷や汗を垂らす。

「うッ、わかってるよ」

「まあとにかく俺の家に行こうぜ」



 エレベーターで最上階に向かいニキッドは自宅のチャイムを鳴らす。

『はい』

 男の声がインターホンから聞こえた。

「俺だ」

『お帰りなさいませニキッド様。只今お開けいたします』

 すぐ男がドアを開けた。

「お帰りなさいませ」

「紹介するぜ。使用人のナイルだ」

「初めまして、よろしくお願いいたします」

 ニキッドに紹介され礼儀正しくお辞儀した。30代前半くらいの身なりのきちんとした男性だ。

 ルヴィア達は挨拶して靴を脱ぎ、家に上がった。


 アイルーン・キングダムとオズフェウス・キングダムの文化の違いだ。



 リビングルーム。

 広い部屋に例の大型テレビがあり、その前に正方形のテーブル。高級でフカフカな横長のソファーがテーブルを囲うように3つコの字型にある。


「ま、適当に座ってくれよ」

 そう言いニキッドは端のソファーに座るとルヴィア達もそれぞれ座った。

「なぁ、ルヴィアちゃん達はシティが目的で来たんだろ?」

「だから“ちゃん”つけんのやめてってばッ!!」

 牙をクワッと剥き出すルヴィア。

「いいじゃんか、俺がそう呼びたいんだからさぁ」

「あたしは呼ばれたくないわよッ」

「じゃあなんて呼べばいい?」

「ルヴィアって呼んでもらったほうがまだマシだわ」

「えーッ!? 呼び捨てよりかルヴィアちゃんのほうがカワイイだろっ!? 俺、女のコの名前を呼ぶ時は“ちゃん”をつけるってのがポリシーなんだよねー」

 ニキッドが語るとルヴィアは冷や汗を垂らす。

「どーでもいーわよそんなコト……」

「で? 何しに来たの?」

「あそびに来たのよ。ただそれだけ」

「ふーん、観光で?」

「カンコーってゆーか、あたし達旅してんのよ。それでココたのしそーって思って来たんだけど……まさかこんなコトになるなんて思わなかったわ……」

 悲しそうにルヴィアがうつむいた。

「だよな……。へぇ、旅してるのか。なんで?」

「キャッスルの暮らしタイクツでつまんないからよ」

「あー、それ俺もわかるぜ。堅苦しいし飽きるよなー? 毎日が平凡だしさぁ」

「わかってくれるーっ!?」

「ああ、俺達気が合うんじゃないっ!?」

 ルヴィアとニキッドの会話にランディはムッとしていた。

 ランディに目を向けたニキッドはアイルーン・アーマーを指差す。

「なぁ、君が着てんのってさぁ鎧ってやつだろっ!?」

 唐突なニキッドの発言にランディはビックリする。

「えっ!? そうだけど」

「なかなかカッコイイよなー。近くでよく見せてくれよ」

 ニキッドが立ち上がりランディに歩み寄る。

「立ってくれよ」

「あ、ああ」

 ランディも立ち上がるとニキッドはアイルーン・アーマーをマジマジと見つめる。

「へぇ〜。本物初めて見たぜ。なぁルヴィアちゃん、俺がこれ着たら似あうかなっ!?」

「どーかしら」

「あっ! あとこれっ! 剣ってやつだろー。見せてくれよ」

 ニキッドがランディの腰のアイルーン・ソードを指差した。

「えっ!?……仕方ないな」

 気乗りしない様子でランディはアイルーン・ソードを引き抜く。

 アイルーン・ソードの刃が美しく光った。

「おーっ! カッコイイなー。銃もいいけど剣もいいよなー。アイルーン・キングダムの武器は剣が主流なんだろっ!?」

「そーね」

「文化の違いってやつだな。なっ! 俺にもその剣ちょっと持たせてくれるかっ!?」

 好奇心旺盛なニキッドにランディは疑りの目を向ける。

「……なんか企んでるんじゃないだろうな」

 ニキッドは呆れて冷や汗を垂らす。

「君疑り深い奴だなァー。俺は単に剣ってやつを握ってみたいだけさ」

「ランディ、チョットくらい貸してあげたら?」

「待って、アイルーン・キングダムの秘宝は血族者以外は触れられないのよ」

 黙っていたレーシアが口を挟んだ。

 知らなかったルヴィアは驚く。

「えッ! そーなのッ!?」

「ああ、そうだよ。キャッスルの地下牢に入れられる前、取りあげられそうになったけど無理だったからな」

 ランディがそう言うとルヴィアは不思議に思う。

「でもふれられないってどーゆーコトかしら?」

「秘宝は神聖な物だから、血族者以外が触れるのを拒むのよ」

「ふーん。さわろーとするとどーなんの?」

「なんか光ったぞ」

 それを聞いたルヴィアはワクワクする。

「ウソっ! ねーチョットさわってみてよ」

「えッ! 俺ッ!?」

 目を丸くしたニキッドが自分を指差しレーシアは止める。

「やめたほうがいいわよ」

「いーじゃない。男ならさわってみてよ」

「よしわかった。ルヴィアちゃんの頼みなら」

 りりしい表情でアイルーン・ソードに手を伸ばすニキッド。

 次の瞬間アイルーン・ソードがカッと発光しニキッドの手はバチッと弾かれた。

「ウワッ!!」

「ホントだわっ!」

 驚くニキッドとルヴィアだった。



「なぁルヴィア、僕達これからどうするんだ?」

 声をかけたランディにルヴィアは顔を向ける。

「えっ?」

「これからどうする?」

 ルヴィアは考え込む。

「……うーん、そーねェ。あたし達ワルイコトしてないのにワルモノにされちゃってるから、いつまでもシティにいるワケにいかないわね」

 それを聞いたニキッドは残念そうな表情をする。

「エーッ!? せっかく来たのにもう行っちゃうのかよ」

「あたしだっていたいわよ。だってシティ来んのがモクテキだったのよっ!」

「だったらいればいいだろ?」

「でもココの人達そーさせないわよ」

「俺にいい考えがあるぜ。変装すればいいのさ」

 ニキッドの発言にルヴィアは顔をしかめる。

「ヘンソーッ!?」

「目立たないカッコすりゃきっと大丈夫だって」

「そーかしら。ヘンソーしたって、このあたしのビボーは隠せないわよ。うつくしーってツミねぇ……」

 ルヴィアがふぅとため息をつき自己陶酔に浸った。

「まあでもマジでルヴィアちゃんは美人だからなぁ。ちょっとやそっとじゃすぐバレちまうかもな」

 すると突然、曲が聞こえルヴィア達は反応する。

「なにっ?」

「俺のケータイだ」

 ニキッドが取り出した物は携帯電話だ。

 携帯電話の表示を見ると顔をしかめる。

「ゲッ! あいつからだ」

 ルヴィアは携帯電話を覗き込む。

「ソレっ! ニック王子も持ってたわっ!」

「ゴメン、ちょっと失礼するな」

 そう言いニキッドはリビングを出て廊下で携帯電話に出る。

「もしもし?」

『あ、ニキッド?』

 聞こえた声は女だ。

「ああ、どうした?」

『……なんか言い方冷たくない?』

「そ、そう?」

『ニュース見たでしょ? アイルーン・キングダムのプリンセス一行が、キャッスルを破壊したんですって』

「あ、ああ……」

『まったく驚いたわね……。ニキッド、大丈夫なの?』

 心配そうに尋ねる女。

「別になんとも思ってないさ。クソ親父が死んで清々したぜ。ニックまで死んだのは悲しいけどな」

『そう……。それで今プリンセス一行は逃亡中だから、私達警察は全力で捜索中なのよ』

 その女は婦警らしい。

「そうか……。あっ!」

 突然ニキッドが驚きの声を上げた。

 ルヴィアが歩み寄ってきたからだ。

 ニキッドの額から脂汗が溢れる。

『ニキッド、どうしたの?』

「な、なんでもない」

 目線をそらすニキッド。

『そう、もしプリンセス一行らしき人物を目撃したらすぐ電話してね』

「あ、ああ。わかった」

『それだけ。愛してるわ』

「じゃあな」

 慌てて携帯電話を切ると一息つく。

「ダレと話してたの?」

「た、ただの知りあいさ」

 ルヴィアに尋ねられニキッドが脂汗をかいたまま答えた。

 再び携帯電話が鳴る。

「あ、また」

「……切っちまえ」

 ニキッドが携帯電話を強制的に切った。

 だがまたも鳴り切ったが無駄だった。

「しつこいな……」

「ソレ、ウルサイわね」

「ゴメン、ちょっと」



 ベッドルーム。

『何よニキッド、何度も切ったりして。私に隠し事しているんじゃない!?』

 怒り口調の女の声。先程の女だ。

「そ、そんなことしてないって」

『……なんか様子が変ね。妙によそよそしいし。浮気しているんじゃないでしょうね!?』

 ギクッとするニキッド。してるのか。

「するわけないだろ」

『私は警察なのよ。何か悪さしているものならすぐわかるんだから。浮気なんてしたら、あなたを殺して私も死ぬわ』

 静かに言う女。だがその迫力ある言葉にニキッドは顔が青ざめゾッとする。

 冗談に聞こえない。

「してないって! 俺を信じろよ」

『……愛してるって言って』

「愛してる」

『もう1度、もっと愛を込めて』

「愛してるニスティ」

 彼女には“ちゃん”づけしていない。

 機嫌が直った女は喜ぶ。

『嬉しい! またあとでかけるわね』

「ああ、じゃあな」

 ニキッドは携帯電話を切った。

 やれやれといった様子で一息つく。

 するとドアが開きルヴィアが入ってきた。

「ウフフ、聞いたわよ。愛してるですって」

 それを聞いたニキッドの顔が真っ赤になる。

「ルヴィアちゃんッ! 聞いてたのッ!?」

「カノジョなのね?」

 ルヴィアがニヤニヤしながら尋ねた。

「ちッ、違うッ! 元、彼女なんだ」

 真っ赤な顔のままニキッドが否定した。

「じゃーなんで愛してるってゆーの?」

「その、今は……。でも俺、説得して別れるつもりだ。他に好きな女ができたから」

「ふーん」

 今度はランディがやってきた。

「何してるんだよッ!! こんな所でッ!!」

「ランディ」

 ルヴィアが振り向きニキッドは不愉快になった。



 リビングルーム。

「なっ! ルヴィアちゃん、記念写真撮ろうぜー」

 ニキッドが笑顔でルヴィアに声をかけた。手にしているのはデジタルカメラだ。

「えっ!? なにソレ」

 カメラを見たルヴィアが目を丸くする。

「カメラさ」

「かめら?」

 初めて耳にする言葉にポカンとした。

 ニキッドはカメラをルヴィアに向けてシャッターを押す。

「ほら」

 ルヴィアとランディに画面を見せる。

「あッ!」

 そこにルヴィアの姿が写っている。

 慌ててカメラを取りあげて見入った。

「コレあたしだわっ」

「すごいっ! どうなってるんだっ!?」

 ランディが横から覗き込むとレーシアも立ち上がり覗き込んだ。

「すごいわね」

「ルヴィアちゃん、今度は俺とツーショットで撮ろうぜー」

「えー?」

「君、悪いけど撮ってくれよ。俺達をフレームに入れてここを押すだけだからさ」

 ニキッドがランディにカメラの使い方を説明した。

「あたしやってみたいっ!」

「えッ!? だって俺達を撮ってもらうのに」

 何を言いだすのかとニキッドが冷や汗を垂らしてルヴィアを見た。

「いーじゃないっ! 貸してっ!」

 ルヴィアがニキッドからカメラを取った。

「えっと、こーやって」

 カメラをランディとレーシアに向けた。

「それでとーすんだっけ?」

「ここを押すのさ」

「ココね」

 シャッターを押す。

「ほらふたりともっ!」

 ランディとレーシアに画面を見せた。

「僕とレーシアちゃんだっ」

「あとでプリントして渡すな」

 ニキッドが言う。

「ルヴィアちゃん、今度は俺とツーショット。なっ?」

 そう言いニキッドはカメラをルヴィアの手からランディに手渡した。

「ルヴィアと僕をとらせてくれっ!」

「……いいけど順番な。先に俺達を撮ってくれ」

「わ、わかった」

「さっ! ルヴィアちゃんポーズポーズっ! イェ〜イっ!」

 ニキッドがルヴィアの腰に腕を回しランディに向かって親指を立てた。

 それを見たランディは目くじらを立てて怒り狂う。

「ルヴィアにベタベタするなッ!!」

「早く撮ってくれよ」

「ルヴィアから離れろッ!!」

「いいじゃんか、写真くらい」

「ダメだッ!!」

「……だったらルヴィアちゃんと君のツーショットも撮らせたくないな」

「エッ!?」

 ニキッドに言われ戸惑うランディ。

「ランディ、いーわよこんくらい」

「ルヴィアちゃんて優しいなぁっ!」

 ニキッドが感激した。



 Vサインをしているルヴィアの腰にニキッドが腕を回してポーズを取る姿をランディは撮影した。

 ルヴィアとニキッドはカメラの画面に見入る。

「俺達って美男美女だし超お似あいだよなっ! 赤い糸で結ばれてるかもよっ!」

「それは絶対にない。赤い糸で結ばれてるのはルヴィアと僕だからな」

 ムスッとしたランディが言った。

「そんなのわからないね」

 ニキッドがそう言うとランディはムカッとする。

「なんだとッ!!? アイルーン・キングダムは代々、血族結婚なんだぞッ!! ルヴィアと僕は結婚する運命なんだッ!!」

 それを聞いたニキッドは不愉快になる。

「今度は僕達の番だぞ」

「ああ」

「さぁルヴィア、僕達もっ」

 顔を赤らめたランディがルヴィアの腰に腕を回した。

「あっ! 悪いっ」

 声を上げたニキッドにルヴィアとランディは顔を向ける。

「バッテリー切らしたみたいだ。残念」

 ランディは目を丸くする。

「えっ!? どういうことだっ!?」

「写真が撮れないってことさ」

「エッ! そ、そんなァ……」

 肩をガックリ落とした。

 そんなランディを見て嘘だけど、と意地悪く思うニキッド。

「でもソレいーわね。あたし欲しーわ」

「そう? じゃあ俺が新しいやつプレゼントしてあげるぜ」

「ホントっ!?」

 ルヴィアが喜んでいる様子を横目でムーっとして見ているランディだった。



 夕日が沈みかけ窓から見える空は薄暗い。


「あータイクツゥー」

 ソファーに横たわったルヴィアが呟いた。

 基本的にルヴィアは何かをしていないと耐えられない。部屋でただジッとしているなどしょうに合わないだろう。

「なぁなぁルヴィアちゃん、ちょっと来て」

 ニキッドが声をかけルヴィアは起き上がる。

「えっ? なにっ?」

 ガラスのドアを開けてバルコニーに出たニキッドはルヴィアを手招きする。

「こっち来てみ」

「おいッ!! ルヴィアをどこに連れてく気だよッ!!」

 黙って見ていたランディが立ち上がる。

「ただのバルコニーさ。君も来る?」

 呆れて言うニキッドにランディはムッとする。

「……別にいい」

「そう。じゃあルヴィアちゃん早く来て」

「なにあんの?」

 バルコニーに出ていくルヴィア。

「…………」

 ランディは不愉快そうにソファーに座る。

「なぁレーシアちゃん。アイツ絶対ルヴィアに気があるよな?」

 隣で読書をしているレーシアに尋ねた。

「えっ?……すいません、私にはよくわかりません……」

「そう……。ルヴィアもルヴィアだよ。あんな奴に優しくするし」

 不機嫌そうに呟いた。



 バルコニーに出たルヴィアは両腕を抱えて凍える。

「あ、気づかなくてゴメン」

 ニキッドはジャケットを脱ぎルヴィアの肩に掛けた。

「ありがと」

「そうかルヴィアちゃんのキングダムは暖かいんだもんな。こっちの気候は肌に合わないだろ」

「うん、チョットね」

「寒かったらすぐ言ってくれな。抱きあったほうがもっと暖かいぜ。試す?」

「ナニ言ってんのよッ!!」

 2人は手すりから夜景を眺める。

「きゃ〜っ! ちょーキレイっ!」

 ルヴィアが感激した。


 広めのバルコニーから見える夜景の眺めは見事だ。高層マンションの最上階という事もあり、立ち並ぶ高層ビルの照明や道路を行き交うエアカーのライトが輝きとても美しい。


「だろーっ!? 俺もこの夜景気に入ってるんだ」

「いーわねーっ」

 ウットリするルヴィア。

「ルヴィアちゃんみたいな魅力的な女のコと見れて俺感激だぜ」

 ニキッドがジッと見つめて言うとルヴィアは気を良くする。

「ホホホ、そーでしょーね」

「……ルヴィアちゃん。俺、君に一目惚れしちゃったんだ」

 突然ニキッドが想いを告げた。

「あら、それはしかたないわねー。こーんなにうつくしーあたしだもの」

「うんうん、そうさ。ルヴィアちゃんて美人でセクシーでどんな女もかなわないぜ」

「ホホホホホ、トーゼンよ」

「ルヴィアちゃん、俺のモノになってくれないっ?」

「はあッ!?」

 ルヴィアが顔をしかめた。

「ダメ? だって俺、ルヴィアちゃんを誰にも渡したくないからさー」

「だからってアンタのモノになんないわよッ」

「エッ!? ダメッ!?」

「トーゼンでしょ」

「エ〜〜。そんなァ」

 ルヴィアに冷たい視線で言われニキッドは悲しそうな表情をした。

「俺フラれたの初めてだぜ。超ショック」

 肩を落とすニキッド。


 そんな2人の後ろ姿をランディは部屋からこっそり見ていた。


 初めてフラれてショックだが悔しくもある。

 心の底で燃える何かにニキッドは気づく。

 絶対にルヴィアを落としてモノにしてやる。

 ニキッドの魂に火が点いた。

「ルヴィアちゃんっ! 今から俺とデートしようぜっ!」

「はッ!? なんでアンタとデートよッ!」

「俺がシティの楽しい所にいろいろ連れてってあげるからさっ!」

 それを聞いたルヴィアは悪い気はせず喜ぶ。

「ホントっ!? あたし行きたいトコあったのよっ! レーシアのガイドにのっててちょーたのしそーで……。なんてったかしら」

「シティには楽しい所たくさんあるぜ」

「レーシアにガイド見せてもらうわ」



 ルヴィアとニキッドはリビングに戻った。

 いまだにランディは不機嫌そうにムスッとしている。

「何話してたんだよ」

「ニキッドがね、たのしートコつれてってくれんだって。レーシア、あんたのガイド見せてくれる?」

「えっ? ガイド? いいわよ」

 レーシアはガイドブックを取り出しルヴィアに手渡す。

「えっとドコだったかしら……。あっ! あったわ。ココよ」

 あるページを開きニキッドに見せる。

「ああ、プレジャーランドか。ここは楽しいぜー。じゃ、行くか」

「ホントっ!? うれしーっ!」

 喜ぶルヴィアにランディは慌てる。

「おッ! おいどこに行く気だよッ!!」

「この俺がエスコートするからには、絶対に退屈させないぜ」

 ニキッドがルヴィアの手を引き歩きだした。それを見たランディは憤慨する。

「待てッ!! おまえ何考えてるんだッ!!」

 ルヴィアのもう片方の手をランディが引いた。

「ランディ?」

 引かれてルヴィアはニキッドの手を離す。

 ランディはルヴィアを抱きしめてニキッドを睨みつける。

「ルヴィアは僕のなんだぞッ!! おまえハッキリ言ったらどうだッ!! ルヴィアのことが好きなんだろッ!!」

「好きだぜ」

 あっさり答えたニキッドにランディは怒りで体をワナワナと震わせる。

「ドイツもコイツも、どうしてルヴィアと僕の間を邪魔するんだ」

「そんなこと言ったってしょうがないだろ。好きになったもんは」

「なんだとォッ!!?」

「ちょっとランディ、あたしニキッドにあそびにつれてってもらうだけよ」

「ルヴィアッ!! 何考えてるんだよッ!! この男を信用してるのかッ!!?」

「えッ……」

「2人で行くなんて危険すぎるじゃないかッ!!」

 それを聞いたニキッドはカチンッとする。

「失礼だな、俺は危ない奴じゃないって言ってるだろッ!!」

「だ、だったらレーシアとランディもいっしょに行きましょーよ。ねっ? それでいーでしょっ?」

「……ならいいけど」

「ねー、いーわよね?」

 ルヴィアがニキッドに尋ねた。

「俺は嫌だな。ルヴィアちゃんと2人きりでデートしたいのに」

 ニキッドがそう言うとランディは睨む。

「何ィッ!!?」

「みんなで行ったほうがたのしーじゃない。ねっ?」

「……しょうがないな。わかった」

 ため息をつき不満ではあったが承諾するニキッドだった。



【TALE35:END】

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