TALE34:もうひとつの欠片
次の日。
「なに? ココ」
女スタッフにビルに連れてこられたが、なんだか解らなくてルヴィアが尋ねた。
「テレビ局です。あなた様方にはキャッスルで一体何があったのか詳しくご質問させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします」
女スタッフがルヴィア達にお辞儀した。
ルヴィア達はテレビ局のある部屋へ通された。
そこそこ広い部屋でインテリアも高級感があり充実している。大物著名人を通すVIPルームのようだ。
「こんなお部屋で申し訳ありませんが、しばらくお待ちくださいませ」
女スタッフが謙遜してお辞儀した。
「べつにいーけどー、あたしなーんかノドかわいちゃったわー。ワインもらえないかしらっ♪」
「は、はい。只今すぐ……エッ!? ワインですか!?」
ルヴィアの発言に女スタッフが目を丸くした。
「そーよ。サイコー級のやつヨロシクねっ♪」
笑顔で言うルヴィア。
「……ですが本番前ですので……」
女スタッフが困り顔で言うとルヴィアはキョトンとする。
「だからなによ」
「アルコールのほうは申し訳ございませんがどうかお控えいただきたいかと……。他の物ならなんでもお持ちしますので!」
「エ〜〜!! アルコールじゃなきゃヤダァ〜〜!!」
顔をしかめて言い放つルヴィアにレーシアは注意する。
「お姉さまわがままを言わないで! 困っているでしょう!」
「ヤダァ〜〜!!」
「……かしこまりました。低アルコールの物をご用意させていただきます」
諦めた女スタッフが言うとルヴィアは素早く反応して瞳を輝かせる。
「ホントっ!?」
そんなルヴィアにランディとレーシアは呆れて冷や汗を垂らしていた。
「それでは失礼いたします」
女スタッフがお辞儀して部屋を出ていった。
ルヴィアは横長のソファーに座り込む。
「あーあ、なんかメンドイわァ」
「……僕達、あのテレビっていうのに出るんだろ? なんか緊張するな……」
「オズフェウス・シティの全域に流れるんですよね……」
ランディとレーシアはガチガチに緊張して固まっていた。
「なーにキンチョーするコトあんのよ。ドードーとしてりゃいーのよ」
さすが1人余裕の表情のルヴィアだった。
「うーんイマイチねー。もっとキッツイのじゃないとおいしくないわ」
ワインの瓶を手にしたルヴィアが不満そうに呟いた。
「どれ? 見せて」
「ん」
隣に座っているランディに言われ瓶を手渡す。
「……このくらいなら僕でも飲めるかな」
ラベルを見てワインを一口飲む。
「へへ、間接キッス」
ランディの顔がニヤけた。
「バカッ! それがモクテキだったのッ!?」
「そういうわけじゃない……」
急にランディの顔が赤くなり目がトロンとした。一口飲んだだけで酔っぱらってしまったようだ。
「……ひっく」
「ゲッ」
「ランディさん!? 酔ってしまったんですか!?」
顔をしかめるルヴィアと慌てるレーシア。
「たったひとくちでよってんじゃないわよッ!!」
「……ひっく、なーんかいい気分だなぁ〜〜」
ランディがポーっとした目で天井を見上げていた。
ルヴィアに目を向けて近寄る。
そんなランディにルヴィアは嫌な予感がして冷や汗をかく。
「ナニッ!?」
「へへへ……。ルーヴィーアっ」
ランディがデレっとした顔で両腕をバッと開いた。
「キャアッ!!」
ルヴィアが慌てて立ち上がるとランディはソファーにうつ伏せに倒れた。
「……動かないわ」
ランディを仰向けにしてみると気持ちよさそうに眠りこけていた。
「寝ているわ」
「ったくコイツはッ!!」
ルヴィアの額に青筋が立った。
するとドアをノックする音が聞こえた。
「どーぞ」
ドアが開き先程の女スタッフが入ってきた。
「失礼します。プリンセス方、会見は午後2時から行いますので、今からご昼食にしていただきたいのですがよろしいですか?」
「ランチっ!?」
瞳を輝かせるルヴィア。
「はい、私がレストランにご案内いたします。お気に召していただくとありがたいのですが」
「うんっ♪ 行くわっ♪」
クラシックの流れる上品なレストラン。
物音1つ立てるだけでも顰蹙を買ってしまいそうな静かな店内で食事中なのは身なりの整った客ばかり。そうでないとここには入れてもらえないからだ。
なのに賑やかな声と共に現れた者に客は不愉快そうに眉を寄せて振り向く。そしてポカンとした。
3人の、あまりにもこの場にそぐわない格好で。
だがオーナーがペコペコと丁重に通している様子に只者でない事を悟る。そうでなくても3人の放つオーラは凄い。少し暗めのムードある店内で3人の、特に少女2人の周りだけが輝いているようだ。
オーナーに椅子を引かれて着席したルヴィアはメニューを渡される。
「えっとー、ココからココまでヨロシクっ♪」
指で辿りながらルヴィアが笑顔でいつもどおりのオーダーをした。
「は、はい?」
戸惑うオーナー。
一方ルヴィアの隣に座っているランディは青ざめた顔でグッタリしていた。酒で酔った上にエアカーに乗った為、悪酔いしたのだ。
テレビ局のスタジオ。
会見の時間になりルヴィア達はスタジオに登場した。
カメラマンによるカメラのフラッシュが一斉に3人を襲う。
「キャッ!! ナニッ!!? まぶしーわよッ!!」
フラッシュに驚いたルヴィアが目をつぶり片手を顔の前に挙げた。それはランディとレーシアも同じだ。フラッシュは激しく光り続ける。
ルヴィアの額に青筋が立つ。
「なんなのよッッ!!! まぶしーって言ってんでしょッッ!!!」
牙を剥き出して怒鳴るとカメラマンは皆ビビリ撮影をやめた。
ルヴィア達はマイクが数本置かれた長テーブルの豪華な椅子に着席した。
テーブルの前に集まる男記者はルヴィアとレーシアの美貌に見惚れて目をハートにする。
「……このお2人が絶世の美女とうたわれるアイルーン・キングダムのプリンセス……」
「この世のものとは思えない美しさね……」
女記者も目を見張っていたが、すぐ目線はランディに向けられる。
ランディは普通にしていれば、その端正な顔だちはかなりの男前だ。
顔を赤らめる女記者。
『只今よりアイルーン・キングダムのプリンセスご一行様による会見を始めたいと思います。左手からご紹介いたします。ルヴィア=アン=アイルーン様。レーシア=リーズ=アイルーン様。ランディ=アレイン様です。よろしくお願いいたします』
紹介が入り会見が始まった。
「あのー、おとといキャッスルにいらっしゃったんですよね。一体どのようなご用件でいらしたのですか?」
男記者の1人が質問した。
「あたし達、ホントはシティに行きたくてサイショっからキャッスル行くつもりなんてなかったの。それがカッテに船長さんがレンラクしちゃって、そしたらキングとニック王子が迎えに来ちゃって、しかたなしにィー……」
言いながらルヴィアの額に青筋が立ちイライラし始めた。
テーブルをバンッと叩き立ち上がる。
「チョットォッッ!!! さっきからピカピカうっとーしーのよッッ!!! ふざけてんだったらやめるわよッッ!!!」
再び怒鳴ると記者やカメラマンだけでなくレーシア、ランディまでもビビらせた。
「……あ、あの、これはふざけているんじゃなくて、写真を撮っているんです……」
カメラマンの1人が怯えながら答えた。
「しゃしんッ!? シャシンてナニよッ!」
『新聞、雑誌などに載せる物です』
記者会見の様子を大型テレビで見ている男の姿があった。
男は笑いながら見ていた。
「いいねぇルヴィア王女。噂に聞いてたとおり超美人だし、おもしろいしな」
高級なフカフカのソファーで足組みして手には缶ビール。
「俺好みだぜ」
「それではキャッスルに到着してからは何をなさったのですか?」
女記者の1人が尋ねた。
「ディナーとって休んだわ。昨日はニック王子にヘンな部屋つれてかれてとんでもないコト聞かされたの」
「えっ!? 何をです!?」
「とんでもないこととはなんですか!?」
記者が騒ぎだした。相変わらずフラッシュも光り続ける。
「〜〜〜〜」
イライラしたルヴィアの額に青筋がピキッと立つ。
「今から話すからしずかにッ!!」
もの凄い形相で再び記者をビビらせた。
「ハイッ」
「オズフェウス・キングダムのインボーよッ!! あたしニック王子からゼンブ聞いたわ。あたしとニック王子セーリャク結婚させて魔法力手に入れるコト。あたし達の暮らすアイルーン・キングダムをにくんでたコト。アイルーン・キングダムをほろぼそーとしてたのよッ!!」
ルヴィアの話した真実に記者やスタッフは驚きと戸惑いを隠せなかった。
「そ、そんなことをあのキングが!?」
「どういうことですか!?」
「魔法をキカイ文明に取り入れてハッテンさせよーとしてたのよ。ジョーダンじゃないわッ!!」
「アイルーン・キングダムを憎んでいたのに魔法の力を欲しがっていたのですか!?」
「そーよ。魔法にはキョーミあったみたいでケンキューしたがってたから」
「そ、そうなんですか。それでは私達が1番知りたい最大の謎。あの大爆発です! あの大爆発が起こった時あなた方は一体どちらにいらしたのですか!?」
「キャッスルにいたわよ」
「それではあの大爆発の原因はなんなのですか!? キングやプリンスはどうなされたのですか!?」
「……あのバクハツはあたしがやったの。キングとニック王子は……死んだわ」
ルヴィアの発言に皆驚愕し、その場が一気に静まり返った。
「しかたなかったのよ。キングがアイルーン・キングダムをほろぼすためのカクヘーキ発動させちゃって、あたしが精霊術でキャッスルごとハカイしなきゃ今ごろアイルーン・キングダムは……。ニック王子は死なすつもりなんてなかったのに……」
悲しくなりルヴィアがうつむく。
「ひ、人殺し……」
「エッ!?」
それを聞いたルヴィアが顔を上げた。
「人殺しだ。キングとプリンスを殺しただけでなく、私達の大事なキャッスルを破壊するなんてとんでもない!!」
「早く警察に電話しろ!!」
周囲が異様に騒がしくなってきた。
「……これはマズイな」
テレビを見ていた男が立ち上がった。
「ちょっとナニ言ってんのよッ!! しかたなかったって言ったじゃないッ!!」
「そっちの都合なんて関係ない!! あなたがキングとプリンスを殺したのには変わりないんだ!!」
「立派な犯罪者よ」
あまりの言われように黙っていたランディは立ち上がる。
「待ってくださいッ!! ルヴィアは何も悪くないんだッ!! ああするしか方法がなかったんですッ!!」
「そんなの知ったことか。言いたいことがあるなら警察で言いな」
男記者の言葉にルヴィアは反応する。
「ケーサツッ!?」
「まあ何か言ったところで聞いてもらえるとは思えませんが。死刑確定でしょうからね」
「なんですってッ!!? ふざけんじゃないわよッ!! なんであたしが死刑なワケッ!! もーガマンできないわッ!! レーシア、ランディ、行くわよッ!」
「ああっ」
ルヴィア達はスタジオから立ち去った。
「無駄だと思いますよ」
「ウッサイわねッッ!!!」
通りすがりの男に言われルヴィアが言い放った。
階段を下るルヴィア達の耳にけたたましいサイレン音が聞こえてきた。初めて耳にする不快な音にルヴィアは胸が悪くなる。
「ナニよウルサイわね」
「ルヴィア、このまま外に出たら囲まれてるんじゃ……」
ランディが不安そうに言った。
「なに弱気になってんのよ。ダイジョーブだって」
ルヴィア達は外へ出た。
やはり付近は盾を持ち重装備をした数十人の機動隊により囲まれていた。
『出てきましたね、プリンセス方。あなた方を完全に包囲しました。キングとプリンス殺害及び建造物破壊により逮捕いたします』
隊長がスピーカーで宣告した。
それを聞いたルヴィアは馬鹿にしたようにフッとあざ笑う。
「このあたしをつかまえるなんて、アンタ達にできんのかしらァ?」
『なんですと!? やむを得ない場合は銃を発砲する覚悟ができております!』
機動隊が一斉に機関銃を身構えた。
「……またソレね。もー見あきたわ。レーシアッ!」
「はい! 『プロテクション』!」
アイルーン・ロッドのクリスタルの球が光り輝き光のヴェールがルヴィア達を覆った。
魔法を目の当たりにした機動隊はざわめく。
「あたし達にソレはツーヨーしないわ。おとなしく道あけなさいッ!! さもないと精霊術でコーゲキするわよッ!!」
ルヴィアが機動隊をビシッと指差した。
『くッ……。わかりました。皆の者、道を開けろ』
隊長が命令すると機動隊は2つに別れサイドに寄った。
「……レーシア、念のためといちゃダメよ」
「ええ……」
半信半疑ながらルヴィア達は機動隊の間を通り通過し終えようとした。
その時
『皆の者、攻撃用意』
隊長が命じ機動隊は機関銃をルヴィア達に向かって身構える。
「!」
ルヴィア達が振り返る。
『撃て!!』
機動隊が一斉に発砲した。
連射された弾丸が次々と光のヴェールに弾かれる。
やがて機関銃の弾切れにより辺りがシーンと静まり返った。
「……な……。本当に銃が効かないとは……」
スピーカーを使うのも忘れた隊長が呆然とした。
「……ゆるせない。コーゲキしたわねッ!!」
怒りの募ったルヴィアが右手を開いた。
『燃え盛る炎の精霊よ…灼熱の柱となれ!!』
ルヴィアの体が淡く輝き瞳は淡く輝きながらルビーレッドに染まる。
髪はうねり手の平に炎がゴォッと燃え上がった。
「ウワアッ!!」
「火だ!!」
それを見た機動隊が騒ぐ。
「『イラプション』ッ!!」
ルヴィアがしゃがみ込み手の平を地面に付けた。
両サイドの機動隊の足元からマグマの火炎柱が勢い良く噴火する。
高温のマグマには機動隊の盾や重装備は全く無効だ。外側からドロドロと溶けていき全員、骨すらも残らず溶けてしまった。
あまりの惨さにランディとレーシアは見ていられず顔を背けていた。
歩道をルヴィア達は走る。
どこに向かえばいいか解らないが、とにかく今はここから離れなければ。
国民がルヴィア達を見て悲鳴を上げる。先程の会見を見たのだろう。
どうして叫ばれなければならない。ただ自分のキングダムを護っただけなのに。
自分達以外はもう敵に感じる。何故こんな目に遭わなければならないのか。
真っ赤なエアカーが通りかかりルヴィア達の横で停まる。
「プリンセス達、乗りなっ!」
エアカーに乗っているサングラスの男が声をかけた。
「なッ! ナニよアンタッ!!」
ルヴィアが足を止めて男を睨んだ。
「安心しろって、俺は君達の味方だからさ。このままじゃ警察に追いかけまわされるだけだぜ。俺がかくまってやるよ」
「ココの人達カンタンにシンヨーできないわッ」
「そんなこと言ってる場合かよッ!」
「ウルサイわねッ!! アンタだってどーせ敵なんでしょッ!!」
それを聞いた男はため息をつく。
「そんなに信用できないのかよ。……だったらこれならどう?」
そう言い男はサングラスを外す。
男の顔を見たルヴィア達は目を見開き愕然とする。
「エエッ!!? ニッ! ニック王子ッ!?」
「どうしてッ!?」
なんとニックにソックリの美少年だった。
だが、どことなく雰囲気は違う。
澄んだブルーの瞳とベージュで細かくウェーブがかった髪質は同じだが、ニックより少し長く後ろで緩く束ねている。
少年はエアカーから降りてルヴィアに歩み寄る。
「へぇ、近くで見るともっと美人だな」
ジッとルヴィアを見つめる。
「あら、トーゼンよ」
「ハハハっ! おっとのんびりしてる場合じゃない。とにかく早くここから離れようぜ」
少年はエアカーの助手席と後部座席のドアを開ける。
「ルヴィア王女、レーシア王女。乗って」
「わ、わかったわ」
ルヴィアが助手席、レーシアが後部座席に乗ると少年はドアを閉めた。
「君はそっちだ。急げっ!」
レーシアの隣の席を指差してランディに言う。
「あ、ああ」
ランディは急いでエアカーの向こう側へ回った。
少年は運転席に戻り再びサングラスをかける。
ランディも乗った事を確認するとエアカーを走らせた。
エアカーに乗るのは5回目だ。4回は昨夜泊まったホテルとテレビ局へ案内された時、それとレストランの送迎。
「うーんっ! 風がイイキモチー」
窓から吹きつける風に身をゆだねるルヴィア。
「俺のエアカー、カッコイイだろ? 気に入ってくれた?」
「ええ……ってそーじゃなくって、アンタいったいナニモノッ!!? どーしてニック王子の顔してんのッ!!? あたし達ドコつれてく気よッ!!」
ルヴィアが運転している少年を不審な目で見ながら言った。
少年は前を向いたままショックを受ける。
「……あー、なんか酷くない? その言い方。まるで俺が超怪しい奴みたいじゃんか」
「ジューブンあやしーわよ」
ルヴィアがハッキリ言うと少年はガビーンとショックを受けた。
「うわキッツゥー。会見でもズバズバ言ってたもんなー。おもしろかったけどさぁ」
笑う少年にルヴィアは不機嫌になる。
「いーからシツモンに答えてくれる?」
「はいはい。俺はニキッド=フェリー=オズフェウス。ニックの……双子の兄さ」
「フタゴッ!!?」
ニキッドの発言にルヴィア達が目を丸くした。
「ウソ、フタゴだったの……。どーりで似てるワケだわ。ただソックリなだけじゃないのね」
「まあな」
「でもアンタ、キャッスルにいたのっ!? このあたしの精霊術くらって生きてるワケないわよっ!」
「ああ……。俺、キャッスルで暮らしてないからね」
「えっ?」
「ちょっと待てッ!! おまえ、キャッスルを破壊したルヴィアを恨んでるんじゃないのかッ!!? これからどこかで僕達に復讐する気なんだろッ!!」
感づいたランディが口を挟んだ。
「エッ!?」
それを聞いたルヴィアがニキッドを見る。
「やめてくれよっ! 俺はそんなことするつもり全然ないっ! むしろキャッスルを破壊してくれて感謝してるんだぜ。ついでに変態クソ親父も殺してくれてさ」
「……どーゆーコト?」
「俺、あのクソ親父が大ッ嫌いだったんだ。君達のアイルーン・キングダムに復讐するなんつってさ、俺が物心ついた頃には既に地下に閉じこもりっぱなしで。母様も困り果ててたもんだぜ。そしてついにある事件が起きた。あのクソ親父が反発した母様を撃ち殺したんだッ!!」
ニキッドが怒り口調で言うとルヴィアはうつむく。
「……聞いたわ。ニック王子から……」
「俺はもう我慢できなくなった。母様の仇を討ってやりたかったが、クソ親父を殺してしまったら俺もあのクソ親父と同類になってしまう。それだったらキャッスルを出てやろうと思ったのさ。ニックも一緒に連れてこうとしたら、あいつは臆病者でクソ親父がこわくて逆らえないから嫌だと言ったんだ。だから俺1人でキャッスルを出た」
「そーなの……。でもキングにバレた時ダイジョーブだったのっ!?」
「ああ、クソ親父は俺のことなんてどうでもいいみたいだったからな。俺、小さい頃からクソ親父のこと避けてたし、話したことなんてあんまないし。ニックはよくなついてたけどな。だからあんなクソ親父でもニックのことはかわいがってたんだぜ」
「ウソッ!! あのキングがニック王子をかわいがってたッ!!? キングはニック王子リヨーしてただけなのよッ!!」
「結果的にはそうだったみたいだな。まあなんであれ、俺はこれでよかったと思うぜ」
ルヴィア達を乗せたエアカーは道路を滑走していくのだった。
【TALE34:END】