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TALE32:プリンスの決意

 ニックの部屋。

 ソファーでニックはうれいを帯びたブルーの瞳をはかなげに落としている。まとう雰囲気は今までとは一気に別の物となった。

「ニック王子……。アンタのおかーさまって、まさか……」

 隣に座っているルヴィアがためらいがちに声をかけるとニックは視線を落としたまま口を開く。

「……そうです。僕の母様は父様に殺されました。母様が亡くなった日のことは、今でもまぶたに焼きついています。眠ると夢にも見ることがあります。涙を流して目が覚めるのです……」



 ニックの回想。


 当時6歳のニックは広い地下室で新たなる核兵器の開発に明けくれる若きナウロスの元へ遊びに行った。

『父様、遊ぼうよー』

 やってきたニックにナウロスは振り向く。

『ニック!! 危ないからここには来るなと言っているだろう!!』

『だって、父様いつもそればっかりで、ぜんぜん遊んでくれないから……』

 淋しそうに言うニック。

『私にはおまえと遊んでいる暇などないのだ。邪魔だから向こうに行っていなさい!!』

 ナウロスが冷たく言い放つとニックの目に涙が溢れポロポロとこぼれた。


『うわーんッ!!』

 ニックが泣きながら母にしがみついた。

 優しく聡明な母。ニックは母が大好きだった。

『あらあら、どうしたの?』

『父様が遊んでくれないよーっ!!』

 母は困り顔でため息をつく。

『仕方ないわね、あのお方は。アイルーン・キングダムに復讐するなんて粗野なことをおっしゃって、毎日毎日あんなことばかりして……。わたくしが何を申しても聞く耳を持たないし』


 ――十年後。ニックは16歳。


『できた……。ついに完成した……。これで憎きアイルーン・キングダムに復讐できるのだ!!』

 新たな核兵器の開発に成功し、それを前にナウロスは高らかに笑った。

『おめでとうございます!! キング!!』

 周囲の男から拍手が起こり祝福される。

 そこへ母が駆けつけた。

『あなた!』

 ナウロスは振り向く。

『おお、よく来た。見てくれ、ついに完成したのだ。これで憎きアイルーン・キングダムに復讐ができる』

 母を見て不敵な笑みを浮かべた。

『そんな……。まだそんなことをおっしゃっているのですか! お願いだからおやめください!』

『うるさい!! わしのやることにいちいち口出しするな!! おまえなんかにわしのアイルーン・キングダムへ対する恨みがわかってたまるか!!』

『わかりません! ですが復讐なんて、こんな物をアイルーン・キングダムへ撃ち込むなんておやめください!』

『黙れ! 黙らんと撃つぞ』

 足に装着している機関銃を手にして銃口を母に向けるナウロス。

『あなた!』

『!!』

 その様子を物陰から見ていたニックが目を見開いた。

『そんな物でわたくしはひるみません! 絶対に復讐なんてさせませんから!』

『フン、強がりおって。命は惜しいだろう? ここで誓え。もうわしに刃向かわんと』

『嫌です!』

『この!!』

 ナウロスが機関銃で母を射撃した。無数の弾丸が母を撃ち抜く。

『かッ!! 母様ァ――ッッ!!!』

 顔面蒼白になったニックが母に駆け寄った。

 倒れた母の純白のドレスは真っ赤に染まり床に鮮血が広がる。

 母の無惨な姿にニックは震えながら膝を付く。

『母様……。母様……!』

『ニック、いたのか』

『どうして母様をッ!!』

 涙の溢れた目でナウロスを睨みつけた。

『フン。わしのすることに刃向かう者は、たとえ妃であろうともこうなるのだよ』

『ニック……』

『え?』

 かすかな声に気づきニックは母に目を向ける。

 母は血まみれの手を震わせながらニックに伸ばした。

『母様っ』

 しっかりと母の手を握る。氷のように冷たい。

『チッ、まだ生きとったのか』

 不愉快になったナウロスが舌打ちした。

『ニック……。父様を…止めて……。復…讐……なんて……ダメ……』

 血の気の失せた顔で唇をわずかに動かし、かすれた声で言う母にニックの涙は止まらない。

『母様……』

『そうなってまでまだそんなことを。ニックはわしの言うことを聞くに決まっとる。わしに逆らうはずがない。そうだろう? ニック』

 ナウロスがニックをギロッと見た。その目はとてつもなく迫力があり恐ろしかった。

 息を引き取る母。

『母様ァァ――!!』



「あのキングが……。なんてザンコクなの」

 ルヴィアにますます怒りが募った。

「僕は父様が許せませんでした。大好きだった母様を平気で殺した父様が。憎かった。だけど僕は逆らえなかったのです……。僕にそんな勇気はありませんでした。そして……」



 続ニックの回想。


 キングの間。

『ニックよ。あの憎きアイルーン・キングダムのプリンセスが結婚をするそうだ。だがさせるわけにはいかぬ。プリンセスはおまえと結婚をするのだ。そして魔法の力を機械に取り入れ、さらに我々の機械文明を発展させる。素晴らしいだろう?』

 アイルーン・キングダムから届いたルヴィアとランディの結婚式の招待状を手にしたナウロスが不気味に笑った。

『ですけど僕と結婚をさせるって、一体どうするのです?』

『よいか。とりあえずは結婚式に出席するつもりでアイルーン・キングダムへ乗り込む。そして銃兵器で脅し、プリンセスに近づきさらうのだ。魔法など我々には通用せぬ。軟弱な兵士共など銃には足元にも及ばぬだろう。マックスの悔しがる顔が目に浮かぶわ。そしてキングダムから去り際に核を撃ち込む。これで完璧だ。アイルーン・キングダムを滅ぼし、ついに我がオズフェウス・キングダムが天下を取るのだ。せいぜい今の内に楽しんでおくのだな』

 豪快に笑うのだった。

 そんなナウロスにニックは声も出ず呆然とした。



「なんですってッ!!? そんなコトをスデにたくらんでたのッ!!?」

「そうです……。僕はあの時言葉も出ませんでした。父様が恐ろしかった。僕は父様に従うしかなかったのです。あとで父様はあなた方の結婚式が急に取り消しになったと知り、乗り込むチャンスを失い悔しがっていました。そして昨日、あなた方のほうからこちらへいらっしゃると知り父様は思う壺だと……」

 ルヴィアは怒りで体をワナワナと震わせる。

「ゆるせない……。ゼッタイにゆるせないわッ!!」

「僕ももう我慢できません。母様の仇を討ってあげたい。相撃ちになってでも。ありがとうございますルヴィア王女。あなたのおかげで僕にもやっと勇気が湧きました。あなたは無事にキャッスルから出してさしあげましょう」

「ダメよアイウチなんてッ!! アンタをあんなヤツに殺させやしないわッ!!」

「……ルヴィア王女、僕を憎んでいたのでは?」

「アンタはなにもわるくないわ。キングにリヨーされてただけなのよ。ワルイのはアイツだけよッ! アイルーン・キングダムはこのあたしがゼッタイまもってみせる。あたしもキョーリョクするわ。いっしょにやっつけましょッ!?」

「お気持ちはありがたいのですが、あなたを巻き込むわけにはいきません。僕の分まで生きてください。あなたにはフィアンセだっているではないですか」

「もージューブン巻きこまれてるわよ。だったらサイゴまでつきあわせてもらうわ」

 ルヴィアの言葉にニックは心打たれる。

 女性なのに勇敢で、弱い部分を一切見せないルヴィア。憧れに近い感情が芽生える。

「……ルヴィア王女、あなたは本当にお強いですね。うらやましい。僕もあなたのように強く生きてみたかった。僕が本当に必要なのは、あなたのような方かもしれません」

 ニックが見つめるとルヴィアは頬を赤らめる。

「や、やーねぇ。照れんじゃないっ」

 ニックをバシッと叩いた。

 これさえなければ、とニックは冷や汗を垂らす。

 ルヴィアは深刻な表情で考え込む。

 大見得をきったが2人では絶対に不利だ。どうしよう……。

 そうだ、レーシアの『プロテクション』がある。

 ひらめきニックに顔を向ける。

「ニック王子っ! エッ!?」

 驚きソファーから転げ落ちるルヴィア。ニックが上半身裸だったからだ。

「どうしたのです?」

 尋ねたニックにルヴィアは冷や汗を垂らして起き上がる。

「どーしたじゃないわよッ!! ナニしてんのッ!!?」

 ニックは頬を赤らめルヴィアの前で四つんばいになり迫る。

「死ぬ前に、最後にあなたと結ばれたいのです」

 それを聞いたルヴィアの顔が青ざめる。

「はあッ!!? ナニ言ってんのよッ!!」

「お願いします。死ぬ前に僕を慰めてくださいよ」

 ニックが悲しそうに言ったがルヴィアは立ち上がる。

「ヘーキよ、死ななくてすむわ。1度キャッスル出てレーシアとランディにゴーリューすんのよ」

「合流してどうするのです?」

「見たでしょっ? レーシアは法術『プロテクション』が使えんの。それ使えばもーアンシンよっ!」

「なるほど……。でもお待ちください。父様は今まで魔法に勝つための核兵器を開発していたのです。もしかしたら魔法ではガードできないかもしれません」

「エッ!? そッ、それじゃどーしたらいーの」

「ですから、やはりルヴィア王女はキャッスルから出るべきです。これは僕が1人で決着をつけますから」

 それを聞いたルヴィアは弾かれたようにニックを見る。

「それはヤッ!! あたしだってあのキングちょームカついてんのよッ!! こらしめてやんないと気ィすまないわッ!!」

「ルヴィア王女」

「きっとなんとかなるわ。まだ死ぬって決まったワケじゃない。あきらめちゃったら終わりよ。あたし達はゼッタイ勝つっ!!」

 凛とした表情でルヴィアが言った。

 そんなルヴィアにニックは思う。

 ルヴィア王女、あなたはなんて素晴らしいお方なのでしょう。

 胸に熱い想いが込み上げ鼓動が高鳴る。

「さーてそーと決まれば急ぎましょ? とりあえずドレスじゃ動きにくいから着がえなくっちゃ」

 ルヴィアはクリスタル・ブレスレットからコスチューム一式を出しニックに背を向け後ろ髪を肩から前に流す。

「ファスナー下げてー?」

「あ、はい」

 ニックはルヴィアの色っぽいうなじに注目しながらファスナーを下ろす。

「サンキュー、それじゃむこー…」

 途端にドレスの上半身が脱がされる。

「キャッ!!」

 突然の事にルヴィアが驚いた。

 ニックはルヴィアをソファーに押し倒して体を重ねる。

「ヤァーッッ!!! ナニすんのよッ!! やめてッ!!」

 抵抗するルヴィアをニックは体で押さえつけて熱い視線で見つめる。

「僕、やはりあなたのことを愛しています。あなたがどうしても欲しいのです」

「ヤダッ!! やめないとブッ飛ばすわよッ!!」

 それを聞いたニックはビビリ慌ててルヴィアから降りる。

「すッ! すいませんッ!」

「もーッ!! エッチ!!」

 ルヴィアがキッと睨んで起き上がる。

「むこー向いててよッ!!」

「はいッ!!」

 背を向けるニックだが、そーっと振り返る。だがルヴィアにはバレバレで睨まれる。

「見てんじゃないわよッ!!」

「ハイッ!!」



 ルヴィアは着替えを済ませた。

「ジュンビオッケーっ♪」

 一方ニックはルヴィアを切なそうに見つめていた。

「ルヴィア王女」

「なに?」

「ベーゼだけでよろしいので、せめてもう1度……」

「イヤッ!! アンタもかなりのエッチねッ!!」

 ルヴィアがもの凄い形相で睨みつけるとニックはシュンとする。

「あっ、そーだわ。レーシアにテレパシー送んないと」



(レーシアッ!)

 樹の陰で待機していたレーシアにルヴィアからテレパシーが届いて顔を上げる。

(お姉さま! 無事!?)

(トーゼンよっ! 今ドコにいんの?)

(門の外の側にある樹の下にいるわ)

(オッケーわかったわ。今すぐ行くからっ!)

 レーシアは喜びランディに伝える。

「ランディさん! お姉さまが来ますよ!」

 それを聞いたランディの表情が明るくなる。

「えっ!? 本当にっ!?」



 ニックの部屋。

「ニック王子。『レビテイト』で空飛んでくからつかまって」

 大きな窓の近くでルヴィアが片手を差し出した。

「まッ! まさかこの窓からッ!?」

 冷や汗をかいたニックが窓から見下ろした。かなり高く風がビュオーと吹いている。

「そーよ」

「危ないですよッ!! 落ちたらどうするのですッ!!」

「だから落ちないよーにしっかりつかまってよ」

「そ、そんな……。やはり門から出ましょう。そのほうが安全ですよ」

「んなメンドイコトしてらんないわ。サッサと行くわよっ!」

 ルヴィアがニックの腕を掴む。

「やッ!! やめてくださいッ!! ここで死にたくありませーんッ!!」

「あたしが離さないからダイジョーブ」

「でもこわいですッ!!」

 臆病なニックにルヴィアは呆れる。

「男のクセに情けないわねー。やっぱ男らしくないじゃない。じゃー抱えてってあげましょーか」

「それは格好悪いです」

 ニックが冷静に言うとルヴィアの額に青筋が立つ。

「もージレッたいわねッ!! だったらあたしの腰にでもしがみついてなさいよッ!!」

 それを聞いたニックは嬉しそうに瞳を輝かせる。

「よろしいのですかっ!?」

「ヤダけどしかたないわ。はやくして」

「それでは」

 おもむろにルヴィアの背後で膝を付く。

「……ニック王子? なにしてんの?」

 しがみつかないニックにルヴィアが腰をひねって見た。

「ナイスなヒップをしてらっしゃいますよね」

 観賞しながらニックがルヴィアの尻を撫でた。

「ヒィッ!」

 ゾッとして鳥肌の立つルヴィア。


☆★ 蹴 ★☆


「ニック王子ィ〜〜。セクハラはやめてくれるゥ〜〜!?」

 額に怒りの青筋を立てたルヴィアが倒れているニックをヒールで踏み付けた。

「すいませんッ! すいませーんッ!!」



 ルヴィアは精霊術『レビテイト』で窓から空へと飛び出した。

「ヒィ〜〜!!」

 ルヴィアの腰にしがみついているニックが恐怖で足をバタつかせる。

「チョット!! アブナイからあばれないほうがいーわよッ!!」

「そんなことをおっしゃいましてもーッ!!」

 必死のニックがルヴィアの胸を掴んだ。

「キャアッ!!」

 精霊術が解け2人は落下する。

「キャァァ――ッッ!!!」

「ウワァァ――ッッ!!!」

 高速で流れる景色ともの凄い風の音。

「『レビテイト』ッ!!」

 ルヴィアがの体が淡く輝き風をまとって宙に浮く。

「……あ、危なかったですね……」

 腰にしがみついたまま恐怖で息の上がったニックが言った。


☆★ 殴 ★☆


 ニックの頭に大きなタンコブができ、目から大粒の涙がこぼれルヴィアの腰から腕を離す。

 再び落下する。

「ウワァァ――ッッ!!!」

 無言でルヴィアはスッ飛ばしニックの腕を掴む。

「ル、ルヴィア王女ォーッ! 冗談はおやめくださいッ! 心臓が止まるかと思いましたよッ!」

 涙目のニックがガタガタと震えながら見上げるとルヴィアは怒りを噴騰させていた。

「アンタのせいでしょーがッ!! いきなりドコつかんでんのよヘンタイッ!!」

「わざとではありませんッ!!」



「ルヴィア遅いなぁ」

「そうですね。何かあったのかしら」

 ランディとレーシアが不安そうに言った。

 ふと空を見上げたレーシアはルヴィアを発見する。

「あっ! 来ましたよ!」

 指差すとランディも見上げる。

「本当だっ! んっ!? あれはッ!!」

 ルヴィアに腕を掴まれているニックに気づいた。

 2人の前にルヴィアは着地する。

「おまたせ」

「ルヴィアッ!! なんでコイツと一緒にッ!!?」

 地面に膝を付きホッと一息ついているニックをランディが指差した。

「いっしょにキングやっつけんのよ」

「はあッ!?」

 意味不明なルヴィアの発言に顔をしかめた。

 ニックは立ち上がる。

「フッ、訳ありで今は皆さんの味方です。ご安心を」

「そーなのよ」

「どういうわけか説明しろよ」

 ムスッとして尋ねるランディをニックは睨む。

「それがこの僕にものを伺う態度ですか?」

「うるさいなッ!!」

「教えてくださいませんか?」

 レーシアが尋ねるとニックは前髪を掻き上げて格好つける。

「フッ、いいでしょう」

「アンタねェ」

「コイツ気に入らない。最初から気に入らなかったが」

 冷や汗を垂らすルヴィアと睨むランディ。

「父様に殺された母様の仇を討つのです」

「仇、ですか?」

 レーシアが尋ねた。

「実は僕はずっと父様を恨んでいたのです。ですが父様が恐ろしくて逆らえなかった。そんな僕にルヴィア王女は勇気を与えてくれたのです」

 瞳を輝かせて語るニック。

「それなら私も協力します」

「ありがとうございます、レーシア王女」

「うさんくさいな。何か企んでるんじゃないか?」

 ランディが1人疑りの目をニックに向ける。

「失礼な。僕は父様を始末し、ルヴィア王女を僕のものにすることしか考えておりません」

 ニックが冷静に言うとランディの額に青筋が立つ。

「なんだとォッ!!? ルヴィアは僕のだと言ってるだろうがッ!!」

「フンッ! しつこいな君も。見苦しいったらありません。君、自分のルックスをわかっているのかい? ルヴィア王女に君がふさわしいとは百歩ゆずっても思えませんね」

「何ィッ!!?」

「この僕の完璧なルックス! ルヴィア王女にふさわしいのは、全世界を捜してもこの僕しかいないでしょう」

 格好つけるニックにルヴィアとランディは冷や汗を垂らす。

「君がどうあがいてもこの僕の完璧さにはかなうはずがない。差が歴然すぎるのです。僕のライバルにさえもなれないのですよ」

「何言ってるんだ。僕より背が低いくせに」

 ランディがポツリと言うとニックはムッとする。

「こッ! これから伸びるのですッ!!」

 どうやらランディより身長が低い事が気に入らないようだ。

「それにルヴィアのことをさんざん悪く言っといてどういう心境の変化なんだよ?」

「あっ! そーよ」

 ランディの言葉にルヴィアもニックを見る。

「ルヴィア王女の意志の強さに惚れ直したのです。僕にはルヴィア王女のようなレディーが必要だと確信したのですよ」

「だからってルヴィアがおまえのことを好きになるはずないからなッ!! さっさと諦めろよッ!!」

 ランディが言い放ったがニックは余裕の表情だ。

「どうでしょう? ルヴィア王女は僕のことをお好きですよ。せめて君以上はね」

「なんだとッ!!?」

 聞き捨てならない様子のランディ。

「ルヴィアッ!! コイツのことなんて嫌いだろッ!!? コイツとんでもない悪だったじゃないかッ!! 僕達のことを殺そうとしたしなッ!!」

「えっ」

 ランディに尋ねられルヴィアは戸惑いながらニックを見る。

 ニックはルヴィアを見つめていた。その目はうれいを帯びて淋しそうだ。

「ニック王子……」

「ルヴィア王女、僕のことお嫌いですか?」

「……そんなコト、ないわよ」

 思わず言ってしまった。

「エッ!!?」

 信じられないのはランディだ。

「どうしてだよッ!!」

「では、お好きですか?」

 ニックの問いにルヴィアは冷や汗を垂らす。

「なんでそーなんのよッ!」

「嫌いじゃないなら好きでしょう?」

「ナニ言ってんのよッ!! アンタかなりエッチだし好きじゃないわッ!!」

「そんなッ!」

 ニックがガビーンとショックを受けた。それを聞いたランディはホッとする。

「ねー、とにかくはやいとこケッチャクつけに行かない?」

「そうですね。早く父様を始末し2人きりの甘い時間を過ごしましょう」

 めげずに言うニックにランディは目くじらを立てて怒り狂う。

「させるかッ!!」



 こうしてキャッスルの門へ向かうルヴィア達とニックだった。



【TALE32:END】

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