TALE22:ランディのバースデー
「なぁルヴィア。明日はなんの日か、ちゃんとわかってるよな?」
レストランでもの凄い勢いで料理をたいらげるルヴィアにランディが尋ねた。
「え? なに?」
「……明日、何月何日かわかってるか?」
「わかんない」
「やっぱりな」
相変わらずの無知さに、ため息をつくランディ。ルヴィアはムッとする。
「ナニよッ!」
「明日は10月13日だよ。これで明日はなんの日かわかったろ?」
「10月13日? え〜〜? なんだったかしら。レーシア、なんの日か知ってる?」
「え……」
ルヴィアに尋ねられレーシアは困り顔でランディをチラっと見た。
「ルヴィアッ!! わからないのかよッ!!」
「わかんないからレーシアに聞いたのよ」
それを聞いたランディはショックを受けた。
悲しくなり、うつむく。
「そんな……。いくらルヴィアでも憶えててくれてるって思ったのに、酷すぎるよッ!!」
テーブルをバンッと叩き立ち上がる。
「なんなのよッ!! いったいなんの日なのッ!!?」
「もういいよッ!!」
怒ったランディはレストランを出ていってしまった。
「ランディさん……」
「ナニ? アイツ」
訳の解らないルヴィアが呟いた。
頭に来たレーシアは急に強気になる。
「お姉さま、本当にわからないの!?」
「えっ、ねーなんの日なの?」
相変わらず何も解っていないルヴィアにレーシアはため息をつく。
「あのねぇ、明日はランディさんのバースデーよ」
「あっ! そーかぁ、忘れてたわ」
「もう、酷いわね。ランディさんがかわいそうよ。ちゃんと謝ってあげて」
レーシアがそう言うとルヴィアはめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。
「エエーッ!!? あやまんのーッ!!? あたしがーッ!!?」
「謝りなさい!!」
「……わかったわよ」
なんであたしが。
思いっきり不満そうな表情でルヴィアはランディの部屋に向かった。
別にランディのバースデーを知らなかった訳じゃない。たまたま忘れていただけだ。
ドアをノックするとランディが開けた。
「なんだよ」
不機嫌そうにムスッとしてルヴィアを見る。
「まだ怒ってんのね。明日なんの日かわかったわよ。ランディのバースデーね?」
「……自分で思い出したのか? レーシアちゃんに聞いたんじゃないだろうな」
ルヴィアはギクッとして無理に微笑む。
「やーねェ、ちゃんと思い出したわよ。アンタとなん年いっしょにいると思ってんの」
脂汗をかいて言ったがランディは信用したようだ。
「そうだよな。僕達ずーっと一緒だもんな」
単純。
「ねー、なんか欲しーモノとかある? 言ってみなさいよ」
ルヴィアの思いがけない言葉にランディは目をパチクリさせる。
「プレゼントくれるのか?」
「ん……。うん、まぁ……」
お詫びにと考えたらしい。
「ルヴィアっ! 僕嬉しいよっ!」
感激してジーンとするランディ。
「それで? なに欲しーのよ」
「え、えっとね……」
指で頬を掻き顔を赤らめる。
「んっ?」
「…………」
意味ありげな視線でジッと見つめるランディにルヴィアは嫌な予感がしてゾクッとした。
「アンタ、ヘンなコト考えてたら殺すわよ」
ルヴィアが牙を剥き出すとランディは冷や汗をかきたじろぐ。
「うッ……」
「もーいーわッ!! アンタはロクなコト言わないからッ!! あたしが考えるッ!! じゃーねおやすみ」
そう言いルヴィアは自分の部屋へ向かった。
「あ……」
ランディはルヴィアの後ろ姿を見つめてドキドキした。
何をくれるんだろう。
期待に胸を膨らませるランディだった。
ルヴィアとレーシアの部屋。
「ランディさんにちゃんと謝れた?」
戻ってきたルヴィアにレーシアが尋ねた。
「あやまったってゆーか、仲なおりはしたわ」
「そう、よかったわね」
「レーシアなにプレゼントすんの? モチロンあげるわよね」
「エッ!!」
唐突なルヴィアの問いにレーシアの顔が赤くなる。
「た、たいした物じゃないわ」
「ウソォ。なによ、見せてよ」
「ダメよ、もうラッピングをしちゃったから」
「えー」
次の日。
朝早くレーシアはランディの部屋のドアをノックした。
ランディがドアを開ける。
「あ、レーシアちゃん。おはよう」
「ランディさん。おはようございます」
赤い顔を隠すようにうつむいて挨拶するレーシア。両手を腰の後ろに回している。
「どうしたの?」
「あの! バースデーおめでとうございます!」
後ろ手で持っていたプレゼントを差し出した。
「えっ! わ、ありがとう」
ランディは驚きながらプレゼントを受け取った。
「いいえ」
「開けてみてもいいかな?」
「は、はい……」
ランディはテーブルでプレゼントを開けた。
色とりどりのフルーツがタップリ乗ったとてもおいしそうなケーキだ。ケーキの中央に『Happy Birthday』と書かれたチョコがある。
「わあっ! すごい。おいしそうだなー。これ、まさかレーシアちゃんの手作り?」
「はい……」
顔を赤らめたレーシアが答えた。
彼女は料理も得意だが、お菓子作りも大得意だ。
「ありがとう、あとでゆっくりいただくよ」
ランディが笑顔で言うとレーシアは慌てる。
「あ、あの! お姉さまには内緒にしてくださいね」
「えっ? あ、うん。わかった」
何故か解らなかったが、うなずくランディだった。
「…………」
冷や汗を垂らすランディ。
ルヴィアが食事をしながら寝入っているからだ。
「もう、お姉さま! 行儀がよくないわよ!」
レーシアが注意するとルヴィアは目を覚ます。
「あ、ゴメン。なんかまだ寝たんないみたいで、グー……」
言いながら再び眠り込むルヴィアだった。
レストランを出たルヴィアはウトウトしながらホテルの廊下を歩く。
そんなルヴィアにランディは次第にイライラし始める。
「ちょっとお姉さま!」
立ち止まり眠ってしまったルヴィアの背中をレーシアが支えた。
「あーもー眠い……。もーチョット寝よ」
ルヴィアがウトウトしながら部屋の鍵を開けた。
「レーシアちゃん、ごめん。待てルヴィアッ!! ちょっと来いッ!!」
部屋に入ろうとしたルヴィアの腕をランディが掴み、自分の部屋に連れ込んだ。
ランディの部屋。
「なぁルヴィア、僕もう待ちきれないんだけどっ!!」
「……なにが?」
トロンとした目のルヴィアがウトウトしながら尋ねると、ランディはジレったさで両腕をブンブン振る。
「だ・か・らっ、プレゼントだよっ!! プレゼントっ!!」
「なんのプレゼント?」
「〜〜〜〜」
ルヴィアの態度についに噴火する。
「あのなァーッ!!! 今日は僕のバースデーだろォッ!!」
「あっ! そーだったわね。おめでと」
パチッと目を覚まして笑顔で言うルヴィアにランディは気が抜ける。
「……うん。で、プレゼント……」
「もーセッカチねェ。あっ! そーいえばレーシアからもらった!?」
「ん、ああ」
ハッとするランディ。
『お姉さまには内緒にしてくださいね』
レーシアに言われた言葉を思い出した。
「いやっ! もらってないよ」
ごまかす。
「ウソ、そんなハズないわよ。なにもらったの?」
「本当にもらってないって!!」
「……イジでもシラきる気ねェ。だったらいーわよ。あたし気が変わったわ。プレゼントなしね」
ドアに向かうルヴィアにランディは慌てる。
「わァーッ!! 待った待ったッ!!」
「きゃーっ♪ おいしそーっ♪」
ケーキを見て声を上げるルヴィア。
ランディは悪いと思いながらもレーシアからプレゼントされたケーキをルヴィアに見せてしまった。
「ねー? 食べていー?」
「だっ、ダメだよ。レーシアちゃんが僕にってくれたんだから」
「ケチッ! もーいーわ。もどって寝よ」
「あーッ!! わかったわかったッ!!」
再びドアに向かったルヴィアを引き止めた。
「おいしーっ♪♪」
1/4程カットしたケーキをフォークで頬ばったルヴィアが満面の笑顔で言う。
本っ当にごめん。
レーシアに心で謝るランディ。
「コレ、ランディにあげちゃうのもったいないわ。ゼンブあたしにちょーだい?」
それを聞いたランディは冷や汗を垂らす。
「そ、それはいくらなんでも……」
「あらそぉ」
立ち上がったルヴィアにランディは呆れる。
「あのなァ、わがまますぎるぞ」
「やーねェ、ジョーダンよ。いくらあたしでもそこまでしないわよ」
「どうだか……」
聞こえないように小声でランディがボソッと呟いたがルヴィアはギロッと睨む。
「ナーニ?」
「いえッ! なんでもッ!」
「じゃープレゼントあげるわ。目ェ閉じて」
ルヴィアがそう言うとランディは嫌な予感がする。
「ま、まさか目を閉じた瞬間、殴るとかじゃあないだろうなッ!?」
「えっ!? あ、あらよくわかったわねェ。そのとおりよ。日ごろのウラミこのコブシにこめてねッ」
拳をグッと握ったルヴィアにランディはビビリ怯えながら両腕をクロスさせて顔を覆った。
「やッ! やめてくれよォーッ!! バースデーにまでそんなもの欲しくないよォーッ!!」
それを見たルヴィアはランディのあまりのリアクションに呆れて冷や汗を垂らす。
「ジョーダンよ」
「……殴らないのか?」
恐る恐る腕をどけるランディ。
「そんなコトしないわよ。ほら、目ェ閉じて」
ランディはビクビクと怯えながら目を閉じた。冷や汗をかき口元は何故か力んでいる。
そんなランディの頬にルヴィアはキスをした。
「!?」
ビックリしたようにランディが目を開けるとルヴィアは頬を赤らめて背を向ける。
「ルヴィア……。今の」
「ちょーサービスしてあげたんだから、ありがたく思いなさいよねっ!」
「う、うん……。でもどうせだったら唇にしてくれたほうが」
懲りないランディの一言にルヴィアは目をピカーと光らせ肩越しに振り返る。
「チョーシのんじゃないわよ……?」
「はい……」
ビビリつつ言うランディだった。
ルヴィアとレーシアの部屋。
「レーシア、プレゼントってケーキだったのね」
戻ったルヴィアが読書をしているレーシアに声をかけた。
レ−シアは驚いてルヴィアを見る。
「エッ!? どうして知っているの!? ランディさん、言っちゃったのね……」
悲しそうに呟いた。
ルヴィアはニヤニヤしながらレーシアの向かいのソファーに座る。
「ウフフ。アレ手作りなんでしょ? スゴイわね。ドコで作ったのよ?」
「……ここのホテルのキッチンを貸してもらったの」
シブシブ答えるレーシア。
「へー、そこまでして。やっぱ愛こもってるとちがうわねェ」
ルヴィアがそう言うとレーシアの顔が真っ赤になる。
「そッ! そんなのじゃないわよ!! 愛なんてそんなっ。私はただ、いつもお世話になっているからそれだけでっ」
正直なコ……。
ルヴィアが冷や汗を垂らした。
「もー今さらかくすコトないじゃない」
「えっ?」
「好きなんでしょ? ランディのコト。あんた見てればわかるわよ。ただ本人はちーっとも気づいてないよーだけど」
「……いいのよ別に。ランディさんはお姉さまのことが好きなんだから」
「あんた、まさかあたしにシットしてたりする?」
レーシアに不安そうに尋ねた。
「え、ううん、そんなことないわ。私はお姉さまとランディさんに仲よくなってもらいたいから。ねぇ、どうしてお姉さまはランディさんのことを嫌っているの?」
「エッ!!」
唐突なレーシアの問いにルヴィアはうろたえる。
「アイツ、結婚結婚てシツコイし、ちょーヘンタイだからよ」
「へ、変態って失礼じゃない」
「だってヘンタイなんだもんッ!!」
「どういうところがよ!!」
レーシアがムッとして言うとルヴィアは困り顔になる。
「……うーん……。レーシアに言っていーのかしら」
「教えて、お姉さま」
「……わかったわ。アイツね、ムカシっからちょーエッチで……。人のいるトコじゃしてこないけど、ふたりっきりだとちがうのよ。あたしそんな気ないのにゴーインにムリヤリしてきて、なんどもヤな目にあわされてきたの。そんなコトされたらキライになるに決まってんでしょッ!?」
「そうだったの……。ランディさんが……」
「アイツ見る目変わった?」
「ううん、だって仕方ないと思うわ。お姉さまのことを本当に愛しているからなのよ。ランディさんは好きでもない人に、そんなことをする人じゃないと思うの」
それを聞いたルヴィアはイヤーな顔をする。
「エ〜〜? だけどね、あたしアイツのコト、キライッたら大キライッ!! このキモチ変わるコトないわ。どーせならあんたとランディにうまくいってほしーのよ。そーよ、ふたりちょーお似あいだもんっ!」
ルヴィアの発言にレーシアの顔が真っ赤になる。
「何言っているのよお姉さま!!」
「好きだったら両想いになんなくっちゃ! あたしキョーリョクしてあげるっ!」
張りきってルヴィアがウィンクした。
ルヴィアは早速行動に移した。
レーシアの手を引きランディの部屋へ向かう。
「お姉さま!! やっぱりいいわよ!!」
顔が真っ赤なレーシア。
「いーからッ」
そう言いルヴィアはドアをノックする。
ランディがドアを開けた。
「おっ? ルヴィア、レーシアちゃん。どうした?」
「今日からアンタとレーシアいっしょの部屋よ。仲よくしなさいよねっ」
ルヴィアがレーシアの背中を押して強引に部屋に入れた。ランディはビックリする。
「エッ!?」
「バ〜イ」
ウィンクして手を振りながらルヴィアは立ち去った。
「ど、どうしたんだっ? 急に」
ランディが尋ねたがレーシアはうつむいていた。
「ご迷惑ですよね! 戻りますから」
ドアに向くとハッとする。
『い〜い? こっちもどってくんじゃないわよォ〜〜』
先程ルヴィアに恐ろしい形相で忠告された事を思い出した。
「す、すいません! ご一緒してもよろしいでしょうか!」
勇気を出して言った。
「別にいいけど、どうして?」
ランディが尋ねるとレーシアは脂汗をかいて理由を考える。
「え、ええと……。お姉さまが、これからは1人部屋がいいと……」
「そうなんだ」
ルヴィアの部屋。
「んーっ! ひとり部屋なんて、なんか久しぶりな気ィするわーっ!」
ルヴィアが笑顔で勢い良くベッドに転がった。スプリングでベッドが弾む。
ランディとレーシアがうまくいってくれればこれ程いい事はない。我ながらいい考えだ。
だってそうなれば鬱陶しいランディは自分に寄り付かなくなるし、可愛い妹も幸せになるし。うん最高。
なんて事を考えていると睡魔が襲ってきた。
止める理由はなく、ルヴィアはそのまま眠りにつく。
ランディとレーシアの部屋。
気恥ずかしくてレーシアはランディを見れない。
会話をする訳でもなく、ただ沈黙が流れている。こんな空気でいるのは正直辛い。
「……あの、ランディさん。退屈でしたら、お姉さまのお部屋に遊びに行かれたらどうでしょうか……」
「え。じゃあ、そうしてもいいかな?」
レーシアの言葉に甘えるようにベッドに横たわっていたランディは起き上がった。
部屋を出ていくとレーシアは一息つく。
2人きりだと緊張してしまう。
ランディの事は好きだが、こんな事は望んでいなかった。
結局こうしてしまっては意味がない。
ルヴィアの部屋。
ランディはドアをノックした。だが応答がない。
居ないのか? と思ったがドアノブを回してみると開いていた。
そーっと開けて覗いてみるとルヴィアのお約束のイビキ音が聞こえた。
「なんだ寝てたのか」
部屋に入りベッドで寝ているルヴィアに歩み寄る。
ルヴィアはすっかり熟睡中だ。
そんなルヴィアの寝顔をジーっと見つめる。大口を開けて寝ていてもやっぱり可愛いと思ってしまう。
体に視線が移り見つめていると今度はムラムラと気持ちが高ぶり始める。
ダメだ。いくらなんでも寝込みを襲うなんて最低だ。
ランディが両手で頭を抱える。
……でも、少し前まではルヴィアと毎日愛し合っていた。今とても淋しい。
切なくなり、ため息をつく。
ついに理性が負けてしまった。
ここからランディとレーシアの行動は同時進行。
《ランディの行動》
ブーツを脱ぐ。
顔を赤らめドキドキしながらゆっくりベッドに乗る。
ルヴィアに体を重ねる。
唇を重ねる。
《レーシアの行動》
読書をしようと思ったレーシアは荷物がルヴィアの部屋にある事に気づきソファーから立ち上がる。
部屋を出てルヴィアの部屋へ向かう。
ドアをノックする。
ランディはノックの音にビクッと反応して顔を上げた。
レーシアはドアを開ける。
「お姉さまー、ちょっといい?」
部屋に入るとランディがルヴィアの上で四つんばいになっている姿を目撃してしまい愕然とする。
「キャァァ――――!!!!!」
絶叫し慌てて部屋を出た。
真っ赤な顔で壁に寄りかかり鼓動を静める。
今のは何?
ドアが開きランディが出てきた。
「レーシアちゃんっ!!」
「ランディさんっ」
ルヴィアの部屋。
「…ん……。ナニよウルサイわねー」
レーシアの叫び声でルヴィアが目を覚ました。
起き上がるとベッドの脇にあるランディのブーツに気づく。
「……え? ダレのコレ……。まさかーッ!!」
寝ぼけまなこを見開いた。
「レーシアちゃんっ!! 今の、見なかったことにしてくれぇっ!!」
真っ赤な顔のランディが両手を合わせて懇願した。
「それはかまいませんけど?」
突然ドアが勢い良くバーンッと開きランディとレーシアはビクッとすくむ。
ルヴィアが出てきた。
ランディを見て、もの凄く恐ろしい形相になる。
「ル、ルヴィア……」
ランディだけじゃなくレーシアまで顔から血の気がサーっと引いた。
「ランディ〜〜」
ルヴィアがもの凄い勢いでランディの腕を引き部屋に連れ込んだ。
「ウワァ――ッ!!」
うつ伏せに床に滑り込むランディ。
ルヴィアはランディの後頭部にブーツを投げつけた。
ヒールでランディの背中を踏み付ける。
「くォのーッッ!!! あたしが寝てんのいーコトに寝こみおそうなんてッ!! とんでもないヤツだわッ!! あたしもウカツだったわよ、ベッドにヨコんなったらつい寝ちゃって」
ランディの背中に勢い良く横向きに座り込む。
「うッ!」
「あたしにナニしたのッ!!? ハクジョーしなさいッ!!」
「き、キスだけっ」
「ホカにはッ!!?」
「してないっ!」
ランディが正直に答えたがルヴィアは信じない。
首にヘッドロックをかけギリギリと絞める。
「ウソつくんじゃないわよォ〜〜。アンタがそれだけのハズないでしょォ〜〜?」
「ぐッ! ぐるじッ……! 首が……」
「ハクジョーしなさいよォ〜〜」
「お姉さまやめて!!」
「え?」
ヘッドロックを解除して振り向くとレーシアが居た。
「レーシア」
レーシアはランディに駆け寄る。
「大丈夫ですか!? ランディさん!」
「た、助かったよ。レーシアちゃん……」
青ざめた顔でグッタリしているランディ。
ルヴィアは立ち上がる。
「出てってッ!! アンタの顔なんてもー2度と見たくないわッ!!」
「…………」
ランディは無言で立ち上がる。
「……ごめん」
ブーツを持って部屋を出ていった。
「これであんたにもわかったでしょッ!!? アイツのホンショーがッ!! アイツあたしのキモチどーでもいーのッ!! あたしのカラダだけなのよッ!!」
「お姉さま……。それは絶対に違うと思うわ」
「じゃーどーしてアイツこんなコトすんのよッ!!」
ルヴィアがレーシアを見た。
「ランディさん、前に言っていたわ。お姉さまのことを大切に思っているのに気持ちを抑えきれないって……。ランディさんはお姉さまのことを大切に思っているのよ?」
「タイセツに思ってんなら、どーしてあたしのイヤがるコトばっかすんのよ」
「お姉さまのことを本当に愛しているから、体にも触れたいんじゃないかしら」
レーシアの発言にルヴィアは驚く。
「なッ!! なんであんたにそんなコトわかんのよッ!! あたしわかんないわッ!! アイツのアタマん中なんてエッチなコトしかないのよッ!! もーヤッ!! アイツなんか大ッキライッッ!!!」
そう言い捨てルヴィアは部屋を飛び出した。
ランディとレーシアの部屋。
レーシアが部屋に戻るとランディはソファーでうつむき肩を落としていた。
「……ランディさん」
「レーシアちゃん……。またルヴィアを傷つけちゃったよ……。本当に僕はバカだな。このままじゃルヴィアはいつになったって僕のことを好きになってくれることはないな……」
自己嫌悪に陥り肩を落としたまま言った。
「ランディさん、お姉さまが部屋を出ていってしまったんです。捜しに行きませんか?」
「ルヴィアに会わせる顔なんてないよッ」
「でも、このままじゃいけませんよね?」
「…………」
それは解っている。でも。
またこんな事をしてしまった自分をルヴィアは許してくれるだろうか。
そうは思えない。だってさっき言っていた。2度と顔も見たくないと。
今までルヴィアに手を出してブッ飛ばされた事は数あれど、そんな事を言われたのは初めてだ。
どうしよう……。今度ばかりは絶体絶命の大ピンチと思うランディだった。
【TALE22:END】
【すれ違う想い編】スタートです。
今回も数話続きます。
お付き合いお願い致します。