TALE20:旅の再開(再会)
次の日。
ある人物がエスタ・タウンに到着した。
「やっと着いた。ここにルヴィアとリッドがいるんだな」
久々登場のランディとレーシアだ。
何故レーシアが居るか?
「それはやっぱりレーシアちゃんがいないと、僕だけじゃルヴィアの説得無理だろうし……」
ランディが深いため息をついた。そういう訳だ。
さて到着したはいいが2人をどうやって捜そう。
レーシアの意見で町長を訪ねる事にした。
「ここがドミニオさんの家なんですね」
エレンティア家を探しだしたランディとレーシアは家を見上げた。
その大きな家にランディは不愉快になる。
「僕の家より大きいじゃないか」
ランディとレーシアは庭を通り家のチャイムを鳴らす。
しばらくしてドミニオとティナの母がドアを開けた。
「はい、あら」
ランディを見て頬を赤らめる。
「すいません、こちらにルヴィアとリッドが来てると思うんですが」
「……綺麗なお嬢さんと坊やかしら」
それを聞いた2人の表情が明るくなる。
「いるんですねっ!? お邪魔しますっ!」
一目散に家に入るランディにレーシアと母は冷や汗を垂らした。
ドミニオの部屋。
ベッドで眠り続けるルヴィアをドミニオは辛そうに見つめる。
両腕の見えている部分は包帯で巻かれている。服の下も同じだろう。
「ルヴィアッ!! どこだっ!!」
廊下からランディの声が聞こえドミニオは驚きの表情で振り向く。
ティナの部屋。
「今の声ッ!!」
ランディの声に反応したリッドがドアを開けた。
そこに居たランディとレーシアが振り向く。
「バカ兄キッ!! レーシア姉ちゃんッ!!」
「リッド!!」
「なんでココにいんだよッ!!」
早速睨みつけるリッド。
「なんでってルヴィアがさらわれたんだ、連れ戻しに決まってるだろ」
「リッド様のお兄様ですか?」
ティナが尋ねた。
「認めたくないけどね」
「初めましてぇ、リッド様の彼女のティナといいまーす」
笑顔で言うティナにランディとレーシアはビックリ仰天する。
「リッドの彼女ォッ!!?」
「ちッ! ちがッ!」
リッドの顔が真っ赤になった。
するとドミニオの部屋のドアが開く。
ランディが振り向きドミニオを見る。
「おまえッ」
「プリンセスなら、こちらに」
既に状況を把握しているドミニオが言った。
ドミニオの部屋。
ランディは眠っているルヴィアに駆け寄る。
「寝てるのか?」
「……オレの親友に強い薬飲まされて、昏睡状態に……」
ドミニオが辛そうに言うとランディは目を見開く。
「なッ!! なんだとッ!!?」
ドミニオの胸ぐらを掴む。
「なんでそんなことになったんだよッ!!」
「バカ兄キやめろッ!!」
リッドがランディに蹴りを入れた。
「デッ!!」
ドミニオを離す。
「スンマセン。オレがワルイんです……」
座り込むドミニオ。酷く落ち込んでいた。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんのせいじゃないわよ」
見かねたティナが励ます。
「レーシアちゃん……」
ランディが困り顔でレーシアを見た。
「どうかわかりませんが、やってみます」
レーシアはルヴィアにアイルーン・ロッドをかざした。
『天の聖なる光よ…我に力を授けたまえ』
アイルーン・ロッドが淡く輝きクリスタルの球が光り輝いた。
「『キュア・ライト』!」
球からキラキラとまばゆい光が溢れルヴィアに降り注ぐ。
皆、注目しているとルヴィアはゆっくり目を開けた。
「ルヴィアっ」
皆の表情が明るくなる。
ルヴィアは起き上がると伸びをした。
「あ〜〜よく寝た」
それを聞いた一同は冷や汗を垂らしてズッコケた。
「えっ。なんでランディとレーシアがいんの」
「ルヴィアを連れ戻しに来たんだよ」
「なんで」
「なんでって僕達結婚するんだろ」
ランディの発言にルヴィアの表情が険しくなる。そんなルヴィアにランディは冷や汗をかき始める。
「えッ……」
「……ヤなコト思い出したわ。アンタよくもあたしをいーよーに……」
ルヴィアが恐ろしい形相でランディを睨みつけた。
「……まさか記憶が……」
ランディの顔から血の気が引く。
「そーよ。おかげさまでもどったわ。カクゴできてんでしょーね」
ベッドから降りて拳をパキパキと鳴らすルヴィア。
「ルヴィア姉ちゃん、やっちまえーっ」
嬉しそうなリッド。
家が揺れた。
1階のリビングルームに居る母と老人がビックリして見上げる。
「プロレスゴッコでもしとるのかのう」
「仲がいいですね」
のんきな2人だった。
ランディはボコボコで倒れていた。
「大丈夫ですかランディさん」
「大丈夫じゃない……」
声をかけたレーシアにランディがうつ伏せで倒れたまま言う。
「ふースッキリした」
「お姉さま、ここまでしなくても」
「フンッ、トーゼンのコトよ。コイツがしたツミは重いのよッ」
「そーだそーだっ! いーキミだぜ」
スカッとしたリッドも言う。
ドミニオに目を向けたルヴィアは腕の包帯に気づく。
「ドムッ! どーしたのソレッ!」
「え、ああ。階段でコケちまって」
笑ってごまかすドミニオ。
「レーシア」
ルヴィアがレーシアを見た。
「わかったわ」
レーシアはドミニオにアイルーン・ロッドをかざした。
『天の聖なる光よ…我に力を授けたまえ』
アイルーン・ロッドが淡く輝きクリスタルの球が光り輝いた。
「『リカバリィ・ライト』!」
球から優しい光が溢れドミニオの全身を包む。
光はスッと消えた。
「……痛みが消えた」
腕の包帯を外してみると傷が消えていて驚く。
「治ってるっ!」
「すごーい!」
ティナも驚いた。
「ありがとーございますっ!」
ドミニオがレーシアにお礼を言った。
「いいえ」
明るい表情だったのも束の間、すぐにドミニオの表情は曇る。
そんなドミニオにルヴィアは疑問を持つ。
「ドム? どーしたのゲンキないわよ」
「いや、別に……」
「どーしたのよ。らしくないわよ」
「……ワリー。ほっといてくんねーか」
うつむき、背を向けるドミニオ。
「あ、みなさん。ティナの部屋にいらっしゃいませんか」
気を利かせたティナが言った。
ティナの部屋。
「プリンセスが眠っていた時のことなんですけど……」
ティナがためらいがちに口を開いた。
「あっ、そーいえばあたし、ドムのトモダチんトコでワイン飲んで」
思い出したようにルヴィアが言う。
「エッ!?」
ルヴィアの発言にランディとリッドが反応した。
「ワイン飲んだ?」
「うん。そしたらちょー眠くなっちゃって」
「何やってるんだよッ!! はめられたんだよッ!!」
「だってなかなか手に入らないワインだってゆーからっ!! ウソだったけど」
悔しそうに言うルヴィアにランディは呆れる。
「……それで、プリンセスを迎えにお兄ちゃんがトリガーさんちに行ったんです」
ティナが続けた。
「なかなか帰ってこないからティナ水晶球で見てみたんです。そしたらお兄ちゃんは傷だらけで倒れてて」
それを聞いたルヴィアは目を丸くする。
「なんでッ!?」
「わかりません。それでティナ、慌ててリッド様と向かったんです」
「うん」
「すごい光景でした。お兄ちゃんのケガは酷いし、トリガーさんは……」
いたたまれない表情で言うティナ。
リッドはうつむく。
「なに?」
「死んでました……」
「エッ!」
目を見開くルヴィア、ランディ、レーシア。
「お兄ちゃんはオレが殺したって……」
「どーして、そんなコト」
「そこまでは……」
「あたし、ドムんトコ行ってくるわ」
ベッドからルヴィアが立ち上がる。
「やめてください! 今は、そっとしといてあげてください」
「ルヴィア、ほっといてやれよ」
「…………」
ティナとランディに言われ、うつむくルヴィアだった。
ルヴィア達4人はホテルのフロントに居た。
「お部屋はいかがなさいますか?」
フロントの女性が尋ねるとリッドはルヴィアの手を握る。
「ルヴィア姉ちゃんオレといっしょだよねっ!?」
それを聞いたランディの額に青筋が立つ。
「何言ってるんだ僕と一緒に決まってるだろッ!!」
ランディとリッドの兄弟ゲンカが始まった。ルヴィアとレーシアは冷や汗を垂らす。
「はいはい、もーやめなさいよッ」
珍しくルヴィアが仲裁に入った。
「あたしはレーシアと。ふたりはいっしょでいーわよね」
「エーッ!!? バカ兄キとッ!!?」
「冗談じゃないよッ!!」
ランディとリッドがめちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
「もーキョーダイなんだからチョットは仲よくしなさいよッ!!」
「お客様、4名様のお部屋のほうがちょうど空いておりますので、よろしければ……」
冷や汗を垂らしたフロントの女性が言った。
四隅にベッドのある大きな部屋。
「なールヴィア姉ちゃん。ドムのヤツ、ムリそーじゃねー?」
ベッドに転がったリッドが言うとルヴィアは振り向く。
「えっ?」
「あんなジョータイじゃ旅なんてできねーよ。ゼンゼンしゃべんねーんだぜ」
「そりゃしかたないわよ……」
リッドは起き上がる。
「だからさっ、オレがドムの代わりに」
「ダメよリッドくんは」
即行拒否するルヴィアにリッドは不満そうに頬を膨らませる。
「なんの話だ?」
ランディが尋ねた。
「リッドくんがあたしと旅したいってゆーのよ」
「なッ、ダメだぞリッド」
「ウッセーなバカ兄キはスッこんでろよッ!!」
リッドの言いぐさにランディはムカッとする。
「じゃールヴィア姉ちゃんどーすんのっ!? ひとりで旅すんのかよっ」
「何ッ!? そんなの許さないぞッ! キャッスルに連れ帰るっておじ様と約束したんだからなッ!」
「帰る気なんかないわよ。あたしひとりでも旅続けるわ」
「そんなのダメだッ!!」
「ウッサイわねッ!! あたしのカッテでしょッ!!」
ルヴィアが牙を剥き出してランディに言った。
「まだまだ行ってないトコいっぱいあんだからッ!!」
「ルヴィアがどうしても帰らないなら僕も帰らないぞ。レーシアちゃんもな」
「なんですってッ!?」
黙って聞いていたレーシアはため息をつく。
「お姉さまが素直に聞くとは思っていなかったわ。だからお姉さまが旅を続けるというならば、私達は同行しなければならないの。お父さまとの約束よ」
「レーシアはいーけど、コイツはヤよッ!!」
ルヴィアがランディを指差した。
「嫌と言われても、もう決定したことだ」
「ジョーダンじゃないわよッ!! またアンタといっしょなんてッ!!」
「ズリーよッ!! オレもいっしょに旅したいッ!!」
「ダメ」「ダメだ」
ルヴィアとランディが同時に言うとリッドはガビーンとショックを受けた。
「な、なんだよ。オレだけハブかよ」
涙目になる。
「おまえは明日になったらビリッジに向かえ。母さんが心配してる」
「ううっ」
涙を流すリッド。
「リッドくん」
「リッド、おまえには僕の分まで母さんの側にいてやってほしいんだ」
「だったらオマエがいればッ!」
涙目でランディを睨む。
「僕はルヴィアの側にいてやらないと」
「ヒツヨーないわッ!!」「ヒツヨーねーッ!!」
ルヴィアとリッドに同時に言われグワーンとショックを受けるランディだった。
次の日。
ルヴィア達はエレンティア家を訪ねた。
「あ、皆さん」
「ティナ。ドムはどーしてる?」
ルヴィアが尋ねるとティナはうつむく。
「相変わらずです」
「そぉ。はやくゲンキになるといーわね」
「はい」
「あのね、あたし達もーシュッパツするコトにしたわ。だからドムに伝えといて」
「えッ! そうなんですか!? リッド様も!?」
「オレはビリッジに帰る」
元気なく答えたリッドにティナは悲しそうな表情をする。
「そんな……。淋しいです」
「ゲンキでね。ドムのコトたのんだわよ」
ドミニオの部屋のドアが勢い良く開く。
「お兄ちゃん!!」
ベッドに座っていたドミニオは驚き気味にティナを見る。
「ど、どーしたんだ」
「プリンセス達が、タウンを出発するって」
「えッ!?」
「いいのお兄ちゃん、お別れの挨拶しなくても」
ティナがそう言うとドミニオは立ち上がり部屋を飛び出した。
「プリンセス――」
街道を行くルヴィア達の背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこへドミニオが駆け寄ってきた。
「ドムッ!」
「プリンセス。タウン出発するって聞いて」
「あ、うん……」
「そっか……」
ドミニオが淋しそうな表情でルヴィアを見た。
「ドム、昨日の話聞いたわ。ドムのキモチよくわかるけど、はやくゲンキ出してね」
「ああ……。プリンセス、こんなことになっちまってマジわるかった」
深く頭を下げた。
「なに言ってんのよ。顔上げて?」
ルヴィアがそう言うとドミニオは顔を上げる。
「これから、4人で旅を?」
「ううんリッドくんはビリッジに帰るの」
暗い表情で沈んでいるリッド。
「1人でか?」
「護衛をさがそーと思ってんだけど……」
「護衛? だったらオレにやらせてくれ」
ドミニオが名乗り出た。
「おまえが?」
「でも」
ランディとルヴィアが言う。
「それくらい、させてくれ」
確かにドミニオに任せれば安心だが、ルヴィアはなんだか気が引けた。
でも真剣な眼差しで言うドミニオを無碍に断るのも悪い。
「ドム……。じゃーおねがいするわ」
タウンの外れでリッドとドミニオは馬に乗る。
2人との別れの時。
「じゃーねリッドくん、ドム」
「ああ、リッドはブジ送り届けるから安心してくれ」
「まかせたわ」
「頼むぞ」
「ルヴィア姉ちゃんレーシア姉ちゃん。はやく帰ってきてね。待ってるから」
リッドが悲しそうな表情で言った。
「おいリッド。僕は」
「オマエはいーよ」
冷たく言い放つとランディは冷や汗を垂らす。
「ゲンキでねリッドくん。ドムも」
ルヴィアがリッドからドミニオに目を移した。
「プリンセスも」
ドミニオもルヴィアを見つめる。
……またこんな気持ちだ。この前と同じ。
また逢えると、いいな。
「行くかリッド」
気を取り直してドミニオが手綱を振り、タウンを出て草原の道を駆けだした。
リッドは未練の眼差しでルヴィアを見たがドミニオの後に続き去っていった。
「行っちゃったわね」
リッドとドミニオを見送ったルヴィアはランディとレーシアに振り向く。
そしてため息をついた。
「にしても、またこのメンツで旅するコトになるとはね」
「嫌ならキャッスルに帰るか」
「ジョーダンじゃないってーのッ!! あたしの旅はまだ始まったばかりなんだから。さー旅の再開よっ!!」
ルヴィアが元気良く言った。
プリンセスの姉妹+1の旅はこれからも続く。
「だから+1ってのやめろって!!」
チャンチャン♪
【TALE20:END】
【ルヴィアの記憶編】終了です。
長くなりました。
お読みくださった皆様ありがとうございました♪