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TALE15:ルヴィアの記憶を取り戻せ!!

 次の日。

 リッドはベリーズ・ビリッジの自宅へ帰った。

「母さんっ!」

 家のドアを開けたリッドにミレイアは慌てて駆け寄る。

「リッド! あなた昨日帰ってこないで何をしていたの!?」

 心配した様子で声をかけた。

「ゴメン母さん。だけどタイヘンなことになったんだよッ!」

「どうしたの?」

「ルヴィア姉ちゃんジコでキオクソーシツになって心が7歳になってんだッ!」

 リッドの発言にミレイアは愕然とする。

「エエッ!?」

「そんでバカ兄キのヤツはルヴィア姉ちゃんうまくたらしこんで結婚しよーとたくらんでやがんだッ!! サイテーだろッ!!?」

「リッド!! ランディのことをバカと言うのはやめなさい!!」

「だってアイツ、バカじゃん」

 リッドがそう言うとミレイアはため息をつく。

「もう。ランディがキャッスルで暮らすようになる前は、あなた達はそれは仲のよい兄弟だって評判だったのに……」

 ハンカチで目頭を押さえ嘆くミレイア。

「やめてくれよ母さんッ! とにかくオレ、ルヴィア姉ちゃんのキオク取りもどしてーんだっ! そんでバカ兄キとルヴィア姉ちゃんの結婚ゼッテーソシしてやるっ! だからしばらくオレ、キャッスルにいることに決めたからっ!」

 それを聞いたミレイアは急に冷静になる。

「リッド、マックス様はなんとおっしゃっているの?」

「えっ!? おじさまは結婚させる気なんだよ」

 不愉快そうに言うリッド。

「だったら余計なことをするんじゃないの。あなた1人が結婚を反対したって無駄なのよ」

「母さんまでそんなことゆーのかよッ!! だってルヴィア姉ちゃん、かわいそーじゃんかッ!!」

「そう言うけど、あなた単にルヴィアちゃんがランディと結婚することに嫉妬シットしているだけなんじゃないの?」

 図星を突かれリッドの顔が真っ赤になる。

「なッ!! 母さんッ!!」

「そうでしょう」

「……そ、そーだよワリーかよ。オレはルヴィア姉ちゃんのこと好きだっ!! だからオレ男としてルヴィア姉ちゃんをバカ兄キなんかと結婚させたくねーッ!! ゼッテーさせねーかんなッ!!」

 そう言い捨てリッドは家を飛び出した。



 再びキャッスルの門へやってきたドミニオは昨日とは別の門番にルヴィアと面会したいと伝えた。

 すると門番はアポイントを取ってくるという事になり、ドミニオは喜んだ。



 キャッスルのバルコニー。

 テーブルでジュースを飲み、くつろぐルヴィアとランディの元に兵士がひざまずく。

「失礼します、プリンセス」

「んっ?」

 ルヴィアが顔を向ける。

「プリンセスと旅先でお知りあいになられたと申すドミニオ=エレンティアと名乗る者が、プリンセスにご面会を求めておいでですが」

「えっ、ダレっ?」

「ドミニオ=エレンティアと名乗っておりました」

「知んないわよ、そんな人」

 それを聞いた兵士は拍子抜けの表情で顔を上げる。

「さ、さようでございますか」

「ちょっと待て、ドミニオと言ったか?」

 ランディが口を挟んだ。

「は、はい」

「……何か聞き憶えあるな……」

 深刻な表情で考え込む。

「ランディ様のお知りあいなのですか? あの者はルヴィア王女様のお知りあいと申しておりましたが」

 ハッとするランディ。

 まさか、あの格闘術大会の時の?

 思い出したようだ。

「ねーランディの知ってる人なのっ!?」

「えッ! いや、実は僕もよくわからないんだ……」

 ごまかそうとしたが、脂汗がダラダラだ。

「だったら会ってみたらわかるかもしんないわよっ!」

 立ち上がったルヴィアにランディは慌てる。

「あーッ!! 別に会わなくてもいいよッ!!」



 門の前でドミニオはソワソワと歩き回る。

 とうとうルヴィアに逢える。

 期待に胸が膨らみドキドキして落ち着かない。

 姿は昨日見たけれど、やはり言葉を交わしたい。あの素敵な笑顔を目前で見たい。

 別れて1ヶ月程が経つ。だけどずっとルヴィアが心にいて離れる事はなかった。完全に惚れているんだなと思った。

「リッド様。お帰りなさいませ!」

 門番の声にドミニオは振り向く。そこに馬に乗ったリッドが居た。

 ふとリッドはドミニオに顔を向け2人の目が合う。

「アンタだれ?」

 リッドが尋ねる。

「あ、オレはドミニオ=エレンティアっていーます」

「ふーん。で、なにしてんの?」

「プリンセスを待ってるんです」

「エッ!? なんでッ!? ヘンなヤツじゃねーだろなッ!!」

 リッドが睨みつけるとドミニオは慌てる。

「そんなッ!! オレはプリンセスと旅先で知りあって」

「マジでっ!?」

 それを聞いたリッドが目を丸くした。

 馬から降りてドミニオに駆け寄る。

「旅先で知りあったのっ!? ホントにっ!?」

「は、はい。一緒に格闘術大会にも出場しました」

「マジーっ!!? ヤッターっ!! アンタみたいなのいればルヴィア姉ちゃんのキオク取りもどせるかもっ!」

 バンザイして喜んだ。

「プリンセスの記憶っ!? どーいうことですか?」

 よく解らないドミニオが尋ねた。

「これから話すよっ! とにかくオレにキョーリョクしてっ!」



 バルコニー。

 冷や汗をかいたランディは深刻な表情だ。

 何故あの男がここに? 自分達のあとをつけてきたのか?

 ……まあ、そんな事はいいか。

 とにかく今のルヴィアは奴の事を知るはずがない。

 自分との仲を見せつけてやれば諦めるだろう。

 ランディは立ち上がる。

「ルヴィア、僕やっぱり会ってみようと思うんだ。一緒に来てくれる?」

「うんっ!」

 ルヴィアも立ち上がると兵士は口を開く。

「ではランディ様、あの者をキャッスルへご案内してもよろしいのですか?」

「あ、いや入れないでいい。僕達が行くよ」

「……? かしこまりました」



「あの、アナタはプリンセスの弟様ですか?」

 キャッスルの陰でドミニオがリッドに尋ねた。

「ううん、オレはルヴィア姉ちゃんとレーシア姉ちゃんのイトコ」

「へぇ……」

「あのね、今ルヴィア姉ちゃんジコでキオクソーシツになって心が7歳になってんだ」

 衝撃の事実を聞かされたドミニオは愕然とする。

「エエッ!!? 7歳ッ!!?」

「うん。そんでオレのバカ兄キはルヴィア姉ちゃんうまくたらしこんで結婚しよーとたくらんでやがんだッ!! ルヴィア姉ちゃんホントはアイツのことスッゲーキラッてんのにさッ!!」

「え……」

 あの男か、とドミニオはランディを思い出す。

「オレはゼッテー結婚なんかさせたくねーッ!! ルヴィア姉ちゃんかわいそーだッ!!」

「オレもそー思います」

「だろっ!? アンタ、ルヴィア姉ちゃんとドコで知りあったのっ!?」

「あ、デュッカ・タウンで」

「そん時のルヴィア姉ちゃんどんな感じだった!? バカ兄キといっしょだった!?」

「いや、一緒ではありませんでした。プリンセスはお兄様のことすごく嫌ってました」

「そーなんだっ! よかったーっ! ルヴィア姉ちゃんキオクなくす前なんだっ!」

 リッドの表情が明るくなる。

「アンタがルヴィア姉ちゃんに出会った時のこととか話せばキオクもどるかもしんねーよっ! キョーリョクしてくれるよねっ!」

「オレでできるならモチロンです」

 ドミニオがうなずいた。ルヴィアの為なら断るはずがない。



 ランディとルヴィア、兵士は中庭の小道を通りキャッスルの門へ向かう。

 何故だか妙に緊張する。

 ランディは冷や汗をかいていた。

 門番が門を開ける。

 ランディとルヴィアは門を出た。

 だが、そこにドミニオの姿はなくランディは辺りをキョロキョロと見回す。

「あれ?」

「プリンセス、ランディ様。あの者ならリッド様とキャッスルへ向かわれましたが」

 リッドの馬の手綱を握った門番が言った。

「エッ!!? エエーッ!!? なんだってッ!!?」

 驚愕するランディ。

「しまったーッ!! なんてことだッ!! リッドがあの男を味方につけたら大変だッ!!」

 青ざめた顔で慌てて振り返りキャッスルに引き返すとルヴィアは追いかける。

「ちょっとランディ待ってよーっ!」



「そーと決まれば早くルヴィア姉ちゃんとこ行こーぜっ!」

「はいっ!」

 やっとルヴィアに逢える!

 ドミニオは喜びいさんでリッドと共にキャッスルの扉へ向かった。

 なんとそこへ同じくキャッスルの扉に向かっているランディとルヴィアに鉢合わせる。

「あっ!! ルヴィア姉ちゃんっ!!」

 リッドが声をかけるとランディとルヴィアは足を止めて振り向く。

 そこに居たドミニオの姿にランディの顔が引きつり真っ青になった。

「ゲェ〜〜!!」

「…………」

 ルヴィアは黙ってドミニオを見つめていた。

「プリンセス……」

 やっと逢えた。

 ドミニオの胸に嬉しさが込み上げる。

 リッドはルヴィアに駆け寄る。

「ルヴィア姉ちゃんっ! この人見おぼえねーっ!?」

「えっ!? リッドくん、その人ダレ?」

 それを聞いたドミニオは解っていたがショックを隠せなかった。

「オレはドムだ。ドミニオ=エレンティア。デュッカ・タウンで知りあって一緒に格闘術大会に出た」

「えっ? なーにそれ」

「…………」

 悲しそうな表情をするドミニオ。

「もっとくわしく話してよ」

 リッドがそう言うとドミニオは再び口を開く。

「はい、オレはタウンでプリンセスが男に絡まれてたとこを…」

 そこへ2人の兵士がドミニオに駆け寄ってきた。

「ソイツだッ!! その男を捕らえろッ!!」

「はっ」

 ランディに命じられ2人の兵士はドミニオの首に槍をつきつけ、それぞれ腕を押さえ込む。

「バカ兄キッ!! ナニしてんだよッ!!」

 リッドがランディを睨みつけた。

「不審者をキャッスルに入れるわけにはいかない」

 冷静に言うランディ。

「不審者ッ!!? キミ、オレのこと知ってんだろッ!!」

 ドミニオがそう言うとランディは目線をそらす。

「フン、知らないよ」

「この人はあやしくないッ!! ルヴィア姉ちゃんの知りあいなんだッ!! 離せよッ!!」

 リッドが命じ兵士は戸惑う。

「し、しかし」

「離すなッ!! 僕とリッドのどちらを信用するんだ」

「それはもちろんランディ様です」

 即答する兵士にリッドの額に青筋がピキッと立つ。

「なんだよッ!! ムカツクなッ!!」

「リッド、おまえもその男を簡単に信用するな。おまえを騙そうとしてるかもしれないだろ」

「えッ!?」

 ランディに言われドミニオを見る。

「オレそんなことしねーよッ!! ただプリンセスにもー1度逢いたくてッ!!」

 それを聞いたルヴィアはキョトンとする。

「あたしにっ!? どーしてっ!?」

「ソイツを地下牢に連れていけ」

「はっ」

 ランディが兵士に命じた。

「そんなッ!!」

 愕然とするドミニオだった。



 キングの間。

「おじ様、先ほど不審者がキャッスルに侵入しましたので捕らえて地下牢に連れていかせました」

 ランディがマックスに報告した。

「ああ、聞いておる。よくやってくれたな、ランディ君。さすが次代キングだけあるぞ」

 感心するマックスにランディは深々とお辞儀する。

「ありがとうございます」



 ドミニオは2人の兵士にキャッスルの地下牢へ連れていかれた。

 

 階段を下りてすぐの小さなテーブルにランプを灯しただけの暗い地下牢には3つの牢屋がある。冷たく、ここだけ空気がヒンヤリと感じる。


 テーブルに近い牢屋を兵士が開けた。

「さぁここに入れ」

「…………」

 ドミニオは動かない。

「さっさと入れ!!」

 兵士に蹴り飛ばされ牢屋に倒れ込む。

 鍵をかけると1人が牢番として残った。

「……くっそ」

 悔しそうにドミニオが顔を上げた。



 ランディの部屋。

「う……」

 突然ルヴィアが片手で頭を抱えた。

「ルヴィア、どうした?」

 ランディがルヴィアを覗き込む。

「……あたし、さっきの人に会ったコトある気する……」

 ルヴィアの発言にランディは驚く。

「エッ!? ま、まさか、そんなことあるわけないだろ?」

 否定したがランディは冷や汗をかいた。記憶喪失になった時は困ったが、今となってはルヴィアに記憶が戻るほうが困るのだ。

「いつ……? ドコで……? アタマが、イタイ……」

「ルヴィアよせッ!! 考えなくていいッ!!」

 ランディがルヴィアを抱きしめる。

「ランディ……」

「ルヴィアは僕のことだけを考えてくれればいいんだ」

 そう言い唇を重ねたがルヴィアは離した。

「ルヴィア?」

「あたし、あの人に会いたい」

 ソファーから立ち上がったルヴィアにランディは慌てる。

「エエッ!! 何言ってるんだよッ!!」

「ゴメン、ランディ」

 ルヴィアは部屋を飛び出した。



 地下牢。

 座り込んだドミニオは深いため息をつく。

 ルヴィアに再会できたのに、こんな事になろうとは。

 しかしルヴィアが記憶喪失だなんて、あれから何があったのだろう。

 今この瞬間、ルヴィアと離れてしまった事を酷く後悔した。

 どうにかして記憶を取り戻してほしい。自分にできる事はあるだろうか。

 考え込んでいると階段からコツコツと靴音が響いてきた。

「あっ! いたっ!」

 そこへ現れたのはリッドだった。

「リッド様!」

 牢番がひざまずく。

 リッドが牢屋に駆け寄るとドミニオは立ち上がる。

「ねーっ! アンタほんとにルヴィア姉ちゃんの知りあいだよねっ!? オレのことだましてねーだろっ!?」

「モチロンですっ! オレはだますなんてそんなことしませんっ!」

 ドミニオがリッドを真っ直ぐ見てキッパリと言う。

「じゃー出してあげるよ」

 あっさり言うリッドに牢番は驚く。

「そんな簡単にリッド様!!」

 リッドは振り返り牢番をギロッと睨みつける。

「ナニ? モンクあんのかよ」

「いえ!!」

 ビビリすくみあがる牢番だった。



 ルヴィアは地下牢へ向かう階段を下りていた。

 そこへ階段を上がってくるリッドとドミニオにバッタリ会う。

「ルヴィア姉ちゃんっ!」

「プリンセス」

 お互い驚きの表情だった。

「リッドくん、その人……」

「うんっ! オレが出したげたんだっ!」

「…………」

 ルヴィアがジッと見つめるとドミニオはドキッとして顔を赤らめ目線をそらす。

「あたし……。あなたに会ったコトある……」

「エッ!!?」

 ルヴィアの発言にリッドとドミニオが驚きの声を上げた。

「ルヴィア姉ちゃん思い出したのっ!?」

「でもいつ、ドコでだかわかんない……。なんか気になんの。あなたのコト、くわしく聞かせて?」

「モチロンだっ!」

 当然のようにドミニオが答えた。



 ルヴィア、リッド、ドミニオが地下牢からの階段を上がるとランディが駆けつけた。

「ルヴィアッ!!」

「ランディ」

「出たなバカ兄キッ!!」

 キッと睨みつけるリッド。

「ソイツを地下牢から出したのかッ!?」

「そーだよワリーかよ」

 答えたリッドにランディは目を向ける。

「おまえがやったのかッ!!? なんてことをッ!!」

「ランディ、あたしこの人とお話したいの。なんかそーしなきゃなんない気すんの……」

「ルヴィア……。だ、ダメだ」

 冷や汗をかいたランディが戸惑いながら言う。

「どーしてっ!?」

「…………」

 このまま反対し続けたら、ルヴィアは自分を嫌いになる。

 そうなってはまずいと思いランディはため息をつく。

「わかった。ただし僕も参加させてもらう」

「なんでオマエまでッ!! スッこんでろッ!!」

「うるさいッ!!」

 額に青筋を立てたランディがリッドに言った。



 ルヴィアの部屋。

 ドミニオはおもむろに話し始める。

「プリンセスとオレはデュッカ・タウンで知りあいました。初めて出会ったのは朝プリンセスとレーシア王女様が男に絡まれてた時です」

 実は、その時のルヴィアが自分だったとは口が裂けても言えない。

 冷や汗をかいたランディが思った。

「レーシア王女様が男に捕まってしまって、オレはプリンセスにスキを作ってくれって頼みました」

「そんでアンタがレーシア姉ちゃん助けたのっ!?」

 リッドが尋ねた。

「はい。その時はすぐ別れてしまったんですが。妙に急いでるよーだったので」

「ふーん? そん時オマエはナニしてたんだッ!?」

 突然リッドが睨みつけランディはビビる。

「エッ!?……な、何してたっけなー?」

 白々しく目線をそらし、すっとぼけた。

「あやしーヤツだなッ!!」

「そんで次に会ったのは夕方でした。プリンセスが1人で泣きながら街道を歩いてたんです」

 ドミニオが続けるとルヴィアはポカンとする。

「あたしが泣いてた?」

「なんでだろ。ルヴィア姉ちゃんが泣くなんていったいなにが……」

 考え込んでいたリッドはランディを睨む。

「まさかオマエがルヴィア姉ちゃん泣かすよーなこと」

 ランディはギクギクッとする。

 その様子にリッドは立ち上がりランディに詰め寄る。

「ズボシか。オマエ、ルヴィア姉ちゃんにナニしやがったんだッ!!」

「君、続けてくれ」

 冷や汗をダラダラかいたランディが青ざめた顔で言った。

 そんな2人にドミニオは冷や汗を垂らしていた。

「で、プリンセスはまた男に絡まれてオレが助けました。そんで2人でカフェに行ってプリンセスは妹とケンカしたと言ってました。カフェを出てオレが送ってこーとしたらプリンセスは戻りたくないから別のホテルに泊まるっつって、オレも一緒のホテルに泊まったんです」

「同じ部屋だろッ!?」

「…………」

 ランディの問いにドミニオは答えなかった。

「ここからはキミも知ってると思うぜ」

「僕とレーシアちゃんが一晩中ルヴィアを捜して、やっと見つけた時ルヴィアと一緒にいたのはそういうわけだったのか」

「ルヴィア姉ちゃんっ! なんか思い出したっ!?」

「……ううん」

 リッドに尋ねられ首を横に振るルヴィア。

「オレにも聞かせてくんねーか。プリンセスはどーして記憶喪失になっちまったんだ?」

 今度はドミニオがランディに尋ねた。

「……そんなこと、聞いてどうするんだ?」

「ルヴィア姉ちゃんは飛び降りジサツしよーとしてた人を助けよーとしたんだよ。でも間にあわなくてその人をかばって……」

 代わりにリッドが説明した。

「え……。そーだったのか……」

 事実を知ったドミニオが衝撃を受けた。

 重い空気になり皆、沈黙になる。

「と、とにかく話は終わったんだろ? おまえのことは見逃してやるから2度とルヴィアに近づかないでくれ」

 ランディがドミニオに忠告した。

「…………」

 うつむくドミニオ。

「バカ兄キえらそーに言いやがって」

「リッド!! おまえもこの男と親しくするなッ!!」

「ウルセーなッ!! ダレとなにしよーがオレのカッテだろッ!!」

 リッドがランディに言い放ちドミニオに顔を向ける。

「ねーっ! レーシア姉ちゃんにソーダンしてみよーぜっ!」

「レーシア王女様にですか」

「うん、ルヴィア姉ちゃんもいっしょに行こーよ」

 ルヴィアの手を引きソファーから立ち上がる。

「待てッ!! ルヴィアを連れてくなッ!!」

「ウルセーんだよッ!! ふたりになったらルヴィア姉ちゃんにスケベなことする気なんだろッ!!」

「なッ!!」

 リッドの発言にランディの顔が真っ赤になった。

 それを聞いたドミニオはマジですか、と言いたげに呆気に取られたのだった。



【TALE15:END】

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