TALE14:帰国
次の日。
「レーシアちゃん、あのね……。僕達、その……結婚することに決めたんだ」
ためらいがちに言うランディにレーシアは驚きの声を上げる。
「エエッ!? 本当ですか!?」
「ホントよ、レーシア」
「そうなんですか……」
残念そうにうつむいたレーシアをランディは不思議に思う。
「あれ? レーシアちゃん、祝福してくれないの?」
「えっ。で、ですけど今のお姉さまは……」
「わかってるよ……。でもルヴィアが僕と結婚したいって言ってくれたんだ」
「うんっ! はやくケッコンしたいっ!」
笑顔でルヴィアが言った。
「だからね、勝手で悪いんだけどキャッスルに帰ろうと思うんだ」
「…………」
うつむいたまま黙りこくるレーシア。
「レーシアちゃん? ダメかな?」
ランディが尋ねるとレーシアは顔を上げる。
「いえ、わかりました」
――十数日後。
ルヴィア達3人は無事アイルーン・キャッスルタウンへ到着した。
「アイルーン・キャッスルタウンだ。僕達、帰ってきたんだな」
「そうですね……」
馬に乗ったランディとレーシアが久々に目にするキャッスルタウンの風景に感慨にふける。
「ねっ! はやくキャッスル行きましょっ!」
ランディの後ろに乗っているルヴィアがヒョイっと顔を出した。
「そうだね、行こうか」
馬を走らせキャッスルタウンの入口で警護をしている兵士に向かう。
「ん?」
近づいてくる2頭の馬に乗った3人に目を疑う兵士。
「あの方々は……?」
「すいません、ただいま帰りました」
「プリンセス!! ランディ様!!」
馬で街道を進むルヴィア達に国民は皆振り向き注目する。
「やっほーっ♪」
笑顔で国民に手を振るルヴィア。
「プリンセス……?」
「プリンセスだ!!」
「行方不明だったプリンセスとランディ様が無事に帰られたぞ!!」
国民から歓声がワーっと沸き起こった。
「バンザーイ!!」
「お帰りなさいませ!!」
ルヴィア達は国民に温かく迎えられたのだった。
キャッスルのキングの間。
「何ィー!!? ルヴィア達が帰っただと!!?」
兵士の報告を受け、驚きの声を上げたのは懐かしのキング、マックスだ。
「はいキング。まもなくこちらにおいでになると存じます」
「そ、そうか。わかった。下がってよいぞ」
「はっ、失礼します」
「うーむ……。あのルヴィアがまさか1ヶ月そこらで帰ってくるとは予想外だった……」
冷や汗をかき困惑するのだった。
ルヴィア達はキャッスルの門へやってきた。
壮大なキャッスルを囲う高く白い塀。そこにアイルーン・キングダムのエンブレムが施された大きな門がある。
門の両サイドに居る2人の門番がひざまずく。
「プリンセス、ランディ様。お帰りなさいませ!」
「ただいま帰りました」
ランディが答えた。
「お話は既に伺っております。キングもお待ちになられているでしょう。お通りください」
門がゆっくり開く。
キングの間
ルヴィア達を今か今かと待つマックス。
重厚な扉が開き3人が姿を見せた。
「あっ! おとーさまーっ!!」
ルヴィアがマックスを見るなり駆け寄った。
立ち上がったマックスは久々に目にするルヴィアの姿に瞳を潤ませる。
「ルヴィア……」
「あーっ!! おとーさまおヒゲはえてるーっ!! なんかへーンっ!!」
ルヴィアの素っ頓狂な発言にズッコケた。
「……いきなり何を言っとるんだ」
冷や汗を垂らし、うつ伏せに倒れたまま言う。
「お、おじ様。ただいま帰りました」
「お父さま……」
ランディとレーシアの声にマックスは慌てて立ち上がる。
「おお、レーシアにランディ君。よくぞ無事に帰ってきてくれた」
「ねー見てランディっ! レーシアっ! おとーさまおヒゲあんのーっ!」
ルヴィアがマックスの顔を指差し2人に向かって言う。
「私は前から髭を生やしとったではないか!!」
マックスが怒鳴るとルヴィアはキョトンとする。
「えっ!? なかったわよっ!?」
「…………」
そんなルヴィアの様子にマックスは疑問を持つ。
「ルヴィアがなんだかおかしくないか?」
「……は、はい。実は……」
冷や汗をかいたランディがオズオズと口を開いた。
「なんだとォォ――!!? ルヴィアが記憶喪失!!?」
真っ青な顔のマックスがブッとんだ。
「でも完全に記憶を失ってるわけではなくて、8歳以上の記憶がないんです」
「それでも充分問題だぞ!! それで帰ってきたという訳なのか!!?」
「いえ、そうではなくて……。おじ様、ルヴィアと僕は結婚します」
りりしい表情で言うランディにマックスはビックリ仰天する。
「何ィ――!!? ランディ君!!? 正気なのかね!!?」
「はい、ルヴィアがそう言ったんです。なっ?」
ランディがルヴィアを見る。
「うんっ、ケッコンすんのっ」
「ランディ君……。それどころではないと思うがね。ルヴィアの記憶を取り戻すほうが先決ではないか?」
「ですけど、どうしたらルヴィアの記憶が戻るかわかりませんし、それにもし記憶が戻ったらルヴィアは僕と結婚してくれないと思います」
それを聞いたマックスは妙に納得する。
「うむ……。よく考えたらそれもそうだな。ルヴィアは結局ランディ君と結婚したくなかったようだし、ルヴィアの記憶が戻らないほうが好都合という訳だ」
「なんかずるい気がしますが……」
冷や汗を垂らすランディ。
「まあとにかく、なんであれ2人はやっと結婚できるのだ。めでたいめでたい! おいパレードをするぞ! 準備にかかれ!」
上機嫌になったマックスが玉座に座り側近に命じた。
「はっ」
「わーいっ! パレードだわっ!」
無邪気に喜ぶルヴィアだった。
キャッスルタウンの上空には盛大に花火が打ち上がる。
マックスとドレス姿のルヴィアとレーシア、正装したランディは馬車に乗り込んでいた。
『只今より、アイルーン・キングダム第1王女ルヴィア様、第2王女レーシア様、ルヴィア王女様のフィアンセ、ランディ様のご帰国を祝しましてキャッスルタウン・パレードを行います。国民の皆様いつものように盛大にお迎えください!!』
キャッスルタウン全域にアナウンスが流れた。
それを耳にして驚きの声を上げる少年。
「なんだってッ!?」
ドミニオだった。アイルーン・キャッスルタウンに辿り着いていたのだ。
「プリンセスが帰ってきたのかッ!?」
パレードが始まり兵士に続き馬車は進む。
ルヴィアは無邪気に笑いながら手を振る。ランディ、レーシア、マックスも微笑みながら手を振る。
大通りの両サイドに集まった国民から歓声がワーワーと起こる。
「くっそ見えねーッ!!」
ドミニオが国民の後ろで飛び跳ねる。周りは皆ドミニオより背が高い為パレードが見えずにいたのだ。
「チクショーこれだからチビっつーのは」
自分自身に腹を立てた。
「スンマセンっ! ちょっと通してくださいっ!」
国民を掻き分け、なんとか最前列に出る。
「おっ! よかったこれから来るとこだ」
ルヴィア達の乗った馬車がゆっくり向かってくる。
「プリンセスだっ!」
初めて目にするドレス姿の美しいルヴィア。一瞬で目を奪われて顔を赤らめる。
その美しさといったら。
ミニスカート姿も良く似合っていたし充分美しかったけど、ドレス姿だと更に美しさが引き立ってルヴィア自身が光を放っているかのように輝いてまぶしい。さすがはプリンセスだと思う。
目前を通過していく馬車に乗ったルヴィアをドキドキしながら見つめた。
もう、なんだか遠い存在に感じてしまう。
ルヴィアがプリンセスだという事を改めて思い知らされて切なくなった。
「あッ!! そーこーしてる内にプリンセスが行っちまうッ!!」
慌てて息を吸い込む。
「お――いっ!!! プリンセス――!!!」
馬車に向かって叫んだ。
笑顔で手を振っていたルヴィアは突然、周囲をキョロキョロと見回す。ドミニオの声が届いたのだろうか。
そんなルヴィアにランディは気づく。
「どうした?」
「……なんか聞いたコトある声聞こえたの」
「えっ!?」
夕暮れ。
パレードが終わりキャッスルに戻ったルヴィア達の元に、またも懐かしのリッドが駆け寄ってきた。
「ルヴィア姉ちゃーんっ!!」
笑顔でルヴィアに飛び付いた。ランディの顔が引きつる。
「リッド!!」
「?」
キョトンとするルヴィアにリッドは抱き付いたまま顔を上げる。
「ルヴィア姉ちゃん達キャッスル帰ってきたって聞いて急いで来たんだよっ!! もーヒデーよルヴィア姉ちゃんっ!! オレにだまって出てっちゃってさーっ!!」
「えっ、ダレっ?」
それを聞いたリッドの目が点になる。
「へっ!?」
ルヴィアの背後ではランディが青ざめた顔でハラハラし、レーシアは黙って様子を見ていた。
「な、なに言ってんの? オレのこと忘れちゃったの?」
「え、知んない」
ルヴィアがハッキリ言うとリッドはガビーンとショックを受けた。ランディは1人いい気味と言いたげにクスッとほくそ笑む。
「……ヒデーや……。オレはリッドだよ?」
涙目で言ったリッドにルヴィアは目を見開く。
「エーッ!!? ウソッ!! リッドくんなのッ!!?」
「そ、そーだよっ!? なんで忘れんのさっ!」
「ビックリしたわー。だってリッドくん、こーんなちーさかったのに」
屈んだルヴィアが手の平を下にして膝辺りにやるとリッドは冷や汗を垂らす。
「え? ナニ言ってんの? オレ、あんま変わってねーと思うけど」
「リッドくんもこんなおーきくなっちゃって」
笑顔でリッドの頭を撫でる。
「ルヴィア姉ちゃんッ!? どーしちゃったのッ!? さっきからなんかおかしーよッ!!」
「おかしー?」
「ハハハ……。リッドもういいだろ。ルヴィアは疲れてるんだ」
脂汗をかいたランディが口を挟んだ。
「え、ランディ。あたし疲れてないわよ」
「バカ兄キッ!! オマエは帰ってこなくてよかったのにッ!!」
リッドが睨みつけるとランディはムカッとして額に青筋が立つ。
「なんだとッ!!? 僕とルヴィアは結婚するんだぞッ!!」
それを聞いたリッドは馬鹿にしてあざ笑う。
「バーカッ! オマエなんかと結婚しねーよルヴィア姉ちゃんは」
「するわよ」
「エッ!?」
目を丸くしてリッドはルヴィアに向き直る。
「あたしランディとケッコンすんの」
「エエッ!!? ナニ言ってんだよルヴィア姉ちゃんッ!! バカ兄キのことスゲーキラッてんじゃんかッ!!」
「えっ!? あたしランディのコト大好きよ」
「ルヴィア嬉しいよっ」
ランディが喜びハートを飛び散らしてルヴィアを抱きしめた。
訳の解らないリッドは真っ青な顔で驚愕する。
「ウソだろォーッ!!? ルヴィア姉ちゃんッ!! ホントにどーしちゃったんだよォ――ッ!!」
「フン、信じられないか? だったらいいものを見せてやるよ」
ランディはルヴィアを抱きしめたまま見つめる。
「ルヴィア愛してるっ」
唇を重ねた。
「ウワァァ――ッッッ!!!!!」
更に驚愕したリッドが絶叫したがレーシアは口元に手を当てて顔を赤くした。
自分の声はルヴィアに届いたろうか。
帰ってきたのなら、せめて一目でも逢いたい。
どうすればいいだろう。自分がキャッスルに入れてもらえるとは思えないし。
でもルヴィアの知り合いと解ってもらえれば入れてもらえるかもしれない。
わずかな期待を抱いてドミニオはキャッスルの門へやってきた。
「あ、あの」
門番に声をかける。
「何か用か?」
「オレ、プリンセスの知りあいでプリンセスにお逢いしたいんですが……」
「プリンセスの知りあいだ?」
疑りの目を向ける門番。
「はい」
「どういう知りあいだ」
「旅先で知りあったんです」
「真か?」
「ホントですっ! オレ、ドミニオ=エレンティアっていーますっ! プリンセスに聞いてみてくださいっ!」
「……だが今日はもう日暮れ。面会ならまた明日来るがよい」
「……わかりました……」
残念そうに言うドミニオだった。
「もっとタクサン食べたかったわぁー」
ランディと手を繋ぎながら廊下を歩くルヴィアが不満そうに呟いた。
「食事の量が物足りない?」
「うんっ! ゼンゼンおなかイッパイになんないわっ!」
「…………」
そんな2人の後ろ姿をリッドがムッとして睨んでいた。
「リッドさん?」
声をかけたレーシアにリッドは振り返る。
「レーシア姉ちゃん、どーなってんのっ!?」
レーシアの部屋。
「ルヴィア姉ちゃんゼッテーおかしーよッ! オレのこと忘れちゃってたしバカ兄キのことスッゲーキラッてんのにさッ!」
レーシアと並んでソファーに座るリッドが言った。
「……ええ」
「いったいなにがあったのっ!? レーシア姉ちゃん知ってんでしょっ!?」
「お姉さまは、事故にあって8歳以上の記憶を失ってしまっているの」
「え?……エエッ!!?」
一瞬意味が解らずリッドの目が点になったが驚き目を丸くした。
「キオクがッ!!? どーゆーことッ!!?」
「つまり、今のお姉さまの心は7歳ということよ」
「エエ――ッッ!!? まッ! マジィッ!!?」
愕然とするリッド。
「どッ、どーしたらモトのルヴィア姉ちゃんにもどんのッ!?」
「わからないわ」
「そんなァ……。だからルヴィア姉ちゃんオレのことわかんなかったのか……」
ルヴィアの部屋。
ソファーでルヴィアとランディは唇を重ねていた。
ドアをドンドンと勢い良く叩く音が聞こえランディはビクッと反応する。
「ルヴィア姉ちゃんっ!! いんでしょっ!!? 開けてよっ!!」
聞こえた声はリッドでランディは顔をしかめる。
「あいつか……」
「リッドくんだわ」
立ち上がったルヴィアの腕をランディは掴む。
「いいよルヴィア、開けることないよ」
「えっ」
ルヴィアの腕を引きソファーに座らせ押し倒す。
唇を重ね片手をドレスの裾に入れる。
「おいッ!! バカ兄キもいんだろッ!! ルヴィア姉ちゃんにスケベなことしてんじゃねーだろなッ!!」
再びリッドの声とドアをドンドンと叩く音が聞こえランディはビクッと反応した。
ランディがドアを開ける。
「なんだようるさいな」
「スケベなことしてただろヘンタイ兄ッ!!」
リッドが睨みつけた。
「ほっとけッ!!」
「ヒキョー者ッ!!」
それを聞いたランディはムカッとしてリッドを睨む。
「いい加減にしろよ。何が卑怯者なんだ」
「レーシア姉ちゃんから聞いたぜッ!! 今のルヴィア姉ちゃんキオクソーシツで心が7歳なんだろッ!!」
「何ッ!? レーシアちゃんからッ!?」
驚いたランディは裏切られた気持ちになった。
「そんなルヴィア姉ちゃんたらしこんで結婚しよーだなんてヒキョー者に決まってんだろッ!! サイテーヤローッッ!!!」
リッドの発言にランディの額に青筋がピキッと立つ。
「黙って聞いてりゃこの野郎〜〜」
「ルヴィア姉ちゃんをオマエなんかと結婚させてたまるかッ!! オマエの思うよーにはゼッテーさせねーかんなッ!! オレがソシしてやるッ!!」
「がッ! ガキのくせに生意気なことをッ!! さっさとベリーズ・ビリッジに帰れよッ!! 母さんが待ってるんだろッ!!」
「ウルセーッ!! ルヴィア姉ちゃんのキオク取りもどすまでオレはここにいるッ!!」
「なんだとッ!!?」
「ねーなにしてんの?」
ケンカしている2人を見かねてルヴィアが姿を見せた。
「ルヴィア姉ちゃん」
リッドはランディを見ると股間に蹴りを入れる。
「ウゲッ!!」
ランディの表情が苦痛に歪み前屈みで股間を押さえた。
「ランディッ!」
「テメーなんか出てけッ!!」
リッドがランディを廊下の壁に蹴り飛ばした。
部屋に入りドアの鍵をかける。
「リッドくんヒドイッ!! なんでランディのことイジメんのッ!!?」
「アイツのこと大ッキライだからだよッ!!」
「どーしてッ!?」
「ルヴィア姉ちゃんだってバカ兄キのことスゲーキラッてんだよっ!!」
「エッ!? あたしがッ!?」
「そーだよっ! ルヴィア姉ちゃんイヤがってんのにスケベなことするからって!」
「え、えッ!?」
うろたえるルヴィア。
「ルヴィア姉ちゃん思い出してよっ! ルヴィア姉ちゃんホントは17歳なんだよっ!」
「17歳?……うッ」
突然ルヴィアが頭を抱え込む。
「ルヴィア姉ちゃんっ!? どーしたのっ!?」
「……アタマ、イタイ……」
ランディはレーシアの部屋に居た。
「レーシアちゃん、どうしてリッドにルヴィアのことを話したのッ!?」
「ご、ごめんなさい。リッドさんにだけ内緒にしとくのは、ちょっとかわいそうと思いまして……」
レーシアが申し訳なさそうに言うとランディはため息をつく。
「あいつルヴィアの記憶を取り戻すまでキャッスルにいるとか言ってさァ、ルヴィアと僕を結婚させないつもりなんだよ。このままうまくいくと思ったのに……」
「……でもランディさん……。正直言いますと、私もお姉さまの記憶が戻ってほしいと思っています」
レーシアの発言にランディは驚く。
「エッ!! どうしてッ!!? だってレーシアちゃんは僕とルヴィアのことを応援してくれてたじゃないかッ!!」
「そ、そうですけど……」
「記憶が戻ったらルヴィアはまた僕のことを嫌うに決まってるよッ!! やっと結婚できそうなのにッ!!」
「ランディさん……。記憶が戻ったお姉さまでも、努力次第でお姉さまはランディさんのことを好きになるって、私は信じているんです」
「レーシアちゃん……」
レーシアの言葉にランディは心打たれた。
ルヴィアの部屋。
「ダイジョーブ? ルヴィア姉ちゃん」
リッドが心配そうにルヴィアを見つめていた。
「……うん」
「がんばって思い出してよっ! ルヴィア姉ちゃんバカ兄キのことずっとキラッてて結婚なんかイヤがってたんだっ!」
思い出してもらおうと必死のリッド。
「やめてよッ!」
「ルヴィア姉ちゃん?」
「もーヤダッ! わかんないッ! アタマイタイのッ!」
再びルヴィアは頭を抱え込んでしまった。
キングの間。
リッドはマックスに向かった。
「おやリッド君。まだ帰らなくて大丈夫なのかね?」
「おじさまッ! ルヴィア姉ちゃんのこと知ってますよねッ!?」
深刻な表情で言う。
「あ、ああ。聞いたが」
「今のルヴィア姉ちゃんは心が7歳なんですよッ! なのにバカ兄キのヤツはルヴィア姉ちゃんうまくたらしこんで結婚しよーとたくらんでやがんですッ! サイテーですよねッ!」
抗議するとマックスは脂汗をかき困り顔になる。
「だ、だがなリッド君……。キングダムのためにもそうしたほうがよいと思うのだ」
それを聞いたリッドは目を丸くする。
「エッ!!? マジですかおじさまッ!!」
「うむ……」
「そんなッ!! おじさままでッ!! ルヴィア姉ちゃんバカ兄キのことキラッてんのにかわいそーですよッ!!」
リッドの発言にマックスは目をパチクリさせる。
「ルヴィアはランディ君のことを好きなようだぞ?」
「今のルヴィア姉ちゃんはそーかもしんないけど、ホントはスゲーキラッてんですッ!!」
「そう言われてもなぁ……。どうしたら記憶が戻るかわからんのだぞ? ルヴィアはランディ君と結婚をしたがっておるし、やはり結婚させるべきだと思うがな」
「ダメですッ!! オレはゼッテーハンタイですッ!!」
「リッド君……」
頑として反対するリッドに困り顔のマックスだった。
【TALE14:END】
久々にリッドが登場し、なんだか賑やかになりましたね(^^)
あと忘れちゃいけないのが、こちらも再登場のドミニオ。
彼はルヴィアに再会できるのでしょうか?