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TALE12:ルヴィアが子供に??

 ホテルの一室。

 ランディは物思いにふけっていた。

 今日は9月12日。予定ではルヴィアと自分の結婚式のはずだった。

 だけどルヴィアはそんな事に気づいている訳がない。

 悔しいけど、今日くらいはルヴィアと2人きりでデートをする。絶対にするぞー!

 目に炎を灯して燃えた。



「おはようございます、ランディさん」

「おはようレーシアちゃん」

 廊下でレーシアと挨拶を交わした。

 ルヴィアをチラっと見ると眠そうに大きなあくびをしている。

「…………」

 冷や汗を垂らすがルヴィアのご機嫌取りに出る。

「おはようルヴィアっ! 今日はなんだかいつもにもまして綺麗だなぁっ!」

「ホーッホッホッホッ! もっと言っていーわよ」

 気を良くするルヴィア。



「さーておなかもイッパイになったコトだし、今日はなにしよーかしら」

 レストランで食事を済ませたルヴィアが廊下を歩きながら言った。

「なぁルヴィア、今日って何月何日だっけ」

 白々しく尋ねるランディ。

「えっ!? さぁ」

 ズッコケた。

「……それくらい知ってろよな」

 冷や汗を垂らしたランディが立ち上がるとルヴィアはムッとする。

「ナニよアンタだってわかんないんでしょッ!!」

「本当はわかってるけど、ルヴィアがわかってるか知りたくて……」

「なんでよッ!!」

「今日は9月12日なんだ。で……何か思い当たることないか?」

「ないわよ」

「よく考えろよッ!!」

 即答するルヴィアにランディが怒鳴る。

「ナニよウッサイわねェ〜〜!! ちょームカツクッ!!」

 額に青筋を立てたルヴィアが歩きだしランディは慌てる。

「ああッ!! 待ってくれッ!! ケンカしたいんじゃないんだッ!!」

 追いかけてルヴィアの腕を掴む。

「離してよッ!!」

 ランディの手を振り払う。

「今日はな、僕達が結婚式を挙げる予定だった日さ」

「はッ!!? そんなの知るワケないでしょッ!!」

 ルヴィアが顔をしかめて言うとランディの頭に3tが落ちショックで沈んだ。

「酷い……」

 そんなランディなど無視してルヴィアは歩きだす。

「待ってくれよっ!! 結婚式が取り消しになったかわりに、今日くらい僕とデートしてくれないかっ!!」

 それを聞いたルヴィアは振り返りランディを睨みつける。

「はあッ!!? なんでアンタとデートよッ!!」

「いいじゃないか、それくらい……」

「ジョーダンじゃないわよッ!! アンタのコト大ッキライなんだからッッ!!!」

 ランディの心臓にショックのドスがドスッと突き刺さった。

「うう……」

 涙目になったランディにルヴィアは呆れる。

「すぐ泣くんだから。この泣きムシ男」

「うっ、な、なんだよ」

「お姉さま、私はランディさんの言っていることは間違っていないと思うわ」

 見かねたレーシアが口を挟んだ。

「ナニよレーシアッ!! またランディのミカタすんのッ!!?」

 ルヴィアがキッとレーシアを睨みつけた。

「だってランディさんは婚約した時からお姉さまとの結婚式の日をずっと楽しみにしてきたのよ。それが急に白紙になってしまったんだもの。かわいそうよ」

「レーシアちゃん……」

 ランディがレーシアを見た。

「もしお姉さまが逆の立場だったら許せないでしょう?」

「そりゃそーよ」

「だったらランディさんの気持ちもわかってあげていいんじゃない?」

「…………」

 ルヴィアがチラっと見るとランディは悲しそうな表情をしていた。その目は捨てられた子犬のよう。

 あーもーそんな目で見つめるな。

 思ったルヴィアは深いため息をつく。

「しかたないわねェー。わかったわよ」

「本当かっ!?」

「お姉さま」

 ランディの表情が明るくなりレーシアも嬉しくなる。

「だけどアンタはあたしのオトモよ。わかったッ!?」

 ルヴィアがランディを睨みビシッと指差した。

「それは酷い……」

 ランディとレーシアが声を揃えて呟いた。



 街道を行くルヴィアはランディと並んで歩きたくない為、足早に歩く。だが背が高い分、足の長いランディには余裕のペースだ。

「なぁルヴィア、どこに行くんだ?」

「とりあえずショッピングしたいの」

「ふーん、そうか」

 ランディはすれ違ったカップルが手を繋いでいるのを目撃する。

「ルヴィア……。手を繋ごうか」

 照れながら言うランディをルヴィアはギロッと睨みつける。

「なんでッ!!」

 ビビリたじろぐランディ。

「だ、だってせっかくのデートなんだし……」

「あのねーいいッ!!? あたしアンタとデートしてるつもりなんてゼンッゼンないのッ!! カンチガイしないでよねッ!!」

「そんなァ……」

 悲しそうにランディが呟いた。



「あれなにかしら?」

 遠くに人だかりができている。

 ルヴィアとランディは人だかりに駆け寄った。

 皆、深刻な表情で見上げている。

 2人もつられるように見上げると、それは恐るべき光景だった。

「ああッ!」


 建物の屋根の上で1人の少女が今にも飛び降りそうな雰囲気で見下ろしている。


「ちょッ、チョットあのコなにしてんのよッ!」

「あんな所に立ってたら危ないぞッ!」

「飛び降り自殺をするつもりなんだよ」

 町人が言った。

「エエッ!?」

 それを聞いたルヴィアとランディの顔が青ざめた。

「ダメよそんなのッ!! はやく止めなきゃッ!! 『レビテイト』ッ!」

 ルヴィアの体が淡く輝き風をまとって空へ飛んだ。

「あッ!! ルヴィアッ!!」

「と、飛んだぞ!」

 ルヴィアを見上げて騒ぐ町人。


 ルヴィアは建物の屋根まで飛び少女の前で止まった。

「キャッ!」

 突然、現れたルヴィアに驚いた少女が後ずさりをする。

「動かないでッ!!」

「な、何よあなた。どうして空を飛んでるの!?」

「そんなコトどーでもいーのよっ!」

 ルヴィアが屋根に着地した。

「とにかくあたしの話聞いてっ! あんたになにがあったか知んないけど、ジサツなんてしちゃダメよっ! 生きてればイイコトなんてタクサンあんだからっ! ねっ!?」

 懸命に説得するルヴィアだが少女は睨みつける。

「知ったようなこと言わないでよ!! 生きててもいいことなんか全然ないからこうやって死のうとしてるんじゃない!! あなたに私の苦しみなんかわかるはずない!!」

「バカ――ッッ!!!」

 叫ぶルヴィアに少女はビビる。

「だからって、イイコトないからってそんなカンタンにジサツなんかしないでよッ!! あたしだってキャッスルで暮らしてた時はイイコトなんてちっともなかったわッ!! ランディのバカはヘンタイだしキャッスルの暮らしはちょーつまんないしッ!! でもジサツしよーなんて考えたコトなかったわよッ!!」


「っくしょんッ!」

 下に居るランディがクシャミをした。


「はっ!? キャッスル!?」

 目をパチクリさせる少女にルヴィアはハッとする。

「と、とにかくジサツなんてやめなさいよっ! さっ、こっち来なさいっ」

 ルヴィアが手を差し出しながら歩み寄ると少女は慌てて後ずさりをする。

「こッ、来ないでよ!!」

「おねがいだからあたしのゆーコト聞いてッ!!」

「ほっといてよ!! 私は死ぬの!!」

 更に後ずさりをする少女。

 そこはもう屋根の端で少女は足を踏み外してしまった。

「キャッ…」

 少女の体がガクンッと倒れ屋根から落ちた。

「アブナイッ!!!」

 ルヴィアが少女を追いかけ屋根から飛び降りる。


 見上げていたランディは目を見開く。

「ルヴィアッッ!!!」

 町人は目をつぶる。


 ルヴィアは宙で少女の体をしっかりと抱き込んだ。

「『レビ』…キャアッ!!!」

 精霊術を使おうとしたが大きな木が迫っていた。

 受け身を取るように素早く体勢を変えて木に突っ込み枝をバキバキッとへし折りながら地面に落下した。


「ルヴィア――ッッッ!!!!!」

 血相を変えたランディがルヴィアに駆け寄る。

 ルヴィアは少女を抱いたまま体中傷だらけで倒れていた。

 落下した場所は幸いにも土の上だったが、木の枝で負った全身の傷は酷い。

「あぁ、あ……」

 その無惨な姿に目前が暗くなる。

 顔面蒼白になり震えながら膝を付いた。

 町人も後から駆けつけた。

「うわ……」

「ルヴィアーッッ!!! おいッ!! 大丈夫かッ!! しっかりしろよォーッ!!!」

 目に涙を溜めたランディが呼びかける。

 すると少女が動いた。

「うぅ……」

「生きていたか!!」

「よかった……」

 町人がホッとしたがランディの表情は変わらない。

 少女は体を起こすとルヴィアの姿を見て驚く。

「キャァァ――!!!」

「こっちのは……」

 町人が顔を背ける。

「こ、この人……。私をかばって……し、死んじゃったの……」

 少女が震えながら言うとランディは涙の溢れた目でキッと睨みつける。

「そんなわけないッッ!!!」

 ルヴィアを抱えて立ち上がり少女に背を向ける。

「君……。自殺なんてもう2度と考えるなよ。ルヴィアのしたことを無駄にするなッ!!」

 そう言い、その場を立ち去った。



 街道をルヴィアを抱えてランディは行く。

 行き交う町人は血だらけでグッタリしているルヴィアを見て驚きを隠せない。

 どうしてこんな事に……。

 涙がランディの目から止まる事はなかった。



 部屋のドアを開けたレーシアはランディに抱えられたルヴィアを見るなり血相を変える。

「ランディさん!! どうしたんですかお姉さまは!!」

「話はあとだッ!! レーシアちゃん、早くルヴィアの傷を治してくれッ!!」

「は、はい!」


 レーシアはアイルーン・ロッドを手にした。

 ランディに抱えられたままのルヴィアにアイルーン・ロッドをかざす。

『天の聖なる光よ…我に力を授けたまえ』

 アイルーン・ロッドが淡く輝きクリスタルの球が光り輝いた。

 神聖な法力で扱う法術だ。

「『リカバリィ・ライト』!」

 球から優しい光が溢れルヴィアの全身を包む。体中の傷と破れた服が塞がっていく。

「よかった……」

 ランディが安堵のため息をついた。



 ルヴィアはベッドに寝かすとランディはレーシアに先程の状況説明をする。

「そ、そんなことがあったんですか」

「ああ。ルヴィアが止めに行ったんだけど、そのは飛び降りちゃってルヴィアはそのをかばってこんな目に……」

「お姉さま……」

 2人は意識の戻らないルヴィアを見つめた。



「……う…ん……」

 ようやくルヴィアが目を開けた。

「ルヴィアッ!!」

「お姉さま、気がついた!?」

 ランディとレーシアがすぐ駆け寄る。

「……はれ?」

 ボーっとしながら起き上がるルヴィア。

「よかったよっ!! すごく心配したんだぞっ!! もしもルヴィアの意識が戻らなかったら僕はっ!!」

 ランディがルヴィアを抱きしめた。

「……あれ? ずいぶんおとなしいじゃないか。大丈夫か? 痛いところはないか?」

 殴らないルヴィアを心配そうに覗き込む。

「…………」

 ルヴィアが目をパチクリさせジーっとランディの顔を見つめた。ランディはドキッとして顔を赤らめる。

「ダレ?」

「はッ!?」

 ルヴィアの発言にランディだけじゃなくレーシアまで目を丸くした。

「どうしたの!? お姉さま!」

「えっ!? おねーさまっ!? あたしおーきな妹なんていないけど」

「エエッ!!?」

「でも似てる……。レーシアに」

 レーシアを見つめてルヴィアが言った。

「そうよ! 私はレーシアよ!?」

 レーシアがそう言うとルヴィアはビックリする。

「エッ!!? ウソォッ!! ホントにレーシアなのッ!!? どーしちゃったのッ!!? そんなおーきくなっちゃってッ!!」

「何言ってるんだよルヴィアッ!!」

「あなたダレ?」

 目を点にしたルヴィアにランディは床に突っ伏せる。

「僕がわからないのかッ!?」

「……もしかしてランディくん?」

「そ、そうだよ。ランディだよ」

 思い出してくれてとてもホッとした。

「なんでッ!? ふたりともどーしておーきくなっちゃったのッ!? なんかコワイ……」

 2人を見つめて怯えるルヴィア。

「大きくなったって……」

「……まさかお姉さまは……。ねぇお姉さま、今歳いくつかわかる?」

 感づいたレーシアが尋ねた。

「とし? 7歳よ」

「なッ!! 何ィィ――ッッ!!?」

 それを聞いたランディがブッとんだ。

「なッ! 7歳ッ!?」

「8歳以上の記憶を失ってしまったんだわ」

「そんなバカなァ――ッッ!!!」

「なにっ!? なにっ!? どーしたのっ!?」

 2人の会話がルヴィアには理解できない。

「ど、どうすれば記憶が戻るんだ?」

「困りましたね……」

 困惑するランディとレーシア。

 するとグゥオ〜と不気味な音が響き2人は振り向く。

「おなかすいちゃったぁ〜〜」

 ルヴィアが空腹で目を回していた。

 それを見たランディとレーシアは冷や汗を垂らしてズッコケた。

「……とりあえずもうお昼ですし、ランチに行きましょうか?」

 レーシアがランディに提案した。

「……そうだね」

「ランチにすんのっ!?」

 ルヴィアが嬉しそうにベッドから降りた。

 立ち上がると驚く。

「エッ!?」

 目を丸くして全身を見回す。

「えっ!? えっ!? えっ!? ナニコレェーッ!! あたしじゃないーッ!!!」

 青ざめた顔で両頬を押さえて叫んだ。

「いや、ルヴィアだよ。17歳のルヴィアなんだ」

「エッ!? 17歳のあたしっ!?」

「そう、ルヴィアは今17歳なんだよ」

「?? どーゆーコト?」

 チンプンカンプンのルヴィア。



「ほら」

 ルヴィアはランディに全身の映る鏡の前に立たされる。

「エ――ッ!!? これがあたしっ!!?」

 自分の姿を改めて鏡で見たルヴィアがビックリした。

「キレイ……。あたしって、おーきくなったらこんなキレイになんのね……」

 鏡に映る自分の姿にしばらく見とれていた。

「ねっ!? ねっ!? あたしキレイよねっ!?」

 ランディとレーシアに尋ねる。

「ああ、すごく綺麗だよ」

「私もそう思うわ」

「ホントっ!? でもレーシアもキレイよっ! ねっ!? ランディくんっ!」

「えっ」

 突然ルヴィアに尋ねられランディはうろたえる。

 レーシアは顔を赤らめていた。

「うん、レーシアちゃんも綺麗だよ」

「そ、そんなこと……」

 恥ずかしくて顔を伏せた。

「ランディくんも、すっごくカッコいくなったわねっ!」

「えっ!」

 ルヴィアの思いがけない言葉にランディの顔が赤くなる。

 そんな事、ルヴィアに初めて言われた。

 赤い顔でドキドキするランディだった。



「おいしかったわねーっ♪ ランディくん」

 昼食を済ませたルヴィアが満足そうにランディに微笑みかけた。

「うん、そうだね」

 ルヴィアが自分に笑いかけている。

 これまで向けられる事のなかったルヴィアの笑顔にランディは感激してジーンとした。

「ランディさん」

 レーシアが声をかけるとランディは振り向く。

「ん? どうしたの?」

「これからどうしたらいいんでしょうか……」

「えっ」

「お姉さまがこうなってしまった以上、このまま旅を続けるのも……」

「あっ、そ、そうだよね」

「なにっ!? なにっ!? なんの話っ!?」

 ルヴィアが話に入る。

「……ルヴィア、キャッスルに帰りたい?」

「えっ!?」

 ランディに尋ねられキョトンとする。

「べつに」

「エッ!」

 目を丸くするランディ。

「こーゆーふうに3人であそぶのたのしーわねっ♪」

「そ、そう」

「ねっ! ランディくんっ! あそび行きましょっ!」

「わっ!」

 ルヴィアに腕に抱き付かれ顔が赤くなる。

「ランディさん。私はホテルに戻りますので、お姉さまをお願いしてもいいですか?」

 レーシアがそう言うとランディは顔を向ける。

「えっ!?」

「レーシア、ホテル行くの?」

「ええ、ディナーまでには帰ってきてくださいね」

「あ、うん。わかった」

「じゃー行ってくるわねっ」

 ルヴィアが手を振る。

「レーシアちゃん、気をつけて」

「はい」

 レーシアと別れルヴィアとランディは歩きだしたのだった。



【TALE12:END】

【ルヴィアの記憶編】の始まりです。


今回は少し長くなりそうです。

どうか最後までお付き合い頂ければと思います!

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