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TALE11:ルヴィア、ダンサー体験

 ルヴィア達3人はサーフィにステージへ案内された。

「ここがステージです。少し待っていてください」

 サーフィがステージに行くと、そこにレッスン中のダンサーが2人居た。

「ちょっといいかな、2人とも」

 声をかけると2人の少女が振り向く。

「サーフィじゃないっ! 逢いに来てくれたのっ!?」

 1人が駆け寄りサーフィに抱き付く。

「うわっ!!」

「もう大丈夫なんですか?」

 もう1人が心配そうに歩み寄った。

「いや……。だけど今日から2人にダンスのレッスンをしてほしい方がいるんだ」

「エッ!?」

 それを聞いた2人が驚いた。

「皆さん、こちらへ」

 サーフィが促すとルヴィアに続いてランディとレーシアも入ってきた。

「どーも」

 無理に笑顔を作るルヴィア。

「わ……」

 2人がルヴィアの美貌に目を見張った。

「こちらはルヴィアさん。6日後のステージに出てもらうことになったんだよ」

「エエッ!!? この人がッ!? それはムチャじゃないッ!?」

「ヘーキよ。あたしやる時はやるから。だからヨロシクねっ!」

「え……」

 顔を見合わせる2人。

「僕がルヴィアさんに無理に言って頼んだんだ。2人には勝手かもしれないけど、ルヴィアさんにダンスのレッスンをしてもらえないかな?」

 サーフィが申し訳なさそうに2人に頼んだ。

「そういうことなら……」

「任せてください」

 2人がそう言うとサーフィは涙ぐむ。

「あ、ありがとう!」

「アタシはセイラ、こっちはソフィナ。一緒にがんばりましょう」

「よろしくね」

「セイラに、ソフィナね。ヨロシクっ!」

 ルヴィアが2人と握手をした。



 ルヴィアはレッスン用の衣装に着替えた。

 胸元を覆う布とサイドにきわどいスリットの入った布を腰に身に着けていた。かなり露出度が高い。髪は1本に緩くみつあみしている。


「ルヴィアさんてスタイルいいわね」

 ソフィナが褒めた。

「ホホホ、トーゼンよ」

「でもナルシストだね」

 セイラにポツリと言われ得意顔になっていたルヴィアの額に青筋が立つ。

「なんですってッ!?」

「ルヴィア〜〜。セクシ〜〜」

 ルヴィアの衣装姿にランディが目をハートにしていた。

「よくお似あいですよ!」

「あーッ!! ちょっとサーフィッ!! なに目ん玉ハートにしてるのッ!!」

 同じく目をハートにしているサーフィにセイラが詰め寄った。



 ルヴィアのダンスレッスンが始まった。

 さすが運動神経抜群のルヴィア。みるみる上達していく。


 その上達ぶりにサーフィや座長だけでなくランディとレーシアまで目を見張る。

 だがランディとサーフィはルヴィアの腰布が見せるチラリズムに目がハートになり、肝心のダンスはあまり見ていなかった(汗)。


「いいよ、アナタ才能あるね」

 セイラが褒めるとルヴィアは得意顔になる。

「やっぱ!? トーゼンよね」

「私もそう思うわ。シェレルに負けないくらいよ」

 ソフィナも相槌あいづちを打った。

「この調子なら、6日後のステージでも充分通用するね」

「まかせときなさいって!」

 ルヴィアがウィンクした。



 6日後。ステージ本番の日。

 シアターは既に今か今かと開演を待ち侘びる観客で満席状態だ。


 ルヴィア達とサーフィ、セイラ、ソフィナはシアターの楽屋に居た。

「いよいよですね、ルヴィアさん」

「ええ、バシッと決めるわよ」

 ガッツポーズを取るルヴィア。

「がんばってください。こちらが今日の衣装です」

 サーフィは持っていた箱を開けた。

 そこには美しい光を放つ布で作られた衣装やアクセサリーが入っていた。

 それを見たセイラとソフィナは愕然とする。

「サーフィッ! それってまさか……」

 セイラが青ざめた顔で言うとサーフィはうなずく。

「そうだよ。シェレルの形見のステージ衣装だ」

「エッ!!?」

 ルヴィアが驚いた。

「カタミのッ!? ソレあたし着んのッ!?」

「はい、お願いします。絶対に似あうと思うんです」

「そりゃ似あうでしょーけど、でもね……」

「ルヴィア、せっかくだから着てみろよ」

 気の進まない様子のルヴィアにランディが言った。

「えー?」

「そうよ、お姉さま」

 レーシアも言う。

「……わかったわ」



 ルヴィアはシェレルモーネの形見のステージ衣装に着替えた。

 宝石を散りばめた胸当てと腰にはレッスン時同様、両サイドにスリットの入った布。だが生地は全く別物の高級素材でルヴィアの体でキラキラと美しい光を放つ。髪や腕や足に着けたアクセサリーも美しい。


「ルヴィア綺麗だよ〜〜」

 目をハートにしたランディがメロメロだ。

「すっ! すごく素敵ですルヴィアさん!!」

 サーフィもメロメロになっている。そんなサーフィにセイラは腹が立つ。

「もうッ!! サーフィったらッ!!」

 そこへ座長がやってきた。

「もうすぐ開演時間だ。ルヴィアさん、セイラ、ソフィナ。そろそろスタンバイ願えるかね?」

「あ、ええ」

「ルヴィアさん!! がんばってください!! 僕達は観客席から見てますから!!」

 サーフィが声援を送った。

「がんばるわ」

「ちょっとサーフィ、アタシ達もいるんだけど」

 セイラがジトッとした目でサーフィに言う。

「あ、うん。セイラとソフィナもがんばってね!」

「なにそれ。ルヴィアさんと全然違うじゃない」

 不満そうに言うセイラだった。



 ルヴィア、セイラ、ソフィナ、座長はステージ裏に居た。

「いいかね3人とも。開演の前にわしが謝罪するから、終わったら出番だ」

「わかったわ」

 3人がうなずく。

「よろしく頼むぞ」



 ランディとレーシアはサーフィに連れられ観客席にやってきた。

「レーシアさん、ランディさん。こちらです」

 最前列の中央席に並んで座る。

「ここならルヴィアがよく見えるな」

「そうでしょう?」

 サーフィが笑顔で言う。



 開演時間になりステージにマイクを手にした座長が現れるとスポットライトが照らす。

『えー本日は遠い所から我がシアターに足をお運びいただき誠にありがとうございます。皆様は以前からシェレルモーネのステージを楽しみにしていただいてたことと思います。ここで皆様に謝罪したいことがございます』

 座長がここまで言うと観客はざわめきだす。

『誠に残念ながら、シェレルモーネは不慮の事故に遭い只今療養中でございます』

 それを聞いた観客は罵声を飛ばす。

「じゃあ今日のステージはどうなるんだよ!!」

「わざわざ遠くから見に来てんだぞ!!」

『落ち着いてください。お気持ちはご察ししております。そこでシェレルモーネの代役といっては失礼ですが、とびきりのダンサーをお招きいたしました。彼女の初ステージであります。それではお呼びしましょう。ルヴィアさん、張りきってどうぞ!!』

 スポットライトが消え曲が流れだす。

 再びスポットライトが照らした先にはポーズを取ったルヴィアが居た。両サイドにセイラとソフィナも居る。

 観客は総立ちし拍手と歓声が沸き起こる。

 サーフィも観客と同時に立っていた。

 観客の熱狂ぶりにランディとレーシアは圧倒される。

「うわッ! すごいなッ!」

『ハ〜イっ♪ あたしルヴィアよっ! 今日はちょーはりきっちゃうから、みんなしっかり見てってねっ♪』

 ルヴィアがインカムを通して言うと観客から更に歓声が上がった。


 ステージが始まる。

 ルヴィアの華麗なダンスに観客全員が魅了された。



 ステージはフィナーレを迎えた。

『じゃーねーっ!』

 ルヴィアが投げキッスをしてステージから去った。

「ルヴィアちゃーん!!」

「もっと踊ってー!!」

 観客の歓声は収まらずアンコールが起こる。



 ステージ裏。

 座長がルヴィアにタオルを手渡す。

「ルヴィアさん、大成功だよ。お疲れさま」

「ええ」

「お疲れさまー」

「お疲れセイラ、ソフィナ」

 セイラとソフィナにもタオルを手渡す。

「それじゃ、わしは締めてくるから」

 そう言い座長はステージへ向かった。

『なかなかのステージだったわよ……』

 ふとルヴィアの耳に声が聞こえた。

「……今なんか言った?」

 ルヴィアがセイラとソフィナに尋ねる。

「えっ?」

「なんかボソボソってちーさい声が」

 突然ルヴィアの目から生気が消え膝をガクッと付く。

「ルヴィアさんッ!?」

「どうしたの!?」

 その様子にセイラとソフィナが驚いた。

「しっかりしてッ!!」

「大丈夫!!?」

 ルヴィアはゆっくり立ち上がり伏せていた顔を上げる。

「大丈夫よ……」

 だがルヴィアの表情は不気味でセイラとソフィナはゾクッとする。

 ルヴィアは不気味に微笑むと再びステージへ向かった。

「……ねぇ、今の声って……」

 ソフィナが怯えながらセイラに言う。

「うん……。ルヴィアさんじゃなかったね」



『本日は誠にありがとうございました。これをもって終演とさせて…』

 ステージで座長が終演の挨拶をしたが観客が一斉に立ち上がり歓声がワーっと沸き起こる。

「えッ!?」

 驚いた座長が振り向くと、そこにルヴィアが居た。

「座長、少し踊らせてもらえないかしら」

「えっ!……その声……」

『みんなー!! まだついてこれるー!!?』

 ルヴィアがインカムを通して言うと観客から歓声がワーっワーっと起こった。

「こ、この声」

 反応するサーフィ。

 再び曲が流れルヴィアは踊り始める。

 このダンスは!

 ルヴィアのダンスにサーフィが目を見開き愕然とした。

 一方ルヴィアも踊りながらサーフィを見つめている。

 サーフィは思い立ったように走りだす。

 そんなサーフィにランディとレーシアはビックリする。



 サーフィはステージ裏へやってきた。

「サーフィッ!」

 セイラが声をかけた。

「座長……。ルヴィアさんの声が、ダンスが……」

 気が抜けたようにフラフラと歩くサーフィ。

「わしも気づいたよ」

「ルヴィアさんの声、ダンス……。まるでシェレルそのものだ」



 ルヴィアは笑顔で観客に手を振る。

『みんなー!! 最高だったわよー!! サンキュ――!!』

「ルヴィアちゃーん!!」

 観客から拍手と歓声が上がった。

『違うわよー!! 今の私は……』

 ルヴィアの声はステージ裏まで聞こえていてサーフィ達は反応する。

『シェレルモーネよ』

 ルヴィアがそう言うと歓声と拍手が止みシーンと静まり返った。

 ステージ裏のサーフィ達は衝撃を受ける。

「……何言ってるんだ? ルヴィアは」

 ランディが呟くとレーシアは顔を向ける。

「でもランディさん、気づきませんでしたか? お姉さまの声……」

「あ、ああ。なんか違うなって思ってたんだけど」

「サーフィさんはシェレルモーネさんの声だって気づいたんですよ!」

「そうかっ! 僕達も行こうっ!」

「はい!」

 ランディとレーシアもステージ裏へ向かった。



 ステージ裏。

 ルヴィア(シェレルモーネ)がゆっくり戻ってきた。

 空気が張りつめる。

「……シェレル、なのか?」

 冷や汗をかいたサーフィが声をかけた。

「そうよ、サーフィ」

 微笑んで答えるルヴィア(シェレルモーネ)。

 サーフィの目に涙が溢れる。

「シェレル! 一体どうして、どうして自殺なんか……」

「サーフィ、あなたは私が自殺するような女だと思っていたの?」

「え?」

「キャアア――!!!」

 突然、叫んだセイラとソフィナが逃げだした。

「逃がさないわよ!!」

 ルヴィア(シェレルモーネ)の目が発光しセイラとソフィナに呪縛をかけ身動きを封じた。

「シェレル!? どうしたんだ!!」

「私は自殺なんかしていないわ。この2人に殺されたのよ!」

「エエッ!!?」

 サーフィと座長が驚愕した。

「セイラはね、私のことをひがんでいたの。シアターの人気ダンサーである私にね。前から気づいていたわ、私のことを邪魔に思っていることくらい。それとセイラがサーフィのことを好きだってこともね。それで私があなたとつきあいだしたって知ったセイラは、ソフィナと自殺に見せかけるように私を殺したの」

 シェレルモーネから聞かされた真実にサーフィと座長は衝撃を受ける。

「そ、そんな……。そうだったのか……」

 ルヴィア(シェレルモーネ)は怨念の眼差しでセイラとソフィナに歩み寄る。

「苦しかったわ……。ロープが首に食い込んで……。よくも殺してくれたわね。ソフィナ、私はあなたのことを好きだったのに」

 セイラとソフィナは涙を流して怯えていた。

「ごめ…なさい……。私……でもセイラに……」

「……シェ…モ…ネ……。許して……」

「何言っているのよ!! これは復讐よ!! 許さないわ、絶対許さない!!」

 ルヴィア(シェレルモーネ)がセイラとソフィナを睨む。

 見えない力が2人をギリギリと締め上げる。

「ダメだシェレル!! やめてくれ!!」

 サーフィがルヴィア(シェレルモーネ)を抱きしめた。

「君までそんなことをしちゃいけない!!」

 ルヴィア(シェレルモーネ)の瞳が元に戻りセイラとソフィナの呪縛が解け2人は床に倒れた。

「……サーフィ」

 目に涙が溢れる。

「シェレル……」

「あなたに、こうしてまた抱きしめてもらえるなんて……」

「え?」

 サーフィが抱きしめたままルヴィア(シェレルモーネ)を見た。

「ありがとう……。愛しているわ、サーフィ」

 そう言いルヴィア(シェレルモーネ)はサーフィに唇を重ねる。

「最後にあなたの前で踊れてよかった。さようなら……」

 ルヴィアの体からシェレルモーネの魂が抜け天へと消えていった。

 意識のないルヴィアはサーフィの胸に倒れる。

「……シェレル……」

 そこへランディとレーシアがやってきた。

 倒れているセイラとソフィナに驚く。

「どッ! どうなってるんだッ!?」



「……ん……」

 仮眠室のベッドで目を開けたルヴィアをランディ、レーシア、サーフィは覗き込む。

「ルヴィア気づいたかっ!?」

「……あれ?」

 ボーっとランディを見る。

「大丈夫かルヴィア」

「えっ? なにが?」

「ルヴィアさん、シェレルに乗り移られていたんですよ」

 唐突なサーフィの発言にルヴィアは驚き飛び起きる。

「エッ!!? ウソでしょッ!!」

「本当だよ」

 ランディがそう言うとルヴィアは深刻な表情になる。

「……そーいえば、ステージ終わったあとからキオクないわ……。でもどーしてあたしにっ!?」

「シェレルは、もう1度ステージでダンスをしたかったんだと思います」

「えっ!?」

「シェレルは、自殺ではなかったんですよ」

 それを聞いたルヴィアは目を丸くする。

「エエッ!!?」


 サーフィはルヴィアにシェレルモーネが乗り移っていた間の出来事を話した。

「そーだったの……。セイラとソフィナに殺されたなんて」

「あんまりだよな」

 ランディが言う。

「サーフィいーのッ!? シェレルのカタキうたなくてッ!」

「……いいんです。シェレルが消える瞬間、表情はすごく安らかでしたから」

「……そぉ……」



 次の日。

「ルヴィアさん、これをどうぞ」

 薔薇のブーケを差し出すサーフィにランディは驚く。

「なッ!! それどういう意味のブーケなんだよッ!!」

「ほんの感謝の気持ちです」

「それでヤクソクの5000万ラルだけどぉ」

 ブーケを受け取ったルヴィアが言う。

「あ、はい」

「そんな大金、本当に持ってるのかよ」

 疑りの目を向けるランディ。

「持ってませんけど……」

 サーフィがそう言うとルヴィアはビックリ仰天する。

「なんですってェッ!!?」

「でも大丈夫です。作りますから」

「どーやってよッ!! まとめていっぺんにくれないとヤよッ!!」

「はい……。座長から出していただく分と、昨日ルヴィアさんが着たシェレルの形見のステージ衣装。あれを売れば合わせて5000万ラルくらいになると思うんです」

「エッ!!?」

 サーフィの発言にルヴィア達が驚いた。

「売っちゃうのッ!?」

「はい……。それしか方法がありませんから」

「ダメですよ!! 大切な物なんでしょう!?」

 レーシアがそう言うとサーフィはうつむく。

「そうですけど……」

「ソレはあんた持ってなさいよ」

「えっ!?」

 ルヴィアの思いがけない言葉にサーフィが顔を上げた。

「いーわよあるだけで。まけといてあげるわ」

「……本当ですか?」

「ま、あたしもダンサーやってみてたのしかったし。そーゆーコト」

「ルヴィアさん……」

 感激してサーフィは涙ぐみジーンとした。



「これはルヴィアさん。昨日は本当にありがとう」

 シアターの楽屋で座長がルヴィアに深々とお辞儀した。

「いーってコトよ」

「座長、報酬のことなんですけど……」

 サーフィが言う。

「ああ、わかった」



 テーブルには札束が積まれている。

「3500万ラルほどご用意しました」

「そぉ、サンキュー」

 ルヴィアが右手首のクリスタル・ブレスレットに触れると札束は吸い込まれた。

「それじゃ、そろそろこのタウンとおわかれね」

「しかしルヴィアさんほどの実力の持ち主を逃すのは惜しいなぁ」

 残念そうに言う座長にサーフィは反応する。

「座長もそう思いますよね!? ルヴィアさん、このシアターの看板ダンサーになってくださる気はありませんか!?」

「エッ!!?」

 唐突なサーフィの発言にルヴィアがビックリした。

「昨日のステージでルヴィアさんのファンになった方はたくさんいます! ルヴィアさんならもう看板ダンサーになれますよ!」

「ちょッ! チョット待ってよッ!!」

「ダメですか!? ルヴィアさん、さっきダンサーをやって楽しかったって言ってたじゃないですか!」

「いッ、言ったけど、でもそれとこれとはべつよッ! あたし達旅してんだから、ずっとこのタウンいる気なんてないわッ!」

「そんな……」

 サーフィが悲しそうな表情をした。

「あ、あの、レーシアさんとランディさんからも言ってくださいませんか!? 昨日のルヴィアさんのステージ、とても素晴らしかったですよね!?」

「ああ、それはそうだけど、いくらなんでもこのタウンに残って看板ダンサーになるのは無理あるな」

 ランディがそう言うとサーフィは落ち込む。

「そうですか……」



「さっ、次のモクテキ地決めましょ。レーシア、ガイド見せて」

 街道でルヴィアがレーシアに言った。

「……お姉さま、このタウンにもう1泊していかない?」

 唐突なレーシアの発言にルヴィアは目を丸くする。

「えッ!? なんでよ」

「その……。ほら、私達がこのタウンに到着して、お姉さまはすぐにダンスのレッスンを始めたでしょう? あまりタウンを見て歩いていないし……」

「そーだけど」

「だから、ね!? お願い!」

 レーシアが両手を合わせてお願いした。

「……しかたないわね」

 ルヴィアが承諾するとレーシアは喜ぶ。

「本当!?」



 その日ルヴィア達はタウンをブラブラと歩いた。のんびり店を見て回り、食べ歩きなんかをしている内に日は傾いてきた。



 夜。

 ホテルの一室。

「ねぇお姉さま、実はサーフィさんからレターを預かっているの」

 ソファーに座っているルヴィアにレーシアが言った。

「エッ!? アイツからッ!?」

「ええ」

 イヤーな顔をするルヴィアに手紙を差し出す。

「いらないわよ」

「ダメよ、ちゃんと読んであげて」

「じゃーあんた読んだら?」

「どうして私が」

「あんなヤツのレターなんてキョーミないわ」

「もう! じゃあ私が読むわよ。いいのね?」

「カッテにどーぞ」

 ルヴィアがそう言うとレーシアは手紙を開けて目を通す。

 顔を赤らめる。

「お姉さま、これラブレターよ」

「エエッ!?」

 顔をしかめたルヴィアは手紙を受け取り目を通す。


『Dear ルヴィアさん


 僕はシェレルを失ってしまってから、

 ずっと光のない暗い生活を送っていました。

 そんな時、あなたの姿を見かけて、僕は鼓動が高鳴るのを感じました。

 あなたを見ていると、僕の周りには光が満ち溢れ、元気になれるのです。

 僕にはもう、あなたしか見えない。あなたしかいらない。

 あなたは僕の天使。できることならあなたを、僕だけのダンサーにしたい。


                                    From サーフィ』


「……ナニコレ……」

 ラブレターを読んだルヴィアは青ざめた顔で震えていた。

「キモイわァーッ!!! イヤァ――ッッ!!!」

 ラブレターを引き裂いた。

「酷いわお姉さま!!」

「な、ナニよ。ナニ考えてんのよアイツ……。こんなモノあたしに読ませてどーするつもりなのよッ!」

「お姉さまに気持ちを伝えたかっただけじゃないの?」

「それならあたしに言えばいーじゃないッ!! こーゆーやり方キモイのよッ!! あたし大ッキライッ!!」

「直接言えない人だっているのよ。それにほら、ランディさんもいるし。言いづらかったんじゃない?」

「……アイツにビシッと言ってやんないと気ィすまないわ」

「えっ!?」

 ルヴィアは立ち上がり部屋を飛び出した。



「はい。えっ!? ルヴィアさん!」

 家のドアを開けたサーフィは、そこに居たルヴィアに顔を赤らめた。

「来ていただけるなんて嬉しいです! でもどうやって僕の家が?」

「座長さんに教えてもらったの。とにかくアンタに話あんのよ」

 不機嫌そうに言うルヴィアにサーフィはドキッとする。

「は、話ですか。それじゃどうぞお入りください」

 家の中に促した。

「ココでけっこーよッ!! アンタあのラブレターどーゆーつもりなのッ!!?」

「あ、読んでくださったんですかー?」

 サーフィの顔が赤くなる。

「やめてよねッ!! ちょーキモイのよッ!!」

「え、そんな……」

 ショックを受けたサーフィの頭に2tが降ってきた。

「話はそんだけよ。じゃーねッ」

 立ち去ろうとしたルヴィアにサーフィは慌てる。

「まっ! 待ってください!!」

「ナニよ」

「あなたにこのタウンにいてほしいんです!」

「ムリって言ったでしょ」

 背を向けたまま言い放つ。

「ルヴィアさんがいたから、僕は立ち直れたんです。あなたがいなくなったら僕は」

 それを聞いたルヴィアは振り返る。

「そんなコトゆーのやめてよッ! シェレルがかなしむわよ」

「ルヴィアさん」

「いつまでもクヨクヨしてたらシェレルがシンパイするじゃない。はやくゲンキになってアンシンさせてあげて」

「……そうですね」

「またあそびきてあげるから」

 ルヴィアが笑顔で言った。

「はい、シアターでお待ちしてますね。いつでもダンサーになっていただけるように準備してますから」

「ジョーダンじゃないわよ」

 笑い合うルヴィアとサーフィだった。チャンチャン♪



【TALE11:END】

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