TALE9:格闘術大会 II
『皆様大変お待たせいたしました!! 只今よりデュッカ・コロシアム格闘術大会を開催いたします!!』
アナウンスが流れ観客による歓声がワーっと沸き起こった。その中にランディとレーシアも居る。
第1戦、ルヴィア VS 男格闘家。
『それでは第1戦を行います。マリア選手、スレイブ選手。リングへお上がりください』
「プリンセス、がんばれよっ!」
「まかせてっ!」
ルヴィアはドミニオにウィンクしてリングに飛び乗る。
「いきなりルヴィアか」
観客席のランディが言う。
ルヴィアと若い男格闘家スレイブがリングで対峙した。
『それではマリア選手対スレイブ選手。始め!』
アナウンサーの指揮でルヴィアはリングを蹴りルヴィア・パンチを繰り出す。
スレイブは横にかわしルヴィアの横腹に蹴りを入れた。
「あッ!!」
ルヴィアが踏ん張り、しゃがみ込んだところへスレイブは拳を振り下ろす。
リングに片手を付き避けるルヴィア。
「たあッ!!」
下からルヴィア・キックでスレイブの顎を蹴り上げた。
素早く体勢を立て直しスレイブの腹にルヴィア・キック(膝蹴り)を食らわせる。
「ゴホッ」
スレイブが前屈みになる。
ルヴィアは飛び上がって勢いを付ける。
「やあッ!!」
強力なエルボーをスレイブの背中に入れた。
スレイブはリングにブチ当たりダウン。
わずか数十秒の出来事。
観客は呆然としていた。それはドミニオもだった。
「スゲープリンセス。戦い慣れてるな」
『スレイブ選手ダウン! カウントを取ります! ワン! ツー! スリー!』
アナウンサーによるカウントが始まるとスレイブは体を震わせ動いた。
ゆっくり上半身を起こす。
「そーこなくっちゃ」
ルヴィアが微笑む。
だがスレイブは体を震わせたまま立ち上がれない。倒れてしまった。
「あら?」
再びカウントが始まったがスレイブは動かなかった。
『…ナイン! テン! 10カウントオーバー! この対決マリア選手の勝利です!!』
歓声がワーっと起こる。
「すっげーぞ!!」
「瞬殺だな!!」
観客が興奮している。
「さすがルヴィアだな」
「そうですね」
観客席のランディとレーシアが言った。
リングを降りたルヴィアはドミニオへ向かった。
「やったなプリンセス」
「なんかあっけなかったわね」
第2戦、女格闘家A VS 大男。女格闘家が10カウントを取られ大男の勝利。
第3戦、中年格闘家A VS 女格闘家B。中年格闘家のリングアウトにより女格闘家Bの勝利。
第4戦、ドミニオ VS 中年格闘家B
『それではドミニオ選手対ヨルダ選手。始め!』
アナウンサーの指揮で身構えた2人がリングを蹴る。
「はッ!!」
ドミニオが鉄拳を繰り出す。
ヨルダは腕で防ぎ殴りかかる。それをドミニオはかわす。
激しい攻防となった。
ヨルダの蹴りが腹に入りドミニオは吹っ飛ぶ。
「ドムッ!!」
ルヴィアが目を見開いた。
「くッ」
倒れたドミニオは起き上がる。
「初戦からてこずってる場合じゃねー」
「なかなかやるな小僧。私と互角に戦うとは」
「小僧ッ!?」
ドミニオの額に青筋が立った。
「小僧の分際で私と互角にやりあったのは貴様が初めてだ」
髪をオールバックにしているヨルダが渋い声で言う。
「なかなかおもしろくなりそうだ。さぁかかってこい小僧」
ヨルダが身構えた。
伏せていた顔を上げたドミニオの額には幾つも青筋が立っていた。
「オレはガキって言われんのがデェッ嫌ェなんだッッ!!!」
ヨルダに鉄拳を繰り出す。
再び激しい攻防。
ドミニオはヨルダの髪を掴み顔面に膝蹴りを入れようとした。だが手が滑った。
「アッ!!」
ヨルダが叫ぶ。
ドミニオの手が滑った方向。そこに何か物体が飛んでいる。
血相を変えて物体を追いかけるヨルダ。さっきまであった頭のてっぺんの髪がない。
無事にヅラをキャッチして安心する。
ふぅーと一息つくとハッとする。
振り返るとコロシアムはシーンと静まり返っていた。
『か、カッパ選手。リングアウトです!』
「誰がカッパだ!! エッ!? あッ!!」
改めてリングの外に居た事に気づいた。
「しまった!!」
ガビーンとショックを受けカッパの顔が青ざめた。
『それによりドミニオ選手の勝利となります!!』
「えっ、こ、こんなことで勝っちまっていーのか?」
冷や汗を垂らすドミニオだった。
第5戦、ルヴィア VS 大男。
『マリア選手対ヤズー選手。始め!』
ルヴィアがリングを蹴りルヴィア・パンチを繰り出す。
並の男より一回り大きい巨体のヤズーが胸を張る。
ルヴィア・パンチが入りヤズーは少し後方にずれたがルヴィアの顔が歪んだ。
「イッターッ!!」
「グッフッフ、どうだ。俺は鋼の肉体を持つ男だ。鋼鉄並に硬いだろう」
不敵な笑みを浮かべるヤズー。
「フン!」
ヤズーが殴りかかりルヴィアは避ける。
「ならッ」
勢いを付けルヴィア・キック(飛び蹴り)を繰り出す。
またもヤズーは後方にずれただけでニヤリと笑う。
「なんですってッ」
「無駄だ」
「このッ!」
ルヴィア・キック(回し蹴り)をヤズーの横腹に入れた。
ヤズーはビクともせずニヤニヤと笑っている。
横腹に当たったままのルヴィアの足を掴む。
「なッ!」
そのまま回転しブンブンと振り回し始めた。
「キャアアッ!!」
「プリンセスッ!!」
「ルヴィアッ!!」
ドミニオとランディが叫ぶ。
ヤズーはルヴィアを空へ放り投げた。
「ああッ!!」
皆空を見上げる。
ルヴィアは膝を抱えて宙返りし真下にいるヤズーに狙いをつけ片足を伸ばした。
ヤズーは余裕の表情で胸を張る。
「やああ――ッッ!!!」
先程の飛び蹴りとは比べ物にならない凄まじいルヴィア・キック。
ヤズーの胸部で表現できない音がし、威力でヤズーの体が沈みリングにヒビが入った。
ルヴィアはリングに着地する。
「これならどぉ?」
「グッフフフ。効かねェなァ」
「なんですって」
冷や汗をかくルヴィア。
「……まいったわね」
さすがのルヴィアも焦りが見え始めた。
「あッ!!」
目を見開く。
「アンタッ!! ソレナニよッ!!」
ヤズーを指差す。
「ん?」
ルヴィア・キックで破れたヤズーの服の下に何か見える。
「しッ! しまった!」
それを見たヤズーが慌てて隠す。
『どうしましたか!?』
「コイツ服の下にナニかあるわッ!!」
ルヴィアがアナウンサーに言った。
『何かとは?』
「なんかカタイモンよッ!!」
『ヤズー選手、服を脱いでいただけますか?』
アナウンサーが言ったがヤズーは背を向けている。
『ヤズー選手!!』
「はやく脱ぎなさいよッ!!」
ルヴィアも言うとヤズーは決したように服を破いた。鉄の胸当てを身に着けていた。
「あーッ!!」
「卑怯者が」
ドミニオが言う。
「そんなモノ着てたからイタかったのね。ズルイわッ!!」
『ヤズー選手。防具類の着用はルール違反です』
「チッ」
舌打ちするヤズー。
『よってマリア選手の勝利となります!!』
「あら」
歓声がワーっと起こる。
「まーいっか」
ルヴィアはリングを降りてドミニオに向かう。
「プリンセス、お疲れ」
「ん」
「よし、次はオレだな」
気合いを入れるドミニオ。
「ドムの相手、女のコじゃない」
ルヴィアがそう言うとドミニオは冷や汗を垂らす。
「うッ、そーなんだよな」
『続きまして第6戦を行います。ドミニオ選手、ユーリ選手。リングのほうへ』
「がんばってねドム」
「ああ」
ドミニオはリングに飛び乗りユーリと呼ばれた女格闘家もリングに飛び乗った。
『それではドミニオ選手対ユーリ選手。始め!』
ユーリが身構える。
ドミニオは構えもせずユーリを見ている。
「かかってこないなら私から!」
ユーリが走り拳を振るう。
「はッ!」
ドミニオはサッとかわす。
「やッ!」
蹴りもかわす。
ユーリの攻撃をかわし続けるドミニオにルヴィアは冷や汗を垂らす。
「ドムってばまた……」
その様子に観客も不満の声を上げる。
「なんだあいつ、やる気あるのかよ」
「さっきはすごかったのにな」
「ちょっと! 女だからってナメているの!?」
腹を立てたユーリが言った。
「私を女と意識してくれるのは嬉しいけど、今は真剣勝負なんだから遠慮は無用よ!」
「……ん?」
リングに何か落ちている事に気づくドミニオ。
拾ってみる。
「なんだこれ」
それは手の平サイズで弾力があり柔らかい。
「何してるのよ!!」
「……おい」
ユーリを見たドミニオが指差した。
「何?」
下を向いたユーリは驚愕する。
胸の片方が下にずれ、もう片方はペタンコだった。
「キャ――!!! やだァ!! 汗で粘着力が弱くなっちゃったんだわ!!」
両腕で胸を隠して叫ぶ。ドミニオが拾った物はパッドだった。
「……テメー、男だったんか」
額に怒りの青筋を立てたドミニオが拳を震わせパッドを握り潰す。
「ああッ!! ちょっとそれ高かったんだから!!」
「ルッセ――ッッ!!!」
鉄拳でユーリをブッ飛ばした。
ユーリは観客席まで吹っ飛び観客は慌てて逃げる。
倒れると目をグルグルに回して伸びた。
『ユーリ選手リングアウト!! ドミニオ選手の勝利です!!』
「フンッ!」
不愉快そうにリングを後にするドミニオだった。
ついに決勝戦が行われる。勿論ルヴィアとドミニオの対決である!
『いよいよ決勝戦です!!』
ルヴィアとドミニオはリングに飛び乗る。
観客は総立ちになり歓声がワーワーと沸き起こる。
「ついに決勝なんだな」
2人を見つめて呟くランディ。
「どちらが勝つんでしょう」
レーシアが言う。
「ルヴィアはすごく強いんだ。勝つに決まってるさ」
「そうですね」
「やっぱこーなったわね。勝たせてもらうわ」
ルヴィアが余裕の表情で言ったがドミニオは冷や汗をかき緊張気味な表情をしていた。
「ホンキでかかってこないとコーカイするわよ。いーわねっ!」
ファイティングポーズを取る。
『それでは決勝戦を行います。マリア選手対ドミニオ選手。始め!』
アナウンサーの指揮でルヴィアはリングを蹴る。
「やッ!!」
ルヴィア・パンチを繰り出すがドミニオはサッとかわした。
「たぁッ!!」
ルヴィア・キック(回し蹴り)を繰り出すがドミニオはジャンプしてかわした。
「やぁーッ!!」
着地寸前のドミニオの腹に思いっきりルヴィア・キックを入れる。
「ぐはッ!!」
ドミニオが後方に吹っ飛んだ。
「やった!!」
喜ぶランディ。
だがドミニオはリングに足を付けてしゃがみ込み、なんとかリングの端ギリギリで止まった。
「くそッ」
それを見たランディが悔しがる。
「ぐッ……」
ドミニオは片手で腹を押さえていた。
「効いたかしら? さっ、ハンゲキしてきなさいよ」
ルヴィアがそう言うとドミニオは立ち上がる。
「…………」
無言で立ち尽くすドミニオ。
ルヴィアは構えもしないドミニオに腹が立つ。
「かかってこないなら行くわよッ!!」
走りだし飛び上がってルヴィア・キック(飛び蹴り)を繰り出した。
ドミニオは横にサッとかわし着地したルヴィアの背中をトンっと押す。
「ワリー、プリンセス」
ルヴィアは前屈みになった。
「なッ!!」
「ルヴィアッ!!」
声を上げるランディ。
リングから落ちそうになるルヴィア。このままリングアウトになってしまうのか。
「そんなのヤッ!! 『レビテイト』ッ!!」
ルヴィアの体が淡く輝き風をまとってフワっと浮き上がった。
リングに戻るとドミニオを睨みつける。
「よくもやってくれたわねドムッ!! ズルイじゃないッ!! まともに戦いなさいよッ!!」
憤慨した。
だがドミニオはポカンとしている。
彼だけじゃない。アナウンサーや観客もルヴィアに注目しコロシアムはシーンと静まり返った。
「お姉さまったら……」
冷や汗をかいたレーシアがハラハラしていた。
『……こ、これは一体……。マリア選手が宙を飛びリングに戻ったように見えたのは私だけでしょうか……?』
アナウンサーが口を開くとルヴィアはハッとする。
「や、ヤダわァ。見まちがいよォ」
脂汗をかいたルヴィアが無理に微笑みごまかした。
『そ、そうでしょうか? でしたら一体どのようにしてリングに戻られたのでしょうか? 私には宙を飛んだようにしか見えなかったのですが』
「だからそれはぁ……」
困り顔のルヴィア。
「そのお方、プリンセスなんじゃねぇか!?」
突然、観客席から声が上がった。
『はい!? プリンセスですか!?』
アナウンサーが声のほうを向く。
「この前見たんだ、竜巻起こしてるところ。そんなことができるのアイルーン・キングダムのプリンセスしかいねぇよ!」
観客席の男が言うと観客が騒ぎだす。
『……あー、えーとそれが本当でしたら大変なことですね。……あの、お尋ねしますがマリア選手、それは事実でしょうか?』
「そーだけど」
ルヴィアがあっさり答えると観客のざわめきが大きくなった。
「あちゃー」
その様子にランディが冷や汗を垂らす。
『では、あなたはプリンセス……なんでしょうか?』
「だったらなんだっての?」
『こ、これは驚きました!! マリア選手はアイルーン・キングダムのプリンセスだそうでーす!!』
観客から歓声が沸き起こる。
「プリンセス!! プリンセス!!」
プリンセスコールが起こった。
応えるようにルヴィアは笑顔でVサインを振りまく。
『あのープリンセス、水をさすようで申し訳ないんですが』
言いづらそうに口を開くアナウンサー。
『魔法のご使用はルール違反になりますので……』
それを聞いたルヴィアは振り向く。
「そんなの知んないわよッ!!」
『いやーですが、お使いになれるのはプリンセスだけですし』
「うッ」
冷や汗を垂らす。
『プリンセスといえど特別扱いもできませんので、大変申し訳ありませんが敗退となります』
「ウソッ!! あたし負けなのッ!!?」
「エエッ!!」
ランディも驚いた。
『魔法をご使用になられてませんでしたらリングアウトでしたので、はい』
「そんなッ」
大ショックを受けるルヴィア。
『ということで、優勝はドミニオ=エレンティア選手に決定いたしました!!』
歓声がワーっと沸き起こった。
「やった優勝しちまった」
ドミニオの口に笑みがこぼれる。
一方ルヴィアは肩を落として座り込み涙を流した。
夕暮れ。
先程まで熱狂の歓声で満ちていたが格闘術大会も終わり、すっかり人気のなくなったコロシアムの前にルヴィア、ドミニオ、ランディ、レーシアは居た。
「優勝したぜ」
賞金の200万ラルを手にしたドミニオが言う。
「…………」
うつむいたランディは何も答えない。
ショックの大きいルヴィアは落ち込んでいる。
「で、約束どおりプリンセスをあきらめるんだな?」
「…………」
この問いにも答えないランディにドミニオはため息をつく。
「って言ってもムリだろーな」
ルヴィアを見る。
「プリンセス、行こーぜ」
ルヴィアとドミニオが歩きだすとランディは顔を上げる。
「ルヴィアッ……」
悲しそうな表情で2人の後ろ姿を見つめた。
ドミニオはルヴィアに元気を出してもらおうとバーに連れてきた。
「ほらプリンセス。今日は止めねーから好きなだけ飲めよ」
カウンターに座ったドミニオがルヴィアに言った。
「うん……。それじゃこのバーのアルコール、ゼンブっ!!」
「全部ッ!!?」
ドミニオの顔が引きつった。
「ナニよー飲まなきゃやってらんないわよ」
カウンターに突っ伏すルヴィア。
「ハハ、まーそれで元気になるなら」
苦笑いするドミニオだった。
「……ん」
ベッドでルヴィアが目を覚ました。
「あれ……」
寝ぼけまなこで起き上がる。部屋は暗い。
「やっと起きたか」
「……ドム?」
テーブルに置いてあるランプの灯りでドミニオの姿がわかった。
ドミニオはルヴィアに歩み寄りベッドに座る。
「プリンセス憶えてるか? 昨夜朝まで飲んで潰れてずっと寝てたんだぜ」
「あ、そーだっけ」
「もー夜だ。よく寝てたぜー」
笑うドミニオ。
「見てたの?」
「他にすることねーしな」
「ヤダもーッ!」
ルヴィアが突き飛ばしドミニオはベッドからコケたが笑っていた。
「……プリンセス」
「ん?」
ドミニオは床に座ってルヴィアを見る。
「ホントにオレと一緒でいーのか?」
改まって尋ねられルヴィアはなんでと思う。
「いーわよ」
「そーか……。オレはうれしーけど、でもオレは妹様と仲直りしたほうがいーと思うんだ」
「ドム」
「オレにも妹いるし、家族は大事にしねーとな」
「……そーね」
ルヴィアがうなずいた。
次の日。
「ルヴィア本当に来るかなぁ?」
コロシアムの前でランディが不安そうに言った。
「はい、お姉さまがお話あるって言っているんですもの。絶対に来ますよ」
「うん……」
レーシアは遠くから歩いてくるルヴィアとドミニオに気づいた。
「あっ! ランディさん来ましたよ!」
「本当だっ!」
ルヴィアを確認したランディは一目散に走りだす。
「ルヴィアッ」
声をかけるとルヴィアは顔をツンッと背けた。
レーシアを見て歩み寄る。
「レーシア」
「お姉さま」
「……ゴメンネ」
うつむいて謝った。
「ううん。私こそごめんなさい」
仲直りをしたルヴィアとレーシアにドミニオは微笑む。
「ルヴィア、僕もごめん」
「…………」
ランディが謝ったがルヴィアは無反応だ。
「それじゃね」
「お姉さま! 本当にお別れなの?」
悲しそうにレーシアが言う。
「バカね、また会えるわよ」
「プリンセス、ここでお別れだ」
「エッ!?」
唐突なドミニオの発言にルヴィアが振り向く。
「やっぱオレより妹様と一緒のほうがいーだろ」
「ナニ言ってんのよドムッ!」
「短い間だったけど、オレと一緒にいてくれてうれしかった。スゲーたのしかった」
笑顔で言うドミニオ。
「ドム」
「オレ、プリンセスのことゼッテー忘れねーから」
「あたしも忘れないわ。きっとまた会えるわよ。そんな気すんの」
「ああ、オレもそー思う」
ルヴィアとドミニオが見つめ合った。
そしてドミニオはランディに顔を向ける。
「プリンセスを頼みます」
「き、君に言われなくても」
ランディがそう言うとドミニオはフッと微笑む。
「あ、あの」
レーシアがドミニオに声をかけた。
「すいません。ありがとうございました」
お辞儀するレーシアにドミニオは慌てる。
「いえっ、そんな礼言われるよーなことはっ。顔上げてくださいっ」
レーシアが顔を上げるとドミニオはルヴィアに向き直る。
「じゃー、もー行くな」
「うん、わかったわ。ドム、ゲンキでね」
「プリンセスも」
別れを告げてドミニオは歩きだす。
振り返らない。振り返ったら辛くなる。
ルヴィアとの別れを決めたのは今ではない。昨日ルヴィアが眠っている間に考えていた事だ。ルヴィアの寝顔を見つめながら考えた。
ルヴィアに惚れてしまったし一緒にいたかった。離れるのが辛くないといったら嘘になる。
これから始まる2人旅。色々な所を冒険して、どんな楽しい事が待ち受けているだろうと想像した。少しずつでいいから、ルヴィアとの距離を詰めていけたらと思った。
それでも別れを決めたのは、ルヴィアが自分といていいはずがないと思ってしまったからだ。
ドミニオは涙を堪えて顔を上げる。
当初の目的地、アイルーン・キャッスルタウンへいざ向かうか!
ルヴィアは遠くなっていくドミニオの後ろ姿を見つめていた。
なんだろう、この感じ。
心の中にポッカリ穴が開いたような感覚。
ドミニオと離れるのが、こんなに淋しいとは思わなかった。
淋しそうに見つめるルヴィアにランディは声をかける。
「ルヴィア」
「……さっ! いつまでもクヨクヨしてらんないわ。あたし達も行きましょーか」
おてんばプリンセスの旅はまだまだ始まったばかり。チャンチャン♪
【TALE9:END】
【格闘術大会編】終了になります。
格闘術大会の対決シーンですが、ショボくて申し訳ありません。ほとんどギャグ・・(^^;)
お読みくださった皆様ありがとうございました♪