PROLOGUE:魔法王国
☆.。.:*・゜初めまして天使美羽です☆.。.:*・゜
数ある作品の中から私の小説に目を留めてくださり誠にありがとうございます.。゜+..。゜+.ヽ(*’∀’*)/.。゜+..。゜+
この作品はギャグでセリフ多めです(^^;) 漫画を読むような感覚で気軽にお読みください♪
――世界の南方に位置する広大なアイルーン・キングダム。別名、魔法王国。
数あるタウンの中でも大勢の国民で賑わう活気溢れるアイルーン・キャッスルタウンは、世界でも指折りの城下街。1年を通して暑くも寒くもない温暖な気候で、国民の服装は半袖だったり長袖だったりと様々。
その中心にそびえ立つのは白を基調とした壮大で品のあるアイルーン・キャッスル。キングダムを統治する偉大な王城だ。
このキャッスルでは代々、魔法力を受け継いだプリンセスが産まれる。魔法王国といわれるゆえんはそこにある。
キャッスルの広いバルコニーからの眺めは最高で、キャッスルタウンを一望できる。
清々《すがすが》しく晴れ渡る空の下、バルコニーからキャッスルタウンを眺める1人の美少女が居た。見る者全てが息を呑む程のその美貌。
アイルーン・キングダム第1王女ルヴィア=アン=アイルーン。このストーリーのヒロイン。
結い上げた艶やかなピンクの髪にアイルーン・キングダムのエンブレムが施されたティアラを付けている。瞳はミステリアスな光をたたえたシルバー。その大きな瞳に縁取りした長い睫毛。通った鼻筋、薔薇色の唇。そして、なめらかな美しい肌。人間離れした絶世の美貌を誇るプリンセスだ。胸が大きくスタイル抜群、肩や足の出る露出度の高いドレスを好む。その美貌とナイスバディでキャッスルの兵士を数えきれない程、魅了してきたという。
「明日はあたしのちょー待ちに待った17歳のバースデーだわっ♪ これであたしもあの鳥のよーに」
瞳をキラキラと輝かせて空を自由に飛び回る鳥を見つめた。
ふと背後に嫌な気配を感じて振り返る。
そしてやっぱり、と思った。
「ルヴィア、ここだったのか」
そこへ現れたのはルヴィアのいとこランディ=アレイン。18歳。
艶々《つやつや》のブロンドに鮮やかなグリーンの瞳、端正な顔だちの爽やかな美少年。背も高く若いメイドからの人気は高いが、頭の中はルヴィアの事しかないムッツリスケベ君だ。
「ナニ? なんか用?」
一目見るなりルヴィアが睨むとランディはムッとする。
「なんだよ。いきなり睨むなよな」
不愉快そうにルヴィアの隣に向かった。
「とうとう明日だな、ルヴィアのバースデー」
「そーね」
ったく嫌な奴が来た、とルヴィアの腸が煮えくり返った。
彼女はランディを心底嫌っている。何故嫌いかは後々解ってくる事だ。
「ルヴィアもやっと17歳かぁ、嬉しいなぁ」
ニヤニヤして空を見上げるランディをルヴィアは不思議に思う。
「? なんでアンタがうれしーのよ」
聞き捨てならない様子でランディは振り向きルヴィアの両手を握ると真顔で見つめた。
「何言ってるんだよ。これを見ればわかるだろ?」
そう言いルヴィアの左手の薬指で太陽の光を受けてキラッと光ったリングが見えるよう握り直した。
「ルヴィアが17歳になったら僕達は……。まさか忘れてたんじゃないだろうなッ!?」
「や、やーねェ。忘れてないわよ」
そうだった、忘れてた。
脂汗をかいたルヴィアがごまかし笑いをしたが、やはり忘れていたようだった。
次の日。
ルヴィアのバースデーパーティーが盛大に行われた。
派手に装飾された広いダイニングルーム。
天井には輝かしいシャンデリア。長テーブルには豪華な王宮料理がズラリと並ぶ。だが何よりも目を引くのはウェディングケーキ級に豪勢なバースデーケーキだ。何段にもなっている大きなケーキに17本の可愛いキャンドルの炎が煌々《こうこう》と灯っている。
「ルヴィア王女様! バースデーおめでとうございます!」
「ありがと」
正装した兵士やメイドに祝福されルヴィアが笑顔で答えた。
「ルヴィアっ! 今日はいつもよりいっそう綺麗だよっ!」
普段より更に着飾ったルヴィアに見惚れながら言うのはランディだ。
「ホーッホッホッホッ! トーゼンよ」
口元と腰に手を当てたルヴィアが高笑いした。
彼女はお解りのようにナルシストだ。
そんなルヴィアをランディは目をハートにして見つめている。
彼はルヴィアにベタ惚れメロメロなのだ。
「お姉さま、バースデーおめでとう!」
そこへ現れたのはアイルーン・キングダム第2王女、ルヴィアの妹レーシア=リーズ=アイルーン。15歳。
ストレートのセミロングヘアはルヴィアと同じピンクでペアのティアラを付けている。同じくシルバーの瞳に肌はルヴィアより白いだろうか。ほっそりとしたスレンダーな体型で清楚なドレス姿はルヴィアとは対照的でおしとやかな美少女だ。
「ありがとレーシア」
「ルヴィア姉ちゃんっ!! レーシア姉ちゃんっ!!」
元気の良い声と共に現れたのはランディの弟リッド=アレイン。12歳。
ランディより少し濃いブロンドを後ろで束ね、同じグリーンの瞳をした少年。ルヴィアとレーシアを姉のように慕っておりルヴィアも可愛がっている弟のような存在だ。
この日はルヴィアのバースデーパーティーという事で母と暮らすベリーズ・ビリッジから招待されたのだが、普段もたまに遊びに来ているとか。
「ルヴィア姉ちゃんっ!! バースデーおめでとーっ!!」
笑顔でリッドがルヴィアに飛び付いた。
「ありがとリッドくん。来てくれてうれしーわ」
ルヴィアも笑顔で答える。
「アタリマエじゃんルヴィア姉ちゃんっ!!」
「よう、久しぶりだなぁリッド」
額に青筋を立てたランディが口元をヒクヒクさせていた。
リッドがルヴィアに飛び付いたのが気に入らなかったのだろう。彼がそんな事をしようものならルヴィア・パンチをお見舞いされる。
「フンッ!!」
ランディを一目見るなり不機嫌になったリッドが勢い良く背を向けた。
彼も兄のランディをルヴィアと同じく嫌っている。それというのもランディはリッドが幼い頃までは一緒にビリッジで暮らしていたのだが、ルヴィアの側にずっと居たいという理由でキャッスルに暮らしている事が許せないらしい。
「久しぶりね。ランディ、ルヴィアちゃん、レーシアちゃん」
聞こえた声に3人は振り向く。
「あっ! ミレイアおばさまっ!」
「母さん」
そこに優しく微笑む美しい女性が居た。
ミレイアはランディとリッドの母でルヴィアとレーシアの母、今は亡きアイルーン・キングダムのクイーン、マリアンヌの妹だ。
「ルヴィアちゃん、バースデーおめでとう」
「ありがとーございます。おゲンキそーでよかったですわ」
「ミレイアおばさま、お久しぶりですわ」
ルヴィアとレーシアがドレスを摘み膝を曲げてお辞儀した。
「おお、よく来てくれたな。ミレイア、リッド君」
「おじさまっ!」
「マックス様」
2人が振り向く先には口髭をたくわえた渋くてダンディな男性の姿。
頭にはクラウン。紺のマントをまとう姿はとても貫禄がある。
ルヴィアとレーシアの父でありアイルーン・キングダムを納める偉大なキング、マックスだ。
あーあ、早く夜になんないかしら。
ルヴィアはボンヤリとしていた。
夜になるのが待ち遠しい。
「ルヴィア」
「きゃッ! お、おとーさま」
突然、目前にマックスが現れルヴィアがビックリした。
「バースデーおめでとう、ルヴィア。おまえもやっと17歳だな。これで約束どおりおまえは……。私は嬉しいぞ」
ハンカチで目頭を押さえジーンとするマックスにルヴィアは冷や汗を垂らす。
「そぉ」
「おじ様、照れるじゃないですか」
話をちゃっかり聞いていたランディが1人照れまくる。そんなランディをルヴィアは横目でジッと睨んだ。
長テーブルに着席したルヴィア達にマックスから重大な発表が行われようとしていた。
「えー皆の者、ここでめでたい話がある。本日17歳のバースデーを迎えた我がアイルーン・キングダム第1王女ルヴィアと……」
冷や汗をかいたルヴィアは肩をピクッと震わせた。
一方、向かい側に居るランディは顔を赤らめている。
「今は亡き我が妃、マリアンヌの妹ミレイアの長男であるランディ君が結婚することになった!!」
兵士とメイドによる歓声がワーっと沸き起こった中、1人驚きを隠せない者がいた。
「エエ――ッッ!!! チョットそれホントなのッ!!? ルヴィア姉ちゃんッ!!」
リッドだ。
長テーブルをバンッと叩いて立ち上がりルヴィアに問い詰めた。
「う、うん……」
うつむいたルヴィアが元気なく答えた。
「エ――ッッ!!? マジでッ!!? このバカ兄キと結婚すんのッ!!?」
目を丸くしたリッドが信じられないといった様子で隣に居るランディの額に人差し指をザクッと突き刺す。
「なッ! なんだとォーッ!!?」
ランディの額に青筋が立った。
立ち上がり反撃を開始する。
「結婚しちゃ悪いのかーッ!!」
「アタリマエだろッ!! オマエなんかにルヴィア姉ちゃん渡してたまるかッ!!」
「何をッ!! 子供のくせに偉そうなことを言いやがってッ!!」
兄弟ゲンカが炸裂した。
「ランディ!! リッド!! やめなさい!!」
ミレイアが2人を制止した。
「まだ、話が終わっていないのだがね……」
冷や汗を垂らして静かに呟くマックス。
「式は来月の9月12日に挙げる予定だ!! その時はまた皆の者宜しく頼むぞ!!」
1ヶ月後、とランディが瞳を輝かせた。
「チェッ! ナットクいかねーよ。あとでおじさまにコーギしてやる」
ブツブツと文句を呟くリッドだった。
キャッスルタウンの上空には盛大に花火が打ち上がる。
ルヴィア達はキャッスルタウンをパレードする為、馬車に乗り込んでいた。
『只今より、アイルーン・キングダム第1王女ルヴィア様の17歳のバースデーを祝しまして、恒例のキャッスルタウン・パレードを行います。国民の皆様は盛大にお迎えください。更にもう1つ素晴らしい発表がございます。来月の9月12日、ルヴィア王女様と亡きクイーン、マリアンヌ様の妹君、ミレイア様のご長男であるランディ様がご結婚されることになりました!! 以上のことも含めまして盛大にご祝福くださいませ!!』
キャッスルタウン全域にアナウンスが流れた。
そんな中ルヴィアはため息をつき、皆めでたいと祝福の笑みを浮かべているにも関わらず1人表情が冴えない。
隣のランディはというと国民に結婚を発表された嬉しさと気恥ずかしさで顔を赤らめウキウキ、ニタニタとかなり不気味だった。
「おいバカ兄キ、キモチワリーよ」
顔をしかめるリッドのツッコミがあったのはいうまでもない。
マックスはいつもと様子が違うルヴィアに疑問を持ち声をかける。
「ルヴィアどうした。さっきから元気がないな。おまえらしくないではないか。今日はおまえが主役なんだから、1番元気がないとおかしいぞ」
「え、ええ」
ルヴィアは思う。
あたしがいつもヒロインだけど。
パレードが始まった。
大通りの両サイドに集まった国民による祝福の歓声の中、兵士に続き2頭の白馬に引かれた馬車はゆっくり進む。
歓声に答えるようにマックスやランディ、リッドは微笑みながら手を振る。レーシアも恥ずかしそうに、はにかみながら手を振る。
だが肝心のルヴィアは相変わらず表情が冴えなかった。
皆に1ヶ月後は結婚式と伝わってしまった事に罪悪感を感じているのだ。
「ルヴィア王女様どうしたんですかー!!?」
「元気ないですよー!!」
そんなルヴィアに国民の心配する声があった。
彼女の元気なイメージが強いからだ。いつもは国民に対し『ハ〜イっ♪』と投げキッスまでするサービス精神旺盛な彼女だけに、その違いは一目瞭然だろう。ランディがその投げキッスに嫉妬していた事はいうまでもなかれ。
傾いた太陽が空とキャッスルタウンをオレンジ色に染める。
夕暮れ空の下、パレードも終わり疲れたルヴィアはバルコニーに居た。
このバルコニーはとてもくつろげる彼女のお気に入りの場所だ。
バルコニーにはアンティーク調のテーブルとチェアが幾つかあり、心地良い昼下がりに好物のパフェを食べると最高なのだ。
「あー疲れたー」
ルヴィアがテーブルにグッタリともたれた。
「なんだよルヴィア、だらしないなぁ。普段はそんなじゃないだろ? パレード中は浮かない顔をしてたし。一体どうしたんだよ、大丈夫か?」
向かいに座っているランディが心配そうにルヴィアを見つめた。
「結婚式は1ヶ月後だってさ、楽しみだよなー。おじ様がルヴィアと僕のバースデーの間の日にしてくれたんだよ。ルヴィアのウェディングドレス姿、すっごく綺麗なんだろうなー。今日以上にさ」
ルヴィアを見つめてランディがニヤニヤした。だがルヴィアはもたれたまま無反応だ。
「おいルヴィア、聞いてるのか?」
「ウッサイわね、だまってなさいよ」
ルヴィアが冷たく言い放つとランディはムッとする。
「なんだよ、そんな言い方しなくたっていいだろ?」
するとルヴィアは顔を上げ、ため息をつきランディを見つめて思う。
ランディ。エッチで本当にどうしようもない奴だけど、当分お別れね。
ルヴィアに見つめられたランディは照れて顔を赤らめる。普段ルヴィアは自分の顔なんてまともに見てもくれない。
これはもしかして誘っているのでは、と赤い顔でドキドキした。
もう顔を見ずに済むなんて超嬉しい!
心で喜びを感じるルヴィアだが、喜びが表情に出てしまいランディには微笑んで見えてしまった。
そんなルヴィアに間違いないと確信したランディは興奮しながら立ち上がり両手でルヴィアの片手を握る。
「嬉しいよルヴィアっ! やっとその気になってくれたんだねっ!」
「はあッ!?」
何を言いだすのかとルヴィアが思いっきり顔をしかめた。
「でもここじゃ途中までしかできないよな。部屋に行こうかっ」
ランディがデレデレしたいやらしい顔で言うとルヴィアの額に青筋がピキッと立つ。
「くォんのバカァ――ッッ!!!」
必殺鉄拳ルヴィア・パンチが炸裂! ランディの顎に繰り出しブッ飛ばした。
「あ゛〜〜〜〜」
涙を流したランディは軽く10mは吹っ飛び哀れ頭から崩れ落ちた。
額に青筋を立てたままルヴィアは拳をワナワナと震わせる。
「ったくコイツはッ!! すぐこれなんだからッ!!」
憤慨しながら立ち去った。
……どうしてダメなんだろう、結婚するのに。
倒れたまま涙をシクシクと流して思う哀れなランディだった。
キャッスルは城内も白が基調だ。
広い廊下には真紅の絨毯が敷かれ、壁には炎の灯ったキャンドルが等間隔に並ぶ。壁際で槍を手にした兵士が警護をしている。
真っ白なシーツを抱えたメイドは兵士に会釈して通り過ぎた。廊下の角に差しかかると突然、人影が飛びだす。
「ヒャア!!」
驚きのあまり壁際に飛び退きシーツを落とすメイド。
人影の正体はルヴィアだ。廊下を曲がり駆け抜けていく。
「プリンセス!! 廊下は走らないでくださいませ!!」
「ゴメンゴメ〜ンっ!」
ルヴィアが笑いながら走り去った。
「大丈夫ですか?」
兵士がメイドに声をかけた。
「はい」
「それにしても、ルヴィア王女様のおてんばぶりにはまいりますな」
「本当に。妹のレーシア王女様はおしとやかな方ですのに」
メイドがため息をついた。
ルヴィアのおてんばはキャッスルでも評判だ。幼い頃からの教育兼お目付役はプリンセスらしく上品に振る舞え、レーシアを見習えと目くじらを立てる。ルヴィアも妹のレーシアと比較されるのはおもしろくない。だが中には元気があって良いという兵士の意見もあるのだ。
レーシアの部屋。
床には高級絨毯、壁際にはレースの天蓋カーテン付きのフカフカなベッドがある。中央にはアンティーク調のテーブルと、それを挟み向かい合って置かれた横長の高級ソファー。良い香りの花を生けた陶器の花瓶がテーブルに置いてある。隅には大きな本棚。レーシアは読書家で暇さえあれば読書に没頭する。並んでいるのは専門書や小説が中心だ。細かい字を読むのが苦手なルヴィアには本のタイトルを見ているだけで頭痛がしてくる。
「お姉さま、お話って?」
ソファーで優雅に紅茶をすするルヴィアに向かいに座っているレーシアが尋ねた。
ルヴィアはティーカップをテーブルに置くと真顔になる。
「うん……。あのね、おどろかないで聞いてよ?」
普段はしないルヴィアの真剣な表情にレーシアは緊張する。
「エ――――!!!!!」
レーシアの叫び声が廊下に響き渡った。兵士とメイドがギョッとする。
彼女は普段おとなしいものの、ここぞという時は想像できないくらいの大声を出す事が、しばしばある。
「レーシア……。あんたね……」
あまりの大声に両耳を塞いだルヴィアがキーンとしていた。
「ご、ごめんなさい……。でもお姉さま、今夜キャッスルを出るってどういうことよ!?」
「どーって、そーゆーコトよ。ずっと前から決めてたコトなの」
「ずっと前から!?」
「あたしがランディと婚約した時からよ」
やっぱり、と思ったレーシアはため息をつく。
「お姉さま、まだ諦めていなかったのね。前にお父さまに止められたのに」
「トーゼンよ。このあたしがそーカンタンにあきらめるワケないじゃない。あの時はガマンしたけど、17歳になったらゼッタイ、ボーケンの旅出るって決めたのっ!」
両手を握り合わせたルヴィアがウットリと語る。
「でも来月までには帰ってくるんでしょうね」
「なんで?」
「なんでって、1ヶ月後は結婚式じゃないの!」
「知んないわよ、そんなコト」
ルヴィアの身勝手な発言にレーシアは腹が立つ。
「何よそれ!! 無責任すぎるわ!!」
「しかたないじゃない、こーするしかなかったんだから。いちおー婚約くらいしとかないと、おとーさまウルサイんだもん」
「じゃあ結婚なんて嘘で最初からする気なかったのね」
「トーゼンっ! 結婚は愛する人としなくっちゃダメよ。いくらキングダムのためとはいえ、愛してもないランディと結婚するなんてジョーダンじゃないわ。あたしはあたしの道を生きんのっ!」
「お姉さま! まだそんなことを言っているの!? このアイルーン・キングダムは代々、血族結婚なのだから仕方ないことなのよ!?」
「だからって、あたしそんなのヤなのッ!! どーして決められたヤツと結婚しなきゃなんないワケッ!? 結婚相手くらいジブンで決めるわッ!!」
ルヴィアが強い口調で言うとレーシアはため息をつく。
「お姉さまらしいわね。でも結婚が嘘だったなんてランディさんやお父さまが知ったら……」
眉をひそめるレーシア。
「あたしにはカンケーないわ」
基本的にルヴィアは自分の事しか考えない。
「ランディさん、かわいそう……」
「ねっ! そんなコトより、おねがいあんだけどぉ」
「えっ、なあに?」
「レーシアも、あたしといっしょに行かないっ!?」
唐突なルヴィアの発言にレーシアは目を丸くする。
「エエッ!? 私も一緒に!?」
「そーよ。こんなタイクツなキャッスルの暮らしレーシアだってつまんないでしょっ!? 世界に飛び出てジユーにいろんなトコ行くのよ。ワクワクするよーなコトとかあって、ちょーたのしーわよっ! そしてぇ、ステキなカレシ作っちゃったりしてぇ♪ ねっ!? レーシアだってそろそろカレシ見つけなきゃ」
彼氏を作るのも旅に出る目的なのだ。だっていつまでもキャッスルに居たら満足に恋もできやしない。年頃なのにそんなのつまらないっての。当然レーシアだって彼氏が欲しいはずだ、乙女だもんとルヴィアは思ったが。
「私はそんなのいいわよ」
あっさり言われてルヴィアは目を丸くする。
「エ――ッ!!? レーシア、カレシ欲しくないのォッ!!?」
「そうじゃなくて、お姉さまだけならまだしも、私までキャッスルを出たりしたらどんなことになるかわからないの!?」
「なーによ。そんなコト気にしなくったっていーわよ」
「そういうわけにはいかないわ!! 本当に無責任ね!!」
レーシアが怒鳴るとルヴィアはシュンとする。
「ねぇお姉さま、もう1度考え直して。このキングダムがどうなってもいいの? お姉さまがランディさんと結婚しないと、このアイルーン・キングダムは……」
「レーシア……」
真顔でレーシアに見つめられルヴィアは戸惑う。
「……ワルイけど、あたしキングダムのコトよりジブンがシアワセになりたいの」
「お姉さま!」
ルヴィアの答えにレーシアが目を見開きショックを受けた。
「酷いわ……。お姉さまは本当にキングダムのことをなんとも思っていないのね。見損なったわ!」
「ゴメン……」
ルヴィアが謝ったがレーシアは立ち上がり背を向ける。
「出ていって、お姉さま」
レーシアを怒らせてしまった。
冷たい態度にルヴィアは焦る。
「レーシア……。あのね、このコトはレーシアにしか言ってないの。ダレにも言わないで、おねがい」
「……言わないわよ」
ルヴィアはレーシアを気にしながら部屋を出ていった。
夕日が沈みかけ星が瞬き始めた空。
薔薇のブーケを手にしたルヴィアはキャッスルの地下へ向かう。
地下室には炎の灯ったオブジェに四方を囲まれた棺がある。棺にはたくさんの薔薇の花に包まれた美しい女性の姿。
「おかーさま……」
ルヴィアが見つめる女性は母マリアンヌ。彼女の美貌は遺体でも全く衰えず、まるでただそこで眠っているだけのようだ。
「おかーさま、あたし今夜キャッスル出るわ。いけないコトだと思うけど、このままじゃあたし、あとでゼッタイくやむと思うの。コーカイのない人生にしたいから……」
【PROLOGUE:END】
長々とお読みくださり本当にありがとうございました.。*゜+.*.。(≧∀≦)゜+..。*゜+
貴重なお時間をさいてくださったあなたに感謝でいっぱいです(人´ω`*).:*゜:。:.