よくある話。
*R15。文章全体が、下ネタです。すいません。書いた作者も意味がわかりません。*クリスマスの可愛い話のはずだったのに。
――私、雁園 史はピンチ?だった。
恋人だった、男――逸見 有利は、綺麗な顔を歪め、下世話に嗤う。
「史の親父が、俺の母親と浮気していてさ、それで、俺の親父が自殺したわけ」
只今、私は有利のガラの悪い男友達2人に、ベッドの上で拘束されている。
そして、有利の手にはビデオカメラ。
ビデオカメラを回しながら、有利はウットリと話を続けた。
「恋人ごっこは、楽しかっただろ? 俺は辟易していたけどな。史には悪いけど恨むなら自分の父親を恨めよ。俺の友達に気持ち良い事してもらって、それをビデオに収めてネットで流してやるから。気が向いたら観てくれな」
なんだ。その、よくある少女マンガやレディースコミックな展開の復讐話は。
前世でも、よく似た話を3.4本は読んだぞ。
――前世。
そう、前世の事をこのピンチの中、私は思い出した。
前世の説明の前に、今世の私の説明をしよう。
私は、世間知らずのお嬢様で華も恥じらう19歳。
産まれてこのかた純粋培養で育てられ、「オホホホ」「ですわよ」というのが当たり前の世界で育った。
そして、目の前のイケメンは恋人だった逸見有利。同じ歳の私たちは、父の主催のパーティーで出会った。私は出席者で、彼がウエイター。今思えば、わざとらしくドレスにジュースをかけられて、そして数日後、今度は街で再開。男に免疫のなかった私は、イケメン有利に甘い言葉をかけられて、すぐに落ちた。そして、二人の交際がスタートしたわけである。
クリスマスの今日。
彼とのデートでホテルで食事。
そこで飲んだジュースで、意識朦朧としている所、この状態である。
よくある話だ。
「どうした、史? 怖くて悲鳴もあげられない?」
「有利、いいのかよ。こんな上玉」
「オレ、たまってるから手加減できないかも」
おうおう。
素晴らしき下種野郎達。
そして、恋人だった男の顔をじっと見つめた。
解せぬ。
今世の私よ。顔で選んだのだな。細身のマッチョなど……いや、ありか。ありだな。 グッジョブ! 私!
「ねぇ、あんた達、ちょっとノいてよ」
「はぁ? 何言ってくれちゃってんの?」
「だめだよー 史ちゃん。これから、俺達と気持ちいい事するんだから」
有利の下種友人AとBが、にやにやしながらも服に手をやろうとした。
「ちょっと、このワンピ、10万はするのよ。ちゃんと脱がないとシワになるでしょ! それから、そこの友人A!! あんたが破ったボレロ、一点もののお気に入りだったのに! 弁償できんの?!」
「友人Aって、オレの事か?」
「おい、有利。こいつ、本当にお嬢様か? 口調がちがくねぇ?」
「………」
私の変貌に、男ども3人は眼を丸くする。
逃げられないんだから、どけよ。と言うと、結構あっさり上からどいてくれた。
ああ、重たかった。
私はベッドを降りながら、ワンピースを脱ごうとするが、背中のチャックに手が届かない。
「ちょっと、気が利かないわね。 そこのボーとしている友人B! チャック! ほら! 早く!!」
Bってひょっとしてオレの事かよ!と半泣きになりながらも、律義にチャックを下ろしに来た。
Bよ。
お前は、わんこ系か。
可愛いのう。
チーーーーーーーー。
シーンと静まり返ったホテルの一室。
チャックの下がる音だけが響く。
私は、ぐしゃぐしゃにされた髪から、ピンやらゴムやら髪飾りを取り除き、頭をふるう。
ワンピースの下には、清楚な刺繍が施された真っ白なスリップが現れた。
「………」
白か。
今度、黒にピンクか、ひょう柄を買おうと心に決める。
まだ誰にも踏み荒らされていない今世での私の下着姿に、友人AとBは興奮を隠せない。
「お嬢様だと思っていたら、結構遊んでるんじゃねぇの?」
「うわー、マジで興奮するんですけど」
私は、男どもの鼻息の荒さに呆れつつ、ベッドの上で胡坐をかいた。
「で、ヤルのはいいわ。 でも、覚悟はできているの?」
「はぁ?」
「覚悟って、お前ビデオ回されてるの気付いてねぇの?」
AとBは、紛うこと無き馬鹿ものだった。
ここで、まだ勝者だと思っているのだろうか。
「私はーーー、そのビデオがーーーネットで流されてもぉーーー屁でもないの」
「はぁ?」
これに反応したのは、先ほどから、固まっていた彼。有利だった。
「ああ、有利。あんた、これで“復讐”?が、果たせるとか? 思っているみたいだけど、意味ないし」
「何言ってんだよ!」
「まぁ、うちの親父がしたことは、後で詫びをいれさせるわ。こっちからも殴っておくし。で、気に入らないのは、その恨みを、直接本人じゃなくて、娘の! 一番かよわき私に向けた事。いっつも、思っていたのよねー。こういう話を読むたびに。やる男も男だけど、騙される女も女って」
「………」
「今世での初体験が、いきなり3Pだなんて、体力持つかわかんないけどさ、あ、あんた達! 性病持ってないでしょうね! ただでさえ、頭空っぽで性病持ちっていい所ないわよ!」
「ひでぇえ!!」
「持ってねーーよ!!!」
AとBが、騒がしい。Bなんか涙目だ。
うむ。でも、こいつら頭悪いくせに、有利の友人ってこともあって、身体…なかなかいいものを持ってそうだ。うへへへへ………楽しめそう。
「ちょっと待てよ!!!」
「なんだ、ビデオ係。ちゃんと、ビデオかまえとけ」
「なんで、泣いて嫌がらないんだよ! 違うだろ! 史はお嬢様で、俺の横を歩くのも小走りで、すぐになんでもない所で転んで、俺がちょっと怒るとオロオロして、涙ぐんで!!」
「誰だ。そのむかつく女は。どこぞのヒロインか!!」
「違うよ! 史! なんでだよ! ベッドの上で下着姿で胡坐を組んで、そんな言葉使いするような女じゃなかったはずだ!! 俺の史は! 俺の史は!!」
「………いや、もう、お前の史じゃないし。それに、お前は、どこぞの乙女なんだ? それとも、まざりたいのか?」
「!!」
「お前、さっき、私に飲ませたジュースに睡眠薬と媚薬をいれただろ? だから、さっきも頭がくらくらするし、身体もほてって、ヤリたい気分だし。 ビデオ撮影も燃えるし、なぜなら、初体験が記録に残るって、マレだし。へへへ。 19歳のぴちぴちだった頃の思い出。しかも、3P。お宝ビデオだよ。それに、こいつら、頭空っぽそうだけど、いい身体で、顔もまぁまぁタイプだし。ありだよ! あり! よくこいつらを選んだな! 後腐れなさそうだし。よい犬どもだよ」
「なんだよ…それ」
「お前も復讐を果たせた気分になって、私も気持ち良くなって なんだ。WIN WINの関係か。 ははははははははは!!!! いい事じゃないか」
私が腰に手をやり高笑いをしていると、顔を青ざめた有利がカメラを置いて後退した。
「お前…さっきから、誰なんだよ……」
「まぁ、さすがにビデオをネットに流されると、うちの親父も黙っちゃいないだろうけど。良くて、お前ら3人、海の底? いやーー、うちの親父は娘ラブの鬼畜だからさ、お前らのまわりの親や親戚、友人全部、離散? なーんて………あれ?」
AとBがまで顔を青ざめさせた。股間にあった、さっきまで元気だったものも、シュンとしてるし。 ちょっ、何、しょんぼりさせてるんだ! 元気ださせろって!!
なんだか、しんみりムードになってきた。
あれ? ヤラないの? どうするの? 男3人もいるのに、この火照った美少女の身体を、一人で慰めろって鬼畜な事をいうわけ?
「いやだーー。 もう、しんみりしちゃってさ、ほらほら、元気だして。据え膳食わぬは男の恥って、昔の人は言ったじゃない。ほらほら、カモォン。 どんなプレイする? ローションは、今日はないから、別の日にしよっか。私、男の人に潮をふかせるの得意だから、覚悟しておいてね」(さっきの覚悟の意味)
ベッドの上で腰をくねらせて、ウインクして手招きするが反応がない。
あれ? AとB、何、上着なんか着だしてるの?
Aなんか「すいません。破いたボレロ弁償します」と土下座までしだして。
そんな事より、あれ?
AとBはさっさと、部屋を出て行って、残されたのは有利だけ。
その有利も、どこを見ているのか呆然としている。
「ゆ、有利くん?」
「…………復讐って、むなしいよな」
「へ?」
「俺、何やってたんだろ。母親が浮気して親父が死んでさ。それから、俺の家、むちゃくちゃになって、恨みだけでここまで生きてきたんだ」
「…はぁ」
「浮気相手のパーティーにバイトとして忍び込んで、そこで幸せそうな史の姿を見てさ、一気に憎らしくなって。俺は不幸なのに、同じ年の史は幸せそうで」
「いやぁ、まぁ」
「でも、違ったんだな」
「へ?」
「きっと、史も自分の親父の浮気で苦しんでたんだろ? 自分を守るために……性格まで歪んでしまって」
「は?」
「ごめん。今までの事は謝っても許してもらえないかもしれない。でも、俺、これからは前を向いて歩いていく! だから、史も頑張って!」
「あれ?」
なぜか、握手をされて、有利は帰って行った。
ビデオは全然撮ってないけど、心配だろうから全部置いていく。なんて気遣いまでして。
バタン。
………
………
………
「なんでだーーーーーーーーーーー!!!!!」
私の声が、むなしく部屋に響いた。
さて、今更ながら前世の私の話をしよう。
前世での私は、男だった。
男は男でも、男が好きな男だった。
それも、立場的には「ウケ」で「ネコ」で、常に「女役」だった。
AとBに押し倒されている時に、前世の記憶がぐわーーーーと戻り、この状態に興奮したのだ。
堂々と、「ウケ」として生きられる!! と。ノンケの男たちが、私をみて興奮している。そこに、ビデオカメラ。なんだ、ここは天国か。
前世での彼氏は、鬼畜でビデオ撮影などデフォでしてくる野郎で、それで何度も脅された。しかし、脅され続けて私は気付いた。
“この緊張感。ワンダフォー”
最期は、腹上死ならぬ、腹下死で死んだSEX依存症気味だったけど……。
……
まぁ、いい。
今世では、私は美少女だ。
簡単に、好みの男を捕まえられるだろう。
私はまだ見ぬ、男たちを夢想し、そして一人高笑いをしたのだった。
その後、親父に男とホテルに居た事がばれ、今まで以上に娘馬鹿の親父の包囲網が強くなる。
そして、30歳まで処女で居る事になるとは、今の私には夢にも思わない事実で………。
「~~っこんなのって、ありかーーー!!!!」
有利とAとBと読書様=ドン引き