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EPISODE07 消せない傷

南米アマゾン。


熱帯であるこの地で、1人のアメリカ人の青年が歩いていた。


青年は筋肉質な体格に、黒のシャツ、ジーンズを穿いていて、大きなバッグを背負っている。


彼はトビアス・キートン。アメリカ合衆国のドレイクシティからはるばるやって来た。


森を抜けると、村が出てきた。


トビアスに気づいた子どもが家に入っていく。


すると、村長であろう男性が出てきた。


トビアスは男性に近づくと、スペイン語で話しかけられた。


「お前は何しに来た?」


「マヌエラ・ヴェラスコに会いに来ました。」


「マヌエラだと?お前は彼女の客か?」


「ええ。」


「わかった。彼女ならいるよ。」


男性は家に入り、マヌエラを呼び出した。


少しすると、タンクトップを着た女性が出てきた。体は鍛えられており、しなやかな印象。


整った顔立ちをしている。


「あなたがトビアスね?今日からよろしく。」


マヌエラは握手を求めてきた。


「ああ、こちらこそ!」


トビアスは握手を返した。


マヌエラは言った。


「じゃあ、行きましょうか?ジャングルへ。」


「ああ、行こう。」


2人は村を出ると、熱帯のジャングルへと向かった。


その道中。


「トビアス、あなたはトラウマを克服したいようね・・・」


マヌエラは全てを見抜いていた。


「なぜわかったんだ?」


「あなたの眼がそう言ってるわ・・・捕食されるのを恐れた草食獣のようにね。トラウマを克服するには、「狩人の眼」と「嵐にも強く、鉄よりも硬い意思」が必要よ。でも、あなたなら乗り越えられるはず。さあ、まずはそこの川で練習しましょう。」


マヌエラはタンクトップとズボンを脱ぐと、ビキニスタイルでトビアスに言った。


「いい?私が手で獲物を捕らえるから。手本を見せるわ!」


マヌエラは川に飛び込んだ。


残されたトビアス。


彼は着ている服を脱ぎ、パンツだけになり、座って待つ。


数分後。


マヌエラが川から顔を出した。


彼女の手にはヘビが握られていた。


「どう!?今日から私のペットよ。」


マヌエラはヘビにキスをした。


それに驚くトビアス。


「怖くないのかい?」


「ええ。彼はおとなしいから!さあ、次はあなたの番よ!とにかく自分の眼の前のものを狙うの!」


マヌエラは陸に上がると、首にヘビを這わせ、トビアスに言った。


トビアスは鼻をつまんで、川に飛び込んだ。


トビアスは水を恐れていたのである。


しかし、ここまで来て逃げるわけにはいかない。


そう思った。


眼の前で巨大な魚が泳いでいる。


トビアスはそれの動きをじっくり見ると、手を伸ばした。


ヒレを掴んで、そのまま自分のほうへ。


見事捕獲に成功し、陸に上がるトビアス。


「見ろよ・・・!大物だ!」


トビアスは魚を掴んで、マヌエラに言った。


「あなた、素質があるようね。じゃあ、次行きましょう。」


マヌエラについていくトビアス。


着いた先は、滝であった。


「この滝の下に立って、精神を集中させるの。これが意思を鍛える試練よ!」


マヌエラは滝の下に立つと、手を重ねて、精神統一する。


彼女は苦痛の表情を見せることなく、やってのけた。


「どう!?あなたなら簡単なはずよ。」


マヌエラに言われ、トビアスも滝へ。


トビアスは滝の下で手を重ね、精神統一を試みる。


(集中させるんだ・・・そうだ、集中・・・)


心の中で念じるトビアス。


しかし、脳裏に突如として、幻が現れた。


強盗を殺されたあの日・・・・・・


夢の中で、無数のハヤブサが自分に向かってくる・・・・・・


トビアスは叫び、滝から離れると、バタリと倒れこんでしまった。


彼に駆け寄るマヌエラ。


「トビアス!しっかりして!今助けるから!」


必死に自分を救おうとするマヌエラの姿が、かすかに見える。


しかし、暗闇に閉ざされた。


トビアスは暗闇の中を彷徨っていた。


(ここは・・・?)


ずっと歩き続けていると、かすかに光が見えた。


それに向かって行くが、光は出口などではなかった。


無数のハヤブサたちがトビアスを包みこむ。


彼は目を覚ました。


傍にはマヌエラが。


「よかった・・・あなた、ずっと気を失ってたのよ?しかも途中で雨が降るし・・・」


「ごめん・・・・・・」


「謝ることはないわ。あなたはまだ慣れていないから。今日は村に戻るのはよして、ここで朝が来るのを待ちましょう。」


「ああ・・・そうだな・・・」


「ねえ、トビアス。あなた、ハヤブサが・・・とか言ってたけど、あれは何だったの?」


「それは・・・・・・僕が小さな頃からハヤブサが出てくる夢を見てるんだ・・・小さな頃からずっとだ・・・強盗に両親を殺された日もその夢を見た・・・それがトラウマなんだよ・・・」


「でも、あなたはトラウマを克服できたんじゃないの・・・?」


「いや、全く。君の試練を受けて、強くなったのは肉体だけ。精神的にはゼロだよ・・・トラウマを克服できてないどころか、逃げている自分がいる・・・」


「そう・・・あなたには消せない傷があるのね・・・」


マヌエラはそう言うと、トビアスに近づいて、彼を抱きしめた。


「消せない傷は背負っていくしかないのよ・・・運命として・・・自分が変わるしかないの。それは過酷なことだし、強い意志がいる。けれど、あなたなら大丈夫。この自然と一体化して、生命の声を聞きなさい。自然の力はあなたを癒し、そして力強くしてくれるから・・・・・・」


マヌエラに促され、トビアスは目を閉じた。


精神を集中させ、生命の声に耳を傾ける。


彼には声が届いた。


目を開けると、マヌエラは寝てしまっていた。


トビアスは彼女を起こさないように、そっと寝かせた。


翌朝。


マヌエラが目を覚ますと、トビアスは何か準備をしていた。


彼に問いかけるマヌエラ。


「どうしたの?トビアス。」


「ありがとう、マヌエラ。君のおかげで僕は何か変わった気がした。自然の力は素晴らしいよ。人間を力強くさせるからね・・・・・・」


「あなた・・・・・・・生命の声を聞いたの?」


「ああ、君の言う通りにね。僕はここを出るよ。村のみんなに言っておいてくれ。ありがとうとね!」


トビアスは歩を進めようとするが、マヌエラは彼を呼び止めた。


「待って!トビアス。」


彼女の声にトビアスは振り向く。


「いつかまた会おうね・・・今度は好きな人と一緒に・・・」


マヌエラがそう言うと、トビアスはドキリとした。


でも、それは口に出さず、トビアスは笑顔を見せた。


去っていくトビアスを、マヌエラ涙を含んだ眼で見送っていた。


NEXT STORY・・・EPISODE08「博士の異常な実験」街では行方不明事件が頻発していた。行方不明者は皆、天才精神科医コリン・リグナー博士の患者だという。仕事のストレスで疲れたメアリーはリグナー博士の病院に行くが・・・

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