EPISODE16 対決
トビアスを包囲する警察。
そのなかに見覚えのある顔を見つけた。
あのオーウェン警視だ。
オーウェン警視は銃を向けて言った。
「そこまでですよ。キートンさん。」
(やはり、この強盗は囮か... クソっ... この姿じゃ、逃げることしかできん...)
トビアスは、銃を空に向けて発砲。
隙ができた警察から逃亡した。
路地裏を通り、港の研究所へ向かった。
(よし、ここまで来れば大丈夫だ... 必ず犯人の化けの皮を剥がしてやる...)
そんなとき、ロドリゲス警部からの電話が。
「警部か? なぜあんたが... 警視に見つかったらどうする? 盗聴されているかもしれないんだぞ?」
「彼のことなら君は気にするな... そんなことより、今の状況をよく考えろ。今回限りは君を助けることはできない... 君の潔白が証明されるまではな。警視は君がファルコンマンだと知っているはずだ。すぐに君が今いる場所も特定されるだろう。一刻も早く犯人を見つけ出さないと...」
「当然だ。」
トビアスは電話を切り、地下へ降りて行った。
一方、オーウェン警視は車を走らせながら、ジェンキンスと話していた。
「ところであなたはどう思いますか?ジェンキンス君。」
「何が?」
「もちろん、キートンさんが逃げることですよ。」
「警察に追われたら逃げる... 人間の心理じゃないの? 有罪だろうと無罪だろうとね。」
「ほう。では聞きますが、彼が無実なら既に投降しているはずですが?」
「きっと彼はあなたのような人に逮捕されるのが嫌なのよ。ロドリゲス警部に逮捕されるのが本望なんじゃないかしら?」
「なかなか鋭い意見だ。彼と警部は古くからの親友か何かですか?」
「トビアス・キートン... 彼はね、実は子どもの頃、両親を強盗に殺されたのよ...」
「この街で?」
「ええ、はっきりとは知らないけど... 警察に保護された彼を励ましたのが警部だったそうよ。」
それは20年前の出来事。
警察に保護された幼い頃のトビアスは1人泣いていた。
そんな彼にハンカチを渡した刑事。
刑事の眼差しは優しく、暖かかった。
幼いトビアスは刑事に聞くのだった。
「パパとママはどこに行ったの? 帰ってくるかな...」
「大丈夫。きっと帰ってくるよ。君が強くなればな。ほら、もう泣いちゃだめだ。泣いたら強くなれないぞ。」
彼こそが若き日のロドリゲス警部だった。
その後もロドリゲス警部は彼が大学を卒業するまで見守っていたのだ。
(なるほど... それから犯罪を憎むようになり、ファルコンマンに...)
「どうやら今回は私の負けのようですね...」
「あら、考えを変えたの?」
「やっと確信しましたよ。彼がファルコンマンだとね。あなたも知っているはずだ。隠さなくてもいい。」
「...。」
「そして、もう一つ。犯人はファルコンマンと交戦しているはずだ。そう、この橋でね。」
「!?」
ジェンキンスがバックミラーを見ると、鉄仮面の犯人をダークランナーで追うファルコンマンの姿が。
ファルコンマンはワイヤーを射出し、車のタイヤに引っ掛けて横転させた。
車から足を引きずって出てきた犯人はファルコンマンに長いナイフを突きつけるが、ファルコンマンはエレクトリックショットで動きを止めた。
ファルコンマンは犯人の鉄仮面を取った。
マスクの下はなんとメアリーそっくりの女性だった。
「メアリー...?」
ファルコンマンは思わず言葉を漏らす。
「フフフ... ビックリした?」
顔はメアリーにそっくりだが、眼だけは違っていた。邪悪な眼である。
「紛い物め...」
「紛い物? 失礼しちゃうわね。メアリーと入れ替わってあなたと結ばれようと思ったんだけど、あの女、運悪く後からノコノコと来たから殺しちゃった!」
「お前のような悪魔と結ばれるのはゴメンだ。」
「フンッ、あなただって悪魔じゃない。」
そこにオーウェン警視とジェンキンスが走って来た。
ジェンキンスは犯人の手首に手錠をかける。
「リタ・ハリング、連続殺人の容疑で逮捕する。」
リタは逮捕されてもなお、ファルコンマンを睨んでいた。
ファルコンマンは呟く。
「不気味な女だ...」
オーウェン警視はファルコンマンに言った。
「私の負けですよ、ファルコンマン。私は信念がある。しかし、あなたほどではない。
また会いましょう。」
オーウェン警視はファルコンマンに手を振った。
それとともに心のなかで言った。
(キートンさんに謝らなければ...)
オーウェン警視はレストランの予約の電話を入れるのだった。
NEXT EPISODE... EPISODE17 死の船 -DEAD SHIP- ノンフィクションライターのマリック・サザーランドが毒殺された。しかし、彼の居た部屋は密室で、さらにサザーランド邸の住人全員にアリバイがあった。サザーランド邸に訪れたオーウェン警視はサザーランドの友人であるロバート・クルスに疑いの目を向けるが、ロドリゲス警部だけは彼の落としたある写真を見て、疑問に感じていた。
同じ頃、麻薬密輸船を捜査していたノーラン産業はその船がマフィアのものだと突き止めるのだった。