EPISODE15 疾走する疑惑
ロドリゲス警部とメアリーは話していた。
「数日前から、不審な人につきまとわれていて...」
「スミスさん... 私の推測ですが、あなたを狙っているのは連続殺人鬼リーパーかもしれません... いや、ファルコンマンかもしれない...」
「えっ...? ファルコンマンが...?」
「私の上司によるとですね... 鉄仮面とマントが証拠だと...」
「そんなはずないわ! 彼は私を救ってくれたし... それに...」
「... 私も彼を疑いたくない... 彼のおかげで、犯罪は減少しているし... とにかく、ここにいては危険だ。」
「でも、何処に行けば...?」
「誰か信頼できる人は?」
「この街でですか...? トビアスなら...」
「キートンか... よし、彼に連絡しましょう...」
ロドリゲス警部はトビアスに電話をした。
「もしもし、キートンか?ロドリゲスだ。スミスさんを君の家に預かってもらえないか?」
「待ってくれ、彼女に何かあったのか? 」
「ストーカーにつきまとわれているんだ。」
「大丈夫だけど... 今、僕一人でね。サムは出張だし、サーシャは休暇。それに今、警視さんが来てるんだ。彼が帰ってからなら、メアリーを連れて来ても...」
「待てっ!キートン。まさか... 警視って...」
「オーウェン警視だろ?」
「彼が来てるのか...?」
「ああ、事件の糸口が掴めるかもしれないって。」
「そうか...わかった。」
ロドリゲス警部は電話を切った。
一方、トビアスは何か不審なロドリゲス警部を不思議に思いながら、オーウェン警視に対応する。
「すみませんね、警視さん。捜査に協力できなくて...」
「いえいえ、こちらこそ突然お邪魔して申し訳ない。では、そろそろ帰ります。ありがとうございました。」
オーウェン警視は部屋を出て行った。
しかし、オーウェン警視は豪邸を見て思った。
(この豪邸は彼のものではないはずだ... さっき警部と電話で話していたときに同居人と思われる人物の名を口にしていた... 怪しいですね、あの男... )
オーウェン警視はしばらく豪邸を張り込むことにし、車に乗った。
一緒に乗っていたジェンキンスに言う。
「やはり、あの男がファルコンマンかもしれませんね。」
「さあ、どうかしら。彼が犯罪者を複数人相手をできるとは思わないけど。」
ジェンキンスはタバコを吸いながら言った。
「ほう、君は彼に何か特別な感情でも持っているのですか?」
「別に。彼を庇ったくらいでそんなことを思われても困るわ。」
「これは失礼。しかし、凶悪犯というのは表と裏があるものですよ。ジェンキンス君。」
「あなた、頭はいいみたいだけど、人を見る眼がないわね。」
ジェンキンスはキッパリと言った。
「ほら、誰か豪邸に入ったわ。」
「女性のようですね...」
豪邸に入ったメアリーはトビアスに迎えられた。
「メアリー... 聞いたよ、君がストーカーに...」
トビアスが言いかけると、メアリーは彼に抱きついた。
「そばにいて...」
メアリーの行動にトビアスは驚きながらも、彼女を抱きしめた。
「寒かっただろ... この激しい雨の中...」
そう言いながら、タオルで彼女の身体を拭く。
メアリーはトビアスにキスした。
強く抱きしめ合う二人。
トビアスは彼女の濡れた服を脱がして、タオルを巻いてあげた。
「これで大丈夫。」
「ありがと... ちょっと寝てもいい?」
「僕のベッドなら大丈夫だよ。」
「そう... でもあなたも一緒に来て。」
「えっ...? いいけど...」
トビアスは承諾。
メアリーは彼の手を掴んで、ベッドに入る。
メアリーは彼に激しくキスした。
そのまま、愛を交わす二人。
しかし、トビアスは不思議に思うのであった。
(彼女は僕に好意があっただろうか...?)
トビアスはトイレに行くふりをして、様子を伺った。
(まさか... 何かの罠か? 彼女がいきなりキスしてくるなんてあり得ない...)
すると、メアリーはベッドから起き上がり、どこかに向かった。
物陰に隠れて様子を伺うトビアス。
すると、次の瞬間、彼女の悲鳴が聞こえるのだった。
トビアスが駆けつけたときには時既に遅し。
鉄仮面とマントの人物が、彼女の心臓を抜き取り、ハート型の箱に入れていた。
トビアスは彼女の遺体を見た驚愕と絶望、犯人を捕まえることのできない敗北感に襲われた。
リーパーはボイスチェンジャーのかかった声で言った。
「お前の負けだ。ドレイクの英雄戦士。」
リーパーは立ち去って行った。
(なぜ... メアリーを... 許さない... 絶対に...)
トビアスが心の中で思っていると、そこに来たのはオーウェン警視だった。
「そこまでですよ、トビアス・キートン。いや、ファルコンマン!」
オーウェン警視は鋭い眼光で、トビアスを睨みつける。
トビアスは窓から飛び去った。
「待ちたまえ!」
オーウェン警視は窓を見下ろし、叫んだ。
豪邸から出ると、雨が降っていて、彼の行方がわからなくなってしまった。
オーウェン警視は車に戻ると、ジェンキンスに言った。
「どうやら、あなたの勘は外れたようですね
、ジェンキンス君。」
「彼がスミスさんを...? 何言ってるのよ、二人は幼馴染。殺害なんてできるわけないわ。」
「ほう... そう考えますか。 ところがね、サイコパスは異常な思考の持ち主。愛した人を殺すことでひとつになれる... そんな思考を持った凶悪犯が過去にもいたのです。」
オーウェン警視は真剣なものざしで語るのであった。
「あなた... 彼がサイコパスとでも...?」
「まあ、そういったところですね。既に部下が捜索を始めています。」
オーウェン警視はそう言いながら車を出した。
ハンドルを握りながら、ロドリゲス警部に連絡する。
「警部、キートンは豪邸から逃走後、スラム街へ向かった可能性が高いと思われます。」
「うむ... そうですか... では、そこで合流しましょう...」
ロドリゲス警部は電話を切った。
オーウェン警視は携帯電話をしまうと、運転に集中する。
すると、ジェンキンスは彼に言った。
「ねぇ。もし、彼が犯人でなかったら、キートン君に謝って、ディナーに誘うのはどう?」
「ディナー?」
「そうよ。もし、彼が犯人ではなかったらあなたの負けだから。」
「いいですよ。私が負ければの話ですがね。
落ち着いたら行きましょうか。ラフィングマンの件もまだ片付いていないですしね。」
「決まりね。あなたが負けることを祈ってるわ。」
ジェンキンスは窓にもたれながら言った。
一方、トビアスはフードを被って顔を隠し、スラム街から少し離れた赤線地区を歩いていた。
(僕の嫌いな場所だ。肉欲に溺れた男と女が相手を互いに探し回ってる。できればここで厄介ごとに巻き込まれるのは...)
そう考えていると、前から銃を持った男が走って来た。強盗のようだ。
「どけ! おい、そこの兄ちゃん!有り金よこしな!」
「金はない。」
トビアスは素早く強盗の銃を強奪、奴を殴った。
(クソ...なぜこんなときに...)
「おい、兄ちゃん。危ないのはあんたのほうじゃねぇのか?」
強盗の声で振り返ると、聞こえてくるのはパトカーのサイレンだった。
(一体どうなってる...? この強盗、警察が来るのを知っていたかのように...)
絶対絶命のトビアスに天使は微笑むのだろうか?
NEXT EPISODE...EPISODE16 対決... オーウェン警視の罠に嵌められたトビアスは、ファルコンマンの姿で、メアリーの命を奪ったリーパーと直接対峙するため、行動を起こし始める。果たして、ファルコンマンはリーパーを倒して、自身の潔白を証明できるのか。