EPISODE11 警部の長い1日
薄暗い部屋で、夫婦がベッドで寝ている。
夫は目を覚まし、着替え始めた。
それに気づいた妻が眠そうな顔で尋ねる。
「あなた...朝食は?」
「そうだな...コーヒーを1杯頼む。」
「シュガー?クリーム?それともブラック...?」
「ブラック。」
「OK。」
妻はベッドから起き上がり、部屋を出た。
夫はドレイク市警の警部だ。
ジョー・ロドリゲス。
今日も彼の憂鬱な1日が始まるのであった。
しかし、彼には唯一の癒しがある。
愛する妻と息子、そして愛犬だ。
リビングでは、妻がコーヒーを入れ、
息子は愛犬と遊んでいた。
ロドリゲス警部が椅子に座ると、
息子が彼に言った。
「パパ、マックスが気分悪そうにしてるよ...」
「マックスが...? そうか... お医者さんに診せに行かなきゃな。」
「そうね。パパはお仕事だから、ママと行きましょうか。」
「うん。」
息子ジョンの返事を聞いたロドリゲス警部は妻に言った。
「すまない...いつも君に任せっきりで...」
「いいのよ、気にしないで。はい、コーヒー。」
「ありがとう。」
ロドリゲス警部はコーヒーを飲んだ。
そして心の中で唱える。
(ジョンもマックスもかわいそうだ... こんな街で暮らす羽目になって... 彼らがいつかこの街の汚れた部分を知ったとき、私はどうすれば... いや、そのときには私はこの世にいないな...)
ロドリゲス警部はコーヒーを飲み終わり、
いつもと違いぐったりしているジャックラッセルテリアのマックスの頭を撫でた。
「じゃあ、言ってくるよ。」
「いってらっしゃい。」
妻子の声を聞き、車に乗るロドリゲス警部。
そこで、彼の携帯電話が鳴る。
「もしもし?」
「もしもし? 警部。 事件です。」
「場所は?」
「ウィルソンストリート24番地です。」
「わかった。すぐに向かう。」
ロドリゲス警部は現場に到着すると、アパートを見上げた。
パトカーが数台止まっている。
そして、風変わりなバイクも。
ロドリゲス警部は、アパートの事件現場へ。
ミラーとジェンキンスが調査をしていた。
「警部! 朝早くからお疲れ様です。この男、妻子を猟銃で射殺後、自らも自殺を図りました。」
ミラーは男の死体の説明をした。
そして、ジェンキンスも自殺に使われた猟銃の説明を。
「警部、犯行に使用された銃はレミントン社
のモデル870よ。」
「ほう...」
「警部?」
ミラーはロドリゲス警部に確認を取るが、
ロドリゲス警部はベランダへ目をやっていた。
そこにはファルコンマンが居た。
「今回は君の出る幕じゃないようだが...なぜ?」
「事件有れば、駆けつける。それが俺のポリシーだ。あんたならわかるだろう?」
「君もたまには休んだらどうだ?」
「警部こそな。家族が心配してるはずだ。」
「そうかもしれんな...」
ロドリゲス警部は現場を去って行った。
ロドリゲス警部は署に戻ると、またもや事件が飛び込んで来た。
自殺志願者が周辺の人々を騒がせているらしい。
現場に出向くロドリゲス警部。
屋上で男が何やら叫んでいる。
「私は神を冒涜した!私は死なねばならない!」
群衆が見守る中、ロドリゲス警部は彼を説得する。
「君、落ち着け。助けに行くから。」
「黙れ!私は地獄の炎で焼かれねばならん!」
「何を言いたいか知らんが、行くぞ。」
ロドリゲス警部は冷静な表情で屋上へ向かう。
男は今にも落ちそうだ。
「来るな!」
「大丈夫だ。落ち着け。」
ロドリゲス警部は男を捕まえると、下へ連れて行った。
男を制服警官に渡し、ロドリゲス警部は署に戻る。
ロドリゲス警部は黙々と、デスクワークをこなしていた。
心の中で呟く。
(私はなぜ警官になったのかが自分でもわからん... グリーンベレー時代はひたすら心身ともに鍛えることだけを目標にしていたが... それなりに充実していた。だが、今はどうだ?ただ日々を無駄に過ごしているだけじゃないか。私は一体何を求めている...?」
自らの職務へ疑問を投げかけながら、彼は考えすぎて疲れるだけだった。
デスクワークを終え、ロドリゲス警部は車である場所へ向かった。
しかし、そのとき無線が。
「ウェストチェスター36番地の住宅街で事件発生。犯人は精神病患者で、武装し、子供を人質に...」
ロドリゲス警部は現場へ車を走らせた。
現場には、警察や野次馬が。
ロドリゲス警部は制服警官に尋ねる。
「奴は未だ説得に応じないのか?」
「話が通じません!」
「クソッ... 仕方ない。」
ロドリゲス警部は拳銃を芝生に捨て、家に入っていった。
パーティーをやっていたのだろうか? 食べ残しのピザがテーブルに。
ロドリゲス警部は、階段を上がりながら、心の中で呟いた。
(さすがに若い頃のようには身体が思うように動かないな...)
少しずつ、身体にガタが来ているのを感じた。
そう、今まで感じないようにしていただけである。
部屋には、男が少女に銃を向け、何か呟いている。
「オモチャ。楽しい。キャンディ、もらえた。」
「わかった、わかった。」
ロドリゲス警部は男の銃を蹴り飛ばし、拘束した。
そして、少女を連れて家を出る。
ロドリゲス警部はマスコミに囲まれるが、
何も答えることなく、素通りし、車でコーヒーショップへ向かった。
いつものように、コーヒーのブラックを注文し、カウンター席に腰を掛ける。
客を見渡すと、実に様々だった。
気になったのは妊婦。
ロドリゲス警部は考えるのであった。
「あの妊婦... よくこんな街で子供を産もうという勇気があるな。まあ、私の妻も同じではあるが... しかし、かわいそうだ... こんな腐敗しきった街で... )
彼はそんなことを考えつつ、コーヒーを飲む。
すると、そこに思わぬ客が。
「あら、やっぱりここにいましたね。ロドリゲス警部。」
メアリーだった。
「あなたは、キートンの幼馴染の...」
「ええ。このあいだはありがとうございました。あなたの記事を書きたいと思って、探してたのよ。」
「そりゃ、光栄だな。賛成しましょう。」
「嬉しいわ。直接話を聞けるなんて、滅多に無いんですもの!」
メアリーは、美しい笑顔を見せ、メモを取り出した。
ロドリゲス警部は、初めて自分の職務に価値を見出すのだった。
(市民の笑顔を守る。これが私の仕事だ。)
NEXT EPISODE...EPISODE12「夢幻の迷宮」スラム街を中止に、ある噂が流れていた。人間を襲って食べる爬虫類のような怪物ムンゴー。しかし、その正体こそ、母親に気味悪がられ、下水道に棄てられたあげく、街に潜伏していた悪徳精神科医コリン・リグナーの非人道的な実験台となった名も無き赤ん坊であった。ファルコンマンと市警は強力体制を敷き、リグナーとムンゴーを追うが、リグナーは、恐ろしい山羊のマスクと幻覚誘発装置を装備した怪人カプリコーンへと変貌しており...