EPISODE08 博士の異常な実験
ドレイクシティ東部の精神科にて。
眼鏡をかけたインテリ風の男が、スーツ姿の男を診ていた。
男はこの街でも有名な精神科医だ。
「仕事のストレスのようですな... 少し休暇をとらせてもらえばいかがかな?」
「それが...上司はかなり機嫌が悪くて...」
「ほう、それは酷いですな...」
精神科医コリン リグナーは言った。
「そんな会社辞めてしまいなさい。」
「えっ? 答えになってませんが...」
スーツ男はリグナーの発言に戸惑う。
「それがあなたのすべき選択でしょうな。」
「いいですよ、もう... 全く、こんな医者だとは思わなかったよ...」
男がバッグを持って帰ろうとしたそのとき。
「もし、あなたがOKなら、私の特許である治療法を試してみませんか? 心が落ち着きますよ。医療費は必要ありません。」
「何だかよくわからないけど... 無料なら...」
「ありがとうございます。さあ、こちらへ。
」
男はリグナーに案内された。
そこは実験室のような場所だった。
「まず、そこの椅子へ。」
男はリグナーに指示されると、椅子に座った。
「さて、始めましょうか...」
リグナーは棚からヘッドギアのような物を持って来て、男の頭に取り付けた。
「何をするつもりですか!?」
「治療ですよ。」
冷たく鋭い声で答えるリグナー。
ヘッドギアのスイッチを押し、男の全身に痙攣が起こった。
「た、助けてくれ!!」
男は叫び声をあげた末、気を失った。
目が覚めると、全身に大量のネズミがまとわりついていた。
幻覚だ。
男は恐怖と嫌悪感で、奇声をあげ続けた。
それを窓から見て、不気味な笑みを浮かべるリグナー。
翌日。ドレイクシティのレストランにて。
ロドリゲス警部と妻、息子は夕食をとっていた。
「すまなかったな、なかなか時間がとれなくて...」
「いいのよ。犯罪撲滅で忙しいんだもの。」
妻はにっこりと笑った。
「ねぇ、パパ。ファルコンマンはどうしてるの?」
「彼か?そうだな... パパにはわからないよ。」
「友達なのに?」
「まあな... パパは彼に助けられてばかりだよ。」
家族の会話の途中、ロドリゲス警部の携帯電話が鳴り響いた。
「ちょっと失礼...」
トイレに向かい、電話にでるロドリゲス警部。
「もしもし?」
「警部! また行方不明者が...」
「またか... わかった。すぐ行く。」
ロドリゲス警部は家族のもとへ戻ると理由を伝えた。
「すまん、事件だ。本当にすまん...」
「また、例の行方不明事件?」
「ああ... 」
「気をつけてね...」
「パパ、頑張ってね。」
「ありがとう。じゃ、行ってくる。」
ロドリゲス警部は店を出ると、
すぐに本部へ向かった。
ちょうど、ミラーやジェンキンスたちが準備して待っているところだった。
「待たせて悪いな。では、整理を行おうか。
これまで3件の行方不明事件が我々を悩ませていた。まず、最初の行方不明者からだ。
R トンプソン35歳男性。彼は自傷癖が激しく、度々周囲に暴力を振るうこともあったようだ。続いて2人目。J マシスン29歳男性。彼はアルコール依存性で、東部の精神科に通っていた。3人目のK レイノルズ33歳も精神科に行ったきり行方不明だ。犯罪組織の仕業の可能性が高い。」
「警部、一つ質問があるんだけど...」
「何だね? ジェンキンス。」
「ギャングやマフィアの仕業とは思えないわ。彼らなら被害者の家族に身代金を要求するはずよ。愉快犯の可能性があるかと...」
「なるほど。愉快犯なら金など求めないからな。よし。ミラーとジェンキンスはあの精神科について調べろ。」
「わかりました。」
ミラーとジェンキンスは部屋を出た。
ロドリゲス警部は携帯電話を繋いだ。
トビアスに。
しかし繋がらない。
トビアスは電源を切っていた。
トビアスとメアリー、サムとサーシャはバーで話していた。
ため息をついて呟くサーシャ。
「最近、寝不足でね... 精神的にキツいわ。」
「働き過ぎなんじゃないか?」
トビアスはサンドイッチを食べながら言った。
「私は24時間仕事だけど、寝不足なんて全くないわよ。」
サーシャは得意気に言った。
「君は超人だからな。メアリーは一般人だ。」
サムが言う。
「何でもいいけど、精神科に診てもらおうかしら...」
メアリーは呟いた。
「あの精神科は辞めときなさい。」
サーシャはきっぱりと言った。
「どうして?」
「あの周辺は行方不明者が多発していて...」
「神経質過ぎるだろう。メアリーを怖がらせるなよ。そんな神経質だからボーイフレンドができないんだぞ?」
「私の彼氏はネットよ。」
「まあまあ、お前らの話よりメアリーの心配をしよう。とりあえず、精神科に行って診てもらうといいよ。」
「わかった。そうするわ。じゃ、お先に...」
メアリーは店を出た。
翌朝。
メアリーは精神科に行った。
中に入ると、他の患者は誰も居らず、
インテリ風の男が立っていた。
リグナーだ。
「おや、患者さんですか。どうぞこちらへ。」
紳士的な態度をとるリグナーについて行くメアリー。
「さあ、お掛けに。」
椅子に座るメアリー。
「さて。美人さんですな。恋の悩みかな、それとも...」
「仕事で疲れてるんです。」
「ほぅ...それは大変だ。」
指を震わせるリグナー。
「私の開発した治療法であなたの心を癒しましょう。」
リグナーのどこか不気味な発言に気味悪さを感じたメアリーは、部屋を出ようとした。
しかし、リグナーはメアリーを拘束すると、奥の部屋へ引きずりこんだ。
「助けて!!」
叫び声をあげるメアリー。
「無駄ですよ。あなたは実験材料になってもらいます。」
「実験材料ですって!? あんたみたいな根暗のモルモットなんかになってたまるもんですか!」
「根暗だと〜...フンッ、気だけは強いようですね...」
指を震わせるリグナー。
そこにガラスを割って何者かが入ってきた。
ファルコンマンだ。
「クソ、邪魔が入りましたか...」
「その女性を離せ。大人しく投降しろ! お前は既に警察に囲まれている。」
「ここを出たとして、捕まるのはどっちでしょうね。ファルコンマン?」
リグナーは、警報を作動させると、非常口から逃げ出した。
やがて、アナウンスがかかる。
「また会いましょう、ファルコンマン!」
ファルコンマンはメアリーを救出すると、
建物から脱出した。
裏口から出ると、そこにはロドリゲス警部が。
「他の被害者は?」
「全員無事だ。問題無い。」
「君の活躍に感謝するよ...それにしても、精神科医が犯罪者とはな。誰も信じられなくなりそうだ...」
「そうだな...早々に手を打たなければ...警部、彼女を家まで頼む。」
ファルコンマンが言うと、メアリーは訴える。
「待って...」
「すまない、もう行かなくては...」
ファルコンマンが走り去っていくのをロドリゲス警部とメアリーは見守っていた。
NEXT EPISODE...EPISODE09「美しき刺客」中国系マフィア トライアドの構成員たちが次々と暗殺される事件が起きた。トビアスはサーシャに調査を依頼。犯行に使われた銃弾の指紋から、KGBの特殊工作員であることが判明。ロドリゲス警部に報告するが...