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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ


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3/9

.2 成就

「魔術の解析は大方済んだ。問題は魔力と場所、そして時間だな」


 魔王を取り逃がしてから、およそ三年の月日が経った。俺は未だに、魔王が最後に使っていた魔術の研究を続けていた。

 魔王が使った最後の魔術、あれは転生の魔術だ。肉体と魂を分離させ、魂を別時間へと転送。その後、新しい肉体へ憑依させる。正直眉唾だとは思うが、奴ならやりかねない。


 ――未来で会おう、名もなき魔術師よ


 奴のセリフが頭の中でこだまする。魔術を解析して分かった事は性質だけじゃない。この魔術の弱点だ。

 第一に、魔力の消費量。人間一人では到底足りない量の魔力が必要な事。

 第二に、場所。あれだけ大規模な魔術をどこで使うか。そして次が最も重要。

 第三に、()()()()()()()()()()()()()()()事。奴は相当な博打を打った。もしかしたら未来永劫、一生転生する事なく、魂の状態で時間の中を彷徨うかもしれない。文字通り、最期の秘策と言ったところ。

 これから試そうとしている俺も言えた事じゃないが、成功するかは分からない。


「よし、行くか」


 装備は殆ど持たずに、自宅を後にする。生憎、ここら辺は人はおろか動物すら寄り付かない土地だ。もう帰る事は無いにしても、悪いようにはならない筈だ。自然と老朽で壊れるだろう。


 足を止め、振り返り自宅を眺める。終わりじゃない、これから魔王を倒しに行くんだ。それでも、この侘しさと切なさはちゃんと持っていくよ。別の自分になったとしても。


「さよなら――」


 再度前を向き、魔術を発動する。


魔術(アクティベート)空中飛行(エアライド)


 向かう先はもちろん、奴と決着をつけそこねた場所だ。



***


 三年も経つというのに、相変わらずボロボロだ。ここは魔王と戦い、魔王に逃げられた世界の果て――《終わりの大地》

 元々人が立ち入るような場所じゃないから、整備なんて出来ないだろうけど、今回はそれが助かった。そして魔力は――十分()()()()()


 魔王がいた中心の場所まで歩いていく。ここなら再度、大規模魔術を展開しても人的被害は出さなくて済むし、それに魔力。魔王は恐らく、この地に宿る魔力を利用して魔術を使ったのだ。三年という時間は、魔術の研究だけじゃなく、条件を揃える為の時間でもあった。


 中心に到着し、深く深呼吸をする。失敗した時の事は考えるな。震える身体を誤魔化すかのように、高らかに魔術を叫ぶ。


魔術(アクティベート)転生の陣(リインカーネーション)!!』


 ドドッ!ドッド!ドッ!


 あの時と同じように、大きな地響きが身体を揺らす。良かった、ちゃんと魔術は発動した。この地にある魔力も、どうやら足りていたようだ。


 よし、これで――


 ゴゴゴという唸りが、地上一帯を占め続ける。


「なんだ…おかしいぞ」


 違和感に気づく。地響きはずっと続き、未だに身体を揺らし続けている。しかし、()()()()()()()()が起きない。魔王が使用した際は、今頃には青黒い発光が起きていたはず。


 ――どういう事だ!?魔術が上手く発動しなかったのか?それとも何か条件が……


「あっ…」


 気づく。気づいてしまった。あの時との違いを。時も場所も魔術の全てが同じ状況、しかし唯一違う事がある。あの時魔王は、()()()()()。死体となっていたのだ。


 まさか、肉体と魂を分離させるには、魔術を使用した人間が死ぬ必要があるのか?――


 心臓がバクバクと脈打つ。魔術に隠された思わぬ誤算、これから行うであろう行為に必然と呼吸は荒くなる。


「ハァ…!ハァ…!」


 考えている暇はない。今にもこの地にある魔力は消費し続けている。いつこの地響きが終わり、魔術の発動が出来なくなるか分からない。また何年も待つ余裕も猶予もない。だから――


 装飾品の懐から、小さなナイフを取り出す。本来は料理用に使われる十センチに満たないナイフ。だが、こんな物でも人は殺せる。


「ハァ…ハァ…フゥ…」


 ナイフを首元に当てる。深く呼吸をし、心と身体の震えを落ち着かせる。

 もし条件が違ったら?死んでも生き返らなかったら?魔術が上手く発動しなかったら?不安で失敗を恐れるな。後悔するなら……


 ――死んだ後にすればいい!!


 ザクッと喉元を切る。


 「ガァッ…!」


 喉から血が溢れる。上手く呼吸できない。呼吸すればするほど血が溢れ出して、自分の血で溺れるような感じ。

 喉元からコヒュという空気が漏れ出る音を聞きながらその場に倒れる。


 怖い、怖い、怖い、痛い、痛い、痛い、息が……したい――


 意識が次第に薄れていく。視点が徐々に黒く狭くなっていき、やがて暗闇が全てを支配する。

 さっきまで怖くて痛かったのに、もう感覚はない。そこにあるのはただの――無


 これが、死


 意識だけが確かにそこに()る。ここには誰もいない、俺独りだ。


 魔術は、どうなった


 確認しようがない。暗闇だけが支配するこの世界は、俺の行動を許してはくれない。ただ、そこに在るのみ。ゆっくりと、俺の存在が消えていく。


 ……


 ……


 ……ジ


 なんだ


 …――


 誰かが、そこに


 。だんなはい願の君


 願い?俺の願い……


 …セ……


 そんなの、決まっているだろう


 無いはずの身体に力がはいる。拳を握り、()()()に言った。


 ――今度こそ、魔王を倒す事だ!!


 ソイツはもういなかった。だが、最期まで俺を見ていたと思う。言葉を返した後、俺の存在は消滅した。

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