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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ
第二章 異邦の勇者

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.25 【魔術都市・パミストラ】

 【ニューエイラ】から北へ歩き続けて、大体二週間くらいが経った頃だろうか。朝日がゆっくりと世界を照らすのに合わせて、僕の足も一歩、一歩と着実に目的地に向かっていた。

 額の汗が肌をなぞり、地面に何滴か落ちた頃合いで、ようやく終着点の全貌が姿を現した。


「見えてきたな――【魔術都市・パミストラ】」


 まだ道は真っ直ぐと続いている。だが、地図で記されていた都市が、朝日によって煌びやかに輝く。

 一キロほど離れてはいたが、この距離からでもハッキリと見える、都市を覆う魔術で出来た壁。


 授業や本で得た知識そのままの容姿に、僕の足は疲労感を忘れ、軽くなっていく。

 どんどんと大きくなっていく壁に、足取りはさらに速くなった。



「近くで見ると、さらにデカいな……」


 眼前には、首を上に傾けても見切れない、大きな壁がある。遠くから見た時は球体だったけど、近くで見たら、ただの壁だな。


 壁に触れると、石とは違った硬質感にひんやりと冷たい。だが、当然押してもビクともしない力強さを感じる。

 眉間に皺を寄せ、中を見ようとするも、どうやら外からは中の様子は見えない作りのようだ。


 僕は首を動かし辺りを見てみると、入り口らしき場所と、その前に立っている二人の兵隊が目につき、足早に駆け寄った。


「すいません、この都市に入りたいんですけど」


「……あぁ?」


 体格が対照的な二人の兵隊。

 そのうち、僕より一回り以上体格が大きい兵隊が、僕を見るなり蔑んだような目で、上から下までを見つめてくる。


 胸が少しザワついたが、来てから早々問題を起こしたくはない。表情にはなるべく出さないよう兵隊を見続けた。


「……許可証は」


「え?」


 許可証、そんな物がいるのか……いや、見たことも聞いたことも無い。少なくとも、本で見たり授業で習っていない。

 僕が返答に迷っていると、細い方の兵隊が「ククっ」と含みのある笑みを溢す。


「許可証ってなんですか」


「あ"ぁ?許可証は許可証だろうがッ!」


 態度と共に、先ほどよりもさらにデカく見える体躯。熱と口臭、唾液が飛び散り、思わず顔が歪む。だが、僕は直ぐに視線を地面へと落とした。


 駄目だ、話が通じない。許可証とやらの取り方を聞いて、取ってこよう。

 心の中で二回深呼吸をする。穏便に済ませる為だ。


「許可証って、どうやったら手に入りますか」


「……」


 兵隊二人はポカンと口を開け、僕を見た。

 恐喝しても怯えないことに驚いたのか、予想外の返答に驚いたのか定かではないが、その顔を見て少しスカッとした。


 しばらくして、兵隊二人は顔を見合わせ、ニヤニヤとした表情で僕に答える。


「そうだなぁ……生まれ変わるしか無いんじゃね?」


「え」


「プッ!アッハハハ!駄目だ我慢できねぇ、言い過ぎだぜ兄弟」


 細い兵隊が大袈裟にお腹を抱え、大口で笑った。無駄に甲高い声は耳によく響き、笑いすぎたか、目元を拭う動作をする。

 僕には、今何が起きていて、何が面白い状況なのかわからなかった。


「はあぁー……ところで僕ちゃん、()()はどうした」


 さっきの笑い声とは裏腹に、ナイフのように鋭い声と視線が僕を突き刺す。


 ――あぁ、なるほど。


 僕は差別をされていたのか。なんだが、校舎に入校した日、ロイゼにされた扱いを思い出すな。


「ありません」


「なら通すわけにはいかねぇな。生憎ここは魔力を持たない奴はお断りなんだ」


 細い兵隊が親指でパミストラを指差す。


()()になら行けるかもなぁ」


「こんなガキ、あそこじゃ野垂れ死ぬぜ」


 アッハハと交差する二人の笑い声は、壁を遥かに超えるほど天高くまで響く。

 さて、どうしたものか。この二人を無視して入り口に向かっても恐らく入れない。別の手段で壁を破ろうにも、時間と労力を考えると最善とは言えない。


「さ、帰んな。お前の為を言ってるんだぜ?」


 細い兵隊の手が、僕の肩に触れる。

 その間も考えることは辞めない。頭をフル回転させ、そして一つの結論に辿り着く。


「僕が二人に勝ったら、入れてもらえますか」


 二人の顔が、驚きとは違う血の気が引いたような真っ白い肌へと変わる。

 どちらにせよ、ここを通るなら二人をどうにかしないと駄目だ。


 肩に触れている手に次第と力が入り、ミシミシと音を立てる。

 顔は俯き、何を考えているかわからない。


「そいつは笑えねぇ冗談だな。お前が……勝つ?俺ら二人にか?」


 目元に血管が浮き出て、顔色がどんどんと戻っていき、今度は真っ赤な果実のように、赤く染めた。

 

「魔力のねぇガキが、調子乗ってんじゃねぇよ」


 目元は笑っているのに、それ以外と発せられた言葉には黒く澱んだ想いが乗せられている。

 いつの間にかがっしりと力強く掴まれていた肩。そこから手を離し、後ろを向いた。


「良いぜ。お前が勝ったらここを通してやる」


 細い兵隊はゆっくりと歩き続けると、片手で指を二本立てる。


「しかも二人じゃなくて良い。おい、ボブ。相手してやれ」


「マジィ?ラッキー!」


 大きい兵隊が両の腕を振り回して、準備運動を始める。口振からすると、似たようなことが度々起こっているのかもしれない。


「そいつに勝ったら入れてやるよ、僕ちゃん」


 細い兵隊は入り口横に寄りかかり、顎で入り口を指す。壁で中は見れないが、その先を想像すると、拳に力が入る。


 大きい兵隊との距離は、およそ二十歩分。この距離なら、狙いを定めた場所に確実に当たられる。

 右手のグローブを兵隊に構える。


「最近ストレス溜まってっからよぉ、手加減できねーからな!」


「『魔術(アクティベート)・筋――ドンッ!


「!?」


 グローブに装着された空気砲は、兵隊の脳天に直撃し、魔術の発動を許す間も無く動きを止めた。白目を向いたまま立っており、その身体に近づく。

 軽く押すと、空気砲の音よりも激しい衝突音を地面と奏でた。


 細い兵隊の方を見ると、目と口を開き「あ"ぁ!?」という声を出した。


「倒しました。これで入れてもらえますか」


「おいてめぇ!何しやがった!」


 ズカズカと近づき、大きい兵隊の状態を触り確認している。気絶していることがわかり、さらに声を張り上げた。


「気絶、してる……魔力の無いテメェが、どうやってこんなこと」


 答える義理はない。

 そう思い、入り口へと足を向かわせる。


「待て!」


 怒声と困惑が入り混じったような叫び声が、僕の足を止めさせた。

 振り返り兵隊の方へと視線を向けると、案の定怒っているような困惑しているような顔をして僕を睨む。


「なんですか」


「俺とも戦え」


「約束が違います」


「元々俺たち二人を倒すって提案したのはお前だろうがよ!」


 そうじゃなくて良いと言ったのはあなただろ。

 無視して入り口へとまた足を運ぶ。


「どっちにしろなぁ、その壁は俺じゃなきゃ開けられねぇよ?」


「特別な認証が必要なんだよ。登録されてる俺が開けようとしない限り、そこは開けられねぇ」


 やっぱり、ロイゼやビートルの時のようにはいかないか……。僕が撒いた種だ、仕方ない。

 無意識に、大きなため息が口から吐き出される。


 振り返り、再度兵隊の元へと歩き出す。顔はニヤリと笑い、何かを企んでいる様子だ。

 遠距離攻撃があることは割れた、ならそこをついてくるはずだ。


「今度こそ、約束は守ってもらいますよ」


「あたりめぇだ」


 先ほどと同様、二十歩ほどの距離が空く。その間を暖かな風が通り、僕たちをなびく。

 近づいてきたら高速移動靴(ハイスピード)でカウンター、距離を取るなら空気砲で狙い撃つ。


 右手を構え撃つ準備を――


「いやぁ、すまない。遅れてしまったね」


 僕の背後から声が聞こえた。中性的だが、はっきりと透き通る、男の声。

 振り返ると、黄金色の髪と片側で流している赤いマントが特徴的な人がスラリと立っていた。


 あっちの兵隊の仲間か?

 視線を移すと、目を開き顎がガクガクと震えた表情を向けていた。


「おや、まだ手続きを済ませていなかったのかい?」


 ――僕に、話しかけているのか?


 黄金色の瞳孔が少し開き、僕と完全に目が合った。 間違いない、この人は僕に話しかけてきている。けど、こんな人知らないぞ。


 謎の男は、コツコツとブーツの音を響かせる。香水をつけているのか、柑橘系の香りが漂う。

 僕の前に立ち、兵隊に向けて声を張った。


「何か誤解があったようだー!」


 声を聞いた兵隊はビクッと身体を震わせ、今度は滝のような汗をダラダラと流し始める。顔色が先ほどの比ではないほど真っ青になる。


「彼、私の従者なんだ」


 え、僕が……従者?

 顔に力が入り、ジッと謎の男を見つめる。自身ありげに、間違いなど無いと主張するかのように、清々しさを感じる。

 僕の視線に気付いたのか、男は視線を落とし、爽やかに微笑んだ。

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