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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ
第一章 魔力を無くした男

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22/26

.21 あれから……〜age 11 〜

 魔術知識専門校舎に入校して四年、僕は十一歳になった。魔王に未だ、目立った動きは無い。


「セージ、ちょっといい」


「イバラ、どうした?」


 話しかけてきたのは、同じクラスメイトの女生徒イバラ。緑がかった長髪と、そばかすが特徴的だが、そこまで会話した事は無かった。


「これなんだけど」


「……これは、おもちゃ?」


 そう言い取り出してきたのは、手のひらサイズの小さな木箱に、先端部分が、透明の花形で突出しているおもちゃだった。それを渡され、手に取る。

 ひんやり冷たい、意外と重いな。それにこの花の部分、木じゃない、なんの素材だ?


「実はそれ、魔力を込めると光るんだけど、壊れちゃったんだ」


「セージ、よく魔術道具いじってるから、直せるかなって思って」


 僕はこの四年間で、様々な魔術道具を分解しては改造を繰り返した。水の色を変える道具や、光源を強化する道具だったりと、戦闘にあまり役立たない物も作った。

 

 再度木箱を手に取り、分解できるか確認をする。

 魔術道具ほど複雑そうではないから、出来そうではあるが……。


「分解は出来そうだけど、直せる保証はないよ」


 魔術式が一部機能しない、とかだったら書き換えで直せると思う、と付け加えた。

 イバラは顎に手を当て、少し考えた。その後「うん」と小さく呟く。


「良いよ、お願い」


「わかった」


 僕は渡されたおもちゃの修理に取り掛かった。



 分解そのものは十数分で終わった。光らなくなった原因を探したが、残念な事に、魔術式がおかしくなっていた訳ではなかった。


 木箱の中心に取り付けられていた、小さな部品を取り出す。恐らく光を流すパーツだが、ここが酷く劣化しているようだった。


「多分だけど、この部品が劣化してるからだと思う」


 取り出したパーツをイバラに見せた。

 イバラはそれを受けとり、「へぇ〜」と感嘆の声をもらす。


「他の部品も結構消耗してるから、新しいの買った方が良いよ」


 何気ない提案だったのだが、それを聞いたイバラは、酷く悲しそうに、顔を歪めた。


「これじゃなきゃ……ダメ」


 渡したパーツを大事そうに抱え、胸の前で力強く握った。

 あまりに悲しそうな表情をするイバラに、僕は別の提案をする。


「そしたら、部品探し手伝うよ」


「……いいの?」


「うん。授業終わりで時間も丁度良いし、部品を集めれる良い場所知ってるから」


 そう言いながら、僕は分解したパーツを無くさないように小袋に包み、イバラに渡す。

 今からなら、何店舗かは見れるはず。善は急げ、だ。


「ありがとう、セージ」


 イバラの表情が明るくなり、僕も胸を撫で下ろした。



 イバラと共に教室を出ようとした矢先、一人の声が僕の名前を呼び、静止をかけた。


「セ、セージ君!」


 呼び声の方を向くと、サルビアがこちらを見つめていた。表情から、酷く動揺しているように見えた。


「サルビア?どうした」


「え!いや、その……」


 モジモジと自分の服の裾を掴み、言葉を濁す。

 何かあったのか。


「イ、イバラさんと、その、どこに……」


 か細く振り絞られた言葉に耳を傾ける。だが、最後まで聞き取れず、聞き取れた部分に答えた。


「今からイバラとパーツを買いに行くんだ。修理する為の部品を探しに」


「そ、それって!……デ、」


 デ……?

 どうしたんだ、サルビア。いつもと様子がおかしい。

 明らかに戸惑っている僕と、様子のおかしいサルビアを見ていたイバラは、何かを察した様子で僕ら二人に割って入る。


「良かったらサルビア、一緒に行きましょう」


「え……?」


 唐突な提案に、サルビアと同様にイバラを見る。


「人は多くて困らないし、ね?」


 そういうと、イバラの緑色の瞳が僕を見つめてくる。

 少し、楽しそうな表情をしているのは、気のせいだろうか。


「僕も構わないよ」


 イバラがそういうのなら、僕も同意しよう。人手があった方が良いのは確かだ。


「う、うん!」


 そう言うとサルビアは、服をヒラヒラと軽くなびかせながら、こちらへと小走りで駆け寄ってくる。

 奇妙な組み合わせだ、と思いながら、僕達は教室を後にした。



「ん〜、見た事ないねぇ」


 道具店のオヤジは、今日まわって聞いてきた人達と同じ反応で、同じ返答をする。

 これで三店舗目……もっと簡単に見つかると思ってたけど、意外と無いな。


 辺りは陽が傾き、少しずつ世界を暗く覆っていた。


「意外と、見つからないな……」


 イバラが落ち込んだ様子で言葉をこぼす。最初ほどの元気は、もう無かった。


「あ!そ、そしたら、もう一個同じおもちゃを買って、その部品を取り出したら、どうかな……?」


 暗く沈んだ空気を払拭するように、明るい声でサルビアが提案する。


「これ、お父さんが遠い所で買ってきてくれた物だから、多分ここら辺じゃ売ってないと思う」


 返ってきた答えに、また空気が沈む。


「光らせる部分のパーツをどうにかできれば……」


 考えていた事が思わず声に出てしまったが、その独り言を聞いたのか、店主のオヤジが声をかけてきた。


「光らせるパーツ、探してんのかい?」


「え、ええ。そうです」


「そしたら、魔物から取れる素材で、互換パーツが作れるかもなぁ」


「ほんとですか!?」


 イバラが店主の言葉に食い付く。狭い室内に響き渡る声と威勢が、オヤジを少したじろがせた。


「あ、ああ。《魔物・一角光虫》ってヤツの角から取れる素材なら、出来るだろうな」


 一角光虫、【ニューエイラ】から少し外れた先で生息している甲虫類。

 授業で習った事はあるが、実物は見た事が無い。


 僕達三人は店主のオヤジにお礼をし、店から出る。夜風が涼しく肌をなぞりながら、三人の間に沈黙が続く。理由はわかっていた。


「私、一角光虫の素材取ってくる」


「駄目だ、危険すぎる」


「そ、そうだよ……!」


 言い出すとは思っていた。このおもちゃに並々ならない想いを持っている事を分かっていたから、それを止める言葉を考えていた。


「ま、まだ見てないお店とかあるし、今日はもう暗いから……ね?」


 言葉を言おうとしたところで、サルビアが僕と同じ意見を述べた。

 そうだ、まだ見てないお店もある。危険をおかして互換パーツを手に入れる必要はまだ、無いはずだ。


「二人とも、ありがとう」


 イバラは穏やかな笑みを浮かべていた。


「元々巻き込んじゃったのは私だしね、二人はここで帰っていいよ」


 そう言うと、別れの言葉も無しに、イバラは振り向き歩いて行ってしまった。

 どうしてそこまでするんだ、イバラ。


「セ、セージ君……」


「わかってる、僕も同じ気持ちだ」


 不安を隠しきれない表情で見つめてくるサルビアを(なだ)めつつ、深く呼吸をする。

 走り出し、イバラの背中を追いかける。


「待て!イバラ」


 僕の声に驚いたのか、ギョッとして振り返るイバラ。軽く呼吸を整える。


「僕も協力するよ」


「わ、私も……!」


「二人とも、どうして」


 みすみす危険な場所に一人で行かせられない。それに、乗りかかった船だ。最後まで付き合うさ。

 言葉は必要なかった。僕達の覚悟が伝わったのか、イバラはため息をついた。


「ありがとう、二人とも」


 イバラは困ったような、申し訳ないような、そんな表情でお礼を言った。



 【ニューエイラ】から出て、少し外れた森の中。辺りはすっかりと暗闇へと姿を変えていた。

 街頭や明かりといったものは無く、月明かりだけが僕達を照らしていた。


 そんな暗闇の中、一際光を放っている木の一部分を見つける。


「いた――《魔物・一角光虫》だ」


 体長はおよそ三十センチほど。大人から見ても、少しデカいと感じる大きさ。

 一列で歩いていた僕達はその場でしゃがみ、作戦を考える。


「二人とも、魔術はどれくらい使える?」


「私は拘束の魔術がちょっとだけ」


「わ、私は治癒の魔術が得意だよ、」


 僕が前衛で注意を引いて、イバラの拘束魔術で捉える、何かあればサルビアの治癒、という一連の流れが頭に浮かぶ。


「そしたら、魔物との戦闘経験がある僕が前衛で戦う。イバラは僕のサポート、サルビアは後衛で待機」


「わかった」


「う、うん……!」


 黒衣を纏う獣(キラーベア)以来か……よし。

 光を目で捉えつつ、右手にグローブを装着する。


「そのグローブは?」


「甲の部分に空気砲が装着されてる。これでアイツを落とす」


 準備は良いかと二人に視線を送り、二人は頷く。

 ゆっくりと僕、イバラの順で光に近づき、およそ十メートル程まで光に近づいたところで、右手を光に向けて構える。



 ――『圧縮空気砲(エアキャノン)』!



 ドンッ、と大きな音が森全体に響き渡り、少しの間耳鳴りを呼び込んだ。軽く痙攣する筋肉によって、一瞬動きが鈍くなる。

 視界から光が消え、視野を広げると、光は宙へと舞い、ゆらゆらと悠々自適に旋回をしている。


「くっ、外れた!」


 ――意外と素早い。この距離で避けられるのか。


 ブブブブという羽音が、光から聞こえ、少しの不快感が身体を巡る。

 そんな不快感を払拭するように、再び右手を構えた。距離はおよそ八メートル、当てられるか。


「セージ、私が!『魔術(アクティベート)植物による拘束(プラントバインド)』」


 拘束の魔術……当てられるか?

 イバラが魔術を唱えると、植物が立ち上り、一斉に光へと伸びていく――だが、光は嘲笑うかのように、ヒョイっと避ける。


「魔術も当たらないっ!」


「イバラ!一旦下がって様子を――」



 ブゥーン



「――っ!」


 拘束を避けた光が、僕へと一直線に近づいてくる。視界が光で覆われ、思わず目を閉じた。

 ブブブという音を耳元で響かせると、右肩に鈍い痛みが走った。


「セージ!」


 すれ違いざまに、光っている角で肩を引っ掻かれたのか。

 光は先程とは逆の方向で、また旋回を続けている。


 近づかれると光で何も見えない。けど、近づかないとあの速じゃ当てられない……どうする。


 心臓が鼓動を打つたび、肩からドクドクと血が溢れ出す。せめて、次の動きを指定できたから……。


「セ、セージ君!」


 サルビアの声が、思考の渦から僕を連れ戻した。

 声のした方向を見ると、暗くて表情はよくわからないが、その声には切迫したような勢いを抱えている。


「わ、私ね、本で見た事ある!虫って、強い光に、集まる習性があるって……!」


 強い光に集まる……そうか!


「二人とも、一瞬明るくなるから、視界に注意して!」


 ポケットから、ある魔術道具を取り出す。

 戦闘に役立たないと思ってたけど、まさかこんな使い方ができるとは。


「イバラは拘束の魔術は準備しといてくれ!」


「わ、わかった」


 戸惑いが隠せていないイバラの声を尻目に、僕は魔術道具を床にセットした。

 一角光虫よりも、さらに強い光を――


魔術道具(マジックアイテム)手のひらに太陽を(リトル・サン)


 ダイヤルを回し、視界一面が激しい光に包まれる。 さっきすれ違いざまに感じた光よりも、さらに強い光源。これなら。


 視界は明るすぎて見えない。だが、ブブブと羽音が近づいてきているのを、耳がとらえる。

 ダイヤルに手をかけ、イバラに声をかける。


「この光源の近くにいる!一旦光を消すから、拘束の魔術を!」


 眩しさと自分の声で反応を聞けなかったが、イバラが魔術を使用していると信じて、ダイヤルを元の位置に戻した。


 急激な暗転によって、辺りは真っ暗なはずなのに、網膜に景色が焼き付いてるかのように、クリアに見える。

 一角光虫の居場所は、僕の手元の光源――


「『魔術(アクティベート)植物による拘束(プラントバインド)』ッ!」


 右側から声が聞こえると同時に、手元でうっすらと光を放つ一角光虫が、植物によってギチギチに地面に拘束された。


「ふ、二人とも、大丈夫!?」


 遠くで見守っていたサルビアが、僕とイバラに駆け寄った。


「私はね……セージが傷を負ったから、サルビア治してあげて」


「セージ君、肩から血が……!待ってて、すぐ、治すから」


「ありがとう、サルビア」


 なんとか一角光虫を捕まえられた。ガクッと全身の力が抜けて、地面に座り込む。


「セージ、ごめん」


「気にしないでよ。それより捕まえられたんだ、目的達成だ」


 ここで悲観的になる必要は無い、と意味を込めてイバラに言う。

 ふぅ……と呼吸吐くと、それ以上イバラは謝ったりはしなかった。


「それじゃあ、二人とも帰ろ――」



 ザザッ



 森の木々達が、不規則なような、しかし規則的な何かを感じる音が、目の前から発せられる。間違いなく風の音では無い。しかも、一部だけじゃ無い。四方八方から、ザッという音が聞こえ始める。

 肌がピリピリとひりつく。足腰に力をいれ、立ちあがろうとした瞬間、


 ――黒い、モヤモヤとした物体が、視界の隅から隅までを埋め尽くした。


 とてつもなく大きく、その物体は空までゆらゆらと蠢いている。首が痛くなるほど見上げても、目、鼻、口といったものは見られない。

 人体……じゃ無い?じゃあこの生物は一体……。


 あっけに取られる僕達をよそに、黒いモヤの一部が光出す。一部、また一部と少しずつ光出し、その正体にようやく気づく。



 ――虫の大群だ。



 今度こそ足に力を入れ、呆気に取られている二人の手を引き、走り出す。

 手を引かれて初めて意識が戻ったかのように、二人は揃えて、あの大群に言葉を浴びせた。


「な、何あれっ」


「ど、どうして、こ、こんなに……」


 クソッ……僕の判断ミスだ。あれだけの強い光源をこんな夜に森で使えば、周りの魔物達をおびき寄せる。一角光虫に気を取られて、こんな事に気づけなかった。


 背後で蠢いている虫の大群に向け、圧縮空気砲を当てる。ど真ん中にぽっかりと穴が空くが、すぐに塞がれてしまった。

 駄目だ、この大きさと量じゃ、僕の魔術道具は通用しないッ!


「セージ、目の前!」


「!」


 逃げている方角から、背後にいる虫と同じ量の大群が近づき、大きな羽音と共に重なった。

 台風の中心にいるかのように、真上が広く開いた空間へと虫の大群は姿を変える。


 どうする、この量じゃ倒しきれない。空気砲の魔力はまだ残ってる、そしたら……。


「二人とも、僕が空気砲でこの大群に穴を開ける。開いたら、その穴目掛けて走って」


「え!?」


「で、でも、セージ君は?」


「僕も二人の後に続いて逃げるよ」


 徐々に大群の壁は僕達に迫ってきており、時間がないことを知らせていた。


「いくよ――『圧縮空気砲(エアキャノン)』!」


 ドンッ!


 目の前に大きな穴ができ、一目散に二人がその穴へと走る。無事、二人がこの壁から逃げ出せた事を確認して、強張る筋肉を緩めた。

 僕も直ぐに行かないと……駄目だ、反動で筋肉が動かない。


 みるみるうちに壁の穴は塞がり、また蠢く壁へと戻る。


「セ、セージ君!」


「良いから二人は逃げろ!」


 もう一発空気砲を……打てない。ここで、魔力が切れたのか。 

 武器が無くなった、他の道具を、でもこの状況を打破できる道具なんて――


「セージ!さっきの光る道具、真上に投げて!」


 真上……?どうして、いや、何か考えがあるんだな、イバラ!


 『手のひらに太陽を(リトル・サン)』のダイヤルを最大まで回し、まだ少し痛む右肩で真上へと投げた。

 一瞬、まるで陽が出てきたかのように、森全体を明るく照らした。その光に大群は、統率の取れた軍隊のように吸い込まれていく。


 やがて、光を覆い尽くす程のデカい球体へとなった虫の大群に、


「『魔術(アクティベート)大樹林絞殺(デットツリー)』!」


 イバラは唱えた。

 地面を大きく揺らしながら、木の根のようなものが多数に生え、一直線に大群へと襲いかかった。

 思わずバランスを崩し、片膝を突きながらも、空を見上げ、行く末を見守る。

 

 木の根はガッチリと大群を掴み、大群の球体だったものが、木の球体へと変わった。

 球体は徐々に小さく、バキバキと虫達を圧縮しながら、半分ほどの大きさになっとたところで、動きを止めた。


 パラパラと、雨と同じくらい細かくなった虫の残骸が空から降ってきたが、それよりもイバラの魔術に驚きを隠せず、思わず口が開く。


「イ、イバラ……そんな強力な魔術、一体どこで」


 ここまで強力な魔術を現代で見たのは、ビートルの時以来だ。

 空に手を伸ばしていたイバラは手を下ろし、ポツポツと語り出した。


「私のお父さん、魔物と戦うお仕事してたんだ」


「それで、昔教えてもらった魔術を試してみたの」


 できるから不安だった、という安堵の表情を僕とサルビアに向けたが、しばらく僕達は固まっていた。

 そんな中、僕の頭にコツンと何かが当たり、地面に転がった。見てみると、一角光虫の角だけがそこにあった。


「とりあえず、また何かあるかわからないから、早くこの森から出ようか」


「そ、そう、だね……」


 僕はその角を拾い、三人で森を抜ける。まだ少しの驚きを胸に残しながら。



 角を入手してから数日が経ち、僕達は再びイバラのおもちゃを分解していた。

 角を入手した後、その足で道具屋のオヤジのところへ行き、加工をしてもらった。驚いていたが、気前よく引き受けてくれた。


「新しい部品をここに入れて……」


 おもちゃを再度、元の形へと戻す。何回も分解したからか、いつの間にか数分で組み立てができるようになった。


「これで、光るのかな?」


「多分ね。イバラ、魔力を込めてみて」


「……うん」


 緊張した面持ちで、イバラは魔力を流し込む。

 すると、透明だった花が、鮮やかな緑色に光出した。


「凄い!光ったね!」


「ああ、とりあえず元に戻って良かった」


 修理が上手くいかなかったらどうしようと思っていたが、なんとか成功したな。

 ホッとしていると、聞きなれない男性の声が、直したおもちゃから聞こえてきた。


 ――あ、これ聞こえてるのかな?イバラ、元気か?


「声?」


「イバラ、この声って……」


「私の、お父さんの声」


 イバラの瞳に涙が溜まり、宝石のように輝いてみえる。その瞳はゆっくりと閉じ、父親の声を聴き入っている様子だ。


「私のお父さんさ、四年前に魔物との戦闘で死んじゃったんだ」


「そう、だったのか……」


 ――誕生日おめでとう、本当は直接言いたかったんだけど、仕事で帰れなくてな


「角を取りに行った日、私の誕生日で、どうしてもこの声が聞きたかった」


「お父さんが残してくれた、最後の想いだから」


 頬に涙が流れおち、それを無造作に服で拭き取る様子を、ただ眺めていた。

 そうか、それであそこまで必死になっていたのか。なら尚のこと、直せて良かった。


 緑色に輝くその光は、自分の娘を守ってるかのようにイバラを優しく包み込み、彼女の想いとなって、生き続けているように見えた。

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