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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ
第一章 魔力を無くした男

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.20 あれから……〜age 8 〜

 ビートルの事件から一年後、僕は八歳となった今も、引き続き魔術校舎で勉学に勤しんでいた。

 そして一年学んで、現代の魔術について分かった事がある。


「それでは、本日は軽い風を出す魔術を学んでいきます」


「ププせんせー」


 先生が軽く実演を見せようとしたところで、一人の男子生徒、ロイゼが手を挙げ授業を止めた。


「どうしました、ロイゼ君」


「もっと……攻撃的な魔術ないの?相手をズバッとできるやつ!」


 立ち上がって、身振り手振りを大きく使い、なぎ倒しているというのを連想させる動きを見せた。

 ロイゼ程ではないが、周りの生徒も同じようにガヤガヤと騒ぎ始める。


「それは、もう少し魔術を学んでから……と言っても、あまり攻撃的な魔術は無いんです」


「魔術の価値というのは生活を豊かにし、いかに人々の暮らしをよく出来るか、ここにかかっています」


 そう、現代の魔術はそこまで戦闘に重きを置いていない。魔王という強敵がいない今、魔術は形を変え、生活の一部としてこの世界に溶け込んでいる。


「でもさー、魔物とかいるんだぜ?そいつらと戦う用の魔術とかあるんだろ?」


 ロイゼと目が合ったような気がしたが、気のせいか。


「勿論あります。しかし、そう言った魔術は国が管理しています。魔術を使い、人との争いを極力無くす為の政策でしょう」


「だから私達は、魔術で防衛できる手段を身につけていくのです。拘束とかですね」


 ロイゼ母との戦闘で、先生が攻撃の魔術を使わなかったのは、急だったのもあるが、使えなかったというのもあるだろう。


「ちぇー、つまんねー」


 そう言うとロイゼは、不貞腐れたように席についた。先生も少し困った様子だったが、そのまま授業は続けられた。


 そしてビートルの一件以降、今も音沙汰のない魔王について、僕は色々と調べていた。



 僕が通っているこの校舎には、四方八方、見渡す限りの大きな図書室が存在している。魔術的な文書は勿論、絵画、童話、歴史書など多数取り揃えている。


 今日もここで、魔王について文献を調べてはいるが、成果という成果は出ていなかった。


「この本も……駄目だな」


 もう何冊の本を調べただろうか。

 徒労に終わる結果が続き、ため息と、思わず目頭を抑える。


「また、調べ物ですか?」


「先生」


 疲労を持て余していると、背後からプリケンプクス先生が明るい声をかけてきた。


「魔王について、でしたっけ?」


「そうです、どれも目ぼしい物が無くて」


 先生には、ビートルは魔王に操られてした事、と主張したのだが、真剣に受け止められはしなかった。

 魔王という存在が、ここまで薄いとは……。


「私の習った歴史でも、魔王については詳しく習いませんでしたね……それこそ、子どもの頃に見た絵本ぐらいでしょうか」


「絵本か……」


 そういえば、歴史書や文献は読み漁ったが、絵本や童話は見てなかった。

 先生にお礼をした後、一縷の望みをかけて、童話のコーナーへと向かった。


 童話のコーナーには、様々な物語があり、目を見開いた。その中でも特に気になった、一際ボロボロとした絵本を手に取った。


「『異邦のゆうしゃ』?」


 絵本は若干埃を被り、背表紙には途切れ途切れの文字が書かれていた。

 軽く埃を叩き、開いてみると、水彩画タッチの冒険譚が記されていた。



『異邦のゆうしゃ』


むかし、このせかいは大きな闇につつまれていた。

魔王という、とても悪い存在によって、人々はながいながい苦しみの中、生きていた。


そんなある日、一人の男があらわれた。


男は「異邦のゆうしゃ」となのり、次々と魔王の手下をたおしていった。


そしてついに、魔王をもたおし、世界の闇は晴れ、平和がおとずれた。


魔王を倒した「異邦のゆうしゃ」は、他の世界を助けるため、旅立ってしまいました。


著者 マーカス・ルベレクト



 子どもでも読みやすい冒険譚ではあったが、事実とかなり異なっている内容だった。

 いや、もしかしたら、僕が魔王を倒した後、そういう伝えられ方をしたのかも。


 他に何かないだろうかと思い、二周、三周と読み返してみたが、特に見つかるものはなかった。

 絵本を本棚に戻し、また疲労感が襲ってくる身体で、トボトボと座っていた席に戻る。


「その様子だと、特に見つかりませんでしたか」


「先生、まだいたんですか」


 ニコリと笑う先生が、僕の座っていた席の隣で出迎えてくれる。手元には、先ほどは無かった"授業用"と書かれた資料が置いてあった。

 先生の隣に座り、肩を落とす。


「魔王はお伽話の存在ですからね、存在してた証拠を見つけるのは難しいですよ」


「そう、なんですね」


 かつて世界を支配し、人類を恐怖の底に陥れた存在が、お伽話……。

 苦痛で歪んでいく人の顔を何度もみた。そんな最悪を振りまく存在が、今では絵本の中の登場人物。あまりの落差に、気が滅入る。


「ま、まぁ時間はまだありますし、また探しましょう。次は私も手伝いますよ!」


「……ありがとうございます」


 元気づけようとしてくれるのがわかる。

 時間……時間は果たしてあるのだろうか。明日には魔王が復活して、また惨劇が起こるのではないか。そう思うと、眠れなくなる。


 考えてもしょうがない。今は少しでも戦える力を身につける、魔王が復活した時のために。

 気になる魔術道具がある。次の授業にでも、改造してみよう。

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