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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ
第一章 魔力を無くした男

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16/24

.15 お前は……

 すげぇ……この魔術すげぇ!こんなの、最強じゃん!

 この魔術があれば、あのセージに勝てる……!


「……」


 いや、セージなんか相手にならない。俺は今、誰も逆らえない力を手に入れたんだ。

 やっぱり俺は、神に選ばれた存在なんだ――!


「ふ、ハハッ、アッハハハハハ」


 来いよセージ。俺をコケにした事、ぜってぇ許さねぇ。

 必ずお前を――ぶっ殺してやる。



***



 先生を楽な体勢で寝かせ、他の生徒達に視線を送った。

 皆んな、さっきよりもさらに顔色が悪くなってる。このままだと、全員衰弱死してしまう。

 ()()()()()()だ。


「セー……ジ、君……」


 か細く弱々しい声が、僕の名前を呼んだ。


「サルビア……!」


 呼んでいたのはサルビアだった。

 小さな手が、力弱くこちらを指さしていた。


「大丈夫、僕がなんとか――」


 駆け寄り声をかけたが、依然としてサルビアは指を刺し続けた。

 意識が朦朧としているのかと思ったが、サルビアの視線は、指先の一点を見つめていた。


「先……生の、ポケット……」


「?」


 先生が寝ている方へ視線を向けると、ポケットから拳大の、石のような物が落ちていた。

 さっき寝かした時に落ちたのか……?魔石じゃない、なんだ?


 手にとって見ると、ゴツゴツとした表面に魔術式が刻まれていた。

 これは――魔術道具!魔術式は……振動?見た事が無い。

 手探りで触っていると、上手く起動したのか、石が光り、魔術が発動した。


「やぁ、セージ君」


 その石から、今倒れているプリケンプクス先生の声が聞こえた。

 今、いや予め声を入れておいたようだ。これは先生からのメッセージだった。


「これが起動しているという事は、私は直接君に話が出来ない状況、という事だろうね」


 顔は見えず、声だけだが、確かにこの石の中から先生が話している。


「この道具を君に見せるのは初めてだから言っておきますが、これは私が一方的に話せるだけの物。だから、会話はできません」


 先生は、一体何故こんな物を残したんだ。

 いや、なんとなく察しはついてる。


「さて、どうしてこんな物を残したか。君も薄々気付いていると思いますが、ロイゼ君の母親が目を覚ましました」


 やはりそうか。サルビアはこの石がどういうものか知っていたのか?

 サルビアの方を見ると、すでに目を瞑り気を失っていた。


「教えてくれて、ありがとうサルビア」


 ――みんなの事は、必ず僕が助けてみせる


 石の方に再度意識を向け、先生の言葉に耳を傾ける。一言一句聞き逃しが無いよう、耳を澄ます。


「ロイゼ君の母親が話してくれた情報を伝えます。時間があまり無いので簡潔に」


「実は――」



「……」



 そういう事か。

 それじゃあ、この魔術を発動しているのは――



***



 セージ君、気付いてくれたかな。ププ先生の伝言。

 私も少しは、セージ君の役に立てたかな。少しでも恩返しできたら、良いな。


 チカラガ、ホシイカ――


「え?……誰?」


 心の中に、誰かが話しかけてくる。


 チカラダ――誰ニモ負ケナイ強イチカラ


「ちから……」


 チカラガアレバ、恩ヲ返セル――


 セージ君には助けられてばかり……もし、私が強くなったら、セージ君の隣にいられるかな。


 チカラヲ受ケ取レバ、貴様ノ願ウママ


「……」


 サァ、チカラヲ受ケ取レ


「ごめんなさい」


 セージ君には、沢山恩がある。でもこの恩は、私のちからで、私の気持ちを返さなきゃいけない。だから――


「ちからはいらないです」


 少しずつ、ゆっくり返していこう。


 ナラバ――チカラヅクデ与エルマデ


「ゔっ」


 なんだか……苦しい……!頭、痛い……!

 息が、出来ない――助けて――!



 ボンッ!



 風が、顔に……何?

 ……何かが、光ってる。あれってもしかして――


「セージ君がくれた、お守りだ」


 あの時交換した、空気が出るおもちゃ。

 そっか。また、セージ君が助けてくれたんだ。


「ありがとう、セージ君」


 これに触れてると、胸が温かくなる。

 今度また、お礼を言わなきゃ……それと、また……一緒に……出か……け……て……



***



 校舎から外に出て、僕は街の人達を見回した。

 生き倒れている者、子どもを抱えながら倒れている者、姿は違えど教室にいた生徒達と同じ状況だった。


「早くしないと……」


 魔術を使用している者が何処かにいる。

 この魔術の効果は絶大だが、効果範囲はそこまで広くない。何人も魔術を使っていたら危険だが、今回は恐らく一人だ。


 走る足が更に速くなる。次第に呼吸が苦しくなり、鉛のように重くなった足を止めた。


 落ち着け、無闇に探しても見つからない。近くにいるはずだ。


 再びあたりを見回す。色、形、大きさ、どれかが似たり寄ったりな建物ばかり。

 本来だったら、高い所から見渡せば目星がつけられるが、この場所にそんな大きな建物は無い。


 高い場所で使っている線は薄い。室内……にいられたら、時間的に探し出すのは困難。

 だが、僕だけ魔術の効果が無いという事は、何か意味があるはずだ。


 目を閉じ暗くなった視界で考える。

 頭の中で、文字が浮かびは消えてを繰り返す。


 先生の話的に、僕に相当な恨みがある。しかも生半可なものじゃない。()()()()()()()()()だ。


 思考がぐるぐると周り、混ざり始めた事によって、一つの解答が導き出された。


「挑発……勝負……そうか、あそこか」


 身体の向きを反転させて、校舎近くまで走る。

 元々あった因縁を、更に深めてしまったあの場所に向かった。



 校舎裏の広場に到着した。

 あの時と変わらず、ただ広い空間がそこにはあった。だが、あの時と違うものが一つ――


「見つけたぞ」


 後ろ姿の人影があった。

 人影とはまだ距離があり、土埃が相まって詳しくは見えないが、この魔術を発動した本人と思われる人物がそこにいた。


「お前とここで会うのは、二回目だな」


 ゆっくりと足を進めて、影に近づく。額から汗がジワリと滲む。

 距離はおよそ10メートル。その場所で僕は歩みを止めた。


「正体はもう分かってるよ」


「お前はロイゼ……」


 ゆっくりと人影がこちらを向く。


()()()()()

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