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最強魔術師の魔力ゼロ転生  作者: アベ


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.9 インチキヤロー

 ロイゼと約束を交わした翌日、魔物を倒した証拠を見せる日がやってきた。黒皮を纏う獣(キラーベア)の一部や一振りの斧(モア・アクス)があれば良かったが、両方とも無い。だが考えはある。


「よぉ、嘘つき野郎」


 挑発的な態度で声をかけてきたロイゼ。昨日と同じ取り巻き二人を引き連れていた。


「今日の授業終わりが楽しみだなー、嘘が暴かれるんだから」


「証拠は持ってきたのかよ?」


「ああ」


 明らかに怪訝そうな顔をしたロイゼ。それもそのはず、僕は昨日と同じであからさまな道具や荷物を持っていなかった。


「どこにあんだよ」


「それは校舎裏で見せる」


 バンッと僕の机を叩いたロイゼと顔を合わせる。しかし意外にもロイゼは怒っているような表情はせず、どちらかと言うと嘲笑に近かった。


「楽しみだな〜」


「そうだね〜」


 クスクスと笑い合う三人。何かを企んでいる様子だったが、気にしない事にした。企んでいるのは僕も同じだ。


「はーい、それじゃあ皆さん席について下さい」


 プリケンプクス先生が来た事で三人は自席へ戻り、いつも通りの風景へと戻った。

 ふと、彼女が気になった。見てみるといつも通り席についている。彼女は昨日なぜ謝ったのか、あれから考えてみたが、結局わからなかった。


「昨日言った通り、本日は実戦になります。今日は昨日見せた魔術だけでなく、様々な魔術を行っていきます」


「「はーい」」


「それでは本日は外で実戦を行います。皆さん外に出でください」


「あ、そうだ。セージ君」


 外に出ようとした瞬間声をかけられた。


「君は魔力が無いので、本日の実戦は特別授業に変更です」


 そういうと先生は魔術を唱えた。


魔術(アクティベート)分身(ダブル)


 もう一人の先生が形を成し現れた。確かに僕は魔力が無いから行ってもあまり役に立ちそうに無いと思っていたが、特別視授業?


「ププ先生すげー!」


「もっと増やして!」


「一人が限界です…難しいんですよこの魔術…」


 昔の時代も分身の魔術はあった。だが魔力を半分持っていかれ、かつ維持にも魔力を使った為効率が悪かった。

 なるほど、戦闘に使わずこういった教育をする際に使えば効率的か。


「他の生徒はもう一人の私について行ってください」


 分身の先生が他の生徒たちを導き、室内に残った僕とオリジナルの先生は特別授業の準備を始める。


「特別授業ってなんですか?」


「それは……これです!」


 そう言い先生が出したのは、一本のホウキだった。


「特別授業って、まさか掃除ですか…?」


「違いますよ!これ、魔術道具なんです」


魔術道具(マジックアイテム)・自動掃き取り機』


 見た目はただのホウキに見えるが、僕が初めて改造した斧も見た目は普通の斧だったし、そういう物だろうか。


「セージ君に黒皮を纏う獣(キラーベア)を倒した時の魔術道具、見せてもらったでしょ?」


「あれ、かなり強引に分解したよね…ちゃんと分解出来てたらもっと使えたはずだよ」


 確かに、練習込みでも5、6回使用したら壊れてしまった。あれでは戦い続けられる武器とは言えない。


「そこで!今日から実戦の時間内は、魔術道具の分解を行ってもらいます。正しく分解できるようになれば、強度と精度共に上げられます」


 これは……ありがたい。分解の仕方が分かれば時間的な効率も上がるし、一振りの斧(モア・アクス)のように魔術式を書き換えれば、戦える選択肢が増える。


「わかりました、お願いします」


「それでは早速分解していきましょう」


 分解に入る前に、()()についても聞いておこう。


「先生、ついでに()()も分解して良いですか」


「それは……そうですね。それくらいなら短い時間で出来ると思いますよ」


 こうして、魔術の使えない僕は、魔術道具の分解という新しい技をここで覚えていく。

 そうして時間はあっという間に過ぎ、ロイゼとの約束を果たす時が来た。



 校舎の裏にてロイゼを待っていた。広いスペースがあり、ここなら実演可能だ。


「来たな」


 悠々自適と歩いてくるロイゼと取り巻き二人。少し距離の離れた場所で停止した。


「見せてもらうぜ」


 ポケットに入っている物を取り出そうとした時、ロイゼが待ったをかけた。


「あーちょっと待て」


「?」


「やっぱいいわ」


「どういう事だ」


 急な発言に思わず聞き返した。今日会った時と意見が逆転してる。


「そんなのもうどうでもいい。その代わり――」


「俺と戦え!」


「何?」


 そうか、今日は魔術の実戦を行なっていた。恐らく何かしらの魔術を覚えて気がさらに大きくなったのか。


「魔物を倒したっていうなら、俺とも戦えるはずだよなー?」


「そうだそうだ!」


 実戦か……丁度いい。少し手荒くなるが、仕方ない。


「わかった」


 ニヤリとロイゼは笑い、魔術を発動した。


魔術(アクティベート)小さな土玉(マッドスボール)』!!


 手のひらに小さな土の玉が生成され、投球フォームに入る。


「くらえ!」


 ブンッ


 土の玉を思いきり投げ、こちらに飛んでくる。が、子どもの急速で目で追える速さだった。

 身体を横に流して避けると、ベチャという音が後ろの壁から聞こえた。


「な、何!?」


「ロイゼ君の攻撃を避けた!?」


「く、くそ!」


 避けられたのが意外だったのか、三人共動きを止め、立ち尽くしていた。攻撃の手が止まったので、ポケットからある物を取り出し、ロイゼに向けて――放った。


 ボブッ!


「うわぁ!」


 突風に煽られ、ロイゼ含む三人は思わず尻もちをついた。


「な、なんだ!?急に風が」


「ロイゼ君!あいつが持ってるのって…」


 ロイゼの視線が僕の手に集中した。


「空気の出る…おもちゃ!?」


 そう。昨日露天商をしている人から貰った、様々な色の空気を出す子ども用のおもちゃ。僕は今日、これを改造して持ってきていた。


「そ、そんな!インチキだ!」


「何だよ!その威力!」


「僕が改造したんだよ」


「はぁ!?んな事できるわけねぇだろ!」


 そのままではただのおもちゃだが、改造した事により範囲と威力を上げた。当たっても痛くはないし、ケガをするような事は起きない。


 ロイゼ達に魔物を倒した証拠を出すのは難しい。だが、どうやって倒したか、何をしたのかという点では説明ができる。


「インチキヤローが!『魔術(アクティベート)小さな(マッド)』――」


 ボブッ!


「ぐっ!」


 ロイゼは再び尻もちをついた。


「僕はこうやって、魔術道具を改造して武器にした。その武器で魔物を倒したんだよ」


 こういう子たちは、実物を見せて納得させるのが早い。


「く、くそぉ〜!」


 その後、ロイゼは何度も魔術の発動を試みだが、発動を阻止するよう空気で押し退け、気付けばロイゼは泥だけになっていた。


「くっ…うぅ…」


 何度も転がされた挙げ句、泥だらけになった顔には涙が溜まっていた。


「ロ、ロイゼ君…」


「う……お、覚えてろよ!インチキヤロー!!」


「あ、待ってよロイゼ君ー!」


 そういうとロイゼ達は走り去っていった。


「少し、大人げなかったかな」


 ちょっとした罪悪感が心を重くした。いくら相手が生意気だったとは言え、まだ子どもだ。次からはもう少しやり方を変えて――あそこにいるのは……


 薄いオレンジ色の髪の毛が物陰から見え、こちらを伺うかのようにそこに立っていた。そう言えば、彼女もこの約束を知っていたんだ。


「君も来てたんだ」


 昨日と同じように、また僕から話しかけた。


「あ、あの、その…」


 彼女は酷く動揺していた。ロイゼを転ばし続けたのを見て動揺したのなら、無理もないか。


「大丈夫、君に向けたりしないよ」


 カチャカチャと露骨にアピールする。道具をポケットに閉まうと、しばらく沈黙が続いた。


「そう言えばさ、聞きたい事があったんだ」


「え?」


「昨日、どうして泣いてたの?」


 昨日からずっと気になっていた。それまで接点の無かった僕達だが、僕に落ち度があるならちゃんと謝りたい。


「あれから色々考えてさ、もし僕が何か悪い事をしたなら謝りたいと思って…」


「ち、違うよ!セージ君のせいじゃない!その、私が…」


 言葉を選んでいるというより、言葉が出ないという風に聞こえる。僕に何か伝えようとしているが、伝えられない。

 彼女はまた、昨日のように涙を浮かべた。


「……ごめんなさい」


 そう言って走り出した彼女の腕を掴む。


「待って!()()()()!」


「!……私の、名前…」


 涙を浮かべる彼女の表情に驚きが加わり、こちらを見つめる。


「同じ先生の授業を受けてるんだ、知ってて当然だよ」


 彼女の腕を離した。それでも、彼女は逃げ出したりしなかった。


「無理に聞くつもりは無かったんだ、ごめん。嫌だったら言わなくて良い」


 彼女にはロイゼとのいざこざに巻き込ませてしまった。何か出来る事があるならしてやりたいが……


「……」


 サルビアは黙っていた。俯き、何かを思案しているようだが、彼女の本意は分からなかった。


「それじゃあ、また明日」


 そう言い帰ろうとした時、今度は彼女の方から呼び止められた。


「待って!セージ君」


 彼女の方を向くと、表情から涙は止まっていた。


「セージ君に、伝えたい事があるの」


 そう言った彼女の表情は、どこか凛々しく何かを決めた顔をしていた。その表情に、僕は目を奪われた。

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