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第五話 それでも風走り

戦いはなかった。

それが、全員にとって違和感だった。

見晴らしのいい丘に出ても、

敵の気配はない。

風だけが、強く吹いている。

隊は自然と広がる。

霧の中ほど慎重ではない。

だが、以前ほど揃ってもいない。

誰が前か、決まっていない。

「今日は、投げないのか」

「距離が合わない」

「風が強い」

理由は、それぞれ違う。

誰も否定しない。

斧を持つ者は、腰の位置を変える。

短槍を持つ者は、構えを崩す。

剣は、まだ触らない。

しばらく進んで、隊は止まる。

遠くに、別の隊影が見える。

風走り隊かどうかは、わからない。

「行くか」

「やめとくか」

問いは、軽い。

誰かが言う。

「今日は、測れない」

それで決まる。

引く。

追わない。

理由を作らない。

丘を下りながら、

誰かがぽつりと言う。

「型は、守れたな」

「いや」

否定は静かだ。

「守ったのは、判断だ」

その言葉で、話は終わる。

風走り隊は、

勝つための隊じゃない。

生き残るための隊でもない。

次の距離を、

次の風を、

次の戦場を、

判断し続ける隊だ。

装備は変わる。

型も、分かれる。

それでも、

風走りは風走りだ。

風の中を走り、

止まることを知る者たち。

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