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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私のアイする人

作者:

「ねぇ、百合の好きな人っていないの!?」

「何?急に?」

「え〜だって気になるじゃん!美人で可愛くて頭もいい百合はどんな人が好きなのかな〜って!」

「それで?いないの?好きな人!」

「ん〜いるよ?」

「え〜!?どんな人?同学年?付き合ってるの?」

「付き合ってはないよ、年上」

「年上かぁ〜告白しちゃえばいいのに!」

「あはは…」

「いつ初めて会ったの?」

「私が10歳くらいの時かな」


そう。確かあれは、私が10歳の時のなんでもない日だった。

いつも通りの日だった。もしいつもと違うところをあげるなら、その日は友達の家に遊びに行って、帰ってきたのは夕方だった。

遊び疲れて暗くなりかけていて、少し急いで家に帰り、玄関の扉を開けると、家にいるはずの両親の声が聞こえず、鼻が曲がりそうなほどの異臭がした。

少し怖くなった私は、恐る恐るリビングの扉を開けると、ドアのすぐ近くに血まみれで倒れている両親の姿があった。

お腹を押さえうずくまっている母と片手の無い父の姿に私は驚き、持っていた鞄を落としてしまった。

すると、遺体の横から何かを食うような音が聞こえ、そちらに目を向けると、知らない男が無くなっていた父の腕を食っている姿が見えた。

その姿に唖然とし、固まっていると、男は私に気がつき、食べかけの父の腕を置きこちらに歩いてきた。

「まだ生き残りがいたんだ」

と言い、私の目の前で屈みこちらをじっと見てきた。

普通の子供であれば、ここで助けを求めに外に走って行ったり、きょうふでなきだしてしまうだろう。

だけど、私は何故か落ち着いていて、屈んでも少し上にある男の目線に合わせると淡々とした口調で男に問いかけた。

「私も殺すの?」

私の問いに男は数秒驚いた顔で固まっていたが、ゆっくりと口角をあげ答えた。

「殺す気だったけどな、気に入った。お前は殺さずに成長してから食ってやるよ」

その後、私は男に連れられ、男の住むマンションに行った。

男は本当に私を殺す気はないらしく、マンションに着くと料理(カップ麺)を振る舞ってくれたり風呂に入れてくれたり、部屋や布団まで用意してくれた。

やることがなくなり、男とソファーに座りぼーっとしていると、男が問いかけてきた。

「そう言えば、お前名前は?」

ここまでしてくれてなんだが、ここまで男と私の会話は一度もなく、そう言えばお互いに自己紹介すらしていなかった。

虎斑 百合(とらふ ゆり)

男はへぇ〜とだけ言い、こちらをじーっと見つめてきた為、私も男に同じことを聞いた。

「お兄さんこそ名前は?」

男は一瞬、まさか自分が聞かれるとは思っていなかったとでもいうような顔をしたが、すぐに元の顔に戻り答えた。

「別に、名前なんてないよ。呼びたいってんなら[死神]とでも呼んでくれ」

男、、、もとい死神さんは自分のことには興味なさそうに答えると、また私の方、私の瞳を覗き込んできた。

穴が開きそうなほど見つめてくる死神さんに純粋な質問をする。

「どうして死神さんはそんなに私の目を見るの?」

死神さんはさも当たり前かのように私の瞳を見つめながら答えた。

「君の瞳は美味しそうだから。真っ赤な瞳、どんな味がするのか気になる」

「でも、美味しそうなのは瞳だけじゃないよ」

濡鴉(ぬれがらす)色の綺麗な髪、瞳の色と相まって血を浴びたらさらに美味しくなりそう」

死神さんは私の髪を触りながら続けた。

周囲に変だと言われてきた髪や瞳をこんなに直球で褒めてもらったのは初めてで、照れてしまい、「そっか」とだけいうと部屋に入ってその日は眠ってしまった。

その後も死神さんは何年も私を育ててくれた。

服も勉強道具も買ってくれて、料理以外の家事はほとんどやってくれた。

(一度料理をやらせると台所が言葉で表せない状況になった…)

私はそんな生活がとても心地よく、私だけを見てくれる死神さんが大好きになっていった。

でもある時、そんな私の歪な幸せは崩れた。

ある日、死神さんが1人の少女を連れ帰ってきた。

年齢的には私と同い年くらいで、私とは違い、茶髪に近い髪に黒っぽい瞳のどこにでもいそうな普通の少女だった。

けれど、死神さんはその子を私と初めて会った日のように風呂に入れたり、部屋やベットを与えたりしていた。

少女の名前は四葩(よひら)、孤児だったらしい。

四葩は最初は静かで大人しく、ビクビクしていた為、何も思っていなかったが、時間が経つにつれ人懐っこくなり、私から死神さんを奪っていった。

死神さんの隣も、死神さんの言葉も、死神さんの目線だって。

今までなら私だけのものだったのに、今は四葩にばかりいっている。

でも、死神さんが子供連れてくるなんてこと私以外今までなかったし、よほど気に入ったんだと思って我慢していたけど、ある日覚悟を決めて死神さんに何故あの子を連れてきたのか聞いてみた。

すると、死神さんはなんでもないように私にとって最悪の言葉を発した。

「だって、あの子の瞳が美味しそうだったから」

許せない。

あの子が、四葩が許せない。

私だけだったのに。

死神さんのあの言葉はわたしだけのものだったのに。

あの子がたとえ、死神さんにどんな言葉をかけられようとあれだけは許せない。

死神さんの「美味しそう」は私に愛を伝えてくれるようなものだった。

それが他の人に取られるなんて思ってもみなかった。

溢れ出てくる怒りや悲しみ、不快感を堪えきれず私はついに行動に出た。

死神さんが出かけている間に、ゴロゴロしている四葩の元に行くと、一切不信感の持たない四葩は「どうしたの?」とそのウザイ顔を斜めに倒して聞いてくる。

「あなたが悪いんだよ」

そういうと、私は隠し持っていた包丁を高く振り上げ四葩の眼球を目掛けて振り下ろした。

痛みから逃れようと床に座り込み目を抑える四葩に慈悲もなく猛反対の目に包丁を刺す。

「痛い、痛い」と血を流しながら叫ぶ四葩を見つめながら私は立ち上がり、その辺に置いてあったカッターに血をつけ、床に落とす。

四葩の耳元に顔を近づけると、「百合ちゃん、なんで…」と四葩がこちらに血まみれの顔を向ける。

私は四葩の言葉を無視し、冷たい口調で一言だけ言う。

「死神さんには言わないでね」

半分脅し口調で言った言葉に四葩は「ひっ」と声をあげ上下に首を動かす。

その反応を冷ややかな目で見ると四葩の部屋のドアから出る。

ドアを閉める直前、ポケットに入れておいた包帯を四葩に投げつけ口を開く。

「目、見えるうちにそれで覆っておいて。汚いから」

「死神さんに言ったらどうなるか、自覚しておいて」

それだけ言うと、パタリと部屋のドアを閉じ、自室に戻る。

これであいつはきっといなくなる。

死神さんが美味しそうだと言った瞳はもう失明し、開くことすらできなくなった。

これであいつがここにいる必要はなくなって、また私と死神さんだけの生活に戻る。

そう思っていたのに。

死神さんが帰宅すると、目に包帯を巻いた四葩の姿に驚いていたが、私が死神さんにバレないよう「カッターで遊んでいたら目に刺さってしまい失明したらしい」と嘘の理由を伝える。

四葩が私の言葉にぎこちなくこくりと頷くと死神さんはまぁいいやと言い、部屋に戻っていった。

どうして、どうして死神さんはあいつを捨てないんだ。

「美味しそうな瞳」はもうないのに、どうして!

私の憎悪はどんどん悪化していき、私の思考はある一つの答えに辿り着いた。

「死神さんが捨てないなら、私が消して仕舞えばいいんだ。」

私は翌日、死神さんが出かけたのを確認すると、部屋の隅でビクビクしている四葩に声をかける。

「なんで死神さんは貴方を拾ってきたんだろう。私がいるのに」

「なんで死神さんは瞳を失った貴方をおいておくんだろう」

「死神さんの隣も、死神さんの言葉も、死神さんの目線も」

「全部全部私だけのものなのに、どうして貴方は奪っていくの?」

「貴方が悪いのよ」

そういうと、私は四葩の心臓に包丁を刺した。

それからぼーっと見ていると四葩は苦しそうに悶えながら息を引き取った。

どうしようか。

四葩の死に言い訳がつかない。

このままでは死神さんに私がやったことがバレてしまう。

必死に脳を回転させていると、後ろから物音がした。

振り返ると、そこには壁に寄りかかり腕を組んでこちらを見る死神さんがいた。

「これは、その、あの…」

か細い声で言い訳を考え死神さんへ言葉を繋ごうとするが、うまく言葉が出てこない。

「やっぱり」

死神さんの言葉に思考がぐちゃぐちゃになる。

「やっぱり」というのは先日の四葩の目のこともバレていたのだろうか。

ぐちゃぐちゃの思考を働かせようと俯いていた私の顔を、死神さんはそっと自分と目線が合うようにすると、初めて会った日に自分を殺すか聞いた時と同じように、ゆっくりと口角を上げた。

「やっぱりいいね、君のその赤い瞳に白い肌、濡鴉色の髪に人の血はよく映える」

「本当に[美味しそう]」

死神さんの言葉は、私の恐れていた罵詈雑言なんかではなく、私の求めていた私に愛を伝えるような言葉だった。

「その子の血だけじゃまだ足りない。もっと赤く染まればいいのに」

死神さんはそういうと、四葩の腕を切り落とし、齧り付いた。

「四葩…だっけ。この子も微妙な味。やっぱり瞳だけだったか」

すると死神さんはこちらをくるりと振り返り、私の頬を撫でながら言った。

「君はもっと血を浴びて期待に沿うくらい美味しくなってね、百合」

そう言った死神さんの瞳には四葩なんて映っていなくて、そこには愛おしいもののように私が映っていた。

そのことに幸福を覚え、私は口を開く。

「勿論、だからいつか私のことも食べてね」


あの約束から4年。

まだ私は死神さんに食べてもらってない。

「そう言えば百合!」

「ん?何?」

「今校門の前にめっちゃかっこいい人いるんだって!!」

「へぇ〜」

「身長が高くて、黒っぽい服着てて〜」

「逆ナンした子に、『君、あんまり美味しくなさそう』って言ったんだって〜」

「意味わかんないよね〜」

「ごめん、私もう帰るね」

「え?何急に」

「ほんとごめん!人待たせてるから!」

人を美味しそうか、美味しくなさそうかで判断する…あの人以外あり得ない!

、、、いた!

「死神さん!」

人混みをかきわけ声をかけると彼方も私に気がつき、手を掴み引き寄せる。

人混みから抜け出すように走って家へ向かう。

家に着くと死神さんはこちらをじっと見つめ、ニコリと笑うと私の腹にナイフを刺した。

死神さんはナイフを引き抜くと、血まみれになった手で私の頬を撫でる。

私は何も言わず、死神さんを見つめる。

「やっぱり君はとても美味しい」

そう言って私の薬指を切り、口に放り込む。

段々と出血のせいで意識が薄れていく中、死神さんに質問をする。

「死神さん、私の瞳は美味しそう?」

死神さんはニコリと笑いながら答えた。

「とても美味しそうだよ」

そう答えた死神さんの顔を見た最後に瞳を閉じる。

意識が消える最後にそっと心の奥で呟く。

(ありがとう、ワタシのアイする人)



                           END

狼です。

読者様へ、ご観覧ありがとうございました。

「私のアイする人」は如何だったでしょうか?ぜひ感想・誤字脱字のご指摘をお願いします。

この作品は「カニバリズム」「喰愛」「狂愛」の3つを題材として執筆いたしました。

恋愛系(?)の作品を執筆するのは、ほぼ初めてだったのでthe恋愛といった話ではなく、私好みのグロッキー?な描写多めで書いてしまいましたが、何卒ご愛読の方よろしくお願い致します。

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