表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

2人での旅行

次の日に

オリファルコンに

出社した立花だが


仕事中も頭の中にあるのは

女神との北海道旅行の件であった。


女神の両親に会う事も

緊張するが

そっちの件は

腹をくくったので

問題ない。


東京から北海道への長距離を

トップアイドルと

2人きりで旅行。


公共交通機関を利用しての

人間観察バラエティ

モニタリングをして

隠し通せる自信が

立花にはない。


東京から北海道へ向かう

飛行機には何百人も

乗るだろう。


いつもの野球キャップに

伊達メガネに

大きめのマスクの変装


コロナ以降、マスクをしていても

目元で友人を

識別出来る人が多い。


サングラスをかけさせても

同じ事だろう。


逃げ場のない飛行機の中

ファンにバレて

2人並んで座っていたら

公開処刑だ。


新幹線の車内でも

それは同じだろう。


長距離バスやタクシーを

使ったり

立花が運転していく事も

考えたが

距離が遠過ぎて

時間もかかり

現実的ではない。


昨夜、このプランの

首謀者である女神に

『どうやって、北海道に

行くつもりなんだ?』と

質問してみたが


『アタシだって、ちゃんと

その辺はぬかりは無いです』


『金曜日の夜20時台の

飛行機に乗れば』


『その日の内に

新千歳に着くんですよ』と

ドヤ顔で立花に

言ってきた。


それを聞いた立花は

呆れた顔で

『飛行機に女神が乗っていたら

バレれるだろ?』と

彼女に言うが


笑顔で

『たぶん大丈夫ですよ』と

返してきた。


『何で大丈夫なんだ?』と

女神に聞くと


『最近は1回も

バレていないんですよ』と

自信満々に立花に言った後に


『もし、バレても

アタシ達は公認カップルだから

平気じゃないですか?』と

笑顔で答えてきている。


彼女の中では

先日の記者会見で

2人の交際は世間に認知されて

2人で一緒に歩いていても

大丈夫だと思い込んでいるようだ。


『また記者会見をするつもりか?』

立花がイジワルっぽく言うが


『事務所も立花さんとの事を

何も言ってきませんよ』と

女神はキョトンとした顔で

答えている。


確かに記者会見で

権太坂36は恋愛解禁


そう受け取れそうな

発表をしていたな


立花も、そう納得していたが

実際にはサニーミュージック側の

我慢もあった。


神楽坂36.談合坂36.権太坂36

この3チ-ムの全メンバーの中で

絵色女神がダントツの

人気No.1である。


事務所側としては

所属タレントを強く

拘束する為に

契約を盾にするが


女神に、そんな事をしたら

オリファルコンの

会長と副社長が

怒鳴りこんでくる。


更に佐山サトシが

サニーミュージックを

辞めると言っていた。


会社側が佐山と女神が今

サニーミュージックを

辞めた場合の損害を試算したら

マイナス100億円以上だった。


それだったら女神様の

ご機嫌を損なわないように

丁重にお取り扱う方針に

会社として決めたのだ。


『1日のオフがない』

『実家に帰れていない』

その女神の呟きが

山田プロデュ-サ-の耳に入り


『女神にオフを作れ』と

号令がかかり

今回の里帰りが

実現したのだ。


だが立花は女神に

分かるように

ゆっくり優しく


2人で公共交通機関を使うと

身元バレして

それが拡散された後の

リスクも説明した。


『俺も北海道には行くけど

乗る飛行機をズラして』

『新千歳空港で合流しようよ?』と

女神に提案すると


クチを尖らせて

明らかに納得していない顔で

『分かりました』と

返事をしている。


『納得していないな』

女神の表情を見て

立花が苦笑しながら

そう言うと


『だって初めての

2人での旅行なのに

別々じゃ』


『寂しいです』


女神の気持ちも分かるが

飛行機で2人並んで

座っていたら

即バレ決定だろ?


『女神の実家で

卒業アルバムを見せてよ?』

そう言って

彼女のご機嫌を取ってみたが


『はい』と

元気なく彼女は

小さく答えただけだった。


新しいゲ-ムの

企画会議をしたりして

日常の多忙が過ぎていき

約束の金曜日を迎えていた。


飛行機の席に座っている女神は

ニコニコした顔で

隣に座っている立花の肩に

自分の頭を乗せて

『スッゴい、嬉しい』と

ご満悦である。


『お姫様、如何でしょうか?』と

立花が、おどけて見せると


『本当に立花さんって素敵です』と

抱きついてきた。


『飛行機を貸し切りに

するなんて聞いた事ないです』と

女神は、はしゃいでいる。


女神は貸し切りと言っているが

正確にはプライベートジェットを

利用していたのである。


一流アスリートや

世界的な金持ちが個人的に

保有するイメージがある

プライベートジェットだが

ANAなどの民間航空会社は

個人向けにも

サ-ビス提供をしている。


『お金、高いんじゃ

ないんですか?』

女神が心配そうに

立花に聞いたが


『ハハハ』と愛想笑いをして

誤魔化すだけにして

値段は説明しなかった。


プライベートジェットは

1人いくらではなく

一機いくらである。


海外に行く時の費用に比べたら

国内は安くなるが

それでも片道

数百万円はしてしまう。


だが週刊誌に撮られた

過去の痛い経験を考えれば

安いものだと思い

立花は奮発したのだ。


北海道旅行を女神が

言い出して

会社で頭を悩ませていた立花に


猪木会長が

『だったらプライベートジェットで

行けば良いじゃないですか?』と

提案してくれていた。


羽田空港には一般人が使う

ゲ-ト以外に

特別ゲ-トが存在する。


総理大臣や国賓と言ったVIP専用の

一般人が知らない

秘密のゲ-トだが


絵色女神が使いたいと

名前を出したら

空港側もOKをしてくれた。


やがて定刻となり

プライベートジェットが

羽田空港を離陸していく。


女神は卒業式で

リムジンを借りた

女子高生のように

スマホでパシャパシャと

自撮りをしている。


嬉しくて

いっぱい撮った

写真を眺めながら

『これってInstagramとかに』と

言った途中で


『絶対にダメ』と

立花に注意された。


『帰りは、どうするんですか?』

怒られてしまったが

テンションMAXの

女神が聞いて来たので


『帰りも、これで帰るよ』と

立花が説明すると


『じゃあ、ギリギリまで

北海道にいられますよね?』と

女神が嬉しそうに言ってくる。


『新千歳を21時くらいに

出発で良いんじゃないか?』と

立花も答えて

女神は大喜びをしていた。


だが立花は

大きな勘違いをしていた。


片道、数百万円だから

往復したら

単純に2倍にすれば

良いと思っていたが


夜に飛行場に着いて

翌日の夜まで

ほぼ24時間

プライベートジェットを

待機させていたのだ。


後日、航空会社から届いた

請求書を見て立花が

倒れそうになったのは


イタリア製の高級車が

買えそうな金額で

あったからである。


だが今は、そんな事は知らずに

1時間ちょっとの

夜間飛行を2人で

楽しんでいたのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ