第8話 仙人になれる合法的なキノコ ?
反り立った崖を見上げる明文。
「何見てるの~?」
天女の天華が話しかける。
「この崖の上にあるキノコが見えるだろ?あれは食べると仙人になれるキノコだ。オレは今から崖をよじ登り、キノコを手に入れようと思う」
「私が取ってきてあげようか?」
「だめだ。自分の力で何とかしなくては意味が無い」
明文は崖を登り始めた。
「がんばれ、がんばれ~」
空を飛べる天華は、明文の側で応援する。
「う、うるさい・・・気が散るっ!」
「え~、うれしい癖に~・・・顔、にやけてるよ~」
「にやけてなんかいない!」
顔を真っ赤にして天華を追い払おうとする明文。
足が滑ってしまい、崖から落っこちる。
天華がすぐに抱きかかえてくれたので、明文は落下せずに済んだ。
天華に抱かれ、その柔らかな包容力を感じた恥ずかしさ、それにかっこ悪く助けられた羞恥心もあって、明文の顔は真っ赤だ。
崖の下に明文をおろした。
「だいじょうぶ~?顔、赤いよ~」
「だ、だ、だ、大丈夫だっ!」
「も~、きーきー言って、おさるさんみたい~」
すると、明文は何かに気付いたように、走り出した。
それから数日後、同じ崖の麓にサルを連れた明文の姿があった。
「あれ?その子は何?」
「ああ、よく聞いてくれた。こいつはオレが練習させて、崖のキノコを採って来る事が出来る賢いサルだ!」
「ええ~、自分の力で取るのがいいんじゃないの~?」
「オレがサルを調教した。その苦労の上で手に入るキノコなら、意味がちゃんとある」
明文の自分勝手な哲学にちょっとあきれる天華。
「さあ行け!キノコを取って来い!」
サルは崖を素早く駆け上がり、そしてキノコを手にしたのだ。
「やったー!これで仙人になれるぞ!」
しかし、サルはそのキノコをパクリと食べてしまった。
サルの体は光に包まれ、そしてふわりふわりと宙に舞い上がる。
「ええー!サルが仙人になっちまったー!!」
仙人になったサルはかき集めた雲の塊りに乗っかって、そのまま何処かへ飛び去って行ってしまった。
後の斉天大聖こと、孫悟空である。