第4話 五穀を断って健康仙人生活!?
明文は山の頂に立ち、大きく息を吸い込んだ。
すぅーーーーーーー
「何をしているの~?」
天女の天華が突然背後から声をかけたもんで、明文は驚いてむせてしまった。
ゲホゲホゲホッ
「だいじょうぶ~?」
「お前のせいで、食事中にむせてしまった!」
「食事中~?」
「そうだ。オレは今、大自然の霊気を吸っていたのだ。そうすれば五穀を断ち、仙人への道へ近づけるのだよ」
「ふ~ん・・・美味しいの?」
「え?美味しいかって?」
「うん、そんなに一生懸命吸い込んでるんだから、美味しいのかな~って思って~」
「・・・お、美味しいに決まってる」
「へえ、どんな味~?」
明文は顔を背ける。
「だ・・・大自然の味だ・・・」
「ねえねえ、大自然の味って言ってもよくわからないな~・・・もっと詳しく教えて~」
「う、うるさい!仙人への道を究めようとする者には美味しく感じるんだ!」
ぐぅ~~~~・・・
明文のお腹から大きな音がなった・・・
「え~、食べてるのにお腹すいたのかね~?」
天華は顔を赤らめる明文を見て、にやにや笑顔。
「ほら、桃あげるから食べなよ」
天華が桃を差し出す。
「・・・い、いらぬ」
「桃源郷の桃だよって言ったら?」
「食う!」
明文は桃を受け取って、むしゃむしゃ食べ始めた。
「美味い!これが桃源郷の桃!やはり普通の桃とは比較できぬ!」
「本当は、山の麓の小さな村のおばあさんからもらった桃なんだけどね~」
明文は顔を真っ赤にする。
「だ、騙したな・・・」
「普通の桃とは比較できぬ!だって~。きゃっはっはっ」
からかわれて怒った明文は天華を捕まえようとするも、天華は宙に舞い上がって、明文の手は届かない。
息を切らし、追いかけるのをあきらめた明文は、地べたに座り込んだ。
「ごめんごめ~ん。からかいすぎちゃったかな~?」
「いや、普通の桃だったけど・・・美味かった・・・その・・・あ、ありがとう」
明文はうつむいたままボソりと言った。
その耳は、桃よりも赤みがかっていたそうな~。