第17話 仙人の処方箋
「仙人様~!どうかお助けくださ~い!」
明文の寝泊まりするほら穴の前で2人の子供が頭を下げていた。
「なんだ・・・騒がしいな・・・」
「仙人様!助けてください!母が病で倒れ、もう何日も起きれないでいるんです!」
そして、子供達は背負った籠をおろし、明文の前に差し出した。
中には沢山の梨が入っていた。
「仙人様は梨が大好きだと、不出来な梨も喜んで大金を出したと聞きました。どうか、この梨で母を助けて頂けますでしょうか」
「なんだ・・・そんな噂が流れてしまっていたのか・・・それにオレはまだ修行の身、仙人では無い・・・」
子供達は頭を地べたに付けて動かない。
「・・・頭を上げろ。そういう姿は子供には似合わん。お前らの母の病状、病に伏せる前にどうしていたか、詳しく話せ」
明文は子供達の話を聞き、薬を調合して、手渡した。
「後、これはお前達の薬だ。足の痛い所に塗るといい。梨を背負ってこんな山奥まで・・・下山する時も気を付けて行くんだぞ」
子供達はお礼を述べて、山を下って行った。
子供達が置いて行った梨をかじっていると、天女の天華が舞い降りて来た。
「あの子達のお母さん、よくなるといいね」
「なんだ?見ていたのか?」
「うん。いい事したね。いい事すると仙人に一歩、近づけるんでしょ?」
「さあね・・・」
「何か浮かない顔してるね~」
「そうだな・・・あの子供達と同じぐらいの歳だった。オレの母が病で死んだんだ」
「そんな早くに?」
「ああ、今なら仙人の修行で得た知識で、母を治す薬が作れる・・・だが、あの頃は何もできず、ただ涙を流す事しか出来なかった。あの頃に戻って母を助けてやりたいものだよ」
「優しいんだね。きっと、そう思うだけでも、明文のお母さんの魂は救われた気持ちになれるはずだよ」
「そうだといいな・・・オレは少しでも長く生きてもらいたかったよ・・・」
天華は明文の頭を撫でた。
「な、なんだよ。オレは犬じゃないぞ」
「ん?明文は偉いな~って思ってさ。きっと、お母さんも成長した今の姿を見たら大喜びだよ」
「い、今の姿?そんな、娘とくっついてる所見られたらその、こ、困る!」
恥ずかしがり屋でもある明文は、顔を赤くしてほら穴に逃げ込んで行ったのだった。