第16話 お池にはまって、ああっ!ヘンタイ!
明文は、険しい山の中を歩き続けていた。
肉体を鍛えていたのだ。
「ふう、汗をかいた・・・ここら辺にある泉で体を清めるか・・・」
草むらをかき分け、泉に到着した時だった。
「あっ!」
そこには肌をあらわにし、水浴びをしている天女、天華の姿があったのだ。
明文に気が付いた彼女は、手で体を隠している。
「ああいや、これはわざとじゃなくてたまたまであって別に見ようとしていたわけじゃないんだ!」
「言い訳しながらずっと見てるじゃ~ん」
「あ、あああっ!あわあわ!」
明文は両手で真っ赤になった顔を隠した。
「も~。今から服着る所だから、ちょっと待っててね~」
「あ、う、うん・・・」
明文はうぶでシャイだが、やはり天華の体が気になってしまう。
その大きな胸、綺麗な肌が、一瞬であるが脳裏に焼き付いているのだ。
もう一度、見てみたい・・・いや、いけない。
失礼だろうし、仙道に励む身としても邪念は払わねばならない。
しかし、目を覆う手が震える。
指が開きそうだ。
この指が開けば、まるで歩く桃源郷の化身のような天華の全てが見える・・・
理性と本能の激しい葛藤。
「も、もう着たか?」
「見て確かめたら~?」
「ば、馬鹿者!見ないようにしているんだ!」
「じゃ~あ~・・・今、どこまで着たと思う~?」
「ど、どこまでって・・・」
「ほら、目を閉じても相手の動きがわかれば、仙人への道も一歩前進じゃない?」
「うむむっ・・・確かに・・・・」
明文は考えた。
彼女は何処まで来ているのか・・・
まだ、一番下に着る白くて薄い内着までか・・・?
それとも、胸にあてる肚兜という肌着までか?
想像するが、どうあがいても彼女のいやらしい姿しか思い浮かばない。
これはけしからんのでは?!
「わからん!女の着物はわからん!だから答えを教えてくれ!」
っと、変な事に思いを巡らせず、降参して答えを問う事にした。
「正解は~・・・まだ、濡れた体を拭いただけでした~」
「まっぱ!!」
想像力が高まっている明文の脳裏には天華のあらわな姿がはっきりと浮かび上がった。
「あいええええっ!」
よこしまな気持ちを振り払う為、明文は叫びながら泉に頭から飛び込んだ。
「あらら、そんなに泉に浸かりたかったの~?」
明文は泉に突き刺さるように逆さになって、水面から足が飛び出ている。
まるで何かの事件現場のようだった。
これが後の八つ墓村である。
嘘である。