第14話 修行中の方士に花を添えて
今日も瞑想を続ける明文。
その姿、今ぞ舞い上がり、天架け行かんとす蛟龍の姿に差も似たり。
ぱらぱらぱらぁ~・・・
何処からかともなく花が舞い落ちて来た。
ぺたぺたぁ~
舞い落ち来る花々は何故か明文の体にぴたりとくっついてしまう。
「・・・なんだこれは?」
気が付けば明文の体には沢山の花がくっついて、まるで花を着飾っているようになっていた。
「この花、引っ張っても取れないぞ・・・」
明文が困っていると、空からケラケラと笑う天女の天華が舞い降りて来た。
天華の手には、花を沢山詰め込んだ花籠があった。
「おい、天華!これは何だ!?お前のいたずらか?」
「それはね~、煩悩が捨てきれていない人にくっつく花なんだよ~」
「おい、それじゃあオレがまるで煩悩まみれみたいじゃないか!」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ~」
明文はむっとして立ち上がるも、天華が花々を空に向かってばら撒き、その花々が明文の顔にへばりついたのだ。
「お、おい・・・前が見えないぞ・・・」
「煩悩を捨てきれていない証拠じゃ~ん」
明文は冷静になり、座禅を組んで瞑想を始めた。
ポロポロと、体についた花が落ちて行く。
「お~、煩悩が消えて行く~」
パチパチと拍手する天華。
「そうだ。オレはもはや、煩悩などとは無縁の存在なのだよ」
「頭に乗った花も取れるね~」
っと、天華が前かがみになって、明文の頭に乗っかった花を取った時、明文は彼女の大きな胸を直視してしまった。
明文の鼻から鼻血が滴り落ちた瞬間、ビタビタビタァっと、周囲に散らばった花々が明文の体にくっついて、明文はアジサイのような花の塊りとなってしまった。
「し・・・しばらく花に包まれるのも・・・悪く無いと思っただけだ・・」
明文は強がりを言うも、天華は大笑い。
この日からしばらくの間、明文は花の塊りとなって過ごすのであった・・・