第11話 橘中(きっちゅう)のデュエル
明文は、橘の木の下で、木々の霊気を感じ取り、森羅万象の哲学に思考を巡らせていた。
ポトリ
「痛っ!」
橘の実が落ち、明文の頭に直撃した。
なんだと思い、橘の実を拾い上げた。
「やっほー!」
橘の実の中から声がする。
不思議に思い、その実を割って中を見ると、中には天女の天華が卓の上に碁盤を置いて、椅子に座っていた。
「ねえねえ、仙人らしい碁の勝負でもやらな~い?」
「でも、どうやって実の中に入るんだよ?」
「入ろうと思えば入れるよ~」
天華の言う通り、実の中に入ろうと思った途端、自身の身体が小さくなり、すっぽりと実の中の部屋に入ったのだ。
「どうよ~。ちょっとは仙人の気分になれる感じ、するんじゃな~い?」
楽しそうにはしゃぐ天華。
「まあよい。オレは碁に関しては負けた事が無い。官人をしている時は何人もの腕に自信のあるやつらを悲しませたものだ」
自身満々の明文。
対局ははじめ、明文が優勢で進んでゆく。
天華は次の一手に悩んでいるようで、じっと碁盤を見つめて考え込んでいる。
そして、どんどん前かがみになり、彼女の大きな胸の谷間が明文の視界に入って来る。
彼は見ないようにと心がけるも、目がどうしても彼女の胸に向かってしまう。
「よし、次の一手どうぞ~」
天華の一言で我に返る明文。
彼女がどこに打ったのか、胸の事で頭がいっぱいの明文はわからなくなってしまった。
結局、明文は負けてしまったのだ。
「ず、ずるいぞ!そ、その、胸を見せて来て・・・オレの戦略が全部台無しだ・・・」
「え?もしかして・・・ずっと見てたの~?」
「い、いや、ずっとは見てない。いや、見てないぞ!」
「ほんとうかなぁ~?」
しばらく天女に勝てそうに無い明文だった・・・