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初めまして!ニャルデル神

ーーーーー


ーーーー



『う…ん…』


『目覚めましたか?』


若い男の声が聞こえる…

目を開けると噴水の場所から移動

…はしてなかったようだ。


だが、まだ移動してる方が良かったような…とても奇妙な場所にいた。

全てが霧の様なもので霞掛かり宙には水泡がぷかぷかと浮かび、後ろの噴水の水溜りの水面は風で波打ったままの…まるで時が止まったかの様に動きを止めている…。

時間的な物は無さそうな、不思議な空間だった。


ここから少し離れた位置にいる、霧がかっていて見えないがこちらを向いているであろう声の主に少しありきたりな事を聞いてみる。


『ここは?』


『ある者は精神、ある者は時空とも呼ぶ、ここは神々の住まう場所[ゼド]…ようこそ、ハナ…[全てを捧げし者よ』



大層な物言いで、コツコツと歩いてきた彼は、徐々に視認できる距離まで近付いてきた…。所々金の刺繍が施された白装束に身を包み、首元には勾玉の数珠、真顔とも悲しみとも言い難い難しい表情で現れた。


そんな彼と目があった。



…えへぇ…凄いイケメン…


長い白髪にかかっている特徴的な切れ長の目の奥には、まるで星空を思わせるような瞳が輝いており、どこか優しさを感じさせている…、鼻筋は通っていて、小鼻が小さく口元も締まっていた。

色白の痩せ型で背も高く、小顔で一般的にはイケメンと言われるタイプだった。



ただ、コスプレの様に白い猫耳と白い尻尾がニュッと生えてる。


なんというか…そこが…


『残念…』

ハナは誰にも聞こえない様にボソリと言った。




というか…さっき何か凄いこと言ってなかった?


全てを捧げしもの?


なにそれ?だれが?私?



『それどう言うことですか?』


少し声色を強めて言った、

そりゃそうだ、勝手に私の全てを奪われる謂れもないし、

私が何を誰に捧ぐかは私が決めたい。




『ハナ…其方がココに来られた経緯は知らないと申されるか?』


その青年は少し困惑した表情で聞いてきた。



『はい…と言うかあなたは誰ですか?』


『コレは失礼…申し遅れました、私【ニャルデル】と申します。以後お見知りおきを』



遂に出たか!多分流れ的にこの人がそうだろうなぁ…って思ってたがここまで完璧に的を得るとは…



『やっぱり神様…』



『おや、先見の目がお有りのようで…』


『もう色々な事が起きて慣れちゃいまして、所で全てを捧げし物ってなんですか?私何かあげましたっけ?』



早速この話の核心を聞く…恐らく私がこの世界にきた理由もさっきの言葉の意味も繋がっているんだろう、何せ神様まで直々にやってくるのは只事では無いのは確実なのだから。



『では、事の経緯をご説明します…お時間が掛かります故、飲み物でもどうぞ』


そう言って空に円を描くと其処の虚空から取り出したのはガラス製のカップとソーサーのセットと、同じくガラス製のティーピッチャーを取り出した、どれもアンティーク調でかなり高級な物と思われる。



笑顔が苦手なのか口角を少し上げて、カップを渡してきた。

彼なりの懸命な笑顔なのだろう…


カップに注がれたものをみると薄赤い液体が入っていた…。


『コレって…血『パッションティーです』』



被せる様に言ってきた…ただのジョークだったのに…。



ですよねーっと軽い相槌を打ちながら飲む。


美味しい!

パッションティーとは聞いた事あるだけで、初めて飲んだけど中々フルーティーと言うか、サッパリしていて飲みやすかった。


この世界ではメジャーな飲み物なのか、

それとも神の嗜好品として持っているだけか…。

後者なら茶葉があれば少し分けて欲しい…。


そんな事を考えながらズズズっと飲むハナ。


ニャルデルは満足そうだったハナの横にいつの間にか出した移動式の小さなテーブルにティーピッチャーをコトリと置くと、先程ニャルデルの居た場所にいつの間にかボードが現れていた。


そこに絵図的な物を描き、話の続きに入っていく。彼なりの分かりやすい説明なのだろう。



『其方はこの世界の並行世界…つまり無数に存在するもう一つの世界からこの世界に通ずる【転移紋】に触れ、そのまま転移をするハズであった…が、通常ではあり得ない【召喚紋】も寸分の狂いもなく同位置に現れた。

…その際起きた事は其方も存じていると思われます』


ハナは身震いする…力の奔流に飲まれ黒い壁に何度も何度も衝突し挽肉になったのだろうから…トラウマものだ。


『【転移門】は人を呼ぶ一方通行の[紋]…触れればその対象を転移させる。そして【召喚門】別の場所から任意の物質・物体を時空ごと召喚する[紋]。


互いに重ねるなどあり得ない矛盾…その結果どちらにも引っ張られ…どちらにも反発される。

それがあの事象の結果であると推測されます。


そしてその2つの[紋]が偶然重なって起きた事は、この世界で【転生紋】と同義とみなされました。


本来の【転生紋】は対象の身体を生贄に、転生先で願いを叶える最終にして幻とも呼ばれる究極の[紋]…


それら3つの[紋]を簡単に纏めると

身体を[転移]し、

願いを[召喚]し、

魂を[転生]させる…


そう言う[紋](もん)です。


……ここは笑うところですよ?』



ズズズ…コトリ。



『まっっったく面白く無いギャグは少なめで!』

カップを置くと真顔でピシャリとニャルデルに釘をさした。


自分の事なのに笑えるか!

っとカップを投げるか迷ったけど、飲み物のお陰か少し冷静になれた。

カップも高そうだし…。



『おや、コレは失礼…。では続きを。


ただ、この【転生紋?】はイレギュラー、通常の手段でない…そうあり得ないことです。


ハナに起きたその…

何というか…

…少々お待ち下さい…。

これは【転生紋】ではないので名前が不憫ですね…。


並行世界…?

パラレル…?



異世界…


あぁ【異世界転生紋】と名付けましょうか。




【異世界転生紋】…これは【転生紋】と違って願いを決めていない…。

条件を結ばず肉体、生命、魂までをも贄に捧げる【空の契約】を交わしたのです。


その際、肝心の願いが保留されている状況でした。

代償のみを受け取り、願いを聞き届けず、契約の執行をしないのは神としてあり得ない事です。


特に並行世界の贄は貴重な物であり、この世界の贄と価値が違う為、転移先の肉体を用意する事は造作でもないのです。

幸い其方の転生前の姿形が似ている人族がおりましたので、転生前の元の身体に似るよう模しております。

他にも言語能力と識字能力等等…は自動で解析しその人物の転生前の出身に沿って翻訳され反映するように少し身体の方に細工を施しましたが…。

因みに魂の贄ついては価値と釣り合う物が無く、前例が無い為その身体にお返ししました。』




あっ!どうりで猫族と喋れるし、看板も読めたわけだ!

って言うか…


話の流れ的に…

やっぱり…


『私の元の身体は生贄になったって事!?』



『はい、その通りでございます』


即答するニャルデル



ハナはそのストレートな返答にもうポカンと空を見つめるしか出来なかった…。


もう家に戻れない、家族にも友達にも会えない…

やり残した事はいくらでもあった…


まだ死ぬには悔いが残る年齢だ、色んな感情が心の中を巡りやがて…ハナの目から涙が溢れ出した。



『うぅ…』



『………』



ニャルデルは無言で泣くハナをじっと見つめていた



『まだ話はフィナーレではございませんよ?

【異世界転生紋】は、イレギュラー…

此処で再度【異世界転生紋】を展開すれば全て元通りです。』



え?元通り?


袖で激しく涙を拭い、目を赤く充血させニャルデルに問う


『元の世界に帰れるって事?』


『はい『じゃあ今すぐお願いします!』』



今度はハナがニャルデルに被せるように話す。


『少し待ってください、コレはイレギュラーなんです。

【転移紋】【召喚紋】二つを重ねる事象が起きる確率はほぼほぼ0%ですよ?それに今の身体であの事象に耐えられると?』



『もう!どう言うことよ!訳が分からない!揶揄ってるわけ!?』



ハナは感情を爆発させる、目の前の神は出来る出来ないがあやふやで、希望を持たせたいのか、否か分からないのだ。

揶揄われてると思ってしまっても無理はない。



『そのつもりはありません、このイレギュラー【異世界転生紋】を再構築する為に3つ程、其方にはやらないといけない事があります。』


『…』


『一つ、7つの種族の神が居る鳥居を潜る。

二つ、大多数の他の者の願いを叶え、其方の名を全世界に広める。悪名でも、美名でも何方でも。

三つ、【異世界転生紋】に耐えれる身体を作る。

以上です。』



『……それをすれば帰れるの?』


『はい間違いなく、このニャルデルの名にかけて』



夜空を反射した様な瞳がハナを真っ直ぐ見つめる。

ニャルデルは相変わらず泣きそうなのか真顔なのか分からないが美形に真剣に見つめられるのは悪い気はしない



『はぁ…とんでも無いことになってしまった…。鳥居を潜るのはあと6つだしまだ難易度は低いと思うけど、名を広めるのと、あの振り回しに耐えれる身体って…。』



『今のハナならそこまで難しく無いと思いますよ?良い願いがあったので、それは叶えましたから。』



項垂れるハナにキョトンとの言葉がにあう用にニャルデルはそう言葉をかける。



『え?私何願ってました?』


『覚えてません?[マタタビ]で鳥居を潜った際、心に秘めていた【[紋]を使いたい】と言う願いですよ』


ハナは思い出す…トーニャが自身に放った[嘘縛り]の美しさが[紋]を使いたいと思ったキッカケだった事を…。



『…あー!だから使えるようになったんだ!!』



会った時は何も無かったのは分かるとして、[フォレストキャット]で、トーニャがあんなに驚いていたのは、これが原因だったのか…。



『思い出せて何より…という事で、貴方には私が与えられる最高の[紋]【拾い紋】(ひろいもん)を完全譲渡で与えております。


そしてこれは全ての[紋]を、吸収する[紋](もん)


…因みにギャグではないですよ?。』



『もうわかったから続けて!』


このやりとり疲れる…


『この【拾い紋】で他の鳥居を潜り、全ての神から[紋]を吸収し集めて下さい。その力で【異世界転生紋】を作成します。[紋]の使い方の記憶すらも吸収できるので、何も問題はありません。』



あの使った事のある妙な感覚とか、何故か初めて使う[紋]にやたら詳しいのもこれの仕業か…。

なんかそんな気配はあったよ?本当に。



というか、


『てっきり今その【異世界転生紋】を作れるのかと思ったけど準備がいるのね?』


『私の力だけではどうにも…他の神々の力が合わされば可能です。』



どうやら他の神にも会う必要がありそうだ…

面倒だけど帰る為だし…。

まぁ方法も知り、力も授かった…闇雲に手探りで帰る方法を模索するより遥かに楽なのかも知れないな。


そんな事を思っていると、ふとノルウェルの顔が浮かんだ。ニャルデルがさっき言ってた事と少し違うのを思い出した。



『所で話の腰を折る様だけど、初めにノルウェルさんから[限定召喚]?じゃないかと聞いていたけど【召喚紋】とはまた違うの?』


『ノルウェル…知識の探求者の…あぁ久しい名だな、彼は…

そうか…此処ではよしておこう…。』


ニャルデルは気になる言葉を残し、言葉を濁す。


『[限定召喚]でしたね、簡単に言うと【召喚紋】の下位互換になります[限定召喚]は使用者の生命力を消費し続けますが、【召喚紋】は生命力は消費しない…使用者の命やそれ以外の代償を失う事になりますが…、どちらも限られた[サモナー]以外は使う事が出来ず、【召喚紋】に関しては使用者は命を失うので、存在すら知らされていません』



『成る程…ノルウェルさんの説明は一様合ってたけど、まさかその上位の話だったなんて…』

『流石ノルウェルですね[限定召喚]の把握は驚きましたが、よもやここまで迫るとは…』


同時に独り言の様に呟いた言葉はお互い聞き取れず、


『あっ』

『おっ』


ご覧の通り変な間になってしまった。


『どちらにせよ、並行世界との干渉には、物も人もこの世界とは価値が遥かに違う為多大な贄が必要なのは変わりません。』


『私を召喚した人は一体何を生贄に…と言うか神様は関与したの?』


『恐らく誰にも関与せずに行ったのでしょう、調査はしましたが痕跡すら残っておらず断念しました…不甲斐ない事です。』


ニャルデルは心持ち悲しそうな表情になった。



『とりあえず鳥居を潜るのを先に頑張るよ』


『健闘を…祈りま…す』


『あれ?どうしたの?』


スマホの電波が途切れるように言葉が少し途切れている。

違和感を感じ、周りを見ると

周囲が時間を取り戻しつつあった…。

水面は波紋を少しずつ打ち出し、水泡も割れていく…霞がかった世界は霧が晴れていく。


この場所の崩壊が近い…。



『どう…や……時間n…ようだ

        其方n…幸運…あれ…神…』


ニャルデルは形を維持できず。霧と一緒に消えた。

それと共に冷たい夜風が吹き、月夜が現れた。

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