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とある酒場で

どーん…ぱらぱら………


ンパァアン…パパァン……


ドゴォォオオン…




ーーーーー

ーーー

ーー




ハナが飛び立つ衝撃でトーニャは現実に戻ってきた後、冷静に遙か遠くで急降下し、モチッコ達を吹っ飛ばし丘の向こうへ消え行くハナを見据えひとりごちる…。



『どう言う事…?何故ハナはあんなにも高度な[紋]を使えるの?[フォレストキャット]で見た時は刻まれていた[紋]の数と質が凄かったのは驚いたけど…。

あっ、アーチナのへんな薬の仕業だったりする?なら私も…

いやいや…そんなはずないか…。

途轍もない才能があるのは知ってたけど…詠唱が無茶苦茶で、しかも教えても見てもいない[紋]を完全顕現で使えるのって本当どう言う事??』



もういっその事、ハナはそう言う特別な人という事で割り切るか…、元々不思議な出会いだったし…。




ハナは悪い人では無い…

私の心に揺らぎは無く確信している…、もしそうじゃ無くても後悔は無い。

今日初めて出会って色々接して来たけど、独特な悪人の気配がまるで無く、年相応の少女の様なあどけなさが事実だった。



『ハナ夜には帰ってくるかな…』


割り切るという答えで考えが纏まったのか、

ふーっと長いため息を吐くというか吐き出しきる色んなモヤモヤとした感情を乗せて…

気長に待つ事を決めたトーニャであった。




ーーーーー


ーー





『たっだいまー!!』



[白虎の脚]の力を存分に使い、トーニャのいる元へ飛ぶ様に駆け寄って来たハナは、存分に遊んだ後の子供の様なキラキラとした笑みを浮かべる。


もう力を使う必要が無いのか、自身に掛かっていた全ての[紋]を軽快にパパンッと手を弾く動作と共に解除する…。

さっきまで形がハッキリしていた[紋]がまるで出来損ないのホログラムの様にユラユラと動き、ハナが歩くと同時に肩にぶつかったタバコの煙の様に空中へ消えていった。



『はははっ、もう言葉が出ないよ!ハナが凄すぎて落ち着くのに時間掛かっちゃったよ!でも日が暮れる迄に帰って来てくれて良かった、魔物が凶暴になっちゃうから今日はもう帰ろっか…、まぁ色々後で聞きたい事もあるしね!!』



最後の方の声色が凄くない?あっ、怒ってる!?



『あははは…ごめんごめん、ついつい楽しすぎて…面目ない…』


えへへと照れるように笑うハナ…



『今回かなり力を使ったと思ったから心配してたんだけど…ハナが初めての[紋]に触れるから無茶をするのは想定してたんだけど…斜め上に裏切られたと言うか何というか…。念の為に用意してた[黒丸薬]を使うまでも無さそうね』



『あっ、あの変な薬飲まされた所で買った奴ね!力を使ったと言われればそうだけど余り普段と変わらないよ?』


確かトーニャに渡された時に鞄の中に入れた覚えがある…



『アーチナの変な薬に関しては私も同意だけど…一様[紋]は気力とか生命力を駆使して使うから、サモナーとしてどれだけ強かったとしても使い過ぎには注意が必要だよ?[黒丸薬]はその対策で、頭がぼーっとしたり、フラフラしたら食べてね多少はだけど回復出来るから』


『そうなの?…ん、分かった!』


ハナは返事をすると、腰の鞄に手を突っ込み取り出そうとしていた丸薬入りの袋をそのままに元に戻しておいた。




『帰りは[出口]から行っても良いけど、井戸を登るの面倒だし、鳥居の方…つまり[入り口]から帰るからね』


歩き出したトーニャは、そうそうと思い出したかの様に呟くように言った


『分かった!…

あっ、でもあの井戸から出る時に使ったカードを刺さなくてもいいの?扉も開けっぱなしだし…』


『それについてはダンジョンに入る時のランクの確認と子供とかが勝手に入らないように検知する為だから大丈夫! そして入ってきた扉は、カードの認証忘れの防止と主に魔物に対する認識阻害用だから私達が通った段階で勝手に閉まってる様に動作してるのでコレも大丈夫、

最後に帰りについては街道の魔物除けを私達は問題なく通れるから無理して井戸を登らなくても[入り口]から帰れるって事なの』


さも当然の様にスラスラ話すトーニャ


『おぉー!トーニャは何でも知ってるなぁ…その辺私さっぱり分かんないから…やっぱり凄いよ!』


『コレくらいはね?まぁ[紋]については悔しいけどハナにお手上げだよ…私も、まだまだだと痛感した…お祖父様から言われて通り日々修行だね』



それぞれの想いと共に帰路に着く、この後騒がしくなるであろう夜の街に向けて。



ーーーーー

ーーー




『なんじゃと!!!一度に5重も[紋]をかけたのか!?しかも神の如き完璧な顕現で!?』


『詠唱をテキトーにねぃ…って…爆発しなかったの!?』


『誰が見ず、教えもしない[紋]を使えるよ?そんなポンポン出来るなら誰も苦労しないっつーのー!!』


『ハナは本当の事言ってるよ!なにより私が見たんだから間違いない!!凄かったんだから!』


『アタシ、ハナの事頭の悪い騒がしい馬鹿だと思ってたけど取り消すよ…酒の席だけどごめんね?』



ひとまず…、そうここは酒場だ、場所は[フォレストキャット]内のギルドをみて右側つまり応接室と鏡面の位置となっているこの場所は、直接入れる様に扉が外にも付いている。


そしてこの騒がしい猫達は私の初の[紋]がどういうものかトーニャに聞いてからひっきりなしに色々聞いてくるのだ。



着いた時には既に出来上がっているアーチナとシズ…ノルウェルなどなど見知った顔も居た。


所で猫ってお酒飲めるの?あっ、ミルク(マタタビ入り) ってメニューに書いてる!しかもアルコールの様に度数もしっかり書いてる!



『んーっと…詳しいのは分からないけど、何故か沸々と湧き上がる?思い出して来たみたいな感じがあって、やってみたらこう…なんと言うか…出来た!』


とりあえず凄い事らしいので胸を張り両腰に手を当てて威張ってみた。




『ふむ…ひとつ何か[紋]を見せてくれんか?俄にも信じがたい…』


ノルウェルのその言葉を待っていたのか、話すのをやめた猫族の皆さんの視線が集まる。酒の肴に好奇な目で見てくるこの人達に見物料を取ったらかなり稼げそうな凝集の中、何も言わずスッと[月兎の耳]を出した。



『こ、これは!完全顕現の[月兎の耳]じゃ!』


『凄い凄い!よく見せて!!』


『うおおぉぉお!!本当だ!!!』


『本当に詠唱も所作も無しでやりやがった!!』


『神に対する冒涜じゃ無いのか!?』


『怖っ』



さっきからシズがチクチク言ってくるのなんなの?



更にボルテージが上がる猫族のテンション。

珍しい物を見る様な目で別の席に居た者もハナの見物に次々と押し寄せやってくる。



『おい[月兎の耳]をこんな席で出したら鼓膜ぶっ潰れるんじゃ無いのか?』



おっ!そこの腕組み隻眼眼帯猫いい事言うね!



『そう、コレは間違い無く[月兎の耳]、未完全だと音を何倍も膨張させ聞き取れる様になるんだけど…あっ、ちょっと誰か私の耳元で叫んでくれます?』


俺でいいか?っと手を上げ確認する隻眼眼帯猫は、寄りかかっていた柱から離れ、ハナに近づく…『遠慮なくどうぞ』っと髪を耳にかけたハナを見下ろし、大きく息を吸うと鼓膜を破るかの様に耳元で大きく声を張り上げた。


周囲にいる者で何も知らない人が居れば五月蝿いと怒鳴るだろう声量…


『やっちまったよ…』『俺知らねー』と辺りはそのひそひそ声を聴き取れるくらい静まり返った…


が、



『っと、この様に普通なら鼓膜が破けちゃう音でも、害ある音と耳が判断すると自動でシャットアウトしてくれるから平気なの、だから必要な音をちゃんと聞き分ける事が出来るって意味』


ハナは大した事無い素振りで両手を軽くあげた




『おぉー!』


『恐れ入った!大したもんだ!』



パチパチと拍手が飛び交い、暫くその賞賛を少し照れながら受け入れていた。




『質が高いとこんなにも便利なんだな…』


『同じ事をやれっと言われても絶対嫌だな…』



またまた話し声がヒソヒソと聞こえ出した。




『いやはや…自分の[紋]にここまで信頼を置いているとは、その胆力は凄まじいな…、そうであるが故にハナが[紋]を使いこなせるのは至極当然の様に思える…』


ノルウェルが感心する様に話すとモップの様な髭を摩る



『後は、さっきの[思いだす]っという言葉が気になってるんじゃが、会った時は[紋]を知らないと言ってなかったか?それとも忘れていて昔使った事があるのを思い出した口かの?』



『んー、トーニャに教えて貰って初めて[紋]に触れてそこから急に使い方だけを思い出したから…。何故こんなにも出来るのか本当に分からないの…

まぁ体感的に説明するとしたら、使える為に努力した記憶の部分がすっぽり抜け落ちてるような感覚が近いのかな?』


そう、それについても私にはよくわからない…表現方法が分からないのだ…努力の果て身体に刻み込まれたものが無意識のうちに出来てしまう…そんな感覚が近い、だからこう答えるのが自然なのだろう…




『ふむ…そうじゃったか…、じゃが、永らく見てなかった完全顕現の[紋]を見れたのは…、とても…良かった、ありがとうハナ』



ノルウェルが振り絞るようにハナに伝えた後、優しい笑みを溢す…その瞳には薄らと涙の様なものが光っていた。



『こんなのだったらいつでもいいよ』


それを照れながら笑顔で返すハナ。



『うむ、ワシはそろそろ明日の支度をせねばならんのでな、お暇させて貰うとしよう』




周囲は暫くざわざわしていたが、ノルウェルが離れて行った事を皮切りに、とりあえず聞きたい事は聞けたと言わんがばかりに面識の無い者以外は皆散り散りに去ると、各々の酒の席に戻って行った。



『ふー…皆んなそんなに珍しい物を見る様な目で見なくてもいいのにね?』


『いや、ハナは本当に珍しいと思うよ…自覚はあった方が身の為だよ』


トーニャに呆れられてピシャリと言われてしまった。



『えへへー…、

あ…、ヤバい!

そういえば私おもっいっきり外で暴れちゃったけど色々大丈夫だったのかな!?そもそも街の人は私が暴れていたのは気付いて無かったみたいだったけど…』



『その事なら大丈夫!ダンジョンに行った時にも説明した通りニャルデル神さまの加護はこの国全体だから問題ないよ?あの揺れでさえ街にいる者は誰も気付かない位完璧な加護だからね!

後、外の地形が変わっているのも、ダンジョン独自で勝手に元通りになるから気にしなくていいよ』


恐る恐る聞いたハナだったが、トーニャの返答に胸を撫で下ろした。


最悪私が原因の地震で街が崩れちゃったら大変だったから本当よかった…今回は何とかなったけど周りに気を付けて力を使わないと…。



そう心に深く決めたハナであった…。

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