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ようこそ猫族の国マタタビへ!

ーーーーー


大樹にぽっかりと開いた謎空間を恐る恐る通ると、木の湿った香りとは違う、どこか若々しく爽やかな風が横切ってくる。

その風圧に目が渇き堪らず目を瞑る…暫くして目を恐る恐る開けるとそこには…


『うわーー!凄ーい!!』


現在地から少し離れた場所に金で装飾されたであろう豪華絢爛で立派な鳥居がドンと構え、鳥居を正面として、その両側には広大な芝生がここから端が視認出来ないほどずーっと広がっている。

鳥居への道は芝生を切り開き踏み固めたであろう道がずっと繋がっている。


この鳥居の先の奥は長い上り階段になっており、更に奥には勾玉の様なものをモチーフとした様々な装飾を施されている煌びやからな建物がハナの視力の限界あたりでチラホラと見えていた。



ハナと猫族一行は獣道をゾロゾロと歩いて行く…。かなり広い道で猫族が広がって歩いても余裕がある。

猫族はこの道をよく通っているのか、先程通ってきた森のジメジメした土とは違い、しっかりとした良い道だった。





『ようこそニャルデル神のお膝元『マタタビ』へ』


鳥居の前に着いた後、隣の長老猫は孫に向けそうな優しそうな笑顔をこちらに向け、私はそれに笑顔で頷き返す。



鳥居を潜ろうと意気揚々と歩いた時、何故か私を迎えてくれている様な何処か懐かしい優しい温かさを感じた。




ーーーー




『さて…遠路はるばる御足労おかけしたな』


労いの言葉をかけた長老猫が招待してくれたのは、『ハウス-フォレストキャット-』と呼ばれるこの町一番大きく、一番目立ち、尚且つ何処よりも勾玉がキラキラしてる建物の中…の応接室だった。

真ん中でドンと構えていた、高そうな光沢を帯びている四角い木目調のアンティークな猫足の机を挟んで、これまた同じく高級そうな猫足の椅子が5脚づつ互いを見合うように並んでいた。


応接室の中は程よく広々としていて、カーペット生地のフカフカな床が歩き疲れた私の足にはとても心地よかった。


その椅子に真ん中に私、向かい会う形で長老猫、隣にさっきの銀色猫が座っていた。


『観光みたいな感じで楽しかったよ?早く帰る必要も心配も無くなったので心に余裕が出来たみたい』


少し照れ笑いしながら、それに応えるハナ


『そう言えばまだお互い名乗っていなかったな。ワシは猫族の長を任されておるノルウェル、そして隣は孫のトーニャじゃ、お主の名を教えてもらってもいいかの?』


『ハナです』


『ハナ…か、では早速で申し訳ないんじゃが、ここからは少し取引になる…よろしいか?』


『と、取引とは…』

少し緊張感が増したハナに、和かにノルウェルが話しかける。


『いや、そこまで臆する事はない、此方の世界に来たばかりであれば身寄りもないのだろう…これからのハナの衣食住を提供する代わりに、人族に攫われた我が子を取り戻して欲しい…無論今すぐにという訳ではない、必要な知識、力を得た後でよい。』


『えーっと…それはとても有難いんだけど、私以外に適任がいるんじゃ…?』


チラッと応接室に入る際に使った後ろの扉をみる。


その扉の両翼には金剛力士像を彷彿とされる鍛え上げられた筋肉の化身と化した金色と見間違うような濃い黄色の猫が二対いた。

過剰防衛だろ!っとツッコミを入れたくなるくらいの、筋肉の化身は

こちらの話に興味なさげに真っ直ぐ虚空を見つめている。


…多分応接室よりも城とか、特に寺院とかが似合うと思う。

あっ胸筋が動いた。


ふーっとノルウェルが息を吐き首を振ると、

『彼らではどうにもできん…事はそう単純では無いのじゃ…、確かに個の力は甚大で人など容易に吹き飛ばせれるが、所詮それだけ…人族は頭のキレが我等と比にならん、闇雲に人族に戦争を仕掛け、子供を助ける為に暴れていてはやがて、取り囲まれ目的も果たせぬまま死ぬのが火を見るより明らかじゃ』


『なるほど…そこで私にその人族を出し抜いて、子供を助け出したら良いんだね!』


『そういう事じゃ』

満足する答えが聞けたようでノルウェルはカラカラと笑顔で返した。


『少し不安だけど…私にできる事なら何でもするよ!困った人がいたら助けるが私のモットーだからね!』


負けじと明るい笑顔で応える。

心なしか、扉の守り猫の胸筋もピクピクしていた…喜んでいるのか?



『交渉はこんなもんでよかろう、色々教える事が山程あるんじゃが…今日の所は猫族の国を案内としようかの』


『なら私がハナを案内いたしますわ!』


隣でずっと視線を送っていたトーニャが勢いよく名乗りを上げた。


『適任じゃな、ワシは少し用があるでの…頼んだぞ』


『おまかせを、お祖父様』


お互い頷くとノルウェルはトーニャに小ちいさな袋を渡すと、席を立ち、金剛猫の扉のほうではなく、入った時に見えていた右側の扉から出て行った。


『私達もいきましょうか』


『うん!行こう!トーニャの案内楽しみにしてるね!

あっ後、普通に話してくれたほうが嬉しいな!』


ハナはにっこりと笑顔を向けると、それにつられてトーニャも笑顔で


『ふふっ…わかったわ』


と返した。


2人は金剛猫の間の扉から外に出る。


赤い絨毯が渡り廊下一面に敷いていてその両側には金色の色が編み込んでいた。

そんな廊下をハナとトーニャは歩いている。


トーニャは何を話そうか考えていたが、

こちらの世界の事を知らないのなら…と話題を決め、

ハナに話し始める。


『この世界には7つの種族があるの』


『7つって、どんな種族なの?』


ハナも興味があったので食い入るように聞く。

この世界の事はよくわからないから、とりあえず歴史とかから分かると良いなぁとボンヤリ考えていたので、トーニャの話の取っ掛かりはとてもありがたかった。


『一つが、さっき言っていた人族。この世界で一番数が多いと言われている。

見た目はハナの様な見た目で、単純な力が弱いけどそれをカバーするかの様に賢く、器用で罠とか何でも作れちゃう細かい作業が得意のイメージがある。』


『イメージなんだ…』


『私は直接会ってないけどね…お祖父様はこの国が侵入時された時に迎撃とかで何度か戦ってるけど…話を聞く限り一癖二癖ある厄介な種族ってイメージが強いかな?生憎私には最近取得した嘘縛りの[紋]があるから、何かあってもある程度の対策はとれるんだけどね』



『そして二つ目が猫族

私達の種族。

俊敏性に長けていて、勇敢、不退転、不屈の精神を持つけど、あまり争いを好まない。恥ずかしい話、知能はそれ程長けてないから、様々な種族に苦渋を飲まされ表立って国を作ることが出来なくなった種族なの』



『あっ…!だから木の中に国があるのか!』



ハナはこの【マタタビ】へ来た時の事を思い出していた。

トーニャは小さく『そう…』と返事をする。


『猫族はいつかこの国を外に展開して、他の種族の様に堂々と自らの国を創って、私達の力を証明したいと思っている』


トーニャの瞳には嘘偽りではない確かな覚悟があった。



『きっとできるよ!こんなに素晴らしい国だもん!』


『ありがとう…他の種族に言われたのは初めてよ』


トーニャは小さく笑うと、続きを話した



『三つ目が、犬族

性格は…もはや正直者の化身ね、正直過ぎるけど単純に力もあるしチームワークが凄く連携して敵を追い詰めるタイプの戦い方をするからあまりそれが欠点になってない種族

あと鼻が異常に良いから索敵とか得意だね』


『やっぱり犬もいるのか…イメージ通りだった』


『ん?知ってたの?』


『いや!何でもない続けて!』


ふと思った言葉が声に出てたみたいで、トーニャの話の腰を折ってしまったみたいだ

トーニャは『ふーん』と、とりあえずの相槌をした。


『四つ目は、鳥族

翼を持ち、空を自由自在に飛び、地上の獲物を追い詰める。無敵な感じがするけど、あまり賢く無いからそこまで強く無い』


『そこまで強く無いんだ…』


『まぁ猫族との戦闘の相性は良いみたいだからねー』



確かに猫と鳥なら猫のが強い感じがする!

ハナは心の中でそう思っていた。



『あっここからはどんな種族かあまり聞いた事ないから詳しく分からないんだけど、

五つ目は森人族…森から出ないで有名でとても長生きで賢い。

六つ目が矮人(わいじん)族これは小さな巨人って言葉が似合うパワフルな小人って感じ、装備を作るのが上手らしい。

七つ目が漁人(いさりびと)族、全身が鱗の鎧に覆われていて海を拠点に生活している。魚人って言うと怒るらしいから気を付けてね。


っと、一様これで種族についての説明は終わったけど、大体わかったかな?』


トーニャは後半だいぶ駆け足になっていたのが気になったのか、ハナに感想を尋ねる


『なるほど…種族については大体わかったよ!ありがと』


『良かったぁ』


詰め込み過ぎたかなっと心配していたので、ハナの返答にほっと胸を撫で下ろす…そんなトーニャをニコニコとハナは見ていた。


『あっ、そうだ!』とハナは思い出したかの様に質問する。


『ところで、さっきから言ってた[紋]ってどうやって取得できるの?』


出来るなら私もやってみたいと思っていたので、興味本意で聞いてみた。


『[紋]はそれに適応する各々の神に[認められるか][愛されるか][恐れられるか]そのどれかを満たし【契約】すると、身体の何処かに刻まれるのよ…私の場合お腹ね、毛で見えにくいと思うけど薄っすら模様が違うでしょ?』


模様が見えやすいようにか、少し自慢げに仰け反る


確かに銀色の毛の中に薄っすらと白の混じった様な毛で、勾玉のような形の模様が描かれているのが見えた。


『へー…こんな感じになるのね、じゃあ模様が付いてたら[紋]使い的な感じっていうことなの?』


トーニャは仰け反るのを辞め、ふとハナの目をじっと見ながら話す。


『まぁそういうこと…所がコレを隠す【サモナー】がいたり…あっ、[サモナー]って[紋]使いのことよ?。

後は、[サモナー]と自称する者が威厳欲しさに偽の模様を身体の至る所に張り付けたり塗ったりしては、偉そうにしたり、威張り散らかしたり…そんな事をするのも存在するわ』


『威張り散らかす…あー、チンピラみたいな?』


『ん…ちんぴら?』


『あっなんでもない!』



ハナの聞き慣れない言葉を聞き返してきたが、どーでもいい事を教える訳にはいかないので、ハナは手を慌ててブンブンふって気を紛らす…トーニャはふーんと一言いい、続きを話す。


『…でも相手がサモナーか調べる方法があって、サモナー同士が暫く目を合わせて[紋]の共鳴を使えば、お互いの身体に刻まれた模様が光るの、ハナが縛られていた時にこんな感じで使ったんだけど…




……ぇえ!?』






驚いた声を上げ、ピタっとトーニャは足を止めた。

トーニャはお腹の模様が『嘘縛り』の時と同じ様に光ってる…

ただその共鳴の対象であったハナは、その身体の至る所から発せられる光が煌々と満ち溢れ輝いていた。



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