魚取り!
木々を掻き分け鬱蒼とした森から抜け出すと、
視界に広がったのは、拳ほどの白い丸い石が辺りに散らばっている風景だった。
そしてハナの目に留まったのはその奥のキラキラと太陽の光を反射し輝く清らかな水が流れる小川であった。
頂上にある[ルナ湖]から通ずる小川が何処かに流れていると思っていたが、【鷹の目】で運良く見つけれて良かった。
『川だー!綺麗〜!!
んー、この辺りは誰もいなさそうだし…
落ち着けそう!
それにしてもこの川ちゃんとお魚いるかな?』
一息つく前にハナは【調の涙】の追加された能力で、
【食材探索】と【食材鑑定】を小川に向かって行う。
キィィィ…ン……
ピコン!
『おっ!見つけた!!魚だ!』
ハナは【白虎の脚】を顕現し、魚のいる場所目掛けて直接【荒熊の爪】を叩きこもぅ…っと思ったが、おそらくこの綺麗な小川が吹き飛ぶのが想像に難くない。
生態系が木っ端微塵はよくない…環境破壊は駄目!絶対!!
『ん〜…【荒熊の爪】は確実に地形が変わってしまうし…魚取るには威力が厳しいか…
どうしよう…
あっ!』
思い付いた事をしてみようと【白虎の脚】で駆け足に小川に向かう。
顕現を解き、靴を脱ぎ、素足を水につけると、心地いい春の気候のそれとは裏腹に足先を濡らす水は少しひんやりしていて冷たかった。
脹脛まで水をつけた時、思わず少し身震いしてしまう。
小川の中央辺りにハナは陣取ると【金剛の盾】を後方に水を堰き止めるように設置、押し寄せている水流が、【金剛の盾】の上側を波のような形で乗り越えている。
前方にも同じような向きで【金剛の盾】を配置し、ハナを囲った。そのまま盾を流れに沿う形で奥から手前へ【食材探索】で見えている魚を出口の無い状態でハナの近くへ誘き寄せる…
『ヨシッ!今だ!!』
ハナの真下側に3枚目の【金剛の盾】を隠して設置していたのを一気に引き上げる。
ザバァッ!
するとハナの思惑通り盾の内側の窪みにハマった魚達がぴちぴちと暴れ出す。
ハナは無事作戦が上手く事が進んだ喜びを一旦噛み締め、
極力油断をせずに、すかさず後ろを堰き止めていた【金剛の盾】を使い、蓋をするように閉じ、魚が逃げないように川から離れる事にした。
川から上がると通り過ぎた風が足を更に冷やしていく。
『外でても冷たいなぁ…』
丸い石に躓きながらヨタヨタと川から離れる。
そして…喜びを噛み締め震えながら腕を大きく天に突き出す…
緊張からの解放の時…!!
『やったー!!思いの外大漁だ!!
盾をこんな使い方するって天才かも!!』
こんな方法があるってみんなに知らせたいなって気分良く思っていたが、
多分これトーニャがみたら[神聖な【紋】をなんて事に]って言って怒りそうだなと思うと、教えたりはしない方がいいなと苦笑いしながらそう判断した。
『そんなことより!さてさて釣果はどれくらいかな〜?』
【金剛の盾】の蓋を開けると5匹の少し肥えた魚が入っていた。
ーーーーー
サーモラ
川魚。
産卵の時は命を賭けて海から川の上流に向かうという、勇敢な魚。
身はオレンジ色で淡白な旨みが特徴、新鮮な内は生食可能。
ーーーーー
って…
『そのまんま…サーモンじゃん!!』
コレはありがたい!食べやすく、
しかも美味しいというのが確定した!
でも…、はぁ…流石にお腹すいたし、疲れたなぁ…。
料理するにも火がいる
ガク達カードからだして、あわよくば休憩出来そうな所作って貰おうかな?
ゴソゴソとカードホルダーに直していた、ガクとセキを取り出し、解放する。
『よっと!…コレはハナ殿!お疲れのようで!』
『移動に疲れたのなら俺様を使えば良かったんじゃ…』
ガクとセキは変わった風景に周りを気にしながらもハナに一言物申す…
『ガク、セキ!ごめんねすぐ出さなくて…
流石に人族の国の近くでは目立つかと思ってさ…』
出てきた二匹を軽く宥めつつ、昼食を取ろうとしていた事を伝えた。
…………
…………
『ジャーン!!見てみて!こんなに食材取れたよー!!』
目の前に繰り広げたのは森の中で探索して取ってきた食材と、さっきとったサーモラだった。
『流石ですぞ!ハナ様!!』
跳ねながら喜ぶセキと、
『フンッ!なんだその変なのは?俺様は角にんじんだけで十分だからな』
鼻息を一つ付いて、ぶっきらぼうに言うセキ。
『この駄馬が…ハナ様に対して無礼な…』
ガクがセキに食ってかかる。
『あ?俺はただ…『だー!!もー!!ストップ!!』』
ハナの急なトーキングブレイクによって、この無駄な言い争いから始まるであろう戦いはすぐさま終わりを迎えた。
『もー!そんなのは良いから!
ガクは早く今から薪になりそうな物をかき集めてきて!!セキはこの辺りの良い感じの所で休憩するところの作成と火を焚く準備!!じゃあよろしく!!』
軽く急かしつつ、パンッと手を叩くと、その号令と共に両者に仕事が与えられ、それと同時に飛び出していった。
無論これは先程の言い争いの延長戦であり、
お互いの仕事の速さを見せつける為のバトルだった。
ガクは森の中にまっすぐ突っ込んで行き、乾いた木々や木片を腕で掴み、そのまま回収。
セキは川に比較的近くの広い空間を見つけると、川の上流を見つめると、自慢の脚力により飛び出す。
そして何処からか背負ってきた2m程の石。
それほど厚みの無い石というか岩石を背中から後ろ足に下ろすと、一度目の蹴りにより、天空へ飛ばす。
その後自由落下速度を得て、落ちてくる石を二度目の後ろ蹴りで迎え撃つ…
その一瞬の早業により、達人が日本刀で切ったかのような切断面を滑るような形で見事綺麗にスパッと石を割った。
そうして石を切っただけの簡素なテーブルと、イスが出来た。
『ほぅ…なかなかやりおるではないか』
『お前もな』
ガクが持ってきた乾燥した木片達は、そろそろ良い感じの小山を形成していたが、ハナの手によって必要な分をそのテーブルの近くに一箇所に寄せ集めて、駆け寄ってきたセキに合図して蹄の近くの炎によって点火された。
『ありがとうー!!流石だよー!!
こんだけやってくれたなら大したもんだよ』
ハナはガクとセキを褒める。
ペットを褒めるように二匹の頭を優しく撫でた。
『ほうこれはなかなか…』
『いいものだ…』
小さなプライドの為の戦いをしようとしていたのがバカらしく思う位気持ちが良かったらしい…。
コレを機に二匹は頭を撫でられる事を好きになったのであったのはまた別の話…。
『じゃあ、火も用意できたし、料理作って行こっか!!』
手をパンと叩き、気合いを入れる。
ハナのサバイバルクッキングを開始する!!




