出発!
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いつの間にかトーニャ達と別れた鳥居からだいぶ歩いていたらしく、来る時に通った猫族の国へ繋がる大きな木も、特に代わり映えなく佇んで私達を迎え、蔦の張り巡っている場所を暖簾を潜るように進むと猫族と初めて出会った森に辿り着く…そしてそれを懐かしむ様にキョロキョロ見渡しながらノルウェルの案内の元突き進んでいた。
……
あの時初めてトーニャやノルウェルさん、猫族のみんなからグルグルに縛られ問い詰められていた状況から、まさか…猫族の今後の未来を託されるような事になろうとは思ってもみなかったね…。
っとハナが感慨ぶっていると、ずっと黙っていたノルウェルは時間と共に重たくなっていた口を開く。
『ハナ…今回の作戦は人族の国にいる猫族の奪還が目的じゃ…
じゃが、くれぐれも無理はするんじゃ無いぞ?
行動によってはお主自身に危険が伴うしの…、
恥ずかしい話、猫族皆…まぁ儂も含めてじゃがハナの優しさに大いに甘えている状態じゃ、皆の思いを全て背負わせてしまってるのはこの老体には中々応える…、
そしてこの作戦で一番大事なのは、危なくなったら帰って来る事。
これは戦略的撤退といってな、情勢を知り次に繋げる為の戦略でな、逃げる事は恥では無いんじゃ。』
隣で一緒に歩くハナにそう優しく言い伝える。
『私の事気にしてくれてありがとう、でも皆んなの期待に応えたい!って言う気持ちが今は強いから出来るだけ頑張ってみるよ』
ハナはそれにガッツポーズを作り笑顔で答える。
『うむ…今はその気持ちでいいかもしれんの…。』
ノルウェルはそんな純粋な返答に意図が伝わったか少し心配していたが…
『そういえばハナと出逢ったのはこの当たりじゃったな…ここに来ると色々思う物がある…日は浅かったがの…ほっほっ…。』
少し前の出逢った事を思い出し笑みを浮かべていた。
『時にハナや…人族の国に行く前にお主に伝えなければならぬ大事な話が三つ程ある…まず、一つ目は猫族の話は人族の前ではしてはならぬ…お主が見て聞いたものは猫族の強みと弱み…つまりそれらは人族にとって喉から手が出る程欲しい情報じゃからの…
これまでずっと攻められて居ないと言う事は相手にはまだ伝わっていないと考えられる。』
喉から手が出る程欲しい情報って言うのは恐らく…
『弱みと言えば国の[入り口]と[出口]だね…例えば魔物を操れる人族がいるなら、出口から魔物に襲われると大変な事になっちゃうしね…』
『うむ、他にもあるが…そういった所じゃ…トーニャの教育の賜物かの?ほっほっ…、
そして、二つ目は転生したという話もしない方がいい…記憶を失ったと伝えた方が後々都合も良いじゃろうて…その服と身に付けてるアクセサリーもそっちの方が説明しやすいしの…、勿論此処のギルドカードも出してはならぬぞ?あれは猫族の情報が入っている身分証じゃからな』
『あっ、そっか…下手に転生者って言うと…良くあるのが…
王様とかから目をつけられたり…英雄とか言われて担ぎ上げられたりするもんね!』
『ん?良くある?』
『え?あっ、たっ、ただの独り言だよ?気にしないで』
『独り言にしては返事が上手く出来てたような…、
まぁいいじゃろ、
…そして三つ目は【紋】使いである事を隠す事じゃ』
んー?
『ちょっとまって、それってトーニャの説明ではサモナー同士が目を合わすと身体の【紋】が出てくるから無理なんじゃ…現にトーニャに見られた時めちゃくちゃ身体から出たよ?私輝いてたもん』
『うむ…他の種族ではそうなんじゃが…
人族ではまた別なんじゃ、
普通は相手にサモナーかどうか疑われた時点で、サモナー同士隠蔽は不可能に近い…、じゃが人族の国だけはかなり古風な術を使っておってな…確か【まほう】じゃったか…儂とて長年生きてきたが、人族が【紋】を使ってる所謂サモナーと言うのは見たことがない』
ん…?
ちょっとまって……今なんて言った?
まほう?
『えぇぇえ!!??今!【魔法】っていった!?』
『なんじゃいきなり!?大きな声をだして!びっくりしたわい…』
ノルウェルはハナの声に当てられたのか、びっくりした心臓の鼓動を抑えて落ち着かせていた。
魔法があるなら話がちょっと変わってくるぞ…
私魔法も使ってみたいもん!!
ハナはキラキラした表情で自身が魔法を使う姿を想像するのだった。
『ねぇねぇ!人族達はど、どんな魔法を使うの?』
凄く興味がある…物凄く!!
『まぁ火を出したり水を出したりとか他にも様々じゃな、火も水もダンジョンの出土品で賄えるし、何よりそんな搦手の様なものにすがるより磨き上げた肉体…そして【紋】に勝るもの無しじゃて』
ノルウェルはうんうんと頷く…。
いやいや、覚えればかなり便利だと思うけどなぁ?
というか…、そう言えばこの世界で【魔法】って言葉を何処かで見たような気がしたような…
あっ!確か、擬のカードの説明文でそんな感じの言葉が書いてあったような…、
そういうとゴソゴソとカードホルダーより取り出す。
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[擬 宝箱の姿]☆☆☆☆
はるか昔の何処かの国に我儘で意地悪な王様がいました。
ある日魔法使いがやって来て、王様に宝箱を献上し、こう言いました。[この宝箱は国民が欲しい全ての物が詰まっている魔法の宝箱です、中身は沢山あるので無くなることはありません、どうか王様の名のもと、お配り下さい…]ですが、王様は我儘です。宝箱を独り占めにし、中の物を全て自分の物にしたのです…金銀財宝酒池肉林、意のままに出てくる宝箱…王様は宝箱の虜になってしまいました。そして宝箱は私利私欲の塊であるその愚かな王様のお陰で自我が芽生え…初めて自分の意思で鋭い牙を生やし醜く自身を漁る王様を美味しそうに幸せにそうに食べたのでした。
攻5000
守7000
速50
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コレだ!やっぱり魔法使いって書いてあるじゃん!
なんで気付かなかったんだ…、異世界と言えば魔法が使えて当たり前なのに…。
『ほほー…コレが噂で聞いていたカードじゃな?』
いつの間にかノルウェルがハナの後ろに周りこみ、カードを覗き見ていた。
『うん、古代遺跡の宝箱から出てきたんだー』
『ふむ…この[王様]の話…人族の古い文献を調べた際に見たことがあるのぉ…』
『え?これって有名な話なの?』
『どうじゃろうなぁ…、昔話として捉えて良いかもしれんな。
因みに、この[擬]も[魔法使い]というのもその話には出なかったのう…、えー、内容は確か…[我儘な王様の長く続いた独裁によって国が潰えそうな時、ふと現れた旅人によって討たれた]と書いてあったハズじゃが…』
『んー?それだとノルウェルさんの話と、このカードの説明文と違うなぁ…』
ハナが難しそうな顔をしながら頭を掻く。
『時代と共に情報が色々変わっていくのは世の定石じゃ…、恐らくこの[擬]のカードの説明分…これがその時起きた事の真実なのじゃろう…』
そう言いながらハナに向かって優しそうな顔を向けるのであった…。
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木々を掻き分けるかのように出来た獣道をペースを上げズンズンと突き進む…
老体とは思えない程軽やかな足取りで石や木々を蹴りながら駆け抜けるノルウェルに付いて行こうと、
ハナは【白虎の脚】を顕現しついて行く。
頂上から流れる小さな小川を見つけ、それを辿るように登っていくと、そこには大きな湖が広がっていた。




