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ある森の中に

『先ほどは疑ってすまなかった』


『いえいえ!お気になさらず!』


拘束を解きつつあるハナに向かい長老猫が頭を下げる。

それを気にしないでと手をひらひら空を撫で、制服のスカートに着いた汚れを払い落としながら答える。

拘束を解かれた後、猫たちの住んでいる国に案内してくれるらしく、道すがらに長老猫より謝罪の言葉を述べられた。


私は特に気にしていなかったし、初めての土地、場所で、何も分からない世界で話の通じる相手がいる事のメリットの方が大きいと考えていた。

聞きたいことは沢山あるが、とりあえず定番のコレを聞いておく。


『ちなみにここって何処なの?』


『猫族の国[マタタビ]…その領地じゃ』


『マタタビ…』


猫だから…か、

まぁ好きだもんね。


『して…人族にしては面白い服装じゃな?見たところ何の装備も武器も無し、[紋]も刻まれていないようじゃが…これでは旅は厳しかったじゃろうに』


自身の顎髭を触りながら、長老猫は不思議そうにハナの全身を眺めている。


『コレは学校に行く時の服装なんだー!…ところでさっきもそうだけど、もん…?ってなんなの?』


さっきのトーニャもそんなのを使って魔法みたいな事をしていたしね


『ん?お主[紋]を知らないのか!?』


長老猫の驚いた声がこだまし、前を歩いていた猫たちも内容を知ってか、驚いた顔で此方を向いてくる。


長老猫は気を取り直す様に一つ大きな咳をすると


『[紋]はこの世界の理を知り尽くし、神の域にたどり着いたとされる者が作ったとされる術じゃ。先程のは『嘘縛り』と言ってな、なにか罪を犯すものに使うには便利で強力な[紋]じゃ…、(しか)しこの様な上位の[紋]は使える才あるものが今はトーニャしかおらぬがのぅ』


何処か遠くを見つめる長老猫を横目にみながらハナは相槌を打つ


『へー、神様が作ったのか……、あっ!!この世界に来る前変な黒い塊に閉じ込められたと思ったら振り回されて、気付いたらココに居たんだけど…それも[紋]なのかな?』


身震いするほどの痛みであり、思い出すのも嫌なものであったが情報を聞くためにはと腹をくくり話しをした。


『うーむ…』


ハナの話を聞き、怪訝そうな顔を向ける長老猫だったが、暫く考え込んでいた、一つ思い当たる節があったらしく


『この世界?……ふむ…なるほど、無知な理由もさっきのニホンと言う謎の国も…納得がいったわい。

恐らく別世界からだと常人には不可能、神と同等か…それ以上の使い手に無理矢理召喚されたかもしれぬな…、誰が召喚したというのも[紋]の出所を知らんワシらでは追えん…元の世界に戻る方法もその召喚した者を直接訪ねるほかあるまい』


『えー!召喚した人見つけないと帰れないの!?今日の学校は流石に諦めてたから良いんだけど、手掛かりもないんじゃずっと家に帰れないじゃん!どうしよー!』


頭を抑え、ジタバタするハナを尻目に『ふむ…』と1つ声をだすと、長老猫は近くの枝を拾いカリカリと地面に書き出した。


『仮にじゃが…焚き火の[火]のみを限定召喚する高等技術を使った場合、その燃焼物である木は召喚されないんじゃ。

そして、この火の召喚に使用した[紋]の力が何らかの形で消滅した場合…火は元の焚き火へと戻り、何もなかったかのように燃える』


『ん?これとさっきのは何が関係あるの?』


頭に?マークが浮かぶ様な仕草をし、長老猫の絵を見つめている


『[紋]を使っての限定召喚は、かなり特殊でな…[持続して生命力を使う]代償を払う事で、結果のみを切り取る様になっておる。焚き火は燻って燃えるが、その燃えた結果の[火]のみを限定召喚した場合、焚き火の木は、召喚された[火]が戻って来るまで燃える事はない…つまり簡単に言うと、時が止まっている状態になるということじゃ』


『あっ!つまり極端に言うと元いた世界は焚き火の木で、私が火って感じか!』


『左様、お主は恐らく途轍もない力を持つ誰かによって限定召喚された可能性が高い…無機物ならそう大した事では無いのじゃがな…いやはや…凄まじい…。後、限定召喚だと分かった理由は、お主の身体の原型がワシらと出会ってからかなり時間が進んでいるのにハッキリしているのが何よりの証拠…、元に戻れた場合時間は殆ど進んでいないじゃろうな…』


なら別にそんなに焦らなくても大丈夫かと、ハナはホッと胸を撫で下ろした。



そんなこんなで、話をしていると目的地に着いたみたいだ。

この間何故かトーニャと呼ばれた[嘘縛り]をしたあの猫と話す事はなかった。


背伸びして、前方を見ると直径10m程の大きな木の下で先頭の猫たちの動きが止まっていた。


立ち止まった理由が知りたく

さらに背伸びして覗き見ると、ツタが絡んでいる大きな針葉樹があった。


その幹には人1人分位のぽっかりとした謎の穴が空いており、それを隠すように周囲のツタが目隠しの役割をしているようだ。


猫たちが集落と言うには、この木の中では流石に狭いのでは無いのかと思ったが、木の中に入ってみると、嘘みたいな光景が広がっていた。

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