道草食い
少し特殊な追いかけっこみたいな激闘の末、セキとガクはその辺りの芝生のような場所に、さっき迄の一触即発の雰囲気が嘘のように二匹仲良く寝っ転がり、自由な体制で体力を回復させていた。
本来のゴールであった抉りとられた木…もとい倒木は、丁度いいハナの椅子になっていて、その木に座りながら顕現していた全ての[紋]を解除し、切り株近くに生えていた椎茸の見た目をしている程よく弾力のあるキノコを時間潰しがてらに木の棒でつついていたのであった……。
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そんなこんなで、この場所に来て半刻…太陽が少し傾き、昼過ぎか夕方…何方とも受けとれる時間帯に入る…。
つつかれすぎて草臥れたキノコがその時間の経過具合を表している…。
魔物は自然治癒能力が高いおかげか、結構バテバテだったセキは軽快に動ける程回復できたが…ガクは完全に寝ていて起き上がるのにもう少しかかりそう…。
セキは待たせたな…っと言いたげにハナの元に近寄っていった。
『あっ、そういえば…さっき夢中で言葉で喋っちゃったけどセキに伝わってたから驚いたよ…』
『いやいや…俺様の方が驚いてるよ…』
と呆れ顔のセキ…
『え?この[鳳凰の嘴]での念話の時は別に驚いてなかったじゃない』
『それは昔何回か猫族とそれで喋った事があるからなぁ…特に驚きとかはなかったぜ』
ん?今猫族と喋った事があるって言ってた?
『因みにそのお相手の名前とか分かる?』
『確か…〈シャム〉って名前の銀色の毛並みの猫族だよ』
えーっと…何処かかで聞いた名前だな…
ん〜何処かで聞いた事があったような…
トーニャから初めて猫族の国にきた時に粗方教わっていたのに、完全忘れて居たハナだった…。
そんな話の途中ガクは目が覚めたようで、寝ぼけなまこで周りをキョロキョロして確認し出した。
『おーい!ガクー!こっちこっち!』
こちらに気付いたガクがぴょんぴょん跳ねながらやってきた。
『速さに自身はあったのですがなぁ…流石ハナ様!お見事でした!
それとセキよ…まぁ悪く無い勝負であったぞ!』
『確かにハナ様に関しては俺も同意見だ…、
ガク!次は同着なんてつまんない結果じゃあ無く、どっちかが勝つまで競争だ!』
ガクとセキは拳と蹄を付き合わせる。
丁度背景が西陽をバックにガクとセキがグータッチして居たので物凄くカッコいい絵になっていた…。
お互いの実力を認め、これからも切磋琢磨していくんだろう…やはり本気でぶつかると距離が縮みいがみ合うキッカケとかも、この固く結ばれた友情の元では取るに足らない事になったはずだ。
ハナは漫画やアニメとかでは努力、友情というが好きで、それを味わいたくて始めた短距離走だったが、このような異種族での友情もいいものだなぁ…と猛烈に感動していた…。
『いいねぇ戦いの後の友情…グスッ……
凄く…心にクルなぁ…』
『ハナ様…怖いです…』
『はぁ…やれやれ…、何泣いてんだか…』
呆れているガクとセキ、そして新たに産まれた友情に感動しているハナ…
其々の思いと共に、[角にんじん]の生えているエリアに向かうのであった。
『よし!!この辺りの[角にんじん]回収後帰ろっか!!』
『おう!』『承知!!』
『あっ!セキはお留守番ね!食べれなくなるから』
『ぉ…おう…』
『お主の分も取ってくるから心配ご無用!!』
セキは少ししょぼくれた後、邪魔にならない場所で寝転んで待っているのだった。
『いっくよー!』『いつでも!!』
独特な葉っぱの形をした場所の近くに、顕現した[荒熊の爪]で、硬い地面を突き刺す。
そのまま木々ごと捲り上げた後、ガクはその下の層の柔らかい地面に埋まっている[角にんじん]を手で掘り起こし、ハナの近くへポイポイと投げていく…。
全て回収した後、捲り上げた地面を歪ながら、元に戻す。
コレを周囲全てに行う…。
息の合ったコンビネーションにより予想より早い時間帯に、かなりの量の[角にんじん]が集まった。
[異空間の鞄 莫大]へ詰め込み、入らなかった分はガクとセキの早めの夜ご飯とした…。
結構ゆっくりしてしまったので、色々寄るところもあるし、猫族の国に早めに帰らないといけないので、カードにセキとガクを入れる準備をする…。
『じゃあそろそろ帰るとして、このカードにセキ入れるけどいい?』
『…?…なんだそれ?大丈夫なのか?そこに入って…』
少し心配げな顔をしたセキ…
そこに得意げにガクは近寄る。
『意外と入ってる時間は一瞬であるぞ?我も何度も入っておるし、セキが心配しているような事は全くござらん』
『まぁ入ったことある奴が言うなら大丈夫か…ハナ様頼む』
『わかった!任して!』
ピトっと、セキの額にカードを当てた。
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[赤燐暴馬 セキ] ★★★★★★★★★★
⬛︎⬛︎ハナの眷属
※特例⬛︎⬛︎ハナの眷属化によりニャルデルの加護の効果範囲から除かれる。
⬛︎⬛︎によって顕現されし、⬛︎⬛︎。
元は⬛︎⬛︎だったが、⬛︎⬛︎…により、この⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
存在が特殊であり不安定、[角にんじん]等の好物へ熱狂的な執着心がある、気に入った場所と自身が住まう空間とを繋げることで、誰にも見られずに行き来しながら食事を取る事ができていた。
自分の領分を荒らす者が嫌いで我儘な性格であるが、自身を下す事のできる強者を尊び敬う心を持つ獣。
⬛︎⬛︎ハナに負けた事をきっかけにそのまま眷属となり、仲間意識が芽生えた結果その考えを改めている。
[紋]
【⬛︎⬛︎の陽炎】不安定
陽炎の様な幻と幻を繋ぐことで空間を移動する事ができる。
それは何処に居るのか、初めからそこに居たのか、認識できていたのか、誰も自分も分からない…、
近くにいて遠い…陽炎のように秘密を纏う炎。
"嗜好品"は"指向品"と言う事を魂に刻み忘れない。
【⬛︎⬛︎の旭陽】
自身の背中より炎を吹き出し全身を覆い、途轍もない推進力を得る技。炎を纏し身体は旭陽の日差しのように輝きながら邁進する
【⬛︎⬛︎の落日】
蹄近くの冠毛付近より高粘度の焔を生み出しながらその焔を蹴り上げ空を駆けぬける移動用の[紋]。
使用後の焔はまるで、落日の様に儚く消える。
【⬛︎⬛︎の白日】
額近くの流星模様から放たれる、一撃必殺の熱を圧縮した光線、圧縮には多少の時間が必要だが欠点はこれひとつのみ。一度放てば地は割れ空は裂け、何もかも溶断するエネルギーは輝く…、白日の如く辺りを白く照す姿は、神の裁きを彷彿させる。
攻40000
守10000
速17000
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これは…、
物凄い謎に包まれた生物を仲間にしてしまった感じかな…?
ガクとは違う⬛︎⬛︎の多さ…そして★の数…、気になるのはセキの出自が独自と言う事…これは今の私では分からないってことかな?
それと…此奴[紋]使いだったのか…急に現れたのも納得だし…、普通じゃあり得ない炎みたいなビームも出してから、そりゃそうか…、まさかその辺であった馬がサモナーだとは思わなかったな…。
セキを連れて帰ったらトーニャ達が大変な事になりそう…。
まぁとりあえず…、
『どうかされましたか?ハナ様?』
『いや…何もないよガク、じゃあまたカードに入っててね』
ガクに説明しても仕方ないし、またトーニャとノルウェルに色々聞こうかな?と軽くそう思いながら、ピタッとガクにカードを当てた後、セキとガクのカードをホルダーにしまう。
顕現した[白虎の脚]で猫族の国方面側へ落ちる夕日に向かい爆速で駆けて行くのだった。




