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競争!!

猫族の国の遙か上空を駆け抜け、新しい[角にんじん]の生えている場所へと、セキの背に乗り向かっていた。


《やっぱり早いねー》


《当たり前だ、俺様だぜ?》


おっ?中々速さに自信ありそうな感じ?

ならば!


《んじゃあ、勝負する?

私こう見ても結構早いよ?》



なにせ県大会で優勝してるからね!

短距離で!



《おっ!ハナ様が走るのか?いいぜ!

競争なら望むところだ!》


セキは緩やかに地面に降下すると、ハナと対決すべく降ろした。



《あっそうだ!ちょっと待っててね…ガク出てきて!》


《ううぅ…気持ち悪い…》


降りた瞬間に、ガクの入ったカードホルダーを擦る。

セキとガクは直接は出会ってないから自己紹介と、後は一緒に走ろうとお誘いも兼ねて出す。


そしてガクを召喚した瞬間何故か酔っている理由…、

それはガクが初めカードの中に入っていた記憶が無いと、時間が止まっているニュアンス的な事を言っていた事に関係してそうだった。


恐らく、外にガクを出していなかったので時間的な経過がなく、先程の戦いの余波で転げ回っていたダメージである目を回したままの状態で出てくるのだろう…。

でも何故か不思議な事に、はち切れんばかりのにんじんっ腹で球体のようだったガクのお腹に関しては、漫画のご都合主義的な感じで元に戻っていた。



ガクを出した時は特に何も無かったが、ガクとセキがお互いの視界に入った途端空気が変わる気配がした…。



《…ハナ様…その駄馬はどうされたので?》


《あ?[角にんじん]泥棒の雑魚兎が俺様を駄馬呼ばわりするとは…蹴られたいか?》


ええぇぇ…何で…何で喧嘩になりそうな雰囲気になってるの!?お互い初めましてじゃ無いの!?


あっ…[角にんじん]の説明に書いてあったあの、[殺戮兎]と[赤燐暴馬]の名前…ただ二匹が同じ物が好物なだけかと思っていたけど…もしかして[角にんじん]を奪い合う中だったんだ!!


と、とりあえず宥めないと…!


《あの…お互い私の仲間になった事だし、仲良くして欲しいなぁ…、とりあえず自己紹介しよう?》


ハナは平和的な解決をするべく下手な笑顔で二匹に進言する…。



《ハナ様恐れながら…この駄馬を仲間にする件は考え直した方が宜しいので?》


《ならお前が抜けろよ、角無し雑魚兎》


あー、コラコラ睨まない睨まない




《はぁ、仕方ない…、君たちに言っておく、コレは私が決めた事だし、お互い仲良くしないなら




…怒るよ?》


ハナは飛びっ切りの笑顔を二匹に向けた。




《《仲良くします…》》


その笑顔の内側にある、修羅の如く渦巻く力の奔流に気圧され、逆らえばヤバい…と、二匹はお互いハナの言う事を聞こうと頷いたのだった。


《じゃあ仲良くなったから自己紹介ね!》


ハナは手を叩くとそれを促した。


《ガクです…》《セキです…》


お互いぎこちなく笑う姿に少し不満足だけど、喧嘩せずに挨拶できたのでまぁ良しとする!


ハナは腰に手を当て、満足げに鼻息を鳴らした。



《で、本題だけど、此処から次の[角にんじん]の場所がこの道を真っ直ぐ行ったところ…で、良いのかな?セキ》


《あぁ、その通りだ…、

つまりは、そこまで競争って事だな?》


《御名答!ガクも食後の運動できるよ!?競争しよう!》


ハナは指パッチンし、セキを軽く褒めた後、少し置いてけぼりなガクに提案というか半強制的な運動の強要をする。



《お誘い頂き感謝するハナ様…。

ふっふっふ…セキと言ったな、いつも急に現れては我ら一族の[角にんじん]の場所を占拠しようとする不届き者に、こうして平和的な決着を付ける時が来るとはな…》


あ、あれ?ガクさん?


《あぁ、同じ事を考えていたぜ…俺の見ない間に縄張りを食い荒らす泥棒…おっと、ガクとこんな感じで何方(どちら)が上か決める勝負が出来るとはな…》


セキも…。


まあマラソンにおいて、お互い高め合うのは大事だしね!

終わったら時に、コレで距離が縮むなら良いことではないか!素晴らしい!


っと、ハナは都合の良い解釈をする…。


《ではこのまま真っ直ぐ行って、

草原を抜けた場所の森の入り口から一番手前の木をタッチした人の勝ちとします!異論は無いですね?》


《はい!》《おお!》


ハナは二匹の返事を聞き届けた後、顕現していた【鳳凰の嘴】の他に、

[白虎の脚][月兎の耳][鷹の目]を顕現する。


《じゃあ私の3、2、1、0のカウントでスタートします!》


《いきます!!》



《3》



《2》



《1》



《0!!》


バウ!!!!

ドン!!!!

ダダ!!!!


三者三様の其々(それぞれ)の足跡を奏で、前方の空気を突き破るかのように一直線で走り抜ける…、その場に残ったのは大地が半端ない脚力で捲れあがった後だけだった。



ーーーーーー


ーーーー

ーー


…ドド…

ドドドド

ドドドドドッドッドッ!!!


初めからトップスピードで走るのは無策な人がする事だ、距離があるなら尚更、とにかく自身がバテ無い限界スピードを維持し、最後に力を振り絞る…、コレが長距離の必須!!

…なハズ…。


二匹と1人はお互いのスピードを見合いながら、力を温存しているように走る。


だが、速さは既に音速を超えるような勢いで、

現実離れをした長距離走だった。



森の入り口…、つまりゴール予定の木まで[鷹の目]越しだが確認できる距離まできた。

二匹もそれをそれぞれの方法で確認出来たみたいだ…。


そして此処で先に仕掛けたのは……。




《やはり我が一番速いみたいですな!!》


後ろに居るハナと、セキに一馬身程の差を残し、トップに躍り出たのは、[殺戮兎]の当主ガク。

短く見える脚は競争には不利なのか?と思われたが、兎は跳ねて進む動物…地面より膝が近い分強靭なバネのような脚の筋肉で大地を抉り、推進力得る…暴走しかねない力は体制を支える腕によってコントロールを得て、跳ね進んでいく…。



《寝言だな…俺様が一番速い…!》


ドカラッ!ドカラッ!と、頭を低くし襲歩の姿勢で駆け抜けていくセキは、黒の美しい毛並みが、まもなく立て髪から放つ炎によって赤く染まり、その炎の推進力を利用し周りに空気の圧縮による衝撃波を放ちながら先頭のガクを置いていく…。


近くにいたガクがその衝撃波に巻き込まれ、体勢を崩し前のめりに転びかけたが、頭を内側にいれ前回りの姿勢のように受け身を取った後、身体を器用に跳ね上げ、二、三回空を蹴りながらコースに戻る…何とか脱落せずに少しペースが落ちただけで済んだ…。


だが、そのコースアウトの原因を作ったセキの行いは、ガクを怒らせ奮い立たせるには十分だった。



《この程度で…この程度で負けて溜まるか!!》


ガクの脚がパンパンに膨れ上がる…、力を貯めるモーションによってこの後に起こる事が予想できるだろう…。


ドゴンッ!!!!


地面が爆ぜる…、土煙いや…泥煙を巻き上げガクはミサイルの様に突っ込む、一瞬でセキと並ぶ…。

手に汗握る両者の戦いはヒートアップする…コレはどちらが勝っても文句無い勝負だった…



ハズが…。



《じゃあ私もそろそろ本気で行くね!》




悪魔が囁いたような気がした。




この競争の後の二匹の言葉を借りるとこの表現がピッタリだったらしい…。




腕を後頭部よりも大きく振り上げ、顔を地面ギリギリまで下げる…太ももそして膝は顔にぶつかる近くまで振り上げ、地面に潜るのか?と言う程摩訶不思議な前傾姿勢を取る…。


それはまるでクラウチングスタートのスタート直後の様な一番脚に力が入る姿勢…。





その後ハナは消える





グアッ!!ドッ……

バゴンッ!!!!!




音を文字通り置き去りにして…。




小競り合いしていた二匹の間を、ハナの発生させたソニックブームにより、吹き飛ばす…、瞬間移動の如くあっという間にゴールの木にタッチ…いや木をハナの体当たりでメリメリと千切り飛ばした。



ハナがゴールを迎えた時に起きた事を説明するならば、

転げそうな姿勢のまま腕を振り下げた後、顔の近くにあった[白虎の脚]を地面との角度をほぼ垂直になるよう、地面を削りながら突き刺す…何も顕現していない腕を置いてけぼりにしながら、次の走る姿勢をとり、地面を抉り蹴りながら再度加速、コレを素早く7度行う。


加速に加速を重ね、一瞬で目的地に到着したのであった…。



『よっし!ブレーキは失敗したけど、何とか勝った!』


ハナは額に汗を滲ませながら、心底楽しそうに笑った。



そしてその本人は気付いていないが、普通[白虎の脚]を本気で使えば[紋]で守っていない若しくは、効果範囲の外だった場合身体の方に身体に大幅な負荷がかかる…。

だが、ハナには【龍蛇】があり、そういうダメージについては自動的に身体を鱗が覆って風の衝撃から自身を守る…そのようにして完全顕現の[白虎の脚]による本気の走りを無傷で行い走り抜けたのである…。




『はぁ…はぁ…くそっなんだありゃ…』


『せ…せめて2着…』


セキとガクはハナのソニックブームの余波で、ボロボロになりながら、何とか転がるように二匹同時に倒れながら、千切れ飛んだ木の根元である切り株のゴールへ触れたのであった。


『はい!お疲れ様!

結構楽しかったから、またやろうね!!』


二匹はハナの笑顔を見ながら、無言の返事をする…


恐らく次回は開催しないであろう…。

ガクとセキどちらも規格外だが、ハナの存在が両者を掠めさせるのであった…。

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