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新しい仲間とおさんぽ


ここは[天音の草原]…の端の森林、涼やかな風が草木の隙間を抜け、苔むした大樹に付いた朝露の水滴が滴るほどマイナスイオンに包まれた空間…、だったはずが…、


先程の[赤燐暴馬(せきりんぼうば)]とハナが暴れまわった結果、地形がボコボコになり、荒れ狂う炎により空気が乾き、焼畑農業の様に草花が焼かれ…いや、それよりも規模が大きく、圧倒的な火力により木々から木々へと次々と炎が燃え広がっていったが、

元々の土と樹木の含水率(がんすいりつ)が高い為次第と収まり鎮火していった。



そんな黒く煤けた燃え残りの樹木が乱雑に並んでいる場所に、黒い身体と、赤黒い立派な立て髪を生やした[赤燐暴馬]に幼い少女のような笑顔のハナを乗せ、木々の燃えカスの間を軽やかに駆け抜けていた。



『いやっほー!!』


《なぁ…そろそろ降りてくれよ…》


《え?まだ進んだばっかりだし、

[角にんじん]のある場所までって言ったよ?』


ハナはキョトンとした顔をしながら話す。


《人を乗せたことがないから違和感あるし…なんか恥ずかしいんだよ…》


《大丈夫だよ!私の元居た世界では、馬は人を乗せてナンボってテレビに出てた牧場の人が言ってたよ?》


《いや…誰だよ"ぼくじょうの人"って…》


《君みたいな馬をいっぱい飼ってる人だよ?》


《は!?俺様を多数使役してるだと!?

なんだよそれ!神かよ!!??》


《ん〜…まぁ…そんな感じかな?》


ハナはそう思ってくれた方が言う事を聞いてくれそうだし、都合も良さそうだったのでそう返事した…、他意はない。


《アンタを超える馬の神様がいうなら仕方ないな…頑張って慣れるか…》


《アンタって…私はハナって名前があるの!》


《じゃあ、ハナ様ね》



そう気だるげに返事をする[赤燐暴馬]…




《そういえば…君は結構強く感じたけど名前は無いの?》


《ないね、俺様は誰にも支配されない自由奔放(じゆうほんぽう)で、天涯孤独(てんがいこどく)の人生ってやつを謳歌していたんだ。それに、俺様に名付け出来るほど強い奴に会ったことが無かったんでね》


そう言うと[赤燐暴馬]は自信満々に鼻をならした。


《じゃあ私勝ったし、名前付けてあげよっか?》


《え?いいのか?アンt…、ハナ様程強いなら俺様はどんな名前でも文句無いぜ》


《じゃあ……ウマニン![角にんじん]が好きな馬だから!ウマニン!》


《おい…冗談だよな?》


背中越しでもわかるような、頭おかしいのか?っと言いたげな声色…、ガクの時と比べて即決にしては割といい名前だと思ったんだけどなぁ…。


《えぇ…どんな名前でも良いって言ったのに…、

 んーと、じゃあ…》


ハナは真剣に考えるべく、背中に乗っていた[赤燐暴馬]の横っ腹を脚で挟むと、捕まっていた立て髪から手を離し、器用に腕を組んで考える…。


《確か種類が[赤燐暴馬(せきりんぼうば)]でしょ?…セキリン…じゃあ…[セキ]!これはどう?》


パカラッパカラッ


《種類ってのがよくわかんねぇが…、

その名前なら良い!文句無しだ!!》


《良かった…"これからも"よろしくねセキ!》



ハナは今後また何処かで会えばよろしく的なニュアンスで言った。



が、セキの中では違った解釈だったらしい…。


そっか…名前を付けられたからには名付け主であるこの人の仲間になったんだな…

俺様は生涯、天涯孤独かと思ったがこの周辺に来て誰かに仕える事になるなんてな…、まっ悪くはないか。


《おう!俺様も暇だったし"これからも"ついていってやるよ!》



セキはご機嫌で答えた。




《え?》


《は?》




ハナは先程セキが自由奔放で天涯孤独が好き的な事を言っていたので、とりあえず呼び名が無いと自分が困る為名前は付けたが…、ハナとしては相手の考えを尊重し、特に仲間としてパーティメンバーに入れようとかそういう考えは一切無かったのだ。


一方セキは自分を余裕の表情で倒し、誰も乗せた事のない背中にも乗られ、名前まで与えられたのだ…全てが初めて尽くしで、今まで無かった忠誠心的なものも生まれるのも当然である。





ハナはセキの返答で何かボタンの掛け違いのような事が起きてると察した…、でもそこは自称空気の読める女…仲間になってくれるならと考えを改めた。



《あっ…、"これからも仲間として"よろしくね!》


《っなんだよー…ビックリした、冗談キツイぜ…》





こうして…盛大な勘違いで起きた事は、結果的にセキを仲間にする事となったのだった。




[赤燐暴馬]改め、ハナの仲間となった[セキ]は、駈歩(かけあし)で、最初にハナと出会った焼けた森を颯爽(さっそう)と駆け抜ける…ガクが食べ漁っていた周囲の全ての[角にんじん]は全て焼け焦げ飛び散っていた。


《はい、ついたぞ》


《確かに[角にんじん]のある場所って言ったけど…黒焦げじゃあ食べれないでしょ…》


《わかってないねぇ…生で食うよりこっちのが苦くて美味いんじゃねぇか》


燃えカスのように木の枝に引っ掛かっていた、[角にんじん]をセキは美味しそうにモシャモシャと食べていた。


この場所でガクが失った角で掘ろうとしていたから、[角にんじん]を食べるには掘る必要があるんだろうと思ったけど…セキは此処ら一体を爆発させて燃え残った物を食べていたのか…


食生活と言うか…、味覚がそもそも違うのね…



《ねぇ、他の場所に[角にんじん]ないの?》


《はぁ…》


言われた通りに目的地に到着したのに一向に降りてくれる気配の無いハナに諦めの溜め息を吐く…。


《まっ、ある事にはあるが少し距離がなぁ…どうする?》


《じゃあ飛んで行こう!》


《そういうと思った…仕方ない、振り落とされないように捕まっといてくれよ…ハナ様!》


ドンッ!!


『いやっほー!!』


脚の先の焔を出しながらそれを足掛かりに、セキは我が儘な主人を乗せ…大空に駆けていったのであった。




ーーーーーー


ーーー



ハナ達は先程いた森林地帯より草原を挟み、猫族の国から遙か上空を西から東へと駆け抜けようとし、まもなく国の端側へ差し掛かる。


通過ついでに試しに猫族の国にいるトーニャから、遙か上空のセキに乗ったハナの姿が見えるかな?と面白半分でトーニャに連絡を取ろうとした。



《トーニャー!聞こえるー?》


《あれ?ハナ?聞こえるよー?どうしたのー?なんか少し距離が遠いねー?》


《良かったー聞こえてー!上見てー!》


その言葉と共に光を遮るように小さな影が通過する…


《え?…何これ?》


トーニャは訓練中の猫族を差し置いて、上空を見ていた。


《なんか[赤燐暴馬]って言うらしいのー![セキ]って名前付けて仲間になったから、一緒に[角にんじん]取りに言ってる…から…またあと…》


猫族の国を通り過ぎて行ったハナとの距離が遠過ぎて、通信が途切れてしまった。



え?さっき[赤燐暴馬]って言った?

此処から遙か彼方にあると言われる一部の縄張りに近付くと、突如現れては煌々と燃えては暴れ狂う伝説的な存在故に何故か固有名詞までついた存在だったような…それに新たに名前をつけたの?…後、もしかして仲間って言ってた!?


ははっ、いやいやいや…、まさか…

トーニャは冷や汗を流し、ハナの破天荒ぶりを考えると有り得なくは無いのかと心中が複雑な思いをする中、そんな気持ちを忘れるさるようにより一層訓練の指導に励むトーニャだった…。



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