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小さな決意とお昼ご飯

一癖あるアクセサリー屋さんのネネから代替品として借りた[異空間の鞄 莫大]を身につけ、夕方に出来上がるだろう回復薬と、鞄の改造を待つ…。

ただ待っていてもつまらないので、時間潰しも兼ねて、

お昼ご飯のお誘いと、諸々お話しも含めトーニャに会うべく[フォレストキャット]まで歩き、裏の訓練所に着いたのだった…。



そこには訓練に汗を流す屈強な猫族達の姿がゴロゴロいた…。

こんなに戦闘系の猫族が居たなんて…普段は何処に…、


あっ金剛猫も居る!


皆組み手のようにペアになり、ある者は木刀と木の盾を使ったり、空手のように素手で戦う者、薙刀のような長い木の棒を使っていたり…来たるべく日の為、各々の得意分野で戦闘訓練をしていた。


…って言うか金剛猫の所凄くない?

素手の組み手で衝撃波みたいなの出てるような…、

気合いが…と言うかあそこだけオーラが凄い…。


『あっ!ハナ!こっちこっち!』


トーニャが見渡しのいい岩山の上で皆の訓練を見ていたお陰か、すぐに私の存在に気がついたようで、手を振っていた。



トーニャの元に[白虎の脚]を起動し空を蹴り、一瞬で駆け寄るハナ。


『トーニャ!訓練する人結構集まったんだねー!』


『うん…やっぱり皆んな人族に借りを返すぞってやる気になってるんだよ…此処に集まってる殆どの皆んなは、親族や子供を(さら)われてるし余計にね』


また人族がきて今度は全兵力武装してやってくるのだ、何かあった場合被害は甚大だ…国を家族をこれ以上失わないように防衛として力をつけるのは当然の事のようだった。


『…あっちょっと待っててね』


トーニャは不意に太陽を見上げ、そうハナに伝えると、皆の視線を集めるべく手を叩く。



『お疲れ様です!正午となりましたので、皆さんは今から昼食休憩となります!食事の後少し休憩し、準備が終えた者から順次訓練に戻って下さい!』


『『『はい!!』』』



『では、解散!!』


体育会の真骨頂…大声と統率を見た…。


皆行く場所はそれぞれで、家に帰る者もいれば、ギルド横の酒場のスペースを使って臨時で昼食を振る舞って貰える為、そこに向かう者もいた。


私達も酒場に向かい歩き始めた。


『お待たせー!あっ、ピアスとブレスレット……えっと…もしかして[ネネ]の所…入れたの?』


トーニャは私が装備しているアクセサリーに気付く…だが、露骨に嫌な顔をして聞いてきた、理由はアレだと思うけど…


『うん!かなり高かったけど綺麗だったし、効果も結構良いと思ったんだよね』


『ほんと凄いよ…私あそこの店の合言葉の拒否反応が酷くて入れなかったんだから…、後から聞いたんだけど、入れたとしても金貨何十枚も必要だから買えないって気付いてから行くの辞めちゃったの…』


『確かに合言葉は最悪だったよ…帰ろうかと思ったもん…、でも中は広くて綺麗だったし、また行きたいなと思ったよ、あっ!良ければ今度一緒に行く?お金は古代遺跡の分がまだまだあるし、トーニャが気に入ったのあればプレゼントするよ?』


『ぇえ!?いいの!?魅力的なお誘いだけど…あの人通りの多い場所でしかもあの合言葉の突破は……いや、頑張るよ…』


『確かに…、私も2回目の時にあれ以上誰かに見られると…確実に行くの辞めちゃうね…はぁ…』


じゃあ、


『『お互い覚悟を決めたら行こう!』』


トーニャとハナが目を合わせ、

お互いの決意表明に見事にハモり、

それが可笑しくて吹き出すように笑い合った。


そんな愉快なショッピングの予定を話していると酒場に着いた、中はまぁまぁ賑わっていて、各テーブルにお弁当箱が山積みにされていた。


『1人一つ!ご自由に持ってって下さーい!』


奥から白猫のコック帽を被った猫族達が、声を出しながらゾロゾロと机に出来立ての弁当箱を運んでいた。


私とトーニャはお弁当箱を受け取ると、屋外に臨時で置かれていたテーブルセットに腰掛けた。



『あっ、そうそう…ハナはこの後訓練参加出来そうな感じ?』


『ごめん…まだかな?…ガクのご飯の調達にダンジョン行ってからになりそう…』


『あちゃー…、夕暮れには終わっちゃうから、もしかしたら間に合わなくなるね…』


『うーん…、準備が3日間だけだとやっぱりバタバタしちゃうしね…残念だけど…、また次の時にトーニャの個別レッスンお願いしようかな?』


『ふふっ…しかたないなぁー!じゃあ次の時に色々教えてあげる!』


その言葉にトーニャはとても嬉しそうだった。



『やったー!また色々教えてね?

所で…、皆んな武器とかよく使うの?さっきの訓練で結構武器の扱いが上手な人いたけど…』


『うん、全員使えるよ…、

まぁ主な理由としては[紋]の継承には、適正試験もあるからね、

皆[サモナー]になりたくて、力を得る為に頑張るの、

その試験の為に皆身体を鍛えたり、何かしらの武芸を磨かないといけなくて、その時自分が選択した武術なり、剣技なりが[紋]を継承できなかった場合の将来の自分の身を守る術になるって事なの』


『そっか…皆努力して[サモナー]になるって言ってたもんね…』


『全員が問答無用に[紋]を使えるなら、此処まで戦闘に特化する必要も、努力する必要も無いんだけどね…自分で言うのもなんだけど[サモナー]に成れるのは紛れも無い才能なんだって痛感するよ…』


トーニャは遠い場所を見ながら呟く…そんな横顔を見ながらハナは思う…。

トーニャは私を羨ましいと言ってた理由がよく分かった…確かに私はそこまでの努力をしなくても、神より【拾い紋】の能力で鳥居を潜ったり敵を倒したりすると相手の[紋]を吸収出来るし、(あまつ)さえ手に入れた[紋]を手足のように使える私が物凄くズルく感じるはずだ…。


それでもトーニャは私に変なコンプレックスを抱かず、お姉さんの様に駄目なことは駄目、良いことは良いと対等に接してくれる…、だからそんなトーニャが好きだ。

そのトーニャが好きなこの猫族の皆んなを、国を私は護りたいし、失いたく無い…。だから…。


『トーニャ、私考えてたんだけど…今日依頼した回復薬…出来上がったらその回復薬を全てトーニャに渡そうと思うの』


『えぇ!?どうしたの急に!?

あれ凄い回復薬作れる素材だったでしょ?』


トーニャは驚きハナに振り向く…、

ハナはそんなトーニャの目を見ながら真剣な表情でこくりと頷く。


『私はこの国の為に出来る事を考えてたんだけど…、やっぱりこの方法が一番いいんじゃ無いかなと思ったんだ。

初めてこの世界に来て、異世界人とはいえ人族の見た目なのに猫族の皆んなが差別もなく普通に優しく接してくれて、特にトーニャに会えて本当によかったと思ってる…これはそのせめてもの小さな恩返しだと思って受け取っといてよ』


『ハナ……そこまで考えてくれたの?嬉しい…。

確かに回復薬は全然足りなかったから、それさえあれば今回の迎撃の心配する点は殆ど無くなるよ…。

うん…やっぱり嘘偽りなく正直に言うと今回はそのお言葉に甘えたい

…でも流石に何本かは持って行ってね?無いと思うけど万が一でもハナが倒れちゃったら、私の方こそ恩を返せなくなるから…』



『え…私!?トーニャに何もしてないよ!?』



全力で否定する、私は自分のやりたい事をただやってただけで特に恩を感じてもらう事など何もやってない。



トーニャはハナの手を取り話し始める。



『いいえ、私の[紋]を綺麗だと、私の様になりたいと言ってくれた、そんな純粋に憧れてくれる人が、産まれ育った私の国を…、奪われた仲間を救ってくれようとする…こんなにも尽くしてくれていている貴女が、何もやってないって事は無いんだよ?』


ハナに負けじとトーニャは純粋な瞳で見つめ返していた。



そんなトーニャの大きな肉球がとても暖かかった…。



『さっ!、恥ずかしい話はコレくらいにして、お弁当食べよう!冷めちゃうよ!』



少しトーニャの猫耳が赤くなったのを私は見逃さなかったが、そんなチャチな弄りが出来ない程、ここの空気は純粋で濁ってなどいなかった。



『そうだね!食べよう!』


その言葉に笑顔で返し、竹で作られたお弁当の蓋を開ける、

麦飯の上にメインの焼いた魚の切り身の上には木の芽を彩として飾られ、少し空いている空間に根菜のお漬物と、菜葉で作ったおひたしがそれぞれ入っており、色鮮やかにそして綺麗に収まっていた。


切り身は丁寧に骨を取っている様で、そのまま下のご飯ごと箸で切るように切り分けて掴んだ、口に運ぶと程よい甘味が広がり、醤油の香ばしさが鼻をくすぐる…。

麦飯は少し固めだったがよく噛んで食べるので、コレから戦闘訓練する人向けに腹持ちが良くなるように工夫してそうだった。

箸休めのお漬物も甘酸っぱくコリコリしていて美味しかったし、おひたしも出汁に浸しているのか深みのある味わいだった。

和食テイストのご飯は、やっぱり美味しい…出汁もちゃんととっているのが味わいで分かる。


『ほんとここの料理は美味しいね』


『でしょ?昔聞いたことがあるんだけど、ここの料理長の出身がちょっと特殊で、遥か昔の先祖代々から受け継いできた調味料を沢山持っているらしいよ?それで色んな料理を作れるんだって…

私もハナと同じでこういう感じの味が好きだなぁ』


『へぇー…』


異世界なのに料理が元の世界と殆ど一緒なのは、元の世界と同じ料理の歴史を辿っているのかな?とハナは食べながら考えていたのであった。


ーーーーー



昼食を食べ終え、弁当箱を酒場内の回収ボックスに入れた後、トーニャは持ち場に戻るべく、ハナはガクのご飯を取りに向かう。


『また遅くならないようにねー!』


『わかったー!またねー!!』


そう声を掛け合うと、ハナは少し上機嫌でダンジョンに向かうのであった。

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