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兎も角!回復薬になった!

ハナはベッドに埋もれていた…


ふかふか過ぎるベッドにより、外から見てもハナの姿が確認出来ないほど、それはそれはとても深く埋もれていた。


『ハナー!起きてー!』


『〈む、むぐぎぎ…〉く、苦しい…』


埋もれすぎて息が出来ない…、トーニャに引っ張り出してもらって事なきを得た…。


『ぷはぁ、死ぬかと思った…。』


『丸まって寝ないからだよ!?』


あっそっか!…猫用だから!


『これ寝る姿勢が猫みたいにならないと、埋もれちゃうベットなんだ!』


『種族の違いがこんな所で出るとは…ふかふかしてていいベットだからね!真っ直ぐ寝るとジワジワと埋もれちゃうんだよ…丸まって寝ると本当気持ちいいんだー』


猫用ベットを自作出来る猫族ならではの睡眠の探求って所か…


『確かに凄い気持ち良かった…、けど今度からはうつ伏せで寝るのは辞めるよ…』


少し項垂れながらボソボソとトーニャに小さな決意を伝える。


『うつ伏せ?猫族に無い寝方だね…

あっ、所で今日はどうするの?』


『今日はね…とりあえず先にアーチナさんの所に行って、回復薬でも作ってもらおうかな?材料もいっぱいあるし』


ノルウェルさんの言う通りの何かがあった場合、猫族の国は恐らく戦う事になると思う…しかも激しく、最悪命を失う可能性もある本物の戦争…。

[殺戮兎の角]は高い回復力を持つ回復薬になるとシズさんが言っていたので、今日はアーチナさんにお願いして回復薬を作ってもらおうとしていた。

私も自分用に数本作ってもらう予定だ。


『そうなんだ…私の予定はお祖父様から【鳳凰の嘴】で皆んなに今日から三日後人族の兵が押し寄せてくる可能性があるから、もしもの時の戦いに備えるよう伝えて集まった猫族の皆んなに戦い方の指導とか色々教えるつもりなんだー!』


トーニャは胸を大きく張ると、腰に手を当てて自慢げにしていた。


『えっ!トーニャ先生になるの!?良いなぁ…私[紋]は使えるんだけど、トーニャみたいにスタイリッシュに戦えないし是非とも学びたいよ…』


『えっ!まだ私から教えれる事があるの!?やったー!!そっちの都合が終わったらいつでも来ていいからね!待ってるから!!』


トーニャはまだハナに頼られているのが嬉しいようだった。


『わかった!行けたら行くよ!!』


だが悲しいかな、ハナ自身はそのつもりがなくともこの台詞は社会では人間関係を保つ為、行かない事をやんわり断る意味を持つ言葉なのだ。


『うん!じゃあそろそろいくよ!またね!』


『またねー!』


それを知らないのは、教えを乞うハナ、そしてトーニャだけだった。


ーーーーーー

ーーー



トーニャの【鳳凰の嘴】による今回の戦いについての全体アナウンスを終えた頃…道行く猫族の顔に緊張による顔の強張りが現れ、慌ただしくなっていた…、

そんな中ハナは大きな招き猫噴水の近くにある、カラフルな(のぼり)が目立つアーチナのお店にやってきた。


カランコロン


ゲタの音を響かせ顔を覗かせたのはキジ茶猫のアーチナだった。


『おや、いらっしゃい。

今日は1人で来たのかねぃ?』


『おはようございます、アーチナさん』


『もしかしてさっきのトーニャの件で、頼み事かねぃ?立ち話もなんだ、中にどうぞ』


アーチナは和やかな顔をしながらハナを店の中に引き入れた。


店の中に畳の床と襖で仕切られた小さな茶室の様な空間があり、そこにハナを案内すると、お茶と小さな小豆の塊のような茶菓子を持ってきて、ハナの席前へコトリと置いた。



『そう…さっき戦いが起こるって言ってた事に関係してて、アーチナさんにお願い事があってきたの…、この角を使って回復薬を出来るだけ沢山作って欲しくて…』



背中のポーチを前に出すと、ゴソゴソと角を取り出そうと鞄を探る…。


それをお茶を飲みながら鞄をじーっと見ていたアーチナは驚きの余りお茶を毒霧の様に噴き出した。


ブー!


『ゴホッ!ゴホッ!!…』


『え!?ちょ!アーチナさん大丈夫ですか!?』


ハナは机にあった布巾でアーチナの噴き出した後始末をする。


『ごめんごめん!それより…その鞄、とんでもない物だよねぃ?』


『やっぱり分かります?シズさんにも言われたし…そんなに目立つかなぁ?』



ハナ自身このポーチが前の物と比較しても一緒に見えよく分からなかった…、

まぁシズは鑑定が仕事だから分かるとして…薬屋であるアーチナにまでバレてしまうとは思ってもみなかった。



『素人でもわかる方法を教えてあげると、その鞄を開けた時の蓋の裏地が漆黒だよねぃ?だけど良くある[異空間の鞄 小容量]だと外見は一緒でも裏地が白に近い灰色だったでしょ?色が濃ければ濃い程物が沢山入る鞄だから、ここまでの漆黒色は…とんでもない物とすぐ分かるよ?』


ハナはその説明を確かめるべく、[異空間の鞄 小容量]と[異空間の鞄 無制限]を並びくらべた…確かに外見はデザインは違う物のほぼほぼ一緒…、

だが、言われた通り蓋の裏地は確かに全然違った…。


『凄い…気づかなかった…』


『だから余り裏地を見せない方が良いとおもうねぃ、盗られると大変だからね。後ごめんね拭いてもらって…。


そして…、本題のハナが出してくれた、この角…[殺戮兎の角]だねぃ?コレも雑学ついでに教えてあげるけど、この角は物によって回復力が変わるよ。

評価基準があって、次の

〈不可〉〈可〉〈良〉〈優〉〈秀〉と5段階で表される、

〈不可〉小さすぎ中スカスカの不良品だが、砕いて畑に撒けば野菜自体の抵抗力が急激に上昇し、虫も寄り付かず、栄養満点の大きな野菜が育つ最高級な肥料となる


〈可〉小さく程よい硬さで、砕いて塗り薬にすると傷薬や化膿止めとして素早く回復し、かなり万能。


〈良〉中の大きさと硬さで、削って飲み薬として服用出来るし軟膏に混ぜて塗っても効果がある、内臓疾病と骨折や刺し傷等大怪我に即効性で効く。


〈優〉長く、硬く、太くの三大拍子が揃った角…精製不要でそのまま削って使用でき、内臓破裂、手足切断や解放骨折などの激しい損傷を負った患部に振りかけるとまるで時が戻ったかの様に直す、服用も勿論出来る。


〈秀〉特大、叩くと鉄のような硬く金属音が鳴り、長さも〈優〉を遥かに超えささくれや、傷一つ無い完璧な角。霊薬などに使用でき、死後数日たった死者すら蘇らせることも出来ると言われている回復薬を作る事が出来る。巷では余りに見つからない為、不老不死になる薬ではと伝説が産まれたほどだ…。


とまぁ以上の様に、凄い効能なんだけど、[殺戮兎の角]の本体…[殺戮兎]自体が発見数が少なく、見つけても途轍もなく早く強い事から取得難易度が高くそして効果がとても良い為、〈不可〉である角でもあっさり買い手が着くほど需要に対して供給が少ないんだよねぃ…。』


『へぇー…確かにもちっことかに比べて強かったけど…因みに今回の角はどの分類なの?』


『分類分けは、(可) が2つ、(良) と(優) がそれぞれ一つ…コレだけでも十分凄いんだけど、

あの一番大きい角…この小槌で叩いてみて…?

…ビックリすると思うよ?』


指をさしたのはガクが丹精込めて手入れしていた角だった…

それを手に持ち、アーチナから受け取った小槌で叩く。


キィン!キィン!


『そう…コレが〈秀〉…世にも珍しい死者を蘇らせられる霊薬を作れる角だ…これ程とんでも無い物を此処に来てたった二日目で持ってくるとは…』


コレが大丈夫ならあの素材も取ってきてもらおうかな…と、ボソリとハナに聞こえないように呟いたが当の本人には聞こえていなかった。



『ガクの角凄かったんだ…あんなに自慢してたもんね…そりゃそうか』


ハナは嬉しいような悲しいようなそんな表情をすると、労わるように角を撫でた。


アーチナはそんなハナの独り言を聞き逃さなかったようだった。


『ガクとは?』


『私の眷属になった殺戮兎だよ?見てみる?』



『え?殺戮兎?』


『おいでガク』


カードホルダーに眠っていたガクを、すぐ出せるように二つある穴のうち上にガク、その他は下の穴に入れていた。ガクの居る方のホルダーに手を入れ擦ると、何事もなくスッと外に出てきた。


『あれ?もう朝ですかな?』


『うん、あっ、この人がアーチナさん、ガクの角凄い褒めてたよ?死者を蘇らせる霊薬にできるって』


『ふふん…当然!我の角は天下一品!!血筋も鍛え方もそこらの殺戮兎と比べて圧倒的に優秀ですし、手入れも欠かしたことも無いですからな!』


踏ん反り返る様に腰に手を当て自慢するガクを、目を見開き見ていたアーチナは独特な技術を用い座りながらジリジリと距離を開けるように少しずつ逃げていく…


『は、は…さ殺戮…殺戮兎がっ…何処から…』



『あっ!この兎が私の眷属のガク!この角の持ち主だったの』


とアーチナにガクを紹介する。


『ガク、アーチナさんに挨拶してね』


『御紹介に預かりました我はガク申します、アーチナ殿!』


飛び跳ねながら挨拶をしていたガクは、アーチナの背後に殺戮兎ながら素早く回り込むと、握手を求めた!


『ハナ…ハナ…本当に大丈夫なんだよねぃ?』


『大丈夫ですよ?絶対に危害は加えないので』


ハナは当然の如く、笑顔で答える。

アーチナは部屋の隅に背中を押し付けて動かないでいたが、その言葉を聞き恐る恐る手を差し出すと猫と兎の握手を交わした。




『いやぁ本当にびっくりしたよ…あの凶悪な殺戮兎を眷属って…聞いた事無いからねぃ、所でさっき何か妙な言葉でガクと話していたけど…』


またきゅぴってた!?


『あっしまった…その件は忘れて下さい…、眷属については名前を与えたら勝手になってたみたい』


『え?魔物に名付け、眷属化…ふむ』


アーチナはハナの言葉を聞き、少し黙り込んだ。


『いや、今回は止めておこう…

で、この角達は全て使っても良いの?かなりの量の回復薬が出来ると思うよ?』


アーチナは悩むのを止めたのか、ハナの持ってきた角につい本題に入った。



『あっ、ちょっとまってて』


ガクの目線に会うようハナはしゃがんで真剣な面持ちで話す。


《ガク…あの角なんだけど皆んなの為に使って良い?》


《ぐ……もう我の身体から離れた物…ハナ様のご希望とあらば我はそれに従うまでです…》


《ありがとう…絶対角を元に戻してあげるからね》


《我はその言葉で十分ですぞ!ハナ様!!》


そろそろ折れた角を何度も見せるのも申し訳ないし、今回の回復薬で皆んなが助かるのなら、角を折った選択も何か意味ある事だったんじゃ無いか…と、涙目のガクの顔を見て心を痛めている自分にそう言い聞かせる。



アーチナの顔を見据えハナは決断する。


『アーチナさん…全て回復薬にしてください!』


『うん、いいよ分かった、夕方頃に取りに来るといいねぃ、

最高の出来になると思うよ。

あ、あとその鞄だけど、中の空間が大き過ぎていちいち整理とかがやり難そうだから、向かいのアクセサリー屋に居る[ネネ]に尋ねるといい…彼女なら何か上手く加工してくれると思うよ]


おっ?新しい猫族の名前だ…


『あれ?聞いた事ない名前だ…私会ったこと無いよね?』


『彼女は店から出ないで有名だからねぃ…特殊だし、是非会ってやって欲しい…』


『それじゃあ、これ飲んだら行こっかなぁ』


『喜ぶと思うよ?因みに入るには合言葉があってねぃ…

それは…』


…ごにょごにょ…


『…え?私それいうの?』


その妙なやり取りを終えた後、アーチナの入れた緑茶をズズズっと一仕事終えたように飲む、爽やかな香りと苦味…後から渋味がやってきて、いいお茶だなぁとほっこりしていた。

あと小豆の饅頭も見た目どうり甘く濃厚で美味しかった。ガクにも進めたが、草食なのでと断られてしまった。


いや…小豆は草なのでは…


食べた後の食器はそのままで良いよとアーチナはハナに言うと、『私は早速作成に取り掛かると』珍しい材料に興奮気味に鼻息を鳴らしながら角を抱え、暖簾(のれん)のある店の奥の部屋に消えていった。



《ハナ様!ハナ様!またあのダンジョンに連れて行って貰ってよろしいですかな?》


《えっ大丈夫だけど…どうしたの?忘れ物?》


《いや…流石にお腹が空きましたぞ…》


《あっ!ごめん!!餌やり忘れてた!!アクセサリー屋さんに寄った後にすぐ行くね!カードに入ってて!》



カードホルダーからカードを取り出し、ガクの額に当てる。

その時《餌…》っという眷属と言うよりペット感覚を悲観する言葉が聞こえたのは気のせいと知らんぷりした。


『コレでアーチナさんに依頼は一つ終わったし、後は、ガクのご飯の為早めにネネさんのアクセサリー屋さんに行かなければ!』



次なる目的地に向かうべく、走り出すのであった。

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