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始まり始まり

ーーーーーーー

ーー


『おーい!』

『おーいってば!』

『起きてー!!』


木々の葉っぱの擦れる音が聞こえる…此処は外だろうか?涼しげな風が優しく頬を撫で、何処かマイナスイオンを感じられる青々とした匂いが鼻をくすぐる。


(んー…騒がしいなぁー…こっちは疲れてるって言うのに)


ふと悪態を吐きたくなる言葉を我慢し、ゆっくりと目を開けてみる。



『ん?えっ?、ちょっ…はぁぁあ!?』


木漏れ日が眩しく目を擦ろうにも手が動かないので、ふと視線を下に向けると、ぐるぐるとツタの葉を身体に巻き付けられ仰向けで寝ている自分の身体を凝視し、絶叫。



これではまるでガリバー旅行記みたいではないか。


つて、そんな事より…、

私生きてる?骨も折れてない?

…なんで!?



『やっと起きた!』

『なんで人族がここにいるんだ!』

『下手に動くなよ!無理に動こうとすれば締め付ける【紋】を刻んだツタだからな!…う、嘘じゃないぞ!』



一人一人思い思いに必死になって喋ってるのは下半身が半裸で、毛糸で作った北米系の柄と思わしき民族衣装模様のポンチョを着て立ってる猫…


それも私と同じ位の身長はある、かなり大きめな猫だった。




え?…猫!?




『猫が喋ってる!』

色々な驚きが重なりどれを対処していいかよくわからないプチパニック状態に陥っていると、奥から杖をつき群衆の中からふと現れたのは、周囲の猫よりとくに長毛種…そして威厳の感じるモップのような白い髪を編みこんでいる猫だった。


『お主、ここは人族の領地ではないのに何故ここに居る?目的はなんだ?』


緊張感のある声でガリバー状態の私に質問を投げかけてきた。毛で目が何処にあるか分からないが、多分ここにあるだろうとその目のある場所を見つめて応える。


『ヒト族?領地?何の事ですか!?それよりこれ解いて欲しいんですけど!』


『何を惚けておる!?どうせワシら猫族の誘拐が目的じゃろて!荒事は避けたかったが…やむを得まい!

このツタに[嘘縛り]の紋を刻むぞ!トーニャ!』


『はい!』


声を荒げた長老猫はこちらを睨みつけるような仕草をし、後ろの群衆に手を挙げ合図をする。

トーニャと呼ばれた右側面に三つ編みがある、白銀色の毛が美しい一際目立つ猫が現れ、私の身体を縛るツタに手を触れる。


『ニャルデル神の理の一部を此処に紋として刻む…[嘘縛り]!!』


トーニャの服から覗くお腹あたりが淡く光を浴び、その光が手に移動するように集まり出すと、次はハナを縛るツタがぐるりと囲い、蛍の灯火の様にポツポツと光る…その後、トーニャの触れていた箇所のツタに、蛇の様な模様が浮かび、輝きのピークを迎えた後、蛇の模様を焼き残し静かに消えた。



『よし、トーニャよくやった戻りなさい』

『はい』



長老猫の隣にスッと移動すると、ピタッと私を見つめている。そのトーニャの磨かれたビー玉の様な綺麗な瞳を、さっきの不思議で幻想的な現象に対するツッコミを忘れ見つめ返していた。


『では、これで準備が整った。

続きじゃ…お主は何処から来た答えよ』


先ほどの質問の続きとばかりに長老猫は質問する。


トーニャの瞳のお陰なのか、恐ろしく頭が冷静になってきた。

多分この質問に嘘で答えれば[嘘縛り]と言う名前の通りかなりキツく縛られるのだろう…。

猫が立って喋っているし、魔法みたいなの使ってるし…此処に来る前のあの出来事を考えると恐らく死後の世界…いや、この状況的にこれは異世界と呼ばれる所なんだろう…もうコレは間違いない。


だったら!正直に!


『私は日本から来ました!』


『ニホン?聞いた事もない国だ!この後に及んでしらばっくれるとは!トーニャの嘘縛りは容赦ないぞ!!………あれ?』



『…!? お祖父様!此方へ!』




……



『この方は嘘をついてないです…紋が僅かも反応していません』


『俄かに信じられん…本当…か?』


キョトンと顔の私を尻目にヒソヒソと言葉を交わす長老猫とトーニャ。


『まぁ多分だけど、此処が私の住んでた所からだいぶ違う場所だろうし知らないのも仕方無いかもね』



私は笑顔で答える。


嘘発見器みたいなのがあれば異世界でも対話は出来る。

だから彼等を刺激しないよう明るく全力で、この猫たちの不信感を払拭してやると誓った!なんか楽しそうだし!




『では、特にこちらに危害を加えるつもりはないと?』


ごほんと一つ先払いをしたあと、片眉をあげながら長老猫は問う。



『加えないよ!寧ろ何か困ってるなら手伝うよ?』


ハナは笑顔で答え長老猫にカウンターを喰らわした!


一撃必殺だな見事に決まったと思う。




『お祖父様この方、離しても良いのでは無いでしょうか?危害を加えないと仰いましたし…手伝って頂けると本心から仰ってます。紋の反応も無し…信用に値します。』



長老猫は暫く考え込んだ後


『う〜む……離してやりなさい』


絞り出した声でそう言った。




『やったー!』



そろそろ腕が痺れてきたから本当に助かった。

人生初めての猫とのトークは、中々ハードなものだった…

グルグル巻きは二度とごめんだね。

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