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蠢きと決断

ノルウェルがやっときたと思ったら中々に難しそうな顔をしていた。


『お祖父様ハナが…どうされました?』


トーニャはノルウェルの表情から何かあったのだろうと察した。


『本日国の領地と人族の国の境目に人族の使者がきたそうじゃ、なんでも〈巨大な蛇の王が猫族の領地に居るとの情報が漁人族よりあった、討伐したいから領地に入れてくれ〉との話じゃった…丁重にお断りしたが、周辺国を守る為の聖戦として明日より三日後、人族の全兵力を集結し討伐すると申していた…。あやつらの事だ、何か理由付けて妙な事でも企んでいるのじゃろう、いやはやどうしたものか…』



ハナとトーニャがカタカタと震え目を合わしていた。



『待て…お主ら何かしたのか?』




そしてハナはノルウェルにも今まで起きた事の経緯を話す。

ついでに、マッドサイエンティストの[エンブリオン]についても自論を伝えた。



話を聞いていたノルウェルは頭を抱え、倒れるように椅子に座ると溜め息を吐くように呟く。


『流石に驚き疲れた…やはりハナは只者ではないな…ハナが来てから物語が進むように色んな事が動きよるわい…。

ニャルデル神さまの事も【神紋】の事も事細かく色々聞きたいことがあるが…、先ずは目の前の問題を解決しよう…、


その龍蛇は既に倒されている…それを人族は知らない…。


ふむ……、

…!


コレは利用する手はあるぞ!動き出すのは今かもしれん!!』


いい考えがあるのか、凄く元気になったノルウェルは今後の作戦を密かに伝えるのであった…。


その内容とは、ハナを全兵力は投入している人族の国に単独侵入し、なるべく多くの猫族を救うという事、そしてその為の準備を明日の一日で終わらす事…。

イレギュラーがあった場合の戦力として、トーニャは何かしてくるであろう人族を迎え撃つべく自国に残す。


斯くして、ハナが猫族を救いに行きたいという目的は、思わぬ所で叶うのであった。


ーーーーー

ーーーー

ーー



時刻はすっかり夜だった、昨日の夜から全くご飯を食べてなかったが、何故かお腹が空く感覚が鈍かった…多分色々あり過ぎて空腹感が薄れてしまってたのだろう…。


応接室をでて、ギルドの受付に行くとシズは既にいなかった…、やっぱり。

ノルウェルに龍蛇の件を絶対話すだろうと思っていたのに何も知らない感じだったからなぁ…


その隣の部屋の酒場が騒がしく、扉を開け覗くよう見てみると、他の猫族と共に肩を組みシズが楽しそうに飲んでいた…。

既に飲んでいたらしく、結構フラフラだった。


悪態を吐かずに飲んでるシズを見るのは、いつ振りかとトーニャは楽しそうに覗き見していた。



私とトーニャはシズの哀れな姿を見届けると、

『今日は疲れたでしょ?部屋に案内するね、

あっお腹減ってるだろうしご飯と後、着替えも後で持って行くからね!』


っと、トーニャは気を利かせてくれる…それが非常にありがたかった…。


また廊下に戻り、応接室を通り抜ける、金剛猫が外に居ないという事はノルウェルはまだ中にいそうだった…


廊下の奥に階段があり、上がると宿の部屋割りの様に扉がポツポツあった。


そのうちの大きそうな部屋を開くと、トーニャは中に入って色々説明してくれた。


『ここがハナの部屋!中は靴を脱いでね、コレが水を出す装置で、コレがトイレ…洗濯と乾燥はこの装置で一瞬で出来て、ココはお風呂とシャワーもある…お湯はこっちの装置…、ここがベットになってるから…、こんな説明で大体わかった?』


『さらっと今一瞬凄いのがあったけど…殆ど元の世界と似たような感じだから大丈夫だと思う!ありがとう!』


『?あっ私の部屋は前の部屋だから、何かあれば言ってくれていいからね?じゃあ着替えとご飯取ってくるよ』


トーニャはそういうと部屋から出て行った。


異世界の部屋ってどんなのかなと思えば、意外と洋風なホテル仕様の部屋なのだ…結構びっくりした。ただベットは普通の四角ではなく大きく分厚いクッションのようなベットとか、他には水を出す装置が非接触式なのと、トイレが陶器ではなく、ステンレス風の金属の構造で形は普通の水洗便所と一緒、紙は質が少し粗く自然由来の物を拘って使っていそうなシート状の物…多分これで排泄物を包んで流すと便利な肥料的な物になりそうなエコロジー気質な紙だった…


まぁ深く考えるのはよそう…

そしてこの洗濯と乾燥が一瞬で出来る、

透明でスタイリッシュな箱型洗濯機!


試しに上の蓋を開け制服を入れる…服が宙に浮くと、くるくると数回回って汚れが溶けるように消えた。

取り出して触ってみるとすっかり乾いていた。

凄い…全国の主婦が欲しがる神装置だ…


『コレいいなぁ…欲しいなぁ…、あっこの服も汚れちゃってるから洗おっと!』

汗でベタつくパーカーをモゴモゴと脱ごうとすると、トーニャがご飯と着替えを持って入ってきた。


『え!?あっごめん!?見ちゃった!』


『女の子同士だし別に気にしなくていいよ?』


『そう?他種族の裸なんて見た事ないからびっくりしちゃった…あっコレ着替えね、私のお古しかなかったんだけど…』


『そうなの?、全然大丈夫助かるよ、ありがとー』


そう言いながらどんどん服を脱ぎ、便利洗濯機に放り込む、うわぁ今日の汚れがこんなに…ん?

何でフードの猫耳が片方の先が千切れてるの?…龍蛇の時かな?ま…いっか!


ガクがハナを助ける為フードに噛みつき引き摺った勲章とは知らず、軽く千切れた箇所を撫でられると便利洗濯機に放り込まれた。



トーニャから受け取った着替えは猫耳パーカータイプの柔らかな生地で、猫族の皆んなが来ているポンチョみたいなタイプでギリギリ下着は隠れた。


着替えを済ました後、トーニャが持ってきた夜食を頂こうと目を配る、今日のメニューは…小麦色に焼けたパンにレタスの様な葉を乗せ、魚の切り身を揚げたカツを挟んだ、よこ幅が拳2.5個分の大きなハンバーガーだった。


コレぞザッ夜食って感じ!

お腹が減ってきたので早速食べるべく、

ハンバーガーを手に取る。


『美味しそう!頂きます!!』


『フフッ…どうぞ』


サクッ…パリッ…

…モグモグ


『美味しい!久々にご飯食べたって感じ』


中のソースは少し酸味の効いたマヨネーズに、野菜の旨みを凝縮した何かのソースとマスタードをブレンドした感じだった。



『昨日はご飯の途中で抜けちゃったもんね…、3日後に向けて、色々しないといけないから早く寝て明日に備えようね!』


『うん!お互いがんばろうね!』


そう励ましあうと、

トーニャは食べた後のお皿を回収し、『じゃ、お休みなさい』と言葉をかけ、ハナの部屋の扉を閉めた。


それじゃあお風呂でも入るか…


下着を全て脱ぎ、またもや便利洗濯機に入れる…悲しいかな、種族の違いで猫族に下着の文化は無く、替えの下着は流石に無かった為またコレを履く必要があった。


この便利洗濯機あって助かった…、

まず人族の国に行ったら絶対服と下着を買う!

そう硬く決意したハナだった。


シャワー室に移動したハナは、お湯の文化がある国でよかったなと安堵のため息をついた、昔見たテレビで水とタオルで身体を拭いていた現地人がいたのを見たことがあるため、衛生観念が元の住んでた国と殆ど同じなのが身体にあっていた為、猫族の国の生活環境についてはあまりストレスが無く、結構助かった。


二日分の身体についた泥汚れと汗をシャワーで洗い流しさっぱりした後、珪藻土で作ったようにやけに水捌けの良い壁に囲まれた脱衣所に置いてあったタオルで身体を拭き、洗濯と乾燥がすでに終わっている下着を身につける、

ポンチョもさっき来ていた為軽く洗ってから身に包んだ。


着替えを終えた後、倒れるようにベットにダイブする…あっこれモチモチのフカフカで気持ちいい…あぁお日様の匂いもする…。


『ふい〜今日は疲れたなぁ…。お風呂は気持ち良いんだけど折角の異世界だし、何か魔法とかでパパッと身体を綺麗にできたら良いのになぁ……もごもご…』


ベットに埋もれながらふと言葉が漏れる、この世界は[紋]を魔法の様に操って魔物を倒したり、電話のように使ったり、空を飛んだり他にも色々する事が出来るが、RPGのような魔法を使って火球を敵に当てる類の、良くある魔法攻撃が無さそうであった。

…まだ手に入れてないからかも知れないが…


まぁあまり考えていても仕方ないし、なるようなるさ…と背伸びをすると直ぐさま寝息をたて、異世界で初めてまともな睡眠に、深く深く心身共に休ませるのであった。



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