探検!古代遺跡!
名前を与え更に絆が深まった1人と1匹が、古代遺跡の詰所からでた後、ハナは今回のメインディッシュ…ここの探検に心を踊らすのであった。
《ではガクさんや、この場所で宝物がある所は知ってますかな?》
《は!粗方調べ尽くしておりますで、宝物庫の場所は存じております、ハナ様どうぞこちらへ!》
《ふっふっふっ!、苦労してボスを倒したあとの宝箱を開ける楽しみは各別ですからなぁ》
《ハナ様!口調が移っていらっしゃる!》
ガクはガーンッと衝撃を受けたように固まった。
《くるしゅう無いくるしゅう無い…ふふふ》
《…》
あまり似合ってない言葉遣いにブルブルと震えるガクであった。
ハナとガクは捻じ曲がった道や、防犯ブザーの様にけたたましく警報音の鳴る小部屋、階段が急に坂道になるトラップ、床が抜け下の階に戻されるトラップ、斧が横から吹っ飛んでくるトラップ、炎の息を吐く猫のような像のトラップ、上から槍がふり捧ぐトラップ等等、レパートリー優れた罠をガクの指示のもと躱し、掻い潜っていく…。
ガクがいるから探索が余裕なのであって、これ普通の人なら何回も死ぬ罠だらけだな…
余程中に入らないで欲しいんだろうか?
そんな事を考えながら進んで行くと、奥行きが殆どない小道の行き止まりに辿り着く…。
其処には空っぽの宝箱が当然の如く待ち構えていた。
《えっ…ガク…宝の部屋ってもしかして》
《こちらではございませぬ…後、もう少しで着きますので暫し御足労おかけいたす》
実際にガクの案内無しで、やっとのことでここまでたどり着き報酬が空っぽの宝箱となると、かなり参ると思うな…。性格の悪い意地悪なトラップだ。
その宝箱の背後…石壁の行き止まりの場所までガクがスピードを落とさずにつき進んでいくと、壁に吸い込まれるようにフッと消えた。
私も勇気を出し、ガクと同じように進んでいくと見えていた石壁をホログラムのように貫通した。
最後のトラップを抜けるとそこには…、
金銀財宝が山のように積まれ、未開封の宝箱が三つ程乱雑に置かれ、如何にも宝のある部屋に着いた!
《わー!コレぞ探検の醍醐味!いいね!道案内ありがとうガク!》
《ハナ様が喜んで下さり恐悦至極でございまする。》
さぁてと、どれから手をつけようかな…?
おっ!この一番小さな宝箱から見てみるか…、
パカッ
《ポーチ?いや、違う!コレ…マジックバックだ!!しかも滅茶苦茶入りそう!!いま一番欲しかった奴だ嬉しい!!》
《なんと!?そんなにも喜んで下さる物が入っているとは…》
ハナは宝箱の一発目で[異空間の鞄]を手にし、小躍りする、ガクも同じく嬉しそうに舞った。
着けていた[異空間の鞄 小容量]の中身を全て出し、新しい[異空間の鞄]へ仕舞っていく…まだまだこのポーチは余裕がありそう…と言うかこんなの殆ど入れた内にはいってな感じだった。
ポーチを腰に取り付け次の宝箱に向かう…。
『よし!んじゃ、次だね!』
パカッ
『ん?何この半透明な板…それが箱の中にみっちり…ハズレかな?』
《ハナ様ハナ様!少しそれ触ってみても良いですか?》
《えっ?触りたいの?いいけど…》
ハナは小さく屈んで、ガクに向かい手に持っているカードを渡す…
ピトッ……スッ
ガクが消えた。
『あれ?ガクー!何処ー!』
返事は無い…
《こっちはどうだ、ガクー!》
念話も返事はなかった…
周囲を少しぐるりと見たが近くに気配はなく…ふとガクが触れたカードを見ると、ガクがカードにカッコよく閉じ込められていた…。
しかも面白い事にこのままカードゲームが出来そうなぐらいのクオリティでこう記されていた。
@@@@@
[殺戮兎 元首 ガク]★★★★★★★
⬛︎⬛︎ハナの眷属
※特例⬛︎⬛︎ハナの眷属化によりニャルデルの加護の効果範囲から除かれる。
殺戮兎の元首、一族を【龍蛇】に皆殺しにされ、生き残った最後の一匹。
角は他の殺戮兎と違い、硬さ、鋭さ、艶、輝き、どれも天下一品…であったが、⬛︎⬛︎ハナにより角を折られる。
角については恨んでいないらしいが、手入れを欠かした事の無い自慢の角であった為、ふと思い出した時に泣きそうになっている。
攻10000
守10000
速17000
@@@@@
えっ?結構強くない?
他の比較対象が無いから何とも言えないけども…、
後、特例でガクはニャルデルに見放されてるの?何故に?
というか…角の件…コレは見なかったことにしよう…。
色々気になる事はあったけど、一旦はまぁ満足かな。
カードの質感を感じようとすこし摩るとスッとまたもや音もなくガクが飛び出てきた。
《おー!これは奇怪な…中に入ってたのは分かりますが…、でも何故かその中での記憶が無いですな…っと、どうされたハナ様?》
《いや…何でもない…です》
そう…私は見なかった事にしたのだから…
というか、このカードもしかして、
全部の魔物が入れたりして…
ははっいや…まさか…、
というか⬛︎⬛︎ハナってなに?なんか伏せ字にしないといけない変な名前じゃ無いんだけど!失礼じゃない?!
ぷんぷんと怒るハナは、怒りながら最後に取っておいた大きな箱を開けようと近づくと…
ガパァッ
《ハナ様!》
あっ…コレ知ってる宝箱に擬態してるミミックってやつじゃ…
走馬灯の如き緩やかな時間で覚悟する…
[紋]も起動してなかったし、これは確実に餌になったな…
さらば異世界…
ガジガジガジ…
ん?
ガジガジガシ…
全然痛く無い…なんかくすぐったい様な…?
直立状態で頭ごと箱に収まり、噛まれている腕あたりを見ると、透明で小さな矢印模様の[紋]が鱗のように歯を受け止めていた…。
『あっ!これあれか!【龍蛇】って言う【神紋】のお陰!?』
ハナは直ぐに原因を特定する…気絶する前に聞いたニャルデルと同じような声が頭に残っていたのだから。
『確か…全ての攻撃を跳ね返す[龍蛇の鱗]かな?防御の…、しかも普通よりかなり強固な[紋]!…これ常時起動なの?』
倒した龍蛇から、[拾い紋]の能力で、龍蛇に備わっていた能力、[龍蛇の瞳][龍蛇の鱗][龍蛇の牙][龍蛇の鰓][龍蛇の心臓]その全てを吸収…自分の物とし、あまつさえその[紋]を全て統合【神紋】と成り、強化され、無条件そして欠点無しで、常時身体の一部の様に起動状態となっている…。
こんなに強いのにほぼほぼ身体の負担ゼロだもん…
神がかってる…そりゃあ【神紋】とも呼ぶよコレは…。
《大丈夫ですか!?ハナ様!
己れ[擬]め!いい加減ハナ様から離れろ!》
ガクはその脚力で瞬時に近づくと、擬と呼んだミミックに飛び蹴りをお見舞いした。
バキッ!
メリメリメリ!ドォン!!
ガクのお腹が頭上を通り過ぎる…。
え?貫通した?
ガクの蹴りの勢いが物凄く跳ね上がってる…あんなに強かったっけ?もしかして名付けの影響!?
名前だけでそんなに強くなるの!?
《これは…ビックリですな…名付けで我がここまで強くなれるとは…一族復興も近いですぞ!》
『そうだね!』
『ハイ!コレも全てハナ様のおかげです!』
『そんなこと…え?』
何故に喋れる…何故にガクの言葉が理解できる…
これは念話じゃ無かったぞ?
『あっ![繋がり]…コレは名付けによってガクと繋がりが深くなったから、言葉が通じるようになったんじゃないかな?』
『成る程…俄かに信じ難いですが、ハナ様がそう仰るならそうなのでしょう!種族を変えた繋がりとは…流石ハナ様です!』
ガクは何か革紐みたいなものを耳にかけながら、ぴょんぴょんと跳ね、嬉しそうにしていた。ハナもガクも気付いていなかったが…。
この世界は[紋]を使う時や、使用方法、強化などに繋がりを求めることが多い…、恐らく仲間となったガクに名付けする事で、まるで親と子の様に深い繋がりを持つことが出来、色々な要因も考えられるが、その結果言葉が通じるようになったのだろう…。
『一番期待度が高かった宝箱がミミック…擬?とは…
残念だけど仕方ないね…あっ、この擬に試したい事あるからやってみていい?』
『どうぞどうぞ』
あの半透明の板で擬をタッチする…
やっぱり、吸い込まれた!
@@@@@
[擬 宝箱の姿]☆☆☆☆
はるか昔の何処かの国に我儘で意地悪な王様がいました。
ある日魔法使いがやって来て、王様に宝箱を献上し、こう言いました。[この宝箱は国民が欲しい全ての物が詰まっている魔法の宝箱です、中身は沢山あるので無くなることはありません、どうか王様の名のもと、お配り下さい…]ですが、王様は我儘です。宝箱を独り占めにし、中の物を全て自分の物にしたのです…金銀財宝酒池肉林、意のままに出てくる宝箱…王様は宝箱の虜になってしまいました。そして宝箱は私利私欲の塊であるその愚かな王様のお陰で自我が芽生え…初めて自分の意思で鋭い牙を生やし醜く自身を漁る王様を美味しそうに幸せにそうに食べたのでした。
攻5000
守7000
速50
@@@@@
コレは楽しい…
少しあれだけど、絵本みたいに成り行きも書いてあるし、
全部見たいと収集癖が出てしまう…。
『このカード良いね!ふと子供の頃集めたカードゲームを思い出した!うん…!コレはコレで楽しい!』
『んー、この板がですか?我は特に楽しくは無いのですが、ハナ様が喜んで居られるなら共に喜びましょうぞ!』
ぴょんぴょん
ぱさっぱさっ
『何か頭に着いてるよ?』
『あっ、!よく気がつきましたな…我には殆ど感覚ござらんでしたので…、恐らくミミックを倒した時のアイテムが、引っかかったのだと…どうぞハナ様』
ガクに手渡された何かのホルダー、ホルダーを開くと二箇所穴が空いており特殊な形状…コレも[異空間の鞄]の様に何でも入りそうだったが、近くの金貨を入れても入らない…
この形状もしやと思い、ミミックの入ったカードを入れるとスッと入った。
『おぉー!コレは私に集めてと言ってるも同義じゃないか!これもかなり良いものが手に入った!!』
二つ目の宝箱にみっちりと入っていた大量の半透明のカードを全てこのカードホルダーへ仕舞いミディスカート側面にあるナイフをしまっていた側の空ホルダーに留めた
ここの山のように積んである金銀財宝も全て持って帰ろうと、回収した[異空間の鞄]へ入れていく…ガクも一生懸命手伝ってくれた。流石にココの全部は無理だろうと思ったが…
まさか全部入るとは…しかもまだまだまだ入る…。
怖いくらい入る。
『よし、凄い充実した探検だった!あっ、龍蛇もカードに入れて帰るよ!かなりのレアカードになりそう!』
『あの龍蛇ですか?まぁハナ様が欲しいとおっしゃるのなら…』
ガクは耳を垂れ、嫌な顔をしたが、ハナには見えていなかったようだ。
『あっ…私が倒したガクのお仲間さんはどうする…?』
一様葬式の写真のような形でカードに入れた方が良いかなと思いガクに聞いてみる。
『やや!お気になさらず!、我々魔物の死体は小さい者から直ぐに分解されますので、あの大きさですと、もう既にあの場には居ないでしょう』
『そっか…』
『コレも自然の摂理…抗うことは出来ないのです』
兎なのに立派だなぁ…
私も余りクヨクヨしてられないな!
そう決意したハナなのでした。
まぁそんなこんなで古代遺跡を脱出し、龍蛇のいる場所にやってきた、相変わらず大きい身体だ…このカードに収まるのだろうか…。
ハナは早速カードを取り出し龍蛇の身体に触れる…。
@@@@@
[蛇の王 龍蛇]☆☆☆☆☆☆☆☆☆
エンブリオンの眷属
初めは小さく非力な身体だったが、人族エンブリオンの改造により身体が大きくなるにつれ凶暴凶悪に育つ、エンブリオンの実験施設より逃げ出すと、近隣の街や村を襲い喰う事により力をつけていった。知恵があり、ワザと敵を逃し復讐心を利用する事で、餌を日々切らさないようにしていた。水中で呼吸ができるため長期間、漁人族の村を襲い、半壊させた凶悪犯。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎によってオリジナルの[紋]を手に入れており。龍の如き身体を手に入れ龍蛇の名に恥じない強さになった。
[紋]
[龍蛇の瞳]周囲の自分以外の熱源の感知
[龍蛇の鱗]防御障壁[中]、反射障壁[小]
[龍蛇の牙]顎力強化[大]、毒[中]
[龍蛇の鰓]水中呼吸[∞]、水中機動[中]
[龍蛇の心臓][紋]使用時の生命力減少の緩和[中]、
生命力及び、欠損部位回復[小]
攻25000
守35000
速15000
復5000
@@@@@
やっぱりクソみたいな性格だったな…。
あの目は敵を見る目じゃなかったもん、献上してきた生贄を品定めするような下衆みを浴びた見方だった…。
でも戦って分かったけど能力はほんと強い、チートじゃん…、良くコレに勝てたよ…私。
星マークもそうだけど全部、名付後のガクを余裕で超えてるからね…。
『んー、このエンブリオンって誰だろ?』
『我にも分かりませぬ』
なんか重要な人物の臭いがする…龍蛇を作った張本人だし後…
『また伏字系か…私の名前といい、別に隠す程の事じゃないでしょうにね』
『全くもってその通りですぞ!』
ガクはうんうんと頷き同意する。
ふと上を見上げると、月がもう、太陽切り替わりてっぺんに昇っていた…かなりの時間この場所に居たんだなぁと痛感した。
かなりの時間…。
月が太陽?
あれ?
ヤバっ!
『あー!!!トーニャの事忘れてたぁぁあー!!!!』
『うわ!びっくりした!』
『ガク!!急いで帰るよ!!!』
『御意!』
[白虎の脚]を起動したハナは、手を伸ばしガクを肩に乗せると天井の穴に向け飛び立つ。
其処には兎たちの楽園だった古代遺跡がもぬけの殻となり、この場所は何も変わる事なく天井の外に続く大穴から暖かい太陽に照らされる…その暖かみのある光は裏の地底湖にまで届く事はなく、また誰も居ない静かな時が過ぎていくのであった…。