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決戦『天音に眠りし漆黒の龍蛇』

『やぁあ!!』


月明かりが大蛇とハナを照らす中、ハナは初めに大体の生物の弱点の一つである目を狙うべく[白虎の脚]を使い大蛇に向かって飛びつく…、

そんな事を許すかと、大蛇は月明かりの届かぬ場所に待機させていた尾を鞭の様に使い見えない速度でハナを撃ち落とす。


ドンッ!

『ぐっ!!』


ズザザザザ…!


[金剛の盾]はオートで一枚の盾では無理と判断したのか盾を3枚直列に並べ、ギリギリ尾の攻撃を防ぐ、背中側へ余った盾が一枚移動すると、ハナが地面にぶつかるのを防ぐと共に、地面を滑らせ衝撃を吸収し、ハナの身体を守る。

衝撃はあったものの、特にダメージは無かった。


『流石に簡単には行かないか!』


では、これはどうだ!



[荒熊の爪]で地面を抉るよう薙ぎ土を放射状に撒き大蛇の目眩しすると、[白虎の脚]で薙いだ土の下を潜るように一気に近づき早期決着を付けるべく[荒熊の爪]で突き刺し、蛇の胴体に風穴を開けようとした…


が、


『嘘!?』


ハンマーで硬い鉄を叩いた後のようなビーんとくる痺れるような感覚…

大蛇の皮膚が固く、[荒熊の爪]であっても表面を少し傷付けるだけで、身の中まで攻撃が通っていない。

つまりノーダメージだ。


大蛇は鬱陶しそうに身を捩り、噛みつきを行うべく蜷局(とぐろ)を巻き力を貯める…。

ハナはなるべく距離を取り、考える時間を稼ぐ…、


今まではコレをすると敵が簡単に蒸発していたが、攻撃が全く効かない硬い敵に会ったのはコレが初めてであり、時間制限もある為かなり焦りつつあった。


『ヤバいヤバいヤバい…逃げる?

でも。兎さんが…うぅ…

やっぱ闘うしかないか!』


大蛇は蜷局を解き放つとハナが稼いだ距離をモノともせず

、物凄い速さで噛みつきを行う…。

あまりの速さに空気が圧縮され歪むほどの速度…、だが、月灯のあるこの場所では[鷹の目]の未来予知が使える為、[荒熊の爪]で斜め後ろ側へ弾くように何とか受け流すことが出来た。


ハナが受け流した方向にあった岩を、大蛇が破壊するとそれをビスケットの様に噛み砕きハナを睨み付ける…。



『凄い力…あっ!これだ!!』



ハナは思いついた事を実践するべく、盾を4枚全て前方に揃え大蛇に向け突進する、やってきた尾の攻撃を全て受け切り、盾を囮にするような形で後ろから[白虎の脚]を使い大蛇に向け飛び跳ねる…

空中で動きの取れないハナに向かいチャンスとばかりに再度噛みつきを行うが、

蜷局を巻いていなかった事が裏目にでる…。


キレが無く遅い攻撃だった為と、ハナが[白虎の脚]で空中を歩ける事を大蛇は知らず。くるりと回るように簡単に受け流された。

ハナに安易な攻撃を行った代償として、大蛇の右目に[荒熊の爪]を突き立てられ、鮮血を上げると共に視力を失う。


『よし!どうだ!』


思い付いた事と、それを狙っていた場所とは違っていたけど、弱点を差し出してくれたならそこを狙うのが礼儀でしょ?


『グギョガオオ!!!!』


大蛇は生まれて初めての痛みに身体をくねらせ、のたうち回る…、余りにも巨大な蛇の為、その衝撃で周りの鍾乳石が振動と共に落ちてきた。


鱗が硬く殆ど攻撃が効かない身体だった為に、この痛みは新鮮であり、しかも生贄である生娘に片目を奪われた事が、プライドを傷付けるには十分過ぎる痛みであった。。


『シハー!シハー!』


大蛇は怒りを抑えるべく息を吐く。

左の残った赤い目がハナを捉え、爬虫類らしく細かった瞳孔が、黒く黒く丸く漆黒に染まる…その目の中には矢印のような[紋]が輝いていた…。



ハナを生贄ではなく敵と認知する。


大蛇は今までの遊びをやめ、生き残りをかけた闘いをするべく本気をだす…。


大蛇は息を整えた後、月明かりの届かぬ場所から円を描くように身体を一周回すと、ハナの頼みの綱であった月明かりを暗闇から鎌首を上げ通り過ぎるように遮断する…。

そしてそのまま反時計回りにぐるぐると回り出した…見えない目を庇いつつ、蛇の本領である締め付けをする為にジリジリと音を立てハナを中心に半球体状に隙間なく身体で覆って行く…、

そしてさらなる恐怖心を与えるべく、ハナの身体に向かって少しずつにじり寄り圧迫感を与えていった。


大蛇は、自身の身体への小娘の攻撃は効かなかったのは先程証明された為、安心して締め付け攻撃が出来た。

また、飛んで逃げようとしても羽虫の如く撃ち落とせばいい、勝ちは確定だ。

その後の処遇を舌舐めずりしながら考える…どうやってこの目の借りを返そうか、足先から徐々に締め付けて内臓を全て口から出してやろうか、それとも…と次々思いつく残忍な復讐の段取りを考え下品な笑みを浮かべていた。


ハナは閉じ込められると思い[白虎の脚]で大蛇の身体に近づいたが…尾で真ん中に弾き飛ばされ[金剛の盾]で守る…、ならばまだ隙間がある空中をと、この円から逃げるように飛び出す…同じく地面に叩きつけられ盾で守る…。安易に抜け出せないよう気を張ってるみたいだった。



この死へのカウントダウンとも呼ばれる、我が円に入ったが最後…、逃げ出す事は不可能。

今までコレを抜け出せた者は陸にも海にも存在しない…。


自身に刻まれているオリジナルの[紋][龍蛇の瞳]が敵の熱源を感知し自身の身体で見えない所を補い、[龍蛇の鱗]で全ての攻撃を跳ね返す…[龍蛇の牙]で鎧ごと敵を貪りあまつさえ強力な毒を植え付ける事も出来る…。漁人族とかいう魚人とは、我が[龍蛇の(えら)]により水中で呼吸できるとは艶知らず…あちらの得意分野に乗っかってやって食い散らかしてやったわ。

あの絶望に満ちた顔…堪らなかったな…。

そしてこの巨躯の身体に血を隅々まで送る強靭な[龍蛇の心臓]この心臓がある限り例え身体を引きちぎられようとも動き続ける事ができる…!!


さぁどうする小娘!!

高い対価を支払う時がきたようだな!!


大蛇は自身の強靭な身体に隠れ弱点の目を防御…、熱源感知によってハナの行動、位置はバレバレ…ハナが頼りにしていた月明かりは無く、周囲は完全に大蛇の身体に覆われ光の通らない暗い暗い闇の中…。


ここまでくれば尾の攻撃は不要と、下瞼をあげ…下衆びた笑みを浮かべながら最後の締め付けに取り掛かる。





『…』





客観的に見てハナにはもう打つ手が無いかと思われたが…。





『…』ニヤリ





ハナはこの攻撃を読んでいた…いや、大蛇が勝利を確信し慢心するこのタイミングを待っていた。

近づいてくる大蛇の身体に、ハナが試してみたかった事それを実行する…。[百獣の牙]での噛みつきだ。



鋭利な[百獣の牙]で噛み付くと、鱗を貫き身まで到達…[白虎の脚]で飛び退くように、食い千切ると赤い血飛沫が上がった。コレは予想外でかなり効いたのか、いきなり体の一部が消し飛びデスロールのように身を捩り悶える…、そのお陰で月明かりが見え、人一人分程の隙間ができ、漸くこの暑苦しい場所から脱出出来た。


そして再度攻撃を行うべく、[白虎の脚]で空中で距離をとり、再度[百獣の牙]による噛みつきを行う。


やっぱり、顎は腕よりも強い…!

攻撃がサクサク通る!あの大蛇の噛みつきが、いいヒントになった!


もうこの大蛇の身体全てが弱点になってしまった…、

あっけないものである…。



つまりココから先はもうハナの独壇場だった、[金剛の盾]で尻尾攻撃をやり過ごし、噛みつき食いちぎる…。

[白虎の脚]で逃げ回りつつ、様々な箇所を食いちぎる。


振り解く動きと大蛇の噛みつきは月明かりに照らされてるこの場では全て[鷹の目]で読めるし、尻尾攻撃は少しでも音が有れば[月兎の耳]で探知し、ある程度予測して回避できる。


数々の場所を食いちぎられ血まみれの大蛇は、尊厳もプライドもかなぐり捨て、この激しい痛みから逃れるべく月明かりが差し込めている天井の穴に向かい、鎌首を上げズルズルと逃げだそうとする…。


ハナはそれを見逃さない。


月明かりを背に浴びて、大蛇の眼前まで[白虎の脚]でやってきた。

ハナが眼前まできた事により、滑稽だがまるで、

蛇に睨まれたカエルの様に動きの止まった大蛇の鼻先へ、笑顔でトンッと止まると、

顕現している[荒熊の爪]の両手を振り翳し、大蛇の両目と脳を破壊するべく突き刺し捻った。


大蛇はその痛みと死への恐怖でジタバタと身じろぎするが、その動きも意外と直ぐに止まった…。


深々と刺した腕を引き抜くと、脳を潰された大蛇は力を失い、まるで月から見放された様に洞窟の底へと誘われた。


ズドオォオオン…


大蛇の巨体は重く、洞窟内に響き渡るように倒れた。


------


〈[天音に眠りし漆黒の龍蛇]を撃破しました〉

〈報酬〉

〈新規の[紋][龍蛇の瞳][龍蛇の鱗][龍蛇の鰓][龍蛇の牙][龍蛇の心臓]計5つ 獲得〉



〈統合により【神紋】【龍蛇(りゅうだ)】となりました〉


------



『なになになになに!?急に頭の中からニャルデルと同じような声が響き渡って…【神紋】?なんか凄そうなの手に入ってるし!』


これは…コレこそは!

ノルウェルかトーニャに聞かないと…!

とりあえず今は…


『やったー!!

凄い強かったけど大蛇倒したー!!!

一時はどうな…る事かと、

…?

あ、れ?なんかめっちゃ怠い…

これ[紋]使い過ぎてなるやつじゃ…

たしか…この時黒…丸薬飲まなきゃ…』


段々力が抜けていく…

顕現していた全ての[紋]が形を崩し弱々しく崩壊する…。


何とか腰の[異空間の鞄 小容量]に手を伸ばし。やっとのことで黒丸薬を何粒か噛み砕き飲む…。

味は…正露丸…。


そして忘れていたが、

視界の端で一緒に来た角無し兎がハナをじーっと見ていた。



あっ…兎居るの忘れてた…

これヤバい…やつだ…。

どうし…よ


誰…か…


そこでハナは気を失った。

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