ダンジョンソロ?
荷物もぱんぱんだ…もう仕方ないし切り上げて帰るか、と諦め振り向くと角兎がコチラをジーっとみてくる…
これ以上は弱い者いじめみたいだったから倒さなかったのもある、かと言ってそのまま逃して復讐心で隠れて奇襲されても危ないし…、そう言うわけで角は取っちゃったから現状角無し兎なんだけれども…。
もしや自慢の角をへし折られ怒っているのかと思えばそうでもない…
まるでアレは強者への尊敬の眼差し…
コレはまさか…!
仲間にしますか?
YES/NO
見たいな展開!?
いやいやいや…兎はペットに出来…、るか。
でもあんな凶暴な角兎だし…、いや角はないから良いのか?
当の兎本人はどう思ってるか確認…、をしようにも方法がなぁ…。
流石に[月兎の耳]で動物の気持ちを読むなんて方法は無かったけど…。同じ兎だけども…。
んー…。
散々悩んだ挙句でた答えは、
『別に兎飼ってもいっか!後でトーニャに聞いてみよっと!』
兎を飼う選択だった。
とりあえず私が持ってる食べ物関係で餌になりそうなのは…
あー…[黒丸薬]たべれる?
差し出した手の黒い塊を
ブンブンと首を振り拒否の反応を示す角無し兎…
そんなハナなりの気遣いというか、気持ちを組んでくれたのか角無し兎がハナの周囲を一周周り、着いて来てとばかりに此方を向いてから走っていった。
言葉は通じないが、私に何かして欲しいと言うのは流石に理解できた。
あの兎について行けば何かあるのだろう…。
ハナは[白虎の脚]であの小さく茶色いモフモフの塊に、今後の展開にワクワクしながら着いていく。
ハナのこの簡易な行動によって、この世界で初めてのピンチが訪れるのは知る由もなかった…。
ーーーー
ーーー
かなり遠くまで走る事を覚悟していたが、兎は目的地に着いたようで、立ち止まっていた。
此処に着くまで兎の全力疾走で5分位のものだった…
あれ?距離的に言えば結構遠かったりする?
まぁいいや、
着いた場所は巨大な草原の丘と言うより、岩山の崖の下部分を横にくり抜いた天然の洞窟だった。
兎はぴょこぴょこ跳ねながら、その洞窟に入って行く…。
『はいはい此処に行くのね…うわっ真っ暗…、まぁ[紋]もあるし大丈夫でしょ!』
暗い洞窟を[鷹の目]と[月兎の耳]を駆使し頭をぶつけないように慎重に入って行く。
中は[マタタビ]の[出口]と同じ感じの洞窟らしく、少しひんやりしていた…。
違うのは全く手入れされていないせいか、鍾乳洞のように石が上下共にトゲトゲとしていて、人が入る事を想定していない為かなり歩きにくい…。
と言うか…暗過ぎてマジで前が見えない…。
懐中電灯が切実に欲しい…。
奥の方が少し明るいのは月明かりか何かの灯りかな?
でもこの暗さで兎が先々と進むのは小さい身体なのと野生の魔物からなんだろう…。多分。
それともここが住処だったり?
頑張って兎のペースに合わせるべく、無理をしたせいで度々鍾乳石に頭がぶつかり、かなりの石を折ってしまった…細いからそこまで痛くはないのだが、
これ元の世界の観光名所とかだったら重罪だな…、
コレ作るのに何年かかる事やら…。
そんなハナの心の方にダメージが蓄積していく…。
兎はそんな折れた鍾乳石を摩るハナに、
俺の角へ笑いながらへし折った癖に何タダの石を折ったくらいで申し訳なくしてるんだ、
とジト目で視線を送っていた。
暗いためハナは全然見えていなかったが…。
やがて見えた大広間と呼べそうな場所に着いた。
中はかなり広く、天井には丸く穴が空いており月明かりがこの洞窟を照らす…、その月明かりによって奥には神秘的な古代遺跡を照らしていたが、
その近くに、不自然な程漆黒な岩山が聳え立っていた。
角兎は突然威嚇する…。
何処に?
視線の先にはあの黒い岩山…。
その中の赤い瞳がギョロリとコチラを向くと、舐め回すように見ていた。
『何あれ?もしかして敵!?[鷹の目]でも[月兎の耳]でも探知できてなかったよ!?…これは本当にヤバい奴かも…』
ハナは、冷や汗をかく、生まれて初めて捕食者に睨まれ、命の危機を感じたのだから。
黒い岩山の正体は蜷局を巻いていた大蛇だった。
硬そうな皮膚と、毒がありそうな牙…名のある神の使いとして崇められていそうな風貌…。
角兎はまだまだ威嚇する、
俺ではお前に勝てなかったが、この方ならお前に勝てる!
いきなり現れ一族を食った怨み覚悟しろ!と…
賢い角兎はそう威嚇していた。
だが、この大蛇は純粋にワザと逃した獲物が、鴨がネギを背負って帰ってきたとしか思っていない、
蛇の生贄は昔から若い生娘と相場が決まっているのだ。
久方振りの美味そうな女と舌なめずりし蜷局をゆるりと解く大蛇…。
ハナはこの敵は全力行かないとやられる…と、本能が訴えかける。
そしてその本能に従い、闘う為の[紋]を全てを解放し臨戦体制に入る。
初見でボスに挑むワクワク感をその胸に抱きながら。
[月兎の耳]
[鷹の目]
[白虎の脚]
[荒熊の爪]
[百獣の牙]
[金剛の盾]
顕現した[紋]は互いに干渉し合い、無理をしている機械音の様な6重奏を奏でる…。
いつもと違う騒がしい感じだ…
ハナは直感的にこの状態は長くは持たないと思い、決戦に向け大蛇に挑むべく[白虎の脚]に力を込めた。
そしてその大蛇とハナの動きをみて、俺の出番は終わった…と先頭に立ち散々威嚇していた癖に、サッと岩陰に隠れる角なし兎…もとい玉無し兎は、陰ながらハナを応援するのであった。